人材開発とは?人材育成との違いやポイントを解説

人材育成と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。新入社員教育・集合研修・管理職昇格試験…さまざまな人事施策を連想するでしょう。

一方で「人材開発」に対しては、ピンとこないという方が多いかもしれません。また、人材育成と人材開発は同じもの、と思っている方もいるかもしれせん。しかし実は、両者には本質的な違いがあります。

この記事では、「人材開発」について人材育成との違いを含めて全体像を明確にした上で、組織開発と同時進行で取り組む必要性や、さらには具体的な開発メソッドであるPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)について解説します。

人材開発とは

21世紀に入る前後まで、日本企業の人事施策は「人材育成」を軸として展開されてきました。

新入社員の集合研修、ジョブローテーション、新卒採用と終身雇用を前提とした社内キャリアアップ、ロジカルシンキングに代表されるリテラシー教育などは、すべて人材育成を基本思想としています。

一方で、人材開発と呼ばれるコンセプトに注目が集まり始めたのはここ20年くらいのことです。

「人材開発」は個人のスキルや知識を向上させるなど、人材一人ひとりにアプローチして能力を伸ばすことを目的としています。ロングターム、つまり長い目でスキル・知識を伸ばすことに主眼を置き、一人ひとり違うゴールを設定します。そして、ゴールをめざして、単に知識を・スキルを覚えこませるのではなく、本人の自発性を重視し、体験を通じたその人のその人の気付きにフォーカスして個々の能力を開発するのです。

人材育成との違い

「人材育成」と「人材開発」、両者の違いはどこにあるのでしょうか。

社員のスキル・知識の向上をサポートするという点では、人材育成も人材開発も同じです。しかし、人材育成は、どちらかといえば業務遂行に必要なスキルの習得に力点を置いています。あくまで現状の組織体制・商流・サプライチェーンのもと、業務で高いパフォーマンスを発揮できるよう、不足する知識・スキルを習得させるためのものです。人材育成には研修などのOFF JTに加えて、OJTやジョブローテーションも含みます。

たとえば典型的な新任管理職研修では、部下の労務管理・部下の指導監督・コンプライアンスなど、「会社が管理職に身に着けてほしい」最低限必要なスキルを、講師主導のもとに学びます。教え方のフレームワークも決まっていて、学ぶ側はどちらかといえば受動的な立場に置かれます。

一方で、近年はグローバルな企業競争はますます激しくなり、ビジネスモデルもサプライチェーンも刻々と変遷しています。そんな状況で、今までのような人材育成的な発想の人事施策のみでは、勝てる組織を作り上げていくことはできません。そこで、「人材開発」に注目が集まっているのです。

なぜ、「人材育成」と「人材開発」分けて考えるようになったのでしょうか。社員の資質やスキルなどの情報を人事管理の一部として活用するタレントマネジメントが主流になりつつある今、人の能力や才能のビジネスにおける影響力が大きくなっていることが要因だと言えるでしょう。サービス業(広義)が日本のGDPの7割を占めていることからも、企業活動における付加価値を生み出すためには「人材」の重要性が増している理由がわかります。

人材育成と人材開発は、アプローチの仕方が重複している部分もありますが、目的が異なるため自ずと手法も異なってきます。しかし、実務において人材育成と人材開発を分けて考えている人事担当者それほど多くないのが現実ではないでしょうか。

組織開発と人材開発との違い

人材開発に取り組む際に忘れてはならないのが、組織開発です。

組織開発は、その言葉のとおり組織をより良くするためのアプローチ(開発)を行うものです。具体的には組織の構成員、企業であれば社員同士の関係性を改善し、組織の活性化を図ることを目的としますので、個々の従業員の能力を伸ばす「人材開発」とはアプローチする対象が異なります。
しかし、組織のパフォーマンスは組織や職場と人材が相互に関係しながら発揮されるものであるため、両者を切り離して考えることはできません。

組織開発の進め方や手法については、以下の記事を参照ください。

人材開発を行う前に

人材開発において、人事施策は全体の中のほんの一部にすぎません。より大切なのは、事業ニーズに合った人材像を設定し、社員への適切なアプローチ方法を検討することです。

事業ニーズにあった人材像を定める

まずは経営戦略から、あるべき組織体制に基づいて配置すべきコア人材はそれぞれどのような役割を持ち、どのような知識やスキルを必要とするのかを具体化します。同時に、タレントマネジメントに基づいて、将来会社の中核を担うべきコア人材候補者のキャリア形成プランを策定します。社外から中途採用で充足する場合もありますが、社内からの輩出を基本とします。

もちろん経営環境は変化するので、タレントマネジメントにも柔軟性・機動性を持たせなければなりません。また、人材開発を行う際には、人事部門の戦略性も要求されます。コア人材候補者の選出や異動・昇格の際に、会社の業績を支えている声の大きい部門の声に押されるようでは戦略を貫徹できません。人事戦略に基づいてコア人材の当事者や上司などの関係者を説得し、計画的に人材開発を進めましょう。

社員一人ひとりに適した人材開発のアプローチ方法を選ぶ

もし、社員にスキルや知識が足りないだけなら、不足を補えば事足ります。これは、あくまで人材育成の領域です。

一方、人材開発で取り上げるのは、社員の意識や考え方の問題です。例えば営業マンなら、「上位者(営業部長や支店長)は普段の仕事において何を考えるか」を知ることは大切です。上位者の考え方を知り、その思考パターンを身に着けることで、より高い次元で業務を遂行でき、営業スキルも効率的に活かせるようになります。

抜擢人事で若手を高いポストにつけるのも、人材開発のアプローチの一つです。上位者として資質のある人間を起用するのではなく、その人材が持つ実際の能力よりもストレッチしたポストを与えることで、上位者としての資質を身に着けさせるという考え方です。

キャリア面談やサポートを充実させることも大事ですが、パルスチェックなどで社員の動向を見ながら、適切なタイミングで施策を打つということも大事になってきます。また、後述するタレントマネジメントシステムの活用が進めば、人事部門が人材開発のアプローチを決める時代は終わり、ゆくゆくは社員一人ひとりが自分で自分の目指すキャリアに適した人材開発方法を選ぶような時代になっていくでしょう。

人事データを統合し、タレントマネジメントシステムを整備する

タレントマネジメントシステムをしっかり活用できている人材開発部はまだまだ多くはありません。そもそも人材に関するデータがちゃんと管理されていなかったり、バラバラだった人事データを一元化したとしても活用できていなかったりするケースが多いようです。

人材開発に取り組む際は、アンケートの実施後やオンボーディングの前後、昇格前や面談など、社員一人ひとりに対してその時々に必要なアプローチ(Eラーニング、上司との対話、集合研修、産業医との面談など)を行います。そして、これを実現するには、社員個人やその上司、人事担当者などが、人材に関するデータをきちんと入力する必要があります。これらのデータを統合して一元管理するのがタレントマネジメントシステムです。

しかし、人材開発の担当部が、そのデータを社員にとって価値あるものに変える事ができなければ、タレントマネジメントシステムは役に立ちません。データを入力しても使われないのであれば、誰も入力しなくなってしまうでしょう。

人材開発と組織開発を同時に進める必要性

ここまで、さまざまな人材開発のアプローチについてご説明してきました。しかし、これらのアプローチを通じて個々の社員がどれだけスキル・知識を身につけても、職場ですぐに活かせるわけではありません。

これは、いわば人材開発の永遠の課題です。

たとえばロジカルシンキングを勉強しても、現場が非論理的に考える人ばかりで、論理的な考え方が評価されないのであれば実践は難しいでしょうし、イノベーティブな提案をしたとしても、それを受け入れる職場でなければ、新たな提案をしようという人材も出てきません。

現場で実践できる環境になっていなければ、学んだ内容もすぐに忘れてしますし、いくら動機付けされていても、やがて元に戻ってしまいます。もし、組織の全員に全く同じ人事施策を一斉に施すことができれば、環境自体を変えることができるかもしれませんが、規模の大きい組織では現実的に不可能です。

そこで、人材開発の成果を出すためには、人材開発と組織開発を連動させて、組織風土やワークスタイルの変革も同時に進めていけるかどうかがカギになってくるのです。

これからの人材開発に必要なこと

では、今後人材開発に取り組む上では具体的にどのような点に留意する必要があるのでしょうか。3つのポイントについてご説明します。

組織開発と人材開発を同時に進める

繰り返しになりますが、人材開発を成功させるためには、組織開発に同時に取り組む必要があります。組織開発は外部コンサルの支援のもとに進められる場合もありますが、人材開発の効果が発揮できる組織を作るためには、人材開発の担当部が積極的に関わり、組織のメンバーが主体的に社内風土を改善していく必要があります。

例えばロジカルコミュニケーションを組織風土として定着させていくのであれば、部単位でロジカルコミュニケーション研修を実施したうえで、部内改善提案等を通じて組織にムーブメントを起こしていくなどの段階的な施策が必要です。これらの施策を進める際には、対面やオンラインツール、社内メディアなどを介したインターナルコミュニケーションが欠かせません。

インターナルコミュニケーションを重ねながら組織開発を推進し、その結果として組織が変わることではじめて、人材開発の成果も活きてくるのです。

社員が主体となって経験し、考えることのできる仕組みを作る

これも繰り返しになりますが、一斉に研修等を実施する人材育成とは異なり、人材開発は社員一人ひとりに対するアプローチが中心となります。

人材開発においては、知識やスキルの向上につながるような教育・指導を施すよりもむしろ、必要な知識・スキルの習得につながる実践の機会を設け、経験を通じて社員が学ぶことのできるような仕組みが必要です。

そして、その実践が成功したのか、そこにどういう意味があったのか、そこから何を学んだのか、社員自身が考えて気付く機会を設けるためには、上司やメンターによるコーチングも欠かせません。

スキルアップのサポートができる仕組みを作る

人材開発の対象となる社員が行きづまったときの相談相手となるメンターや、社員自身がさまざまなキャリアの可能性を検討できるような制度など、サポート体制の充実も欠かせません。

ここでも、会社がひとつの選択肢を社員に押し付けるのではなく、社員が自分に必要なものを自主的に選択できるようにしておくことが重要です。たとえば、専門家やコーチャーの監修によるスキルアップメニューを多数用意するなどはその一つといえるでしょう。

人材開発と組織開発を結合させた人材開発手法

最近注目されている人材開発手法の一つとしてプロジェクトベースドラーニングをご紹介します。

プロジェクトベースドラーニングは問題解決型学習とも呼ばれ、仮説を検証解決していく学習方法で、組織開発・人材開発・問題解決に効果を発揮します。

(人材開発)
仮説設定・検証の経験を通じ、自ら考える力が身につきます。

(組織開発)
業務に即した課題設定・直属の上司や先輩の参加、研修終了後に置ける職場での課題実践を通じ、成果を組織開発に活かします。

(問題解決)
実際の職場で起きている問題を課題として設定するので、組織としての課題解決力向上に役立ちます。

プロジェクトベースドラーニングにおいて重要なのは、受講者が没頭する仕掛けと多様な知識やフレームワークが適宜提供される環境です。

プロジェクトベースドラーニングの実例についてご興味のある方は、以下の事例を参照ください。

まとめ

日常的な企業活動を支えていくために、これからも人材育成は欠かせません。一方、厳しい企業間競争を生き抜いていくには、人材開発も同時に進めていかなくてはならないのです。人材開発にお悩みの企業は、お気軽にソフィアにご相談ください。

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