人材開発のトレンド「ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム(LXP)」とは?

#Eラーニング#ICTシステム活用支援#ラーニングデザイン

04.Oct.2019

私たちは、企業など組織内におけるコミュニケーションを活性化させることで、そこで働く人たちの体験「エンプロイー・エクスペリエンス」の質を向上させるべく、長年にわたって多くの組織を支援してきました。「エンプロイー・エクスペリエンス」の改善は、従業員の働きがいや、組織への愛着、業務におけるパフォーマンスの向上などにつながっていきます。

人材開発の場における学習体験(ラーニング・エクスペリエンス)も、「エンプロイー・エクスペリエンス」の最も重要な要素の一つです。研修への参加者が、学んだことをいかに実際の業務につなげていくことができるか。そのためには研修参加者が学んだことを「実践したくなる」動機付けが必要です。ソフィアでは、企業の課題に応じて研修メニューをカスタマイズし、集合研修だけでなくeラーニング等も活用し、研修前から研修後へとつながる一貫した体験を提供しています。

こういった学習体験の実現を助けるツールとして、私たちは「LMS365」というラーニングマネジメントシステム(LMS)を取り扱っています。ところが、最近のLMS市場を調査してみると、海外、特にアメリカではどうも「LMSはもう古い、時代はLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)だ」ということが言われているようです。海外において、人材開発・従業員教育に関する状況は、どのように変化しているのでしょうか。

変わる組織の状況と、変わらない集合研修

ビジネスの急速なグローバル化やIT化、人口構成の変動など、市場環境は急速に変化し続け、いわゆるレガシー産業では新規事業の創出や新市場の開拓など、イノベーションの必要性に迫られています。変化を起こす人材が必要とされ、人材開発への注力が重要視される一方で、人材開発の場においては、「みんな一緒に」の集合研修から抜け出せずにいる企業も多いのが現実です。

事業環境の変化や人材の多様化にともなって、企業におけるキャリアパスも多様化しました。従来のように部署内で完結できる仕事ばかりではなく、部署をまたいで連携したプロジェクトなども増えてきており、従来の「階層教育」では社員の教育がカバーできなくなっています。

さらに、働き方改革や業務効率化の名のもとに、現場の人員や時間はどんどんタイトになってきており、集合研修のために多くの社員を集めることが以前よりも難しくなっています。業務で多忙な中、一日予定を開けて嫌々ながら参加するのでは、動機付けされません。

アメリカなどIT先進国ではそうした背景から、より柔軟な機会提供を行うため、これまでも積極的に、人材開発にITを取り入れてきました。そして、従業員が仕事中に受け取る情報の量が圧倒的に増えています。そんな中、会社から発信される学習機会に関する情報は、なかなか従業員の耳に届きません。現代人は、1時間に9回スマートフォンを開き、集中力が持続する時間は金魚以下の「8秒」。興味のあるコンテンツとそうでないものを5秒で判断し、またオンラインの情報に触れている時間はインターネット黎明期の5倍になっているそうです。そして、自分の勤める会社の提供する情報よりも圧倒的に多くの外部情報に触れていて、隣の芝生は青く、魅力的に映る他社のビジネスや世の中の動きが気になってしまいます。自社のブランドとの精神的な距離は広がり、離職にもつながっています。

働く環境の変化を踏まえた今後の学習設計とは

このような環境において、従業員が「学びたい」と動機付けされ、さらに学んだことを効果的に仕事に生かすことができるような学習機会は、どのようなものでしょうか。従来のような全社一律の階層教育でなく、個別のキャリアとタレントに合わせた学習を、より仕事の成果・パフォーマンスの向上につながる方法で、提供することが必要になってきています。さらに、従業員がストレスなく前向きに参加できる環境をつくることも重要です。

これらの条件を整えるためには、
・集合研修だけでない、学習に関わる様々な機会・接点
・その時々の受講者の心理・状況
・受講者を取り巻く人々との関係性
など、さまざまな要素が影響を及ぼします。ラーニング・エクスペリエンスデザイン(LXD)とは、そうした学習者の心理や環境を踏まえ、学びの接点を最適化するよう設計することです。

とはいえ、人材開発の担当者が、一人ひとりの受講者の状況を把握し、研修に関わるすべての関係者を束ねながら施策を推進するには膨大な時間と人手が必要となり、簡単なことではありません。そこで登場したのが、「ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム(LXP)」です。

LXPとは具体的に、どのような機能を備えているのでしょうか。いくつかの海外事例、代表的な製品の機能の調査と、弊社での経験を踏まえながら、優れたラーニング・エクスペリエンスに必要な要素を7つにまとめました。

