
2025.05.30
コンフリクトとは?ビジネスの現場における原因と活用方法を徹底解説

目次
ビジネスの現場では、意見の対立や価値観の違いが生じてしまうことは避けられません。このような対立を「コンフリクト」と呼び、適切に対応しなければ生産性の低下やチームの分裂を招いてしまうかもしれません。しかし、コンフリクトは単なる衝突ではなく、正しく管理すれば新たなアイデアやイノベーションを生み出す重要な要素にもなります。
本記事では、コンフリクトが発生する原因や、その解決方法、さらにはビジネスの成長に活かす方法について詳しく解説します。適切なコンフリクトマネジメントを実践し、組織の成長につなげましょう。
コンフリクトとは?
ビジネスの現場では、意見や価値観の違いから対立が生じる場合があります。これを「コンフリクト」といい、一般的にネガティブなものとして捉えられてしまいがちですが、すべてのコンフリクトが悪影響を及ぼすわけではありません。適切に管理し、活用することで、組織の成長やイノベーションにつながる可能性があります。
ビジネスにおけるコンフリクトの定義
ビジネスにおけるコンフリクトとは、業務上の目標や役割の違いから生じる対立や緊張を指します。これは、個人レベルから組織全体に至るまで、さまざまな場面で発生します。業務の進め方に関する意見の相違や、チーム間のリソース配分を巡る対立などが挙げられ、こうしたコンフリクトをうまく管理することで、組織の生産性向上や新たな価値創造につなげることが可能となります。
ビジネス現場でよく見られるコンフリクトの例
異なる立場や役割を持つ人々が協力しながら業務を進めるビジネスの現場では、さまざまなコンフリクトが発生します。
- 新規プロジェクトの優先順位をめぐるマネージャー同士の対立
- 営業部門は市場のニーズに応じて迅速に対応したいと考える一方、開発部門は品質を優先し、慎重な進行を求めることから生じる意見の食い違い
- 部署間での予算配分において、限られたリソースをどの部門にどれだけ割り当てるかを決める際、利益貢献度や事業の優先度に対する認識の違いから生まれる摩擦
- チーム内のあるメンバーに仕事が集中しすぎる、役割が不明確なまま業務を進めることで不満が高まり協力体制が崩れるといった、業務負担の偏り
このように、ビジネスの現場では日常的にコンフリクトが発生し、それを適切に管理することが求められます。
ビジネス現場でコンフリクトが発生する原因
ビジネスの現場では、さまざまな要因によってコンフリクトが発生します。主に 条件の対立、認知の対立、感情の対立 の3つに分類できます。
条件の対立
組織内では、限られたリソースの配分や意思決定の権限をめぐり、競争が生じることがあります。人員や予算、役職の割り当てなどに不均衡が生じると、メンバー間の対立につながることがあります。
- 昇進をめぐる競争
複数の社員が同じポジションを希望するが、選考基準に納得できない人が出てくることで、不満や摩擦が生じる。 - 部門間のリソース配分の不均衡
新規事業の拡大に伴い、一部門に予算が集中し、他の部門が適切な支援を受けられないことで不満が募る。
認知の対立
人はそれぞれ異なる経験や価値観を持っており、その違いが意思決定や戦略の対立を引き起こすことがあります。業務の進め方や優先順位に関する見解の相違が、衝突の原因になることが多いです。
- 上司と部下のリスクに対する考え方の相違
上司は安定した運営を重視し慎重な判断を求めるが、部下は積極的なチャレンジを重視し、意見が対立する。 - 営業とマーケティングの方向性の違い
営業部門は短期間での売上向上を求めるが、マーケティング部門はブランド戦略を重視し、長期的な視点で施策を打ち出すため、意見が食い違う。 - 上司の指導スタイルが原因での摩擦
厳しい指導をする上司に対し、部下が過度なプレッシャーを感じたり、評価に対する不満を抱いたりすることで、関係が悪化する。 - チーム内の不信感による衝突
プロジェクトの進行中に責任を押し付け合うようになり、互いに不満を抱くことで、コミュニケーションが停滞し、業務に支障をきたす。
感情の対立
組織内の対立には、単なる意見の違いではなく、個人的な感情が関わることもあります。ストレス、不信感、誤解などが要因となり、関係が悪化することで業務にも影響を及ぼす可能性があります。
ビジネスにおいてコンフリクトが今重要な理由
現代のビジネス環境では、組織内でのコンフリクトが避けられないものとなっています。その背景には、人材の流動化、価値観の多様化、ハラスメントへの意識向上、業務の複雑化といった要因があります。
かつては長年同じ職場で働くことが一般的で、「阿吽の呼吸」による意思疎通が可能でした。しかし、転職が一般化し、異なるバックグラウンドを持つ人材が集まる現代では、価値観の違いが生じやすく、明確なコミュニケーションが求められます。また、労働に対する意識も変化しており、従来の「長時間労働=努力」という価値観は薄れ、多様な働き方が尊重されるようになりました。この変化に適応しない企業は、社員との認識のズレが生じ、対立の火種となる可能性があります。
さらに、ハラスメント問題への意識が高まり、以前は見過ごされていた発言や行動が問題視されるようになりました。これにより、職場内での適切な関係性構築が必要不可欠になっています。また、業務内容が多様化し、マニュアル外の対応が求められる場面が増えたことで、業務の進め方や役割分担を巡る対立も発生しやすくなっています。
これらの要因を踏まえると、コンフリクトは避けるものではなく、適切に管理し、解決策を見出す能力が企業にとって不可欠です。
ビジネスにおいてコンフリクトはむしろ歓迎すべきもの
コンフリクトは、組織やチームの成長を促す重要な要素です。対立や意見の衝突は一見ネガティブに思われがちですが、適切に管理すれば新たな発見や改善につながります。リモートワークの普及などにより意見の違いが表面化しにくくなっている今こそ、意図的に対話を生み出し、健全なコンフリクトを活用することが求められます。
学習する機会としてのコンフリクトが必要
心理学において、「コンフォートゾーン」「ラーニングゾーン」「パニックゾーン」という概念があります。人はコンフォートゾーンにとどまると現状に満足し、学習や成長が停滞します。これを抜け出し、学びや挑戦が生まれるラーニングゾーンに移行するためには、適度なストレスや対立、つまりコンフリクトが必要です。
組織やチームも同様で、長年の慣習や固定化した考え方を続けると、イノベーションを起こすことが難しくなります。そこで、コンフリクトをあえて活用し、議論や対話を促すことで、新たなアイデアや改善策を生み出す機会とすることが重要です。
コンフリクトがないと葛藤や不満が表面化しない
リモートワークやオンライン会議が普及した現代では、対面のコミュニケーションが減少したことによって、社員同士の衝突が起こりにくくなりました。一見すると職場の雰囲気が穏やかで、問題が少なくなったように感じるかもしれません。
しかし、実際には、不満や意見の食い違いが表面化せず、チームの課題が見過ごされるケースが増えています。この状態が続くと、組織の改善が進まず、社員が積極的に意見を発信しなくなる悪循環に陥ります。その結果、「静かな退職」が起こり、企業の生産性や競争力が低下してしまうのです。
コンフリクトが起きたとき日本人はそれを回避する傾向にある
日本人はコンフリクトが発生すると、対立を避ける傾向が強いとされています。これは、調和を重視し、問題を大きくしないよう配慮する文化に起因しています。直接的な対決を避け、暗黙の了解や非言語的コミュニケーションによって解決を図ろうとする人が多いためです。
フッサールの現象学では、人が共通の認識を持つことの重要性が問われました。わたしたちが同じ物事を認識できなければ、相互理解が難しくなるという考え方です。フッサールは、純粋で誤解のない認識を共有することが、学問やコミュニケーションの基盤になると唱えました。この考え方は、日本におけるコンフリクトの回避傾向にも通じており、共通の認識を重視する文化が、対立を未然に防ぐ行動へとつながっていると考えられます。
「コンフリクトを避ける」ことによるビジネスにおける機会損失
ビジネスにおいて、「対立を起こさないようにする」態度は、消極的でリスクを負わずリターンも少ない意思決定に陥りがちです。大きなビジネスチャンスが訪れた際、それにより既存の事業へのリソース配分が少なくなるからと、その反発を避けることを理由にチャンスを逃すわけにはいきません。
共通の認識を持つことによる配慮と調和を大事にすることはもちろん、同時に、場合によってはコンフリクトを厭わない態度を意識的に持つことが必要です。極端に言えば、コンフリクトを避け安全な策を取る競合企業に対して、コンフリクトを生みながらもそれを解決し、新たな取り組みを推進することでこそ差別化を図ることができるのです。
コンフリクトを起こさせるようなマネジメントの重要性
リーダーには、コンフリクトを適切に管理しながら、組織の成長を促す役割が求められます。単に対立を避けるのではなく、「健全なコンフリクトを意図的に生み出すマネジメント」が必要です。たとえば、ヘッジファンドブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオは、徹底した意見交換の文化を組織に根付かせることで、社員が自由に主張できる環境を作りました。同社では、アンケートや相互評価を活用し、社員同士の意見の差異を数値化することで、対話の活性化を促進しています。
このように、リーダーは積極的に対話を生む問いかけを行い、それをフォローする姿勢を持つことが重要です。コンフリクトをうまく活用すれば、組織の課題が明確になり、新たなアイデアが生まれる環境を構築できます。単なる対立を恐れず、成長の機会としてコンフリクトを受け入れることが、組織の未来を切り開く鍵となるでしょう。
ビジネスにおけるコンフリクトマネジメントとは?
コンフリクトは、ビジネスの現場で避けては通れないものですが、適切な管理によって、組織の成長やイノベーションにつなげることができます。
そのためのフレームワークとして有名なのが、心理学者のケネス・W・トーマスとラルフ・H・キルマンが提唱「二重関心モデル」です。このモデルは、コンフリクトの解決において「自分の意見・利害」と「他者の意見・利害」のどちらをどの程度重視するかを基準に、5つの対応スタイルに分類しています。
それぞれのスタイルには適した状況があり、状況に応じた適切な選択が求められます。

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コンフリクトに対する5つの反応
コンフリクトが発生した際、人はさまざまな方法で対応します。代表的な5つの反応として、「回避」「強制」「服従」「妥協」「協調」が挙げられます。ここではコンフリクトに対する5つの反応を紹介します。
【回避】
コンフリクトをあえて解決せず、衝突を避ける選択です。対立が業務に大きな影響を及ぼさない場合や、解決にかかるコストが高すぎる場合には、効果的な対応となることがあります。軽微な意見の相違を深掘りせず、議論を最小限に留めることで、無駄なエネルギーの消耗を防ぐことができます。
しかし、根本的な問題が未解決のままだと、後々より深刻なトラブルへと発展するリスクが高まります。短期的なトラブル回避には有効ですが、組織の長期的な健全性を考えると、必要な場面では向き合う姿勢も求められます。
【強制】
自らの意見を貫き、相手を納得させることで対立を収束させる方法です。リーダーシップを発揮し、意思決定を迅速に行う場面では有効で、競争が求められる状況や、短期間での結論が必要な場合に適しています。企業の大きな戦略転換時には、トップが強い意志を持って決断し、組織を牽引することが求められます。
しかし、この手法を頻繁に使用すると、周囲との信頼関係が損なわれたり、メンバーの意欲が低下したりする可能性があります。強制的な決断を下す際は、相手の意見を聞き入れる余地を残すバランスが必要です。
【服従】
相手の主張を優先し、自分の意見を控える対応です。組織の秩序を維持し、スムーズな業務運営を確保するために用いられることが多く、上司と部下の間では、指示に従うことを求める場面もあります。企業の危機管理対応などでは、リーダーの決定に迅速に従うことでチームの機能を最大限発揮できます。
しかし、服従が常態化すると、個々の創造性が損なわれたり、意見を言えない環境が生まれたりする可能性も出てきてしまいます。トップダウンの決定が必要な場面では効果を発揮しますが、適度な意見交換の機会を確保することが組織の健全性を保つ鍵となります。
【妥協】
双方が一定の譲歩をすることで、中間的な解決策を見出す方法です。お互いの主張をぶつけ合うのではなく、歩み寄ることで対立を収束させるアプローチであり、比較的早く合意を形成できる利点があります。典型的な例として、価格交渉の際、売り手と買い手の希望価格の間を取って調整することがあげられます。
ただし、妥協はあくまで部分的な合意であり、根本的な問題の解決には至らないこともあります。短期的には有効ですが、長期的な視点では、双方がより満足できる解決策を模索することが求められます。
【協調】
お互いの意見を尊重しながら、最適な解決策を見つけるアプローチです。単なる妥協ではなく、対話を通じて双方にとって有益な結論を導き出すことを目指します。異なる部署が新しいプロジェクトの方向性について議論する際は、それぞれの視点を尊重しながら意見を組み合わせることで、より創造的な解決策を生み出すことができます。
この方法は時間がかかるものの、組織の信頼関係を強化し、長期的な成果につながる可能性が高いです。とくに、イノベーションが求められる場面では、積極的に協調を図ることが成功の鍵となります。
ビジネスにおいてコンフリクトマネジメントを活用するには?
コンフリクトマネジメントを活用することで、組織内の摩擦を単なる対立ではなく、成長や改善の機会に変えることができます。不満の可視化、対話の場の設計、スキル向上、ビジョンの共有といった取り組みを通じて、健全な議論を促し、チームの結束力や生産性を高めることが可能です。しかし、コンフリクトを単に解決するだけでは不十分です。次に、コンフリクトをイノベーションへとつなげるための考え方と具体的な手法について探っていきます。
企業”不”満足度調査
一般的な企業満足度調査とは異なり、意図的に不満点を引き出す設計の調査を実施します。たとえば、すべての選択肢をネガティブなものに設定することで、社員が不満を具体的に表現せざるを得ないような構成にします。こうした手法を用いることで、組織内に潜在している不満や摩擦を明確にし、改善のための議論を促進できます。
データフィードバックと提言の機会
不満を把握するだけでは意味がなく、それに対する経営層のフィードバックが不可欠です。データを公表し、経営層がそれに対するコメントを行うことで、社員の声が届いているという実感を持たせることができます。逆に、不満を吐き出す場を設けながら、それに対して何の反応も示さないことは、社員の学習性無気力につながります。そのうえで、社員が経営層のコメントに対して直接意見を述べられる場を設けることで、双方向の対話を実現し、組織全体でのコンフリクトマネジメントを推進できます。
徹底的な対話の場
不満を自由に話せる文化を醸成し、それが評価に影響しないことを保証する場を作ることが重要です。そのためには、グランドルールを設定し、不満を吐き出すこと自体が推奨される環境を整える必要があります。さらに、客観的なデータをもとに議論を進めることで、感情的な対立ではなく、建設的な意見交換を促進できます。短期的な解決策に頼るのではなく、継続的に対話ができる機会を設けることが組織全体の健全な発展につながります。
傾聴・ディベート・ディスカッションスキルの向上
コンフリクトを前向きな議論へと変えるためには、単に意見を述べるだけでなく、相手の立場を理解しながら対話するスキルが必要です。相手を否定することなく、課題を論理的に議論できる能力を組織全体で向上させることで、コンフリクトが単なる対立ではなく、学びや成長の機会へと変わります。普段からディスカッションやディベートを取り入れ、コミュニケーション能力の底上げを図ることが重要です。
ビジョンメイキング・ゴールの再設定
組織内のコンフリクトを解決するためには、個々の意見の対立を超えた「より大きな目的」や「共通のビジョン」が必要です。チームとしての理想の姿や目指すべきゴールを常に共有し、全員がその方向に向かうことで、コンフリクトを単なる意見のぶつかり合いではなく、成長の機会へと変えることができます。リーダーが明確なビジョンを提示し、メンバーが自らの価値観や目標を発信できる環境を整えることが不可欠です。
まとめ
コンフリクトは、ビジネスの現場において避けるべきものではなく、適切に管理すれば組織の成長やイノベーションにつながる重要な要素です。意見の衝突や対立は、新しい発想やより良い意思決定を生み出す機会となります。問題の本質を見極め、建設的な対話を促すことで、単なる対立ではなく、組織全体の発展へとつなげることが可能です。コンフリクトマネジメントを活用し、チームの協力体制を強化することで、より柔軟で強い組織を構築することができるでしょう。

株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
株式会社ソフィア
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ソフィアさん
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