リーダーに求められる役割とは?人事が押さえる育成とコミュニケーション
最終更新日:2026.06.02
目次
大企業では、部門間の分断や働き方の多様化で「指示が伝わらない」「評価理由が不透明」といった課題が起きがちです。リーダーに求められる役割は、業務の割り振りにとどまりません。本記事では、役割の全体像と成果につながるコミュニケーションを体系的に整理します。
リーダーの定義
リーダーとは、組織の目的達成・課題解決に取り組むにあたり、チームを先導する役目を担っているビジネスパーソンのことです。
会社から任命されたリーダーがどれほどのリーダーシップを発揮できるかで、そのチームやプロジェクトの成果が決まるといっても過言ではないでしょう。
リーダーシップ論には、以下のようなものがあります。
●SL理論
●マネジリアル・グリッド論
●マネジメント・システム論
●レヴィンのリーダーシップ類型
●PM理論
●コンセプト理論
●サーバントリーダー
●ダニエル・ゴールマンのリーダーシップ
ビジネスや政治の世界など多種多様な状況において、リーダーシップ論を一般的に理論化したものは多くあります。しかし、諸説ありすぎて「結局どういうことなのか」と分かりづらく感じる方も多いのではないでしょうか。
リーダーとマネージャーの違い
リーダーとマネージャーは、現場では同一人物が担うことも多い一方で、強調点が異なります。役割を混同すると「管理はしているのに人が動かない」「熱量はあるのに成果が再現しない」といった状況が起きやすくなります。大づかみに言えば、リーダーは”人と方向性”に重心があり、マネージャーは”業務と資源”に重心があります。
たとえば、カナダのビジネスおよび経営に関する学者・著述家であるMintzbergは、マネジャーの仕事は文書よりも会議・電話など口頭コミュニケーションに強く依存し、時間の多くを口頭でのやり取りに費やすことを示しています。換言すれば、管理(マネジメント)を成立させるうえでも、コミュニケーションは周辺ではなく中核にある、ということです。
リーダーに求められる役割
役割の全体像
リーダーの役割を「業務の割り振りだけ」と捉えている方もいるかもしれません。しかし実際には、はるかに多岐にわたります。ここからは、リーダーの役割について一つひとつ解説していきます。
弊社ソフィアの調査では、職場を評価する要因として「人間関係・上司部下関係」が高い比率で挙がっています。リーダーの役割は”業務遂行”だけでなく、”関係性と納得の設計”まで含めて捉える必要があります。
プロジェクト管理と進捗の前進感
プロジェクトには必ずリーダーが任命されており、各プロジェクトをまとめることがリーダーの役割の一つです。著書『マネジャーの最も大切な仕事(ハーバード・ビジネススクール教授 テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー(共著)英治出版、2017)』でも紹介されていますが、仕事の進捗を管理するということは、エクセル表を見ながら各自の進捗を管理表に転記することを意味するわけではありません。プロジェクト管理では、プロジェクトの進行状況や部下のタスクを管理するだけでなく、「一歩一歩進んでいる」と認識させるコミュニケーション、つまり前進感を与えることが重要です。リーダーが進捗を確認して正しくフィードバックすることで、メンバーは達成感を感じてパフォーマンスを維持できるようになります。
ポイントは「進捗=数値管理」ではなく、「進捗=前進感のデザイン」になっているかどうかです。前進感が積み上がると、メンバーの自己効力感や挑戦意欲が維持されやすくなります。そのためリーダーは、週次・隔週など一定のリズムで”確認→承認→次の一手”を回し、課題が出たときは責めるのではなく、障害除去と意思決定(優先順位の再設定)に集中することが求められます。
目標設定とモチベーションのジレンマ
チームやプロジェクトの目標を設定することも、リーダーの役割の一つです。メンバーとの意思統一を図り足並みを揃えるためには、目標設定がとても重要になります。メンバーや部下の目標がどこに向かうのかを明確にし、短中長期の目標・優先順位・手段体系などを整理します。リーダーが立てる目標は、会社が打ち出している中長期計画やサービス指針にリンクする形が理想的です。
しかし、論理的かつ合理的に整理されたスマートな目標に、メンバーは本当に動機付けされるでしょうか。それだけでは、想定以上の目標達成は難しいでしょう。メンバー各人が「できそうだ」「面白そうだ」「いけそうだ」と感じる、感情的かつ非合理的な思いや意識への紐づけが必要です。