優れたラーニング・エクスペリエンスの7要素と、それを実現する機能

1.マイクロサイズのコンテンツ
現代の人々の集中力が持続する時間は、非常に短くなっています。ほとんどの学習者は、4分以上の映像を見たがりません。短いコンテンツを数多く提供するという方針に合わせ、それらをまとめて簡単に管理できることと、受講者にとってそれが見やすく掲示され、かつ見たいものに簡単にたどりつけることが重要です。
⇒優れたインターフェース(見た目)と、整理されたナビゲーションや検索機能が重要。
<パネル型などのコンテンツショーケース、検索機能、タグ・カテゴリ機能>

2.アクセスが整備されている
数年前と比較して、従業員は今、個別に独立した仕事の進め方をしています。伝統的に行われてきた業務から無駄な手順を省略するような、職場単位の業務改革の他、 、パスワード入力、メールの送信、ドキュメントの検索、インターネットでの調査、などなど、一人一人の作業の効率を高め、生産性を高められる環境が重要です。それはつまり、彼らの毎分毎秒の非生産的な行動を取り除いていくような取り組みです。
⇒シングルサインオンは必須。ポータルサイト上のリンクやショートカットなど、日常の動線上でアクセスができる。
<シングルサインオン機能・埋め込み機能>

3.トレーニングのための時間を提供する
従業員は普段、就労時間のうちたったの1%しか、学習や自己啓発、業務改善に時間を費やすことができていません。優れた講師や優れた教材の用意だけでなく、従業員にとって、時間こそが最も重要な学習のためのリソースです。集合研修など固定された時間と場所を取るだけでなく、自己学習コンテンツによって、従業員自身でフレキシブルに、隙間時間を有効活用することが出来ます。その際、企業側は彼らが自身と会社の成長のため学習をしていることをしっかりと記録・認識し、奨励していく必要があります。
⇒受講者ごとの学習履歴を記録し、評価と紐づけることが出来る。達成項目ごとにバッジや認定証を贈呈できる。
<トラッキング機能・バッジ機能・認定証機能>

4.“モバイル”は不可欠
21世紀、人々は1時間に9回スマートフォンを確認します。トラブル発生時や困ったとき、リアルタイムの回答をそこに求めているのです。学習コンテンツも同様に、彼らが欲しい時にその場でアクセスできなければ、見向きされることはありません。場所を選ばない環境を整えましょう。
⇒モバイルファーストでデザインされていて、アプリで操作・受講可能
<レスポンシブ対応・専用モバイルアプリ>

5.ユーザー・エクスペリエンスの向上
さらに言うと、70%の従業員は、仕事の中で直面した問題の解決策を見つけるために、Google検索を使っています。いまや誰にとっても、Googleなどの検索エンジンは必要な情報を最も手早く手に入れるための方法です。会社が提供するツールがGoogleに勝てる方法があるとすれば、従業員の問題の一番近くに寄り添うことです。従業員のためにキュレーションされ、カスタマイズされ、かつ使いやすく便利な問題解決プラットフォームが自社内にある。仕事で直面する悩みの解決策が会社から既に提供されていることを発見したとき、従業員は、自社で働くことの喜びや会社のブランドを強く感じるでしょう。
⇒ユーザーごとにカスタマイズされたコンテンツビューがある。各コンテンツへのフィードバックを取得・分析し、受講者のニーズを汲んだコンテンツを用意できる。
<ダッシュボード・分析レポート機能>

6.常に最新の情報を届ける
トレーニングに割ける時間が微々たるものである一方で、従業員は彼らのキャリアを高めるための学習に対する強い欲求を持っています。なぜなら、ビジネスの場は日々変化し続け、常に変化するの市場の期待に応え続けなければならないためです。いま目の前にある、もしくはルーティーン化された仕事のマニュアル・TIPSだけでなく、日々刻刻にアップデートされた学習コンテンツが求められています。そのためには、できるだけ簡易に、誰もが関われる形で、コンテンツが提供されるシステムが必要です。
⇒コンテンツ管理者を一元化せず、部分的に権限移譲できる。簡単にコンテンツを作成できる、もしくはさまざまな既存のファイルを手軽に配信できる。
<簡易な権限設定・多様なファイル形式へのサポート>

