アンラーニングとは?企業がVUCA時代を生き抜くための3つのポイント

アンラーニングは、教育関係や人材育成、経営などにおいて注目を集め、力を注がれるようになってきています。VUCA時代への突入という背景やコロナの影響で自立型人材育成の需要が拡大している今、企業も個人もアンラーニングするべき時代と言っても過言ではありません。

そこで、今回は、そもそもアンラーニングとはなにか、VUCA時代でなぜ必要とされているのかについて詳しく解説していきます。

アンラーニング(学習忘却)とは?

アンラーニング(学習忘却)とは、これまでに学習してきたことを「忘れ去る」ことではなく、既存の価値観を認識し、個人や仕事をより進化させるために今の習慣やスキルを「修正する」ことをいいます。これまで重要だと言われていた概念や価値観から脱し、新たな考えや価値観を身につけることが大切です。ここでいう「価値観」とは、ビジネス上での価値観を指します。

例えば、「営業は足が命」「24時間働けますか?」のようなCMが昔はありました。もちろん、営業がお客様に直接会いに行くことに効果がないわけではありません。しかし、「足が命」というと、行動レベルと価値観が直結し硬直化しています。また、「24時間働く」ということも、今の時代にそぐわない労働スタイルです。つまり、従来の信念とルーティーンが直結し、さらにそれが硬直化してしまうと、時代の変化が激しい昨今のビジネスシーンに対応できません。そのために、アンラーニングが必要となります。

アンラーニングがビジネスで重要視される理由と背景

アンラーニングがビジネスで重要視されているのは、VUCA時代への突入という背景やコロナの影響で自立型人材育成の需要が拡大したことなど、予測困難かつ不安定で変化が激しい時代だからこそです。これまで常識ではなかったことが、今では一般的な価値観として受け入れられていることが多く存在します。今まで積み重ねられてきた技術や知識の習得だけでは、太刀打ちできなくなってきているとも言えるのです。

これは個人だけの問題ではありません。組織の中でも同じような問題が存在します。たとえば、組織風土、経路依存性、大企業病などの問題は行動レベルと価値観レベルが直結し硬直化しています。このような問題を解決するために、組織的なアンラーニングを行うことも重要です。

個人レベルでは、時代や価値観の変化により組織の在り方について疑問を感じることも多いでしょう。部署や部門はもちろんのこと、会社を越えて行う越境学習は、個人のアンラーニングにもつながります。

組織レベルでは、絶えず変化する時代の中で、価値観の再構築(リフレーム)や経営理念の再解釈が非常に重要です。経営理念を起点にした学習・アンラーニングを行うことにより、経営理念や価値観を基準として、企業活動を通じた体験や学習のサイクルなどを見直すことができます。成功や失敗、業績と成果の定義などの根本的なところから学習を重ね、経営理念の実現に向けて組織に変化を起こし続けることが可能です。

近年ビジネスは複雑化し、それに対応するためにはスピードが重要とされています。アンラーニングは組織風土や習慣などを前提レベルで学び直すことが重要です。しかし、組織レベルでのアプローチを同時並行しない場合は、効果がない場合もあります。

例えば、デジタル化に伴い、個人レベルのITリテラシーが必要不可欠であり、自分の仕事に必要となる技術を学ぶことも多いでしょう。しかし、個人のITリテラシーやIT技術レベルだけ向上して、業務効率やITツールは活用できても、IT技術やデジタルを活用したビジネスの思想や考え方も含めて学び直すアンラーニングを進めない限り、変化やイノベーションは起きません。また、リスキリングも併せて理解しておくことも大事です。

アンラーニングを企業活動に取り入れるメリット

アンラーニングを取り入れる場合、個人レベルと組織レベルで取り入れる方法が異なります。

個人で取り入れる場合の行動習慣レベルであれば、ITリテラシー教育や機械操作方法などのものが多いです。思考価値観レベルであれば、「そもそも、何を大事してるのか?」など自分の価値観に問いを立て、解像度を大きく下げて俯瞰してみると、見え方が変わってきます。前述した「営業は足が命」の例であれば、「そもそも、営業とは何か?」という振り返りを行いましょう。

組織で取り入れる場合の行動習慣レベルであれば、BPRやITリテラシーなどです。思考価値観レベルであれば、経営理念やパーパスなど組織の価値観に問いを立て、解像度を大きく下げて俯瞰してみましょう。業務や組織風土、組織習慣として染みついている行動も多いため、これらを俯瞰して見ることによりアンラーニングのポイントが見えてきます。

アンラーニングを取り入れることにより、従来の価値観を捨てて新しい知識を獲得し、現在の業務を異なる視点で見直したうえで業務に反映・活用できるようになり、企業・組織として成長し続けることが可能になります。今の時代に即した新しい着想の反映や適切な業務フロー改善を行える効果も望め、事業を伸ばしていくチャンスにもつながるのです。

個人レベルのアンラーニング推進のポイント

現代の企業におけるアンラーニングで個人レベルに求められている要素は、次の2つです。

  • 「既存の前提」を捨てて、新たな知識や能力の習得
  • 予測不可能なことに対する肯定的なマインドへの変化

個人レベルにおいては、「既存の前提」を捨て、新たな知識や能力の習得を優先しましょう。従業員にアンラーニングの重要性を伝え、新しい知識や能力の習得を促進することが求められます。

