クリティカルシンキング研修とは?プログラムの例や研修後についても徹底解説

クリティカルシンキングとは、物事を批判的に捉え、分析するという思考法です。自分の認識や行動の偏りを把握することで、より本質的な答えにたどりつけることからビジネスシーンで重要視されています。

この記事では、クリティカルシンキングを鍛えるための研修について解説します。実際のプログラムを例に踏まえながら研修の内容や特徴に迫り、クリティカルシンキング研修内容を活かすために効果的なポイントについても解説していきます。

クリティカルシンキングとは何か?

クリティカル・シンキング(批判的思考)とは、一言で言えば「得られた事実や証拠、意見を鵜呑みにせず、客観的に分析・評価して的確な結論を導く思考プロセス」のことです。

ここでいう「批判的」とは、決して感情的に非難することではありません。むしろ「吟味する」「検証する」という意味で、与えられた情報について「それは本当に正しいのでしょうか?他の解釈はないでしょうか?」と問いながら判断する姿勢がクリティカル・シンキングの根幹にあります。語源をたどれば、クリティカル(critical)はギリシャ語の(判別できる・評価できる)に由来し、物事の真偽を見極めるというニュアンスを持っています。つまりクリティカル・シンキングとは「表面的な主張に惑わされず本質を見極める思考法」であり、論理的な基準に照らして自分や他者の主張を検証し、より良い結論を導く姿勢なのです。

ロジカル・シンキングとの違い

ビジネススキルとしてよく知られるロジカル・シンキング(論理的思考)とクリティカル・シンキングは、しばしば混同されますが実は目的が異なる別の概念です。ロジカル・シンキングが主に「情報を筋道立てて整理し、一貫性のある結論を導く」ための思考法であるのに対し、クリティカル・シンキングは「既存の前提や与えられた情報を疑い、本当に正しいか評価して、より良い判断を下す」思考法です。
平たく言えば、ロジカル思考が「筋道立てて考える技術」「前提から疑って考え抜く姿勢」と言い換えることができるでしょう。
具体的な違いを見てみましょう。例えば、ロジカル・シンキングでは与えられた情報を漏れなく整理して論理的に構造化し、矛盾のない結論を導くことに重点があります。一方クリティカル・シンキングでは、その結論や前提自体がそもそも正しいのか、一歩踏み込んで吟味する点に特徴があります。プレゼン資料を例に取ると、ロジカル思考では資料を論理的にまとめることに注力しますが、クリティカル思考では資料の前提になっているデータの信頼性まで含めてチェックします。両者は車の両輪のようにどちらも重要ですが、より高品質な意思決定を行うにはロジカルな土台の上に批判的に見直す視点を持つことが不可欠なのです。

クリティカルシンキング研修の流れ

まずは、クリティカルシンキングの研修内容についてチェックしてみましょう。クリティカルシンキングの研修には、さまざまな形態のものがありますが、ここではごく一般的な研修の流れについて述べていきます。

クリティカルシンキングを知る

研修は、クリティカルシンキングとはなにか、その定義を知るところから始まります。同時にクリティカルシンキングを身につけるとビジネスシーンでどのように役立つのかについて、具体的な効果を学びます。

ビジネスにおけるクリティカルシンキングの重要性を知り、身についたスキルを活用するイメージができれば、研修のモチベーションを高めることができるでしょう。クリティカルシンキングの研修では、ディベートを行うケースもあります。ディベートとは、特定のテーマに基づき肯定派と否定派の立場に分かれて意見を出し合い、最終的に勝敗を決める討論です。ディベートを用いることで、ビジネスにおける実践的なスキルを手に入れることが期待できます。

クリティカルシンキングのポイントを押さえる

クリティカルシンキングの定義や、その効果について理解を深めたら、より実践的なフェーズに移行するためにポイントを押さえましょう。クリティカルシンキングのスキルを高めるには 、無意識に自分が持っている思考の偏りや癖をなくすことが重要です。研修では、第三者目線で自分と向き合うワークを行います。自分の思い込みを知る方法を身につけることで、主観を排除し、中立的立場で物事を考えられるようになります。

実際にクリティカルシンキングを行う

クリティカルシンキングのポイントを押さえることができたら、次は実践です。頭で理解するだけではなく、実践することが、クリティカルシンキングのスキル習得において非常に重要です。クリティカルシンキング研修では、語学と同じように、相手に伝わったという感覚を味わったり、実践に活用できた体験が定着の大きな後押しとなります。実践の場では、思い込みや前提を疑い、客観的に分析しながら問題の本質を探っていきます。目の前の現象や発言に左右されず、批判的に思考を深めることが重要です。中立的な思考の根拠を得るために、一次情報となるデータとエビデンスを取りにいくようにしましょう。例えば、月の目標数字の中間報告があったとします。このときチームの達成率は100%を超えていました。目標達成は見えていても、一度立ち返り数字の根拠となるものを一つ一つ確認することがクリティカルシンキングです。そもそもの目標設定が適正だったのかどうか、達成までの道筋(根拠)が現実的なのかどうか上司と部下の間で話し合いましょう。そのコミュニケーションのなかで矛盾やヌケモレに気づくことができ、より高度な認識のすり合わせにつながります。
会議や打ち合わせの場でも、同様です。前提条件や常識を当然だと思ってスルーするのではなく、言葉を使って確認し合うことで、認識をすり合わせることで齟齬をなくしていくことが可能なのです。

