経営ビジョンの作り方とは?生き残る会社に必要なビジョン作成のポイントを解説

世の中の変化のスピードが速く、将来の不確実性が高い現代において、企業の経営ビジョンの重要性がこれまで以上に高まっています。経営ビジョンのない企業においては、今後事業を行っていく上で、ビジョンの作成が不可欠でしょう。また多くの企業で、何年も前から掲げられてきたビジョンは時代に合わなくなり、経営ビジョンの見直しが求められています。
しかし、現状の延長線上で安易にビジョンを描いても、ステークホルダーからの共感を得られず、ビジョン実現に向けた社員の動機付けも困難です。また、経営ビジョンが適切に運用されなかった場合には、社員をはじめとするステークホルダーの信頼を失う等、かえってマイナスの影響を及ぼす場合もあるため、注意が必要です。
本記事では、会社が生き残るための鍵となる経営ビジョンを作成する際に押さえておきたいポイントを解説していきます。

経営ビジョンの必要性

そもそも、なぜ企業は経営ビジョンを策定する必要があるのでしょうか。はじめに