また、予測不可能なことに対する否定的なマインドは組織全体の指揮を下げることにもつながるので、仕事に対する価値観を認識し、肯定的なマインドへ変化させることが必要です。

具体的には、ダブルループラーニングといわれる、1970年代にアメリカの組織行動学者クリス・アージリスによって提唱された学習理論を用いて行うのが一般的です。ダブルループラーニングとは、既存の前提や習慣の枠組みでの学習を繰り返しながらも、さらに既存の前提や習慣の枠組みを超えて新たな思考の枠組みを加える学習プロセスのことをいいます。

組織レベルのアンラーニング推進に不可欠なポイント

現代の企業におけるアンラーニングで組織レベルに求められている要素は、次の4つです。

  • 従業員のパフォーマンス・エンゲージメントの向上
  • 変化に強い組織の構築
  • 新規サービスの創出・既存サービスの改善
  • 組織風土、組織に根付いた習慣レベルのことを外して価値観レベルで行う

そして、アンラーニングは1度ではなく継続していくことに意味があります。そのため、学習したことを価値観レベルにまで落とし込んで初めて成功と言えるでしょう。

ここからは、組織レベルのアンラーニング推進に不可欠な以下の3つのポイントを解説していきます。

  • 専門家であっても学習を放棄しない
  • 学習をベースにする企業運営にする
  • アンラーニングしやすい環境や仕組みを整える

①専門家であっても学習を放棄しない

経営層やマネジメント層が注意すべきは、役職に甘んじて学習を放棄しないことです。自社に長く属し、物事に精通している人、熟練した技術者など、ある程度の知識や技術を習得して「専門性を高めた」という人こそ、学習を放棄せずアンラーニングを行うことが重要です。

従業員がアンラーニングを通して変化に強く、時代に即した人材になったとしても、会社の方向性を決める経営層やマネジメント層が変化に適応できなければ、柔軟な判断ができず会社としては意味をなしません。

専門性が縦軸だとすれば、アンラーニングは横軸です。専門性ばかりを高めても、固定概念化したり知識に固執したりすれば、逆効果になります。時代の変化により、一昔前の知識は役に立たなかったり、専門的な一部の作業が機械化されていることも多いです。そのような状況に臨機応変に対応するためにも、専門家であっても学習を放棄しないようにしましょう。メタで自分の行動や学習を俯瞰し、価値観レベルで検討してみることも重要です。そのような行動を取ることで、自身の専門性を他の専門領域に活用できるかという視点が生まれます。

つまり「専門性を高めた」という人こそ、学習を放棄せずに、変化に対応する考え方や知識を持つ必要があります。

②学習をベースにする企業運営にする

多くのビジネスパーソンにとって、意思決定する際の価値基準、判断のよりどころとなっている評価軸は経済合理性、つまり損得勘定である場合がほとんどでしょう。働くという時間を儲かるかどうかなどの損得勘定で判断してしまうと、学びは後回しにされて目の前の業務に没頭するだけの日々を過ごすことになります。

企業規模で考えた場合でも同じです。企業利益を重視した考え方をベースにしていてはアンラーニングは進みません。企業全体として、未来を見据えて今何を取り入れるべきか、学ぶべきかを判断する必要があります。

③アンラーニングしやすい環境や仕組みを整える

人事担当者やマネジメント層は、より良い人材育成を目指すために、アンラーニングを会社全体で必要と認識しているのであれば、下記環境や仕組みが重要です。

インターナルコニュニケーションの活性化

組織内のコミュニケーションの活性化を目的としたインターナルコミュニケーションと呼ばれる活動において、適切なツール利用は必要不可欠です。具体的には、コミュニケーションの状況や変化を可視化すること、社内SNSの活用、学習などを取り入れることが望ましいといえます。

実践の場づくり

学びを実際の業務に反映することで、学習の効果がより期待できます。学びをより深く理解するためにはアウトプットの場を用意する必要があります。ワークショップや演習などたとえ小規模なアウトプットの場でも、実践の機会を得ることで学びの定着は格段に変わります。受け身の学習ではなく、アクティブな学習環境がアンラーニングにおいて重要です。

学びを評価・表彰する仕組みづくり

ときには、学びを評価・表彰する制度やテスト、コンペなどで競い合うことも必要です。横並びにするのではなく競争をすることで、競争心が成長へと導いてくれるでしょう。

異論反論を受け入れるクリティカルシンキングを行う

クリティカルシンキングとは「物事の前提の正誤を検証したのち、その事象の本質を見極めていくこと」をいいます。自分自身が学んだことを整理したうえで、今後のビジネスにおいて必要かどうかを考え、整理する時間をつくることも大切です。学んだことを単にアウトプットするだけでなく、現在の会社でどのように活かせるのかを考えて実践するまでがアンラーニングの一部だと言えます。

まとめ

変化していく環境に対し柔軟な対策を取るためのアンラーニングの必要性を紹介しました。アンラーニングをビジネスで活用するには、組織風土や仕組みづくりがカギとなります。組織風土改革や仕組みづくりを行うためには、組織内のコミュニケーションを活性化させなければなりません。

組織マネジメントを支援しているソフィアでは、インターナルコミュニケーションの活性化や組織変革人材育成などにおいて多くのお客様企業をサポートしてきた実績があります。自社のアンラーニングを進めていきたいとお考えの方はぜひご相談ください。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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