1on1ミーティングで「話すことがない」ときの対策と有意義なテーマ
最終更新日:2026.04.22
目次
企業内研修や組織開発担当者にとって、1on1ミーティングで上司と部下が「話すことがない」という状況は深刻な課題です。
1on1は本来、部下の成長支援やエンゲージメント向上を目指す対話の場ですが、形式的に進めるだけでは効果が得られません。
本記事では、1on1で話す内容が不足する原因を整理し、具体的な対策と話題例を示します。
人事部門や研修担当者は、本記事を参考に、1on1が「意味のある対話」になる仕組みづくりを推進してください。
1on1ミーティングの目的
1on1の目的は、部下の成長を支援することです。
部下は日常業務の中で、様々な成功と失敗を体験しています。部下が体験したことについて、考えていることや成功要因・失敗要因などについて話し合い、部下の成長を促進し、支援することを1on1ミーティングで行います。
部下の話を聞いて、業務やキャリアの振り返りを実施し、部下が持つ悩みや課題への解決策のアクションプランを立てたり、上司からサポートをしたりすることで、納得感を持って次の行動を促すことができるでしょう。
部下が成長することで、「上司・部下間の信頼関係の構築」、「目標の達成力の向上」、 「部下の自律的なキャリア支援・エンゲージメントの向上」といった様々なメリットを組織・上司は受けることができます。
また、組織によっては上にメリットとして挙げたような目的を掲げている場合もありますが、部下が成長することによる副産物である場合がほとんどです。
なぜ1on1で「話すことがない」に陥るのか
なぜ1on1で「話すことがない」状況に陥るのか、その理由には上司側と部下側で異なる要因があります。まず、1on1ミーティングで「話すことがない」と感じてしまう背景には、目的意識の欠如やコミュニケーションの課題が挙げられます。例えば、上司が1on1の本来の意義を理解せず「ただの時間つぶし」と捉えていたり、部下も「何を相談していいかわからない」と感じているケースです。
では、上司側・部下側それぞれにどのような原因があるのでしょうか。順に見ていきましょう。
上司側が「話すことがない」と感じる原因
上司側が「話すことがない」と感じる原因には、以下のような要因が考えられます。
1on1のやり方が分からない ── 何をどのように話すべきか手順やフローが分からず、会話が途切れがちです(コミュニケーションスキル不足)。
マネジメントスキルが低い ── 指導・評価に偏った関わりになり、部下の本音を引き出せないと感じます。
部下の話を上手く聞き出せない ── 部下との話の中できっかけを見つけられない。
1on1を実施する意義が分からない ── 何のために時間をかけるのか目的が明確でないと、時間の無駄に思えてしまいます。
部下との信頼関係不足 ── 普段からコミュニケーションが希薄で、部下が心を開きにくい状況です。
業務が多忙で準備不足 ── 自身が多忙すぎて話題を考える余裕がなく、1on1の準備がおろそかになります。
上司側のコミュニケーション能力やマネジメント意識の不足が主な原因と言えます。実際、HR総研の調査でも大企業で最も多い社内コミュニケーション課題の要因は「管理職のコミュニケーション力不足」であり、約4割の企業が挙げています。つまり、上司自身のスキル向上が1on1成功のカギとなります。
このように話すことがないと感じている1on1では、ただの雑談や、「最近どう?」「あれどうなった?」といった当たり障りのない対話で終わってしまう効果のない1on1となるケースがほとんどです。対策をするには、それぞれ異なるアプローチが必要になるので工夫が必要です。
部下側が「話すことがない」と感じる原因
部下側が「話すことがない」と感じる原因としては、以下が挙げられます。
1on1の意義が分からない ── 「なぜこんな対話が必要なのか」と理解できておらず、時間を無駄に感じています。
上司への不信 ── 上司を十分に信頼できず、本音を話せない心理的な抵抗感があります。
話すテーマが思いつかない ── 何を話すべきか具体的なイメージが湧かず、頭が真っ白になります。
準備不足・慣れの問題 ── 定期的に重ねるうちに話題が枯渇しやすく、毎回ネタ切れになります。
緊張や苦手意識 ── 一対一で向き合うことに緊張してしまう、また自分の悩みを打ち明けるのが苦手というケースです。
部下の視点では、上司と同様に1on1に対するモチベーションの低さや、そもそも何を話すべきなのかわかっていない、自分のことを話さないといけない苦痛、特に上司を信頼していないがために話したくないと心を閉ざしていることが原因と想定できます。
業務以外にも将来のことやプライベートなことなど様々なテーマを話していい機会であるからこそ、話すことが分からないというケースも多いでしょう。
部下に本音で話してもらうためにも、上司と部下の信頼関係を構築することが重要です。
1on1で話せる具体的なテーマ例
ここまで、1on1で「話すことがない」と感じる原因を見てきました。では、実際にどのようなテーマを用意しておくと良いのでしょうか。1on1で話すテーマを事前に用意しておくことは、対話を深めるために有効です。以下は代表的なテーマ例です。
成長・キャリアに関する話題 ── 「将来どんな仕事に挑戦したいか?」「今後身につけたいスキルは?」など、部下の目標やキャリアビジョンについて対話します。
目標・業務の振り返り ── 目標設定と進捗確認の時間として、「最近の仕事でうまくいったこと、うまくいかなかったことは?」などを話し合います。
心身の健康・モチベーション ── 「最近残業やプレッシャーは多くないか?疲れていないか?」など、部下のコンディションを気遣う質問をします。
組織・チーム環境 ── 「チームの課題や改善点は何だと感じるか?」「職場で困っていることは?」など、職場環境について本音を聞き出します。
雑談(アイスブレイク) ── 1on1冒頭のアイスブレイクとして、「休日はどう過ごしたか?」「最近のニュースや趣味の話題は?」など、部下がリラックスできる軽い雑談を交えても効果的です。
これらの例を参考に、1on1の目的(成長支援、エンゲージメント向上など)に合わせて話題を選択しましょう。特に信頼関係構築が十分でない場合は、まずアイスブレイクや雑談でリラックスした雰囲気を作ることが重要です。
「話すことがない」場合の対策

「話すことがない」場合の対策は、社内の役割ごとに考える必要があります。誰にでも起こりうる問題ですが、事前の工夫で打開できます。以下では、事務局(人事部門)・上司・部下それぞれの視点で取るべき対策を解説します。
事務局(人事部門)としてできる対策
実施ガイドの提供 ── 1on1実施側と参加側に負担感を感じさせないよう、対話の目的や進め方を周知します。例えば、人事部門が1on1研修やマニュアルを用意し、「なぜ1on1をするのか」を全社研修で説明することで、参加者の理解度が深まります。
テーマ例・ツール提供 ── 具体的な話題例や事例集、アジェンダシートなどのフォーマットを共有し、部下・上司双方が準備しやすい仕組みを作ります。厚生労働省のガイドラインでも、1on1の機会を定期的に設けるとともに、労働者の話に耳を傾けることが奨励されています。
参加者へのフォロー ── 1on1導入初期は特に、参加者の反応を集めて改善します。担当者がアンケートを取る、個別にヒアリングするなどして、「話すことがない」原因を把握し、研修カリキュラムに反映させましょう。
上司としてできる対策
上司側の対策として、以下の6つが重要です。まずは①〜③で土台作り、④〜⑥で準備・進行の工夫を行います。
① 信頼関係の構築
1on1で気兼ねなく対話をするには、お互いの信頼関係が前提として必要です。
十分な関係性が構築できていないと、「変なことを言って怒られるのではないか」「呆れられるのではないか」という不安が拭えず、自由な発言ができなくなってしまいます。
部下との信頼関係を築くためには、日ごろから言動に配慮し、部下を的確に観察して必要に応じてサポートをすることが重要です。挨拶やコミュニケーションを怠らずに行うことも大切にしましょう。
② 傾聴の姿勢を見せる
傾聴とは、真摯な姿勢で相手の話に耳を傾けて「聴く」技術であり能力です。傾聴で重要なのは、「あいづち」や「うなずき」など、しっかり聴いていることが相手にしっかりと伝わる態度と仕草です。
部下の声に耳を傾けるには、部下がどんな気持ちでいるのか、どんな精神状態なのかを見極めることと同義です。言語や話している内容を頼りに、その背景に読み取ることが傾聴です。日本人の場合、自分の感情をなかなか表に出さないのが一般的です。早合点して強引に話を進めるのではなく、相手のペースに合わせながら丁寧に話を深めていくことが重要です。
そのためには、相手の様子をよく見て、その場を察することが大切です。相手が話している間は、完全に聞くことに専念し、他のことに集中してはいけません。信頼関係が崩れてしまうとコミュニケーションの目的を達成することは難しくなります。
③ 1on1の意味や目的を共有
1on1ミーティングを導入し始めた際に多く見られますが、部下が1on1ミーティングの意味や目的、価値をしっかり理解していないケースがあります。上司から1on1ミーティングをなぜやるのかについて、自分の言葉で部下に何度も伝えるようにしましょう。
また、上司まかせにするのではなく、企業の人事担当者も積極的に働きかける必要があります。1on1ミーティングを行う意義について集合研修やeラーニングを通じて浸透させるなど、全社的な対策を行うことをおすすめします。
④上司から自己開示する
相互理解を進める上でポイントになるのが、自己開示を行うことです。一方的に聞いているうちは、部下は本音で話してくれない場合があります。自分の話も交えて話すことで緊張感を解き、部下から積極的に話ができるような場を作りましょう。ただ、プライベートのことを聞かれるのを嫌がる従業員もいるので無理やり聞くようなことはないように注意が必要です。
⑤ 綿密な事前準備を行う
1on1は自由な話題が特徴の「対話」ですが、「雑談」ではないことを意識しなければなりません。そのためにも、事前に前述した話題例を参考に、議題やアジェンダをざっくりと組んで、それに沿って進める必要があります。だらだらとした雑談ではなく、メリハリのある対話にするためには、タイムキープ用の時計を用意し、時間をしっかり守ることも重要です。
しかしながら、回数を重ねていくと話題が切れてしまうこともあるかもしれません。そうした際には、過去の1on1を振り返るのも1つの手です。以前話した内容に関して、進捗はどうか、悩みはないかなどを確認すると良いでしょう。
1on1が成功したのかどうかは、端的に言ってしまえば部下の本音を引き出せたかどうかですが、1on1に馴染みのない部下は、上司と二人きり=指導の場とネガティブなイメージを抱きやすく、部下が緊張や警戒をしている状態では本音を言い出せなくなり、その分話も深まりづらくなってしまいます。
⑥ 完璧にやろうとしない
1on1ミーティングでは、最初からスムーズに会話が進むことはほとんどありません。
上司側は、効果的なコミュニケーションとフィードバックのスキルに関して、時間をかけて学んで実践の機会を設けていく必要があります。どのようなアジェンダが部下の興味を引くのか、日々、1on1ミーティングを通じて、試行錯誤しながら検証していきましょう。
また、1on1ミーティングの中で部下の要望をすべて解決したり、的確なアドバイスをその場で提供したりすることは難しいでしょう。重要なのは、お互いのニーズや要望をしっかり伝え合う中で、「解決できることと、解決できないこと」、「支援できること、支援できないこと」などを確認していくことです。
表面的に取り繕うのではなく、「すぐに回答やアドバイスはできない」など正直に部下に伝え、正直で透明性のある開かれたコミュニケーションを、1on1ミーティングを通じて実現していきましょう。「一緒に考えてみよう」という姿勢で、部下と同じ立ち位置で対話をすることも、時には必要です。
上記の対策を実践すれば、1on1の空白時間を減らし、より有意義な対話につなげることができます。
まとめ
1on1ミーティングで「話すことがない」状況は、目的の共有不足・信頼関係の欠如・コミュニケーションスキルの不足など、複数の要因が絡み合っています。対策としては、人事部門がガイドや研修を整備し、上司が信頼構築・傾聴・準備を徹底することが重要です。弊社ソフィアの調査でも、大企業では1on1を活用する企業が増えており、うまく活用できている企業は部下の自主性やエンゲージメント向上を実感しています。今一度、1on1の意義を組織で共有し、紹介した対策やテーマ例を参考に、意味のある対話を実現しましょう。