また、クリティカルシンキングで相手の考えに意見するということは、視点を変えれば、相手を批判することにもなります。批判要素を含む意見は、なかなか耳を傾けてもらえないものですが、自分の意見を相手が納得するように伝えるためのコミュニケーションスキルを身につけることも重要です。論理的に話を組み立て、状況を整理しながらわかりやすい言葉で相手に主張を伝えるように練習を重ねましょう。

振り返りを行い実践する

研修の内容が一通り終わったら、学んだことを振り返ります。研修内容を改めて整理することで、理解を深めることや、ワーク中には出会えなかった気づきを得ることができるでしょう。クリティカルシンキング研修は、受講して終わりではありません。実際のビジネスシーンでクリティカルシンキングを活かせるようになるまで、意識的に取り組みを続ける必要があります。普段の生活でもクリティカルシンキングを意識することで、効率的にスキルを取得することができるでしょう。

クリティカルシンキングの研修後に克服すべき課題

クリティカルシンキングの研修は「人材育成」を目的として行われるものです。しかし単なる恒例行事として研修を行う企業も多く存在します。活かされない研修は、コストの浪費となります。研修に課題感がある企業は「研修転移」を目指す必要があるでしょう。
「研修転移」とは、研修内容が現場で活用され、成果が生み出されることを意味します。研修転移ができれば参加者の行動が変わり、現場や経営に成果を残すことが期待できるため、研修を活かす重要な取り組みです。クリティカルシンキングの研修転移を妨げる障害について、以下でチェックしてみましょう。

「記憶の壁」

「記憶の壁」とは、研修での学習内容を受講者の記憶に残すことの難しさを示します。そもそも研修の内容が記憶に定着していなければ、実践に活かすことはできません。

本来、研修内容は予習・復習をベースにした反転学習をもとに 実践に移していくことで定着していきます。自らの意思で研修に参加していたとしても、受講するだけでは知識や技術を習得することは困難です。それがもし、強制的に参加させられた研修であればなおさら、記憶に留めることは難しいでしょう。

「実践の壁」

「実践の壁」とは、研修での学習を実践に落としこむことの難しさを表します。研修で学んだ内容を実践に移すためは、受講者自らが進んで実行するか、運営側が実践の機会を提供することが必要でしょう。

実践に移すためには、研修に対する上司や同僚の理解が不可欠です。上司や同僚から受講のサポートを受けられるなど、研修に関する協力体制が職場内に整っていれば、受講者にとって研修そのものが「自己効力感」を高めてくれるものになり、学びを実践に移すきっかけになります。

「動機の壁」

「動機の壁」とは、実践しようという動機付けの困難さを示します。研修の内容をいくら頭で覚えていても、実践で使う意思がなければ意味がありません。そのため、研修では「研修で習ったことを実践で行ってみたい」という動機付けを行うことも重要です。また、実践へのモチベーションを高められるように、周囲の環境を整えることも重要になってきます。

ソフィアにおけるクリティカルシンキングの研修プログラムの事例

SI/IT企業では、受託開発型のビジネスモデルからサービス提供型に業務を変更する方針を打ち立てました。そこで、社員のコンサルティングスキル・ビジネススキルの能力開発を喫緊の課題とし、さまざまなアプローチを行っていました。しかし、研修を繰り返しても、なかなか能力やマインドセットが根付きません。その背景には、研修で求められるスキルと、実際の業務が乖離していることがありました。乖離が激しいので研修転移がうまくいかず、実務に役立てられなかったのです。 

  • (事前課題)中期経営計画及び周辺データの分析 
  • (事前課題)中期経営計画の読み込み 
  • (ディベート)中期経営計画の弱点及びウィークポイント洗い出し 
  • (環境分析)環境分析/シナリオプランニング 
  • (シナリオ選定)複数シナリオ毎でチームディベート 
  • (計画策定)新規事業/事業開発計画の策定 
  • (経営陣へのプレゼン)プレゼン/ディスカッション/合意形成 

実際に実施した研修は、これまで現場で疑う余地のなかった経営方針や目標そのものを、自分たちの目線で改めて検証し再考させるという内容です。目の前の課題に対応するためには前提を疑うこと、問題の本質を見抜いて議論することが重要となります。

このように、ソフィアにおけるクリティカルシンキングの研修では、限られた課題達成思考から抜け出し、本質を見抜いて考えるといったスキルを習得することができます。

まとめ

変化の激しい現代ビジネスにおいて、クリティカル・シンキング(批判的思考)は的確な意思決定や問題解決を行うために欠かせないスキルです。物事を論理的に整理するだけでなく、前提を疑い多面的に検証するこの思考法を身につけることで、ビジネスの様々な場面で質の高い成果を出すことが可能になります。

クリティカル・シンキング研修は、こうした批判的思考力を組織的に養い定着させる有効な手段です。ただ研修を実施するだけでなく、現場での実践とフィードバックをセットにすることで初めて真の効果が得られます。言い換えれば、批判的思考力の育成は組織的で継続的な取り組みによってこそ実現するものなのです。

本記事で述べたポイントを参考に、ぜひ貴社の人材育成プログラムにクリティカル・シンキング研修を位置づけてみてはいかがでしょうか。「鵜呑みにしない」思考習慣が社内に根付けば、意思決定や問題解決の質が向上し、ひいては企業全体の競争力強化につながることでしょう。

貴社でもクリティカル・シンキング研修の導入をご検討されているのであれば、ソフィアがお手伝いいたします。組織の思考力向上に向けて、お気軽にご相談ください。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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