つまり、全体からブレイクダウンすると個人の自主性や仕事の意味付けとの間で必ずジレンマが生じることは避けられません。そのため、設定した目標への合意形成を行ったうえで、全員で仕事や役割分担も含めて権限移譲していきます。メンバーが目標をクリアしていくことで会社全体が活性化していくイメージを持たせることができると、チームは高いモチベーションを維持できるようになります。
目標設定は「SMARTに書く」だけでは足りません。目標の背景(なぜそれが必要か)と、評価の観点(何をもって良いとするか)まで説明し、納得の土台を揃えることが重要です。弊社ソフィアの調査でも、上司とのコミュニケーション課題として「評価の理由が不明」「方針決定の理由が不明」など、”理由の説明不足”に関する項目が挙がっています。目標と評価の説明責任は、リーダーに求められる役割の一部と捉える必要があるでしょう。
不確実な環境下での計画立案と実行
KPIを達成するために具体的な計画を立てることも、リーダーの役割です。KPIを達成するためにはPDCAサイクルを回すことが一般的ですが、5W1Hが明確になっていなければ効果的に回りません。可視化された進捗管理計画表は、全体の認識を揃える重要なコミュニケーションツールです。
進捗が著しくない時にリーダーが「何とかしろ」と指示を出すことは逆効果です。リーダーの権限で方向性の調整・優先順位の調整・リソースの再配分などを行い、打ち手を明確にしていきましょう。
不確実性が高い環境では、計画は”当てにいくもの”というよりも、”学習して更新するもの”になります。計画変更のたびに「何が変わったのか/何は変えないのか」を言語化し、情報の非対称をつくらないことが、部門横断のプロジェクトほど重要になります。
チーム組織と風土づくり
チームやプロジェクトチーム、職場は、日々の業務活動の中で知らず知らずのうちに、そこで働く人々の振る舞いや言動・感情心理から「規範」を生み出しています。規範とは集団における暗黙の価値基準であり、組織内での行動の基準として影響を与えます。
また、プロジェクトを形成する場合は、自分の部署のメンバーだけでなく、部署をまたいでチーム編成することもあります。これまで一緒に仕事をしたことがないメンバーとプロジェクトを行う際には、意図的に風土づくりを行う必要があります。
心理的安全性は、チームが対人リスクを取っても安全だという共有信念として定義され、学習行動や成果にも関係します。リーダーが「反論・質問・失敗報告」を歓迎し、非防衛的に受け止める姿勢を示すことが、風土づくりの起点になります。弊社ソフィアの調査でも、上司とのコミュニケーション課題として「反論しにくい雰囲気がある、心理的安全性が低い」といった項目が挙がっています。風土づくりは”いい雰囲気”の話ではなく、成果に必要な学習行動を起こせる状態をつくる経営・人材開発課題として捉えるべきでしょう。
部下の模範となり伴走する姿勢
リーダーによるコミュニケーションは、職場全体のコミュニケーションに強く影響します。そのためリーダーは、部下の模範となる行動を取ることが求められます。模範となる行動を取ることで、指示やアドバイスに説得力が生まれます。
模範とは「姿勢」だけではなく、「説明の透明性」も含みます。評価や意思決定の理由を言語化し、重要情報を後出しにしないことが、信頼の前提になります。
人財育成と啐啄同時の関わり方
チームを組織するためには、メンバーの個性や特徴、将来目指しているキャリアパスなどをリーダーが把握しておく必要があります。リーダーがメンバーの長所を伸ばし、短所を改善するような体制を組むことで、組織力の向上につながります。メンバーのことを知るためには、日常的な対話や1on1が重要です。
育成は「正解を教える」よりも、「内省と次の行動」を引き出す支援(コーチング)が有効な場面が増えています。コーチングの効果を扱うメタ分析でも、組織文脈での個人アウトカムへの有意な効果が報告されています。
モチベーション維持と感情への配慮
部下のモチベーションを高い状態で維持することも、リーダーの重要な役割です。部下のモチベーションが低い状態では、組織目標やプロジェクトを成功に導くことはできません。モチベーションが落ちているなと感じたら、部下のサポートのために積極的にコミュニケーションを取るよう心がけましょう。
部下の問題や悩みは、コミュニケーションを取らなければ気づけないことも多くあります。リーダーは常に悩みを相談しやすい立場にいること、相談しやすい環境を提供することを意識しておくことが大切です。
リーダーにコミュニケーション能力が重要な理由
リーダーの役割は「決める」「配る」「支える」「育てる」など多岐にわたりますが、その実行手段の多くはコミュニケーションです。Mintzbergの研究でも、マネジャーは文書より会議・電話など口頭媒体を強く選好し、時間の多くを口頭コミュニケーションに費やすことが示されています。現場を動かす立場にあるほど、コミュニケーションは”技能”として重要になります。
リーダーシップ発揮に必要なコミュニケーションスキル
ここからは、リーダーに求められるコミュニケーションスキルの概要を解説します。
コミュニケーションとリーダーシップの不可分な関係
高度に機械化された近代の企業では、リーダーの機能は問題・課題解決が主であり、実務的な内容とは異なります。ヘンリー・ミンツバーグの著書『マネジャーの実像』に記載された調査では、管理者が仕事に費やす時間の多くが口頭でのコミュニケーションや会議に費やされていることが示されています。
しかし、コミュニケーションの訓練は、日本企業では新入社員や若手社員には徹底してトレーニングの機会があるものの、リーダーである上位の社員には思考や知識ばかりのトレーニングが中心になっているケースも多いのではないでしょうか。
弊社ソフィアの調査でも、情報共有や対話(1on1、定期面談、ミーティング等)が施策として挙がっており、リーダーのコミュニケーション設計が組織課題の中心にあることが示唆されます。
対話
対話とは、お互いの立場や意見の違いを理解し、認識のズレをすり合わせることを目的に行うものです。言葉を交わしていても、意味の共有ができていなければメンバーとのコミュニケーションが取れているとはいえません。
対話の質を左右するのは「問い」と「聴き方」です。結論を急ぐ前に、前提(目的・優先順位・制約)を揃える問いを置くと、合意形成が速くなります。
プロジェクトファシリテーション
プロジェクトファシリテーションとは、スムーズなプロジェクト遂行と目的の達成に向けて、あらゆる障害を取り除くために、プロジェクトメンバーの支援や社内外の関係者との調整・折衝を行うことです。リーダーは、プロジェクトメンバーが持てる能力を最大限に発揮できるよう、プロセスへ介入し、プロジェクトチーム内外のコミュニケーションを円滑にする役割を担います。
ディスカッション
ディスカッションとは、特定のテーマに対して議論し、結論を見出すことです。リーダーはプロジェクトメンバーとディスカッションを行い、プロジェクトの軌道修正を意識しながら意思決定を行います。
ディベート
ディベートとは、特定のテーマについて肯定派と否定派に分かれ、それぞれ与えられた役割で一定の時間内に議論することです。「自分たちが正しい」と相手に認めさせることが目的ではなく、論点を整理し、意思決定の質を高めるために活用できます。
ストーリーテリング
ストーリーテリングとは、ストーリーを語ることで相手により深く印象付け、理解を促す手法です。リーダーが取るべきコミュニケーションにストーリーテリングの要素が含まれていると、目標の納得度や主体性が高まりやすくなります。
レトリック
レトリックとは、コミュニケーションの場において情報を発信する側が、受信側を説得したり納得させたりするための手法やテクニックです。巧みな言葉やパフォーマンスで聴衆を動かすだけでなく、誤解を生まないための表現設計にも関わります。
大企業におけるリーダー育成の設計ポイント
大企業では特に、部署間の連携不足・情報共有の分断・評価の納得不足が複合しやすく、リーダー育成は「コミュニケーションの型」を共通言語として持たせることが効果的です。
研修設計の基本ステップ
- 求めるリーダー像(役割・行動)を定義する(例:進捗の前進感、目標合意、風土づくり、育成)
- 現場の課題データ(サーベイ・ヒアリング・IC実態)と結びつける
- 研修(Off-JT)+実践(OJT)+フォロー(1on1/コーチング)をセット化する
- 評価指標(行動指標→組織指標)を先に決める
厚生労働省も職業能力評価や研修カリキュラムのモデルを整備しており、研修を”設計して評価する”考え方は公的にも整理されています。また人的資本経営の文脈では、経営戦略と人材戦略の連動が重要になっており、リーダー育成も事業価値に紐づくテーマとして扱う必要があります。
研修効果の定着策
研修を「受けっぱなし」にしないための定着策として、以下のような取り組みが効果的です。
- 研修後30日以内に、上司同席の振り返り(行動宣言→実践レビュー)を実施する
- 進捗共有の型(週次15分:目的→現状→障害→次の一手)を現場に導入する
- 評価理由の説明テンプレ(事実/期待/次の行動)を標準化する
- 部署間の情報共有ルール(どこに、何を、いつまでに)を決める
まとめ
ここまで、リーダーに求められる役割とコミュニケーション能力について解説してきました。リーダーの役割はたくさんありますが、部下との円滑なコミュニケーションは必要不可欠であり、業務の達成度合いに大きく影響します。リーダーの役割をよく理解し、コミュニケーション能力を向上させることで、組織を成功に導いていきましょう。


