インターナルコミュニケーション

インターナルマーケティングはなぜ必要?社員を動かす戦略と成功事例

目次

「経営方針が現場に浸透しない」「DX推進の旗を振っても、社員が動かない」——多くの大企業で、こうした悩みが深まっているのではないでしょうか。

総務省のデータによれば、情報流通量は爆発的に増加しており、社員は日々膨大な情報洪水の中にいます。もはや「通達すれば伝わる」時代は終わったと言えるでしょう。顧客に対して緻密なマーケティングを行うように、社員を「社内顧客」と捉え、戦略的にアプローチする「インターナルマーケティング」の必要性がかつてないほど高まっています。

この記事では、組織課題の解決を支援するソフィアの知見に加え、弊社ソフィアの調査による最新データや、業務効率化の視点も交え、組織を内側から変革するための理論と実践手法を徹底的に解説します。

インターナルマーケティングが必要な理由とは

情報爆発社会における「伝わらない」リスク

現代のビジネス環境において、企業が直面している最大の見えないリスク、それは「情報の不達」です。

総務省がとりまとめたデータによると、日本のブロードバンド回線契約者のデータ流通量は、2017年頃より送信・受信ともに急激な伸長を見せています。私たちが扱う情報の量は、一時代前と比べると格段に増加しているのです。

この情報量の爆発的増加は、社内コミュニケーションにおいても同様ではないでしょうか。メール、チャット、社内ポータル、オンライン会議と、社員が処理すべき情報は限界を超えています。かつてのように「通達を出せば全員が読む」という前提は、もはや通用しないと言えるでしょう。

そんな中、各メディア企業や一般企業のマーケティング担当者は知恵を絞り、さまざまなテクノロジーを駆使して「いかに自分たちの発信する情報を届けるか」日々しのぎを削っています。しかし、情報を届ける対象を顧客ではなく社員に置き換えて考えたとき、はたして会社が発信した情報は、対象の社員全員に届いていると言えるでしょうか。そして、その発信の効果をしっかりと実感できていますでしょうか。

社員を「社内顧客」として捉える発想の転換

ここで重要になるのが、「従業員満足度(ES)の向上」を超えた、「インターナルマーケティング」という考え方です。

企業が社員に情報発信を行う際には、「その情報を受け取ることで社員に何を考えてほしいのか、どう行動してほしいのか」という目的があるはずです。確実に目的を達成するためには、情報の受け手である社員をマーケティングの対象としてとらえる「インターナルマーケティング」の手法を取り入れる必要があります。

インターナルマーケティングとは、単に社員を満足させる福利厚生の充実だけではありません。平たく言うと、「従業員を内部顧客(インターナル・カスタマー)と見なし、企業のビジョンや戦略という『商品』を買ってもらう(=共感し、行動してもらう)ための活動」と定義できます。

例えば、顧客の思考や行動を分析し、製品・サービスの認知から購入、リピートといったエンゲージメント向上のシナリオを「カスタマージャーニーマップ」として描くように、社内においても社員の意識や行動に着目して「エンプロイージャーニーマップ」を描くことが有効です。

インターナルマーケティングや、エンプロイージャーニーマップについて、詳しくは下の参考記事をご覧ください。

また、インターナルマーケティングの究極の目的は、顧客満足度(CS)の向上と、企業の利益向上にあります。従業員満足度が高まることでサービス品質が向上し、それが顧客満足度を高め、最終的に業績アップにつながるという「サービス・プロフィット・チェーン」の好循環を生み出すことが、この戦略の本質です。

この記事では、組織マネジメントを支援するソフィアの知見を踏まえ、具体的な事例を交えながら効果的なインターナルマーケティングについて解説していきます。

インターナルコミュニケーション うまくいかない 理由

経営層と現場の認識のズレ

ソフィアがお客様企業のインターナルコミュニケーションやインターナルブランディングを支援するなかで、「インターナルコミュニケーションがうまくいかない、効果をいまひとつ実感できない」といったお声をよく耳にします。

なぜ、多くの企業で社内広報やインターナルコミュニケーションが機能不全に陥るのでしょうか。その根本原因は、発信者側の「甘え」にあると考えられます。

企業は顧客をはじめ協力会社や取引先、株主、地域の人々など、さまざまな関係者(ステークホルダー)に対して、自社にとって望ましい意思決定や行動を促すため、より効果的にコミュニケーションを図ろうと試行錯誤しています。しかし、情報の発信者と受信者、という点では社内も社外も共通しているのにもかかわらず、社員に対しては「読んで当然」「わかって当然」と情報の発信者である経営層や管理部門側が認識している状態が多く見受けられます。

この「わかって当然」というバイアスこそが、組織の分断を生む元凶ではないでしょうか。社員は日々、目の前の業務に追われており、経営層が考えるほど会社の全体戦略に関心を払う余裕はないのです。

VUCA時代に求められる「ベクトルの統一」

市場環境の変化のスピードが速く、先行きの見えない「VUCAの時代」と言われる現代において、企業が柔軟に変化に適応して生き残っていくには、会社と社員のベクトルが同じ方向を向いていなければなりません。
企業が事業を展開する際に、実際の現場で事に当たり理念や戦略を具体化していくのは社員です。その理念や戦略に対して会社の発信するメッセージが一人ひとりの社員にしっかり伝わっていなければ、社員は期待される役割を果たすことができないのです。

組織においてインターナルコミュニケーションが重要であると会社側が認識していても、発信する側が伝えたいことのみをただ発信し、通り一遍の施策を実施するだけで終わる場合も多々みられます。

しかし、インターナルコミュニケーションを成功へ導き、社員に経営の意図を確実に理解・認識してもらうためには、マーケティングの発想で「ターゲット」と「手段」をとらえることが大切です。以下でさらに詳しく見ていきましょう。

【エビデンス】弊社ソフィアの調査に見る組織の「分断」実態

ここで、現在の日本企業が抱えるコミュニケーション課題の実態を、データに基づいて確認してみましょう。

弊社ソフィアの調査「インターナルコミュニケーション実態調査2024」によると、従業員数1,000名以上の大企業において、組織内のコミュニケーション不全が浮き彫りになっています。

調査結果からは、特に以下の課題が深刻であることが明らかになりました。

「戦略が響かない」現実:経営戦略に対して「共感している」と回答した社員は、わずか1割程度にとどまっています。これは、どれほど立派な中期経営計画を策定しても、現場の社員の心には届いていないことを示唆しています。

部門間の壁(サイロ化):コミュニケーション課題を感じている対象として最も多かったのが「部門間」(58%)でした。次いで「部門内_上司と部下」(51%)、「経営陣と社員」(42%)と続きます。

この「部門間の壁」は、イノベーションを阻害する最大の要因です。
隣の部署が何をしているか分からない、協力体制が築けないという状況は、組織全体のパフォーマンスを著しく低下させます。インターナルマーケティングは、こうした組織の「縦割り・横割り」の壁を、共通のビジョンと情報共有によって解消する役割も担っているのです。

情報を届けたい相手(ターゲット)を知ることから始めよう

ターゲット不在の情報発信からの脱却

顧客向けにマーケティングを行う際には、情報発信するメディアやコンテンツなどの手段をターゲットに合わせて的確に使い分けることが重要です。そして、これはターゲットが社員である場合も同じことが言えます。

ソフィアがさまざまなお客様企業を支援するなかで、経営層やコーポレート部門の担当者から 「企業のビジョンや経営方針がなかなか社員に浸透しない」 「(DX推進、働き方改革など)社員の意識・行動変革に取り組んでいるが、なかなか成果が出ない」 といった相談をよく受けます。しかし、一般的な社員の立場に立って考えてみると、いくら会社から沢山の情報を受け取ったとしても

  • 自分が考えたことでも、やりたいことでもないため興味・関心度が低い
  • 未知の情報がたくさん入っていて理解が難しい
  • 現在の自身の業務とあまり関係性が感じられない

などの理由から「とりあえず受け取っておしまい」になるのも無理はないでしょう。ぎっしり情報が詰め込まれたファイルを、メールやイントラ経由で突然送られ、「読み込んで、当事者意識を持ち、行動せよ」と言われても、日々の業務に追われている社員からすると迷惑な話で、つい後回しにしてしまうのです。あなたの職場でも、思い当たる節はありませんか?

7Pフレームワークを活用した多角的分析

社員を深く理解し、適切な施策を打つためには、マーケティングのフレームワークを活用することが有効です。具体的には、サービスマーケティングで用いられる「7P」の要素をインターナルマーケティングに応用することで、施策の抜け漏れを防ぐことができます。

7Pの要素 社内向けへの応用(インターナルマーケティング)
Product (製品) 経営理念、新戦略、業務システム、働く環境そのもの
Price (価格) 社員が支払う労力、時間、変化へのストレス、心理的コスト
Place (流通) オフィス、イントラネット、会議室、リモートワーク環境
Promotion (販促) 社内報、社内イベント、1on1、表彰制度
People (人) 経営陣、管理職、同僚、キーマン(インフルエンサー社員)
Process (プロセス) 評価制度、業務フロー、意思決定プロセス、研修制度
Physical Evidence (物的証拠) オフィスの内装、ノベルティ、経営計画書のデザイン、表彰状

 

単に社内報(Promotion)を出すだけでなく、評価制度(Process)やオフィス環境(Physical Evidence/Place)も含めてトータルで設計しなければ、社員の行動変容は起きません。

会社の理念やビジョン、方針や戦略を社員に理解してもらい、共感してもらい、それらの実現・実践に向けた行動を促すためには、ターゲットとなる社員のことを深く知ることが必要です。まずは、情報の受け手がどのように働き、何に興味を持ち、どのような情報を求め、どこから情報を得ているのかを、アンケートやヒアリング、観察などを通じて理解しましょう。

社員によって受け取りやすいメディア・コンテンツの形は異なる

ここまで、ターゲットを知ることの重要性についてお伝えしてきました。では、具体的にどのようなメディアやコンテンツが効果的なのでしょうか。

プライベートでのメディア接触の変化

博報堂が2021年1月に発表の若年層に向けた「生活者のメディア環境と情報意識」レポートによると、2010年時点で人々が最も接触していたメディアがテレビであったのに対し、2020年ではスマホがその位置にとって代わっています。

特に男性で40歳代以下、女性で30歳代以下の層が最長接触メディアとしてスマホを利用し、全年齢層でメディアへの接触時間が2010年に比べ長くなっています。
また、40代では男性と比べて女性の方がテレビへの接触時間が長い等、年齢や性別などの属性により情報取得時のメディア利用状況に差が見られます。スマホの普及で情報源としてのメディアに選択の幅が拡がり、それぞれのライフスタイルや情報取集の目的に応じてメディアを使い分けている様子が、ここからうかがえるでしょう。

同調査によれば多くの人がFacebook、Twitter、InstagramなどSNSの複数のサービスを目的に応じて使い分けており、とくに若年層の女性はInstagram、中年層はFacebookなど、属性による利用率の違いがみられました。

なにより、「情報やコンテンツは好きなときに見たい」「SNSでライブ動画を見たり、配信したりする機会が増えた」という人が増加しており、情報取得に対する態度が受動的であった以前と比べ、能動的なものへと変化していることが見て取れます。

社内メディアの「アップデート」が必要

これらのことから、会社では情報に対して受動的な社員も、プライベートではさまざまなメディアを使いこなしており、能動的に情報の受発信行動を行っていると考えて良いでしょう。
上記の調査では年代や年齢によってメディアやコンテンツの利用状況が異なることがわかりましたが、たとえ同じ世代であっても新しいサービスの登場や流行によって、利用するメディア・コンテンツは変化していきます。

そのため、インターナルコミュニケーションにおいても、定期的に社内のメディア・コンテンツの利用状況を調査し、「ターゲットが受け取りやすい情報発信」の経路や手段を更新していく必要があるのです。

例えば、ecbeing社の事例に見られるように、店舗スタッフ向けに「visumo snap」のような投稿ツールを導入し、スタッフが自ら発信できる環境を整えることは、現代の社員の「能動的な発信欲求」を満たす優れた施策です。
一方的な通達ではなく、社員自身がコンテンツクリエイターとなれる仕組みは、エンゲージメント向上に直結します。

社内の情報発信やインターナルコミュニケーション施策に効果を感じられないという場合にこそ、今一度初心に立ち返り、

 情報を届けたい相手は誰か(ターゲット)
 そのターゲットに向けた自社の情報発信は適切か(手段と内容)

などの見直しを通じて、ターゲットをあらためて深く認識することが大切です。そのうえで情報発信の在り方を再設計し、社員の実態に即してインターナルコミュニケーションを更新していくことがポイントと言えるでしょう。

社内広報を成功に導くインターナルマーケティング実践に必要な3つのポイント

では、社内における情報発信の在り方を再設計するに当たって、実際どのような点に注意すればよいでしょうか?ソフィアでは、次の3つを重要視しています。

「社員は一人ひとり異なる」ということを知る

インプット・スループット・アウトプットの枠組みで整理する

社員の情報収集スタイルに合ったコミュニケーション手法や表現を考え、精査する

「社員」とひとくくりに言っても、マーケティングの視点で考えればその興味・関心や行動様式は一人ひとり異なります。この章では、適切な情報発信を行い、会社の発信する情報への理解・共感を形成するための具体策を考えていきましょう。

「社員は一人ひとり異なる」ということを知る

前述のように、年代や年齢、時代の流行などによってターゲットに適した情報発信のあり方は異なっており、メディアも多様に存在します。社員の情報に対する感度や接触頻度も一定ではありません。若手だからといって全員の情報感度が高いとは限りませんし、その逆もあります。

情報を発信する側は、わかりやすく30代男性営業職、40代後半女性総合職、といったようなセグメントに分けて考えがちです。

しかし、そのセグメントにいる人は、みな同じような人でしょうか。周囲の人に目を向けてみてください。同じような属性だからといって、同じような人ということは決してないでしょう。

もちろん、経験年数や経験職種によっては、行動特性や価値観が似てくることもあるでしょう。しかし、それが同セグメント全てに共通するわけではないことは念頭に置くべきです。

社内広報やインターナルコミュニケーションにおいても、年代や職種などの属性だけでなく、社員の意識や行動に着目して一人ひとり異なった向き合い方を検討していかなければなりません。
実際にご自身がプライベートで情報収集するシーンを思い浮かべてみると、スマホには個人個人の好みに合わせてカスタマイズされた情報が手元に届くのが当たり前になっているのではないでしょうか。

これと同じように、本気で社員の心をつかみたいのならば、一人ひとり異なる興味・関心や行動パターンを持った個人としての社員に目を向け、それぞれに合った情報が、受け取りやすい形で届くようにするべきだと言えます。

インプット・スループット・アウトプットの枠組みで整理する

的確な情報流通の枠組みを設計するには「ターゲットに情報をどうインプットするのか」だけでなく、インプットした結果としてのアウトプットまで、明確に想定しておくことが大切です。

換言すれば、どのようなメディアでどのようなコンテンツを発信し、どんな状況でそれらが受信されることを想定するのか。これに対しどういう反応を期待し、その結果社員の意識や行動にどのような変化をもたらしたいのか、そしてその成果をどのように把握するのか、という一連のストーリーです。

【 インプット→スループット→アウトプット 】 を意識し、ターゲットに応じて話者や表現手法などに工夫を凝らすことで、現実の行動に結びつけるストーリーを組み立てましょう。

ターゲットごとに受け入れやすいインプットを検討

社員の意識・行動にどのような変化をもたらしたいのかを明確にし、社員が受け入れやすいインプットの仮説を立てることで、実施すべき施策が明確になっていきます。

ここで意識したい点は、情報の受け入れやすさは人によって異なるということです。動画やインフォグラフィックが見やすい・読みやすい・わかりやすいとされるかもしれませんし、社長と外部有識者の対談が社員の関心を引くケースなども存在します。

インプットされた情報への理解を深める、スループットのプロセスを設ける

前述のインプットに対して自らの考えを話したり・周囲の意見を聴いたりするプロセスがスループットです。これは、インプットで受け取った情報に対する理解を深め、当事者意識を醸成することに寄与します。スループットを行わずして、いきなり行動せよ、結果を出せ、というのは、あまり現実的ではないでしょう。

スループットの段階では、一方的な発信だけでなく、「対話」の場を作ることが重要です。日立製作所やラクスルの事例では、デジタルツールを活用して社員がアイデアを共有したり、意見交換を行ったりする場を提供することで、イノベーションを促進しています。

結果としての意識・行動の変化(アウトプット)が生じる環境を作る

そして、最終的にはそれらの結果として期待されるアウトプットとしての行動や実践を促します。個の業務における実践の場はもちろんのこと、業務範囲を超えての提案や自らの考えを元に活動をする機会を提供することも、アウトプットにつながります。
これらのアウトプットをゴールとして設定すると同時にインプットの結果がどれだけのアウトプットをもたらしたのかを把握するための方法と、定量的に計測できる指標(KPI)をあらかじめ設定しておくことで効果測定と改善につなげることができます。

社員の情報収集スタイルに合ったコミュニケーション手法や表現を考え、精査する

繰り返しになりますが「情報の受け取りやすさ」というものは人によって異なります。媒介する手段や、「誰がその情報を伝えるのか」などによっても受け取り方に差が生じます。すべての社員に必ず伝えたい情報であれば、必要に応じてターゲットごとに異なるコミュニケーション施策を講じることも重要な方法です。

受け手に適した情報発信の手法は、社歴や年齢層、地域、部署や職種といった属性だけでなく、趣味嗜好やなじみやすいメディアなど、ターゲットの意識・行動の傾向によっても変わります。あくまで一例ではありますが、意識すべきポイントと伝わり方の差についての例をご紹介します。

●どの媒体で伝えるのか(メディア特性)
 例)新聞でニュースを読むのは苦痛だが、テレビならすんなり理解できる

●誰が伝えるのか(話し手による関与度の差)
 例)アナウンサーと有識者ばかりが出てくる真面目なニュース番組はちょっと疲れるが、自分の好きなお笑いタレントがニュースに関して真剣に話しているものは頭に入りやすい

●どのように伝えるのか(スムーズに伝わる情報設計)
 例)一方的に話されるニュースは耳を通過していくだけでも、時事ネタ漫才など会話形式になっていれば、共感し、問題意識をもって聞くことができる

●どのように伝えるのか(信頼性の担保)
 例)冗漫で下世話なおしゃべりは敬遠するが、エビデンスのあるロジカルな資料があれば聞く耳を持つ

など、訴求したいターゲットを意識したうえで適切なコミュニケーションのスタイルを組み上げていくことが大切です。その際に使用する媒体とコンテンツは主に下記の通りです。

メディア 特徴と活用法
紙メディア ニュースリリースや社内報など、文章をしっかり読んでもらいたい場合に適した媒体です。写真や図表を活用することで社員の目を引くビジュアルに編集し、内容への理解を促すことが可能です。
Web(イントラネットやPC) 動画や参照リンクなどを多面的に活用することができ、セキュリティが担保された社内ネットワークを用いれば、漏えいが心配される内容を取り扱うこともできます。また、閲覧履歴などを用いて、社員のメディア接触度を測ることも可能です。
Web(モバイル) いつでもどこでもアクセスしやすいため、速報性があり、緊急時の一斉配信などにも適しています。気軽なアンケートなどを実施しやすく、普段の業務にPCを使わない社員との双方向コミュニケーションにも利用しやすいため、活用価値が高い手段です。
掲示 場所ごとにあわせた情報提供ができます。人の集まる場所に掲示することで、掲示に関することを話題にするなど、リアルな場での情報交換につなげられることも強みです。
ミーティング 深く密度の濃い情報の提供や共有、議論に向いています。対面やビデオ会議での口頭のコミュニケーションよりも文字メディアの方が意見を述べやすい、という人にはビジネスチャットを利用する手段もあります。

 

業務効率化としてのインターナルマーケティング(DXの視点)

ここまでは情報伝達の観点からインターナルマーケティングを見てきました。では、視点を変えてみましょう。インターナルマーケティングは、情報の伝達だけでなく、業務環境そのものを改善する活動も含みます。特に近年では、BtoB EC的思考による業務プロセスのDXが注目されています。

「働きやすさ」という商品を社内顧客へ

インターナルマーケティングの視点では、社内システムや業務プロセスも「社員に提供する商品(Product)」です。これらが使いにくければ、社員のエンゲージメントは低下してしまいます。

ecbeing社の知見によれば、インターナルマーケティングを実践し、従業員の満足度や業務効率を高めるためには、業務プロセスそのものの見直しが欠かせません。

特に、BtoB ECサイト(受発注システム)を導入することで、現場の業務負担を大幅に軽減し、働きやすい環境を実現した企業の事例が増えています。

具体的には、社内の備品発注や経費精算、申請業務を、AmazonなどのECサイトのように直感的で使いやすいUI/UXにする。これだけで社員のストレスは大幅に軽減され、「会社は働きやすさを提供してくれている」という信頼(ロイヤルティ)につながります。

また、チャットボット(FAQ自動応答)を導入してバックオフィスの問い合わせ対応負荷を減らす、動画マニュアルで教育コストを下げる、といった施策も、広義のインターナルマーケティングです。これらは「コスト削減」と「従業員満足度向上」を同時に達成する有効な手段となります。

【インターナルマーケティングの実践事例】アクセス解析で社員の興味・関心を分析し、ターゲット別のコンテンツを発信する

ソフィアが支援を行ったある企業(単体1,500名、グループ20,000名の社員数)では、グループ横断での新規事業コンテストが行われていました。
実施すれば常に一定数の応募があるものの、いつも同じような顔ぶれが並ぶことに、担当者は問題意識を持っていました。

そこでソフィアは、これまでとは異なる社員に興味を持ってもらうためにも、インターナルマーケティングの手法を生かし、社員の好奇心や持っている潜在力を引き出す新たな取り組みを提案しました。

まずは、新規事業開発に関するウェブマガジンをイントラネット上に立ち上げるとともに、どんな社員がどのようなことに興味を持ち、どのような閲覧行動をしているのか、解析ツールを用いて分析を行いました。
事務局側が発信したいことをそのまま出すのではなく、ユーザーの行動から受信者である社員の興味関心や、見やすい・読みやすいコンテンツのあり方を探ったうえでコンテンツを設計し、事務局が発信したい情報をそこに載せていく、というアプローチです。

データに基づいたセグメンテーション配信

ウェブマガジンへのアクセス解析の結果、「時間に余裕はないけれども、会社の新しい取り組みには興味を持つ」という層が一定数いることが明らかになりました。そこで、彼らに向けて、より深く取り組みの裏側や背景を知ってもらうために、関係者の対談を動画で配信。時間がない人たちということがわかっているので、動画には音声なしでも見られるように字幕をつけたり、短いサマリー動画をつくったり、文字起こししたテキスト記事も一緒に配信しました。

一方、「興味はあるけれども、そこまで深く関わる気がない」というセグメントに対しては、まずサイトに親しんでもらうことを目標に、イラストを活用しました。イラストとアニメーションを多用した親しみやすいコンテンツで、事務局の考えていることや、有識者の発言・アドバイスを伝えることで、コンテンツへのアクセスと内容への理解を促進したのです。

このようにターゲットの興味や行動様式を勘案しながらコンテンツを設計・発信するとともに、興味を引くメールマガジンなども併用したことで、閲覧者数が飛躍的に上昇し、幅広い社員を新規事業コンテストへの参加へと導くことができました。

【まとめ】

ここまで、インターナルマーケティングの必要性と実践方法について解説してきました。

まとめると、インターナルマーケティングとは望ましいアウトプット=行動を想定して、それを実現するプロセスを構築することです。そして、このプロセスにおいて社員にとって受け取りやすいインプットを設計し、スループットの場を提供することが重要になります。

「うちの社員は受け身だ、受動的だ」と愚痴をこぼしていても、問題解決にはいたりません。受け身にさせている原因は、会社からの情報発信の問題である場合も少なくないからです。社内のことだから、という枠組みを一旦外して、社員を「会社が発信した情報を受け取ることによって何らかの意識・行動の変化が期待されるターゲット」ととらえ直し、マーケティング視点でコミュニケーション設計を考えることが大切です。社内広報やインターナルコミュニケーションのあり方を見直して、より望ましい情報流通と、発信された情報に対する社員の理解・共感の促進を目指していきましょう。

私たちソフィアは、これまで多くのお客様企業の組織のあり方を見てきました。培った数多くの知見を駆使して、組織がより良い方向を向いて進んでいけるよう、貴社をサポートいたします。お困りの際は、どうぞお気軽にお問い合わせ、ご相談ください。

お問い合わせ

よくある質問
  • インターナルマーケティングと従業員満足度(ES)向上の違いは何ですか?
  • インターナルマーケティングは「従業員満足度向上」含め、従業員の行動変容やブランド体験の向上までを広くカバーする考え方です。単なる満足度調査や福利厚生の充実にとどまらず、「自発的な行動」や「企業価値向上」までを目指します。 

  • 小規模な企業でもインターナルマーケティングは必要ですか?
  • 規模に関係なく、従業員のモチベーションや組織一体感は重要です。小規模企業こそ、トップと現場の距離が近い強みを活かしやすく、効果的に取り組めます。 

    逆に言えば、トップのメッセージが直接届きやすい環境だからこそ、マーケティング的な工夫(伝え方の工夫、タイミングの設計)を行うことで、大企業以上のスピードで組織変革を進めることが可能ではないでしょうか。 

  • どのような手順で導入すればよいですか?
  • 一般的には以下の3ステップで進めます。 

    1. 目的を明確にする:「何を売っているのか(どのような価値観や行動を浸透させたいのか)」を機能ではなく価値で定義します。 
    2. 共有の仕組みを作る:社内説明会、イントラネット、社内報など、ターゲットに合わせたチャネルで繰り返し伝えます。 
    3. 体験させる:実際に顧客の声を聞いたり、新商品を試用したりする機会を作り、「腹落ち」を促します。