システム導入は事前準備が肝心!そのプロセスを一から解説します

現在、企業が競争力を保つために、ITシステム導入による業務の効率化が不可欠となっています。

一方で、やみくもにシステムの導入を行うと失敗するリスクが高まります。業務に活用できない「使えないシステム」を導入してしまった事例は、世の中に多く存在します。失敗のリスクを低減させるため、システムの導入には入念な事前準備を行うことが重要です。

この記事では、システムの導入に失敗しないために必要となるプロセスについて解説します。

システム導入のプロセス①目的とスコープを定義

システムを導入するためには、どのような機能を設けるのか、どんな画面設計にするのかといった「要件」を定義する必要があります。しかし、いきなり具体的な機能や画面を考えても、本当に業務に活用できるシステムは構築できません。

システム導入の第一歩として、まずは何のためにどんなシステムが必要なのか、目的とスコープ(= システム化の範囲)を定義することから始めるのが一般的です。

  • 目的:なぜシステムを導入するのか
  • スコープ:どの業務をシステム化したいのか

例:

  • 目的:テレワークの拡大のため、これまで印鑑を用いていた決裁方法を見直し、遠隔地でも決裁できるシステムを導入する。
  • スコープ:社長の承認が必要な10種類の社内決裁業務

目的とスコープを明確化することで、システム導入の方針を確定します。システム導入における典型的な失敗例として、検討を進める中で「あれもこれもほしい」と機能を盛り込むことで目的や対象にブレが生じてしまい、最終的に必要な要件が満たされていないというケースが多く見られます。そうならないためにも、基本方針を明確にします。

システム導入のプロセス②課題整理

現行業務のどこに問題があるか

目的とスコープを明確にしたら、システム化の対象となる業務について整理します。ここでのポイントは業務のフローチャートを作成すること、そして実際に業務を行っている担当者にヒアリングをすることです。

担当者にヒアリングを行えば、業務の問題点が見えてきます。例えば、上記の例であれば「テレワークの一般化に伴い、押印に時間がかかることがビジネスの妨げになっている」などという声があがるはずです。

現行業務における問題点の解決がシステム導入の目標となります。問題点の解決策は、すなわちシステムに求める要件となります。

ただし、業務上の問題点をすべてシステムで解決することはできません。システムで解決できること・できないことの仕分けが大切です。例えば、複雑な業務や頻繁に実施内容が変化する業務はシステム化に向いていません。システム化が万能の解決策だと思わず、システムと運用を組み合わせて問題点を解決することが重要です。

一般的に、業務の担当者はシステムに多くを求めがちです。情報システム部門などシステム化を推進する立場の方は、業務担当者と認識をすり合わせ、合意を取りながらシステム化の範囲を決めていく必要があります。

費用対効果は出るのか

やみくもにシステムを導入しても、コストばかりが発生して効果は得られません。システムの導入前には、費用対効果の分析が必要です。その際に、費用対効果が高いと示すための数字ばかり恣意的に集めるのはやめましょう。費用対効果が出ない原因としては「解決コストが高い」という可能性もありますが、そもそも導入の目的や課題が事業全体において重要度が低く、システムの導入で課題が解決したとしても業績へのインパクトが小さい可能性もあるのです。

費用対効果の分析方法はさまざまですが、一例としてシステム導入にかかる費用とシステム導入により予想されるベネフィットを比較する方法があります。注意すべき点として、システムは導入後も継続して費用が発生することが挙げられます。システムの運用費用も含めて費用対効果を分析するには、例えば、システムの初期費用と5年間の利用料を合わせたコストと、システムが5年間で生み出すベネフィットを比較して投資判断するといった方法が考えられます。
目的(業務における問題)と解決手段(システム導入)のバランスを考えた際に、システムを導入してもトータルでマイナスの効果となるのであれば、導入を見送る判断も必要です。

また、費用対効果を検証するために近年ではPoC(概念実証)と呼ばれる手法も広く取り入れられています。PoCでは、システム化の実現性や効果を検証するために試作開発を行います。試作開発したシステムを一定期間社内で運用した結果、効果が認められれば本番開発を行います。これによって、たとえPoCの段階で効果が認められなかったとしても、少ない損失でシステム導入に見切りをつけることができます。

システム導入のプロセス③要求定義

要求定義とは「システムに求める要望をベンダーに伝えるために言語化する」作業を指します。ばくぜんとした要望を口頭で伝えるだけでは、ベンダーはシステムを導入することはできません。

例えば、「場所を問わずにインターネット経由で承認が行えること」「承認を行える権限者を当社社員のうちから任意に設定できること」「決裁フローを画面から任意に設定できること」といったシステムに求める具体的な要望を伝えるのが要求定義となります。

システム導入のプロセス④ベンダーの調査と選定〜ベンダー依存からの脱却〜

要求定義と並行して、システムを構築するベンダーを調査・選定します。普段から付き合いがあるベンダーがいればそちらに依頼するのが簡単ですが、初めてシステムを導入する場合は慎重にベンダーを選ぶべきです。

システムの良し悪しはベンダーの力量によります。実力のないベンダーへの発注は、納期や品質面でのリスクがあります。

可能であれば、複数のベンダーに提案と見積を依頼し、比較評価の実施をおすすめします。比較評価を行うことで、コストの比較はもちろんベンダーの実力も確認できるからです。

ベンダーの選定においては、「共に歩めるパートナーであるか」という観点も大切です。システム開発は、発注側とベンダーがお互いにコミュニケーションを取りながら、協力して進めていく必要があります。

例えば、自分たちに足りない視点を提案してくれる、あえて耳の痛い話をしてくれるベンダーは、より良いシステムを共に作り上げられるパートナーとなりえるでしょう。

システム導入のプロセス⑤要件定義

ベンダーが決定したら、実際にシステム導入を具体化していく要件定義の段階に入ります。課題の分析をもとに、システムに求める要件を定義します。
ポイントは、要件が業務上の問題点を解決できる内容になっていることです。システムはあくまで手段であり、システムが課題解決につながっていることが重要です。

システム導入のプロセス⑥システム開発の管理〜スケジュールとベンダーの管理〜

ベンダーを選定したら発注し、システム開発のプロセスに入ります。ベンダーは要求された内容に基づいて要件定義を定め、システムを設計・開発します。一般的にはシステム開発はベンダーへの請負契約となり、発注側はベンダーから定期的な進捗報告を受けることになります。

発注者は、システムが当初の予定通りのスケジュールで完成するよう、ベンダーを管理していく必要があります。

システム導入のプロセス⑦試運用〜使えないシステムの導入を避ける〜

ベンダーがシステムを完成させたら、必ず試運用のフェーズを設けます。開発されたシステムが当初計画した要件に沿ったものになっているか、さらにはシステムの導入目的に合致しているかを確認します。この際、必ず実業務の流れの中でシステムを利用してみて、業務での利用に問題がないことを確認します。

確認の結果、要件に沿っていない部分を発見したら、ベンダーに改善を要望します。ただし、ベンダーが対応するのは要件定義で定めた範囲のみです。たとえ業務で利用する上で問題のあるシステムであっても、要件定義で定めていない内容については契約上ベンダーに対応する義務はありません。

「使えないシステム」の導入を避けるため、現行業務の課題整理と要件定義を正確に行っておくことが重要です。

システム導入のプロセス⑧システムのリリース

試運用を行った結果、問題がなければ実業務にシステムを導入します。システムリリースにはイレギュラーや失敗がつきものです。よって、リリース時の連絡フローや、リリース作業が失敗した場合のリカバリーについて事前に検討しておくべきです。

システムのリリース直後はバグが多発します。システムのリリースが完了した後も、システムの正常稼働が確認できるまでは、ベンダーと発注側は体制を組んでチェック作業を行います。

システム導入のプロセス⑨効果測定〜効果が無ければ廃止・改善も検討〜

システムを導入し、一定期間運用を行った後に効果測定を実施します。システムの導入により当初想定していた効果が実現できているか、できていないのであれば何が問題でどのように改善すべきかを検討します。

システムにはランニングコストが必要となり、たとえ活用できていなくても稼働させているだけで無駄なコストが発生します。効果を上げておらず、改善の見込みもないシステムは早期に廃止や改善を検討した方が良いでしょう。

まとめ

この記事では、システム導入のプロセスについて解説しました。システム導入は、目的ではなく手段です。システムを導入して業務の効率が向上したり、ビジネスモデルが変化したりしてはじめて成果が出たと言えます。システムの導入後も継続して検証・改善を行っていくことが重要です。

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山口 孝弘

新規システム導入時や、既存システムのリプレイス時などのシステムコンサルティングが得意です。Microsoft365の利活用支援やSharePoint上へのポータルサイト、WEB社内報の構築をお手伝いします。

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