7.「実務」とつなげる
「世の中や会社に求められる能力・人材像」に繋がる学習は、マニュアル的な内容よりも従業員が動機付けされやすい 一方で、それぞれに異なる現場の業務との繋がりは必ずしも明確ではありません。組織で働いている以上、自分一人が勝手に業務を変えることは困難です。あるいは、周囲の仕事を侵食するような行動は好まれないこともあります。一人の営業社員が「デジタルマーケティング」を学んだとしても、上司の指示を無視して勝手にテレアポ業務を捨てて挑むわけにはいきません。「業務効率化テクニック」を学び、自分一人だけ電話メモを付箋で書くのを辞め、社内のチャットツール上で伝言したとしても、「そんなところで言われても気付かない」と苦情が来るかもしれません。学んだことを実際に業務に活かす、または職場全体に変化をもたらすには、 学習者本人だけでなく、仕事を実際に指示・配分する上司や、協働する同僚にも、学習内容が共有されている必要があります。一人で自由に学べる環境を提供する一方で、その学びが「職場ゴト」化されていることを担保しましょう。
⇒上司や同僚、部下へコンテンツを簡単に共有・お勧めできる。学習の内容・気付きや学びについて会話ができる。
<組織内シェア機能・ディスカッションボード>

世の中の「〇〇・プラットフォーム」と呼ばれるものは、必ずしも技術的に斬新というわけではなく、元々実現されていた複数の体験が、丁寧に統合されているという印象です。 上記の7つの要素も同様で、とくに目新しい技術が必要なわけではなく、洗練された機能を洗練されたインターフェースに集約することで 、ユーザーに価値を提供することができます。

海外のLXP市場を調査して再確認したのは、ソフィアで取り扱っている「LMS365」も、名前はLXPではなく「LMS」であるものの、ユーザー視点で必要な機能を取り揃えており、上記のラーニング・エクスペリエンスを網羅できているということです。

実際に社内でLXPを推進していくには?

実際にLXPを導入するには、管理者が使い方に習熟すること、そして社内の各現場のリーダーへもそれを伝えること、プラットフォームに載せるコンテンツの準備、受講の奨励、運用など、さまざまなタスクがあります。そして何より、従業員に 積極的に使ってもらえるような環境を作っていくことも必要です。

ポイントは、
(1) 戦略との整合・・・会社として、何故このような学習設計を促進していくのかという理由付け。事業戦略と人材開発とを繋げるストーリーを作ること。
(2) 現場との合意形成と、協力体制・・・ツール導入の目的やメリットを提示しながら、権限移譲が出来るよう各ユーザー部門へ啓蒙活動を行っていくこと。
(3) 用途開発とガイドラインの整備・・・ツールに出来ることと、現場のニーズの両方を理解しながら、現場のメリットとなる改善例を示すこと。
(4) ツールに合わせて働き方を変える・・・業務に合わせてツールを開発するのでなく、ツール導入をきっかけに働き方(学び方)を変えていくこと。
(5) 導入した理由・目的や使うメリットを従業員に伝えていくプロモーション・・・事務局に改善の構想があっても、ユーザーにとっては他人事。全社として重要視していることを示すキャンペーンや、便利さを実感するトレーニングなど、浸透活動を行うこと。
(6) 継続した改善・・・どんな計画も、事前の構想通りに上手くいくことはあり得ません。利用率や、使ってみて不便である点など現場の実際の体験を細やかに観察し、改善施策を打つこと。

真に学習効果の向上につなげるために

現在進めている集合研修やe-learningの効果が薄いようであれば、上記のようなツールを用い、その提供方法を変えてみることも一つの手段になり得ます。しかし当然ながら、どんなに魅力的な機能を有していても、ツールが全ての解決策になることは決してありません。就労環境の中で得られる学習のうち、その効果の70%は実務の中で得られる経験から、20%は上司や先輩社員によるフィードバックから、そしてたった10%が研修など会社が提供する学習から成ると言われています(70:20:10の法則)。学習を従業員の成長や仕事での成果につなげていくには、人材開発のためのその他さまざまなアプローチ が不可欠です。

ソフィアでは、お客様ごとの課題の特定から、状況を踏まえた学習内容(集合研修でも、e-learningでも)とその提供方法、そして運用までのシナリオを描くお手伝いをしています。ツールのベンダーとしてではなく、あなたの会社の課題解決に向け、人材開発施策のディスカッションパートナーとしてご一緒致します。お困りのことがあれば、ぜひ一度ご相談下さい。

<出典・参考>
7 Things We Learned From Deloitte’s “Meet the Modern Learner” (Grovo)

Magic Quadrant for Digital Experience Platforms (Gartner)
The Learning Experience Platform (LXP) Market Expands (JOSH BERSIN)

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