研修転移とは?研修を実務に活かせるようにしよう!

企業ではさまざまな切り口で研修が行われますが、そのうち実務の役に立っている研修はどのくらいあるでしょうか。研修を行ったけれども、いわゆる「やりっぱなし」の状態になってしまい、実務に活かせていないというケースは少なくありません。

この記事では、研修を実務に活かす「研修転移」という考え方を紹介します。学びを効率的に活用していくための手法を考えていきましょう。

研修転移とは?一般的な研修の問題点

研修転移とは、研修で学んだことが実際の現場で活用され、成果が生み出されることを指します。この考え方は、『研修開発入門 「研修転移」の理論と実践』(中原淳 著/島村公俊 著/鈴木英智佳 著/関根雅泰 著・ダイヤモンド社)で取り上げられ、広まっていきました。

研修転移しなければ研修の効果は見込めず、思うような成果につなげることができません。では研修転移するためには何が必要なのでしょうか。この記事では同書を参考にしながら、研修転移の概要と、一般的な研修ではなぜ研修転移ができないのかを解説します。

研修転移とは

同書の著者の1人である中原淳氏は、研修転移の3つの要素について、以下のようにまとめています。

1.「研修の中で学ばれた知識やスキル」が実際に「仕事の現場」で実践される

2.参加者の「行動」が変わり、現場や経営に「成果」を残すことができる

3.その効果が持続すること

新刊「研修開発入門 ー 研修転移の理論と実践」のお知らせ!:あなたの研修は「研修室で学んで終わり」になっていませんか?現場で「実践」されていますか? | 立教大学 経営学部 中原淳研究室 – 大人の学びを科学する | NAKAHARA-LAB.net より引用)

このような研修転移の考え方を理解し実践することで、研修が企業活動に生かされるようになります。しかし、一般的な研修は多くの場合、十分な成果に結びつけることができていません。では、一般的な研修の問題点はどこにあるのでしょうか。

一般的な研修の問題点

そもそも研修とは、一般的には「人材育成」を目的として行われるものです。もしくは「職位・職種における基礎的な知識を身につける」ために行われることもあるでしょう。いずれにしても、研修そのものが目的ではなく、企業や組織として達成したい目標が別にあるはずです。

しかし実際には、目標に目を向けず、恒例行事として研修を行うということ自体に満足している企業が多く存在します。その結果、研修での学びが実務にほとんど活かされないということが起こり、効果を実感できないままコストを浪費することになってしまいます。

従来は、このような研修を続けていても大きな問題にはならなかったでしょう。なぜなら多くの企業が、既存のビジネスを順調に成長させていて、そのための組織構造を明確に整えることができていたからです。組織の人員は階層的に配置され、階層ごとに業務を分け与えられていました。全体・部分のどちらをとっても最適化されている状態であり、それぞれの立場に求められるスキルや能力、マインドが一定でした。

しかし、現在は状況が違います。VUCA時代と言われ、先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代となりました。ビジネスの流動性が一気に高まる中、かつてのような明確な階層構造を持った組織では、柔軟な対応が難しくなります。さらに企業は、既存のビジネスだけを動かすのではなく、新しいビジネスをスピーディーに生み出す必要にかられています。個々の業務に必要なスキルは多様化し、学んでから成果を出すまでのスピード感が何より求められるようにもなりました。

そのような背景から人材育成の重要性も高まり、「研修転移」ができない研修が本格的に通用しなくなってきているのです。企業は、今一度研修に関する認識と取り組み方を改める必要があると言えるでしょう。

問題のある研修が生まれる原因

中原教授は、多くの研修の成否の指標は、「現場の行動を変えること」には置かれていない」と指摘します。

では、問題のある研修はなぜ生まれてしまうのでしょうか。中原教授は研修で学んだ内容の実践を妨げる以下の3つの壁があると述べています。

記憶の壁

「記憶の壁」とは、研修での学習内容を受講者の記憶に残すことの難しさを示します。そもそも研修の内容が記憶に定着していなければ、実践に活かすことはできません。

本来、研修内容は予習・復習し、実践に移していくことで定着していきます。たとえ自らの意思で研修に参加していたとしても、受講するだけでは知識や技術を習得することは困難です。それがもし、強制的に参加させられるかたちの研修であればなおさら、記憶に留められる効果的なものとはならないでしょう。

実践の壁

「実践の壁」とは、研修での学習を実践に落としこむことの難しさを表します。研修で学んだ内容を実践に移すためは、受講者自らが進んで実行するか、もしくは運営側が実践の機会を提供することが必要でしょう。

また、実践に移すためには、研修に対する上司や同僚の理解が不可欠です。上司や同僚から受講のサポートを受けられるなど、研修に関する協力体制が職場内に整っていれば、受講者にとって研修そのものが「自己効力感」を高めてくれるものになります。そうなれば、学びを実践に移すきっかけになるはずです。

動機の壁

「動機の壁」とは、実践をしようという動機付けの困難さを示します。研修の内容をいくら頭で覚えていても、実践で使えなければ意味がありません。そのため、研修では「研修で習ったことを実践で行ってみたい」という動機付けを行うことも重要です。また、実践へのモチベーションを高められるように、周囲の環境を整えることも重要になってきます。

振り返りの壁

「振り返りの壁」とは、研修での学びを振り返る大切さを示します。振り返らなかった場合、そのまま忘れてしまいますし、成長にもつながらなくなってしまいます。


研修を効果的にするには?活きる研修!

意味のある研修を行うには、いくつかのハードルがあることを紹介しました。では、ハードルを超えて効果的な研修を行うにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、「活きる研修」を行うためのポイントを整理します。

実務で活きる研修を行うためには?

実務で活きるような研修を実現するためには、前述の「壁」を取り除く必要があります。

たとえば、記憶の壁を撤廃するためには一方的に聴くだけの研修にせず、受講者にも発言機会を与えることが効果的でしょう。また、実践の壁を取り除くためには、上司を巻き込んで研修内容を共有するなど、研修と現場の距離を近くするための工夫が重要です。そして、継続の壁を撤廃するには、研修を2段階構造にするのが手でしょう。たとえば1回目と2回目の間に実践を挟み、2回目の研修ではその振り返りをするというプロセスにすれば、継続性を持たせることができます。

研修転移のための人の在り方

研修転移をうながすためには、受講者の姿勢のみならず、研修企画者も明確な目的を持って研修を実施しなければなりません。研修は単なる行事ではなく、人材育成を左右し、ひいては企業の成長を左右するものです。社内で研修の重要性を再認識する必要があるでしょう。研修が終わっても、講師や企画者の仕事は終わりません。実践の場で活用できるかどうかが重要なので、サポートやアフターフォローを徹底し、長期的なプロジェクトとして取り扱うというのが理想的です。

また、受講者の上司の姿勢も見直す必要があるかもしれません。上司は、研修に対してできる限りの理解と協力をするべきです。研修で学んだことを実践できたら正当な評価を与えるなど、研修に関するモチベーションを積極的に高めていく工夫があると良いでしょう。また、上司の方から、実践の機会を率先して創出することもできるのではないでしょうか。

まとめ

研修は、行事ではなく、社員の成長を左右する重要なプログラムです。研修の効果を高めていくためにも、研修転移の考え方を認識することが大切です。

研修転移を実現するためには、受講者個人の努力はもちろん重要ですが、環境も同様に大切です。現代の働く人たち、特に若者は、どんな仕事を与えても、わからないことがあれば即座にGoogleやYouTubeを活用して答えを調べることができます。そして、ほとんどの問題が解決できてしまうため、企業が組織として提供する研修に参加する必要性を感じられない受講者も多いでしょう。そのため、受講者を動機づけし、意味のある体験ができるように工夫する必要があります。研修転移や反転学習、プロジェクトベースドラーニングでお悩みの場合は、ぜひソフィアまでご相談ください。

よくある質問
  • 研修転移とは何ですか?
  • 1.「研修の中で学ばれた知識やスキル」が実際に「仕事の現場」で実践される
    2.参加者の「行動」が変わり、現場や経営に「成果」を残すことができる
    3.その効果が持続すること

  • 研修を効果的にするにはどうすればいいですか?
  • ・記憶の壁
    ・実践の壁
    ・動機の壁
    振り返りの壁を取り除くこと 上司を巻き込んで研修内容を共有するなど、研修と現場の距離を近くするための工夫が重要です。そして、継続の壁を撤廃するには、研修を2段階構造にするのが手でしょう。たとえば1回目と2回目の間に実践を挟み、2回目の研修ではその振り返りをするというプロセスにすれば、継続性を持たせることができます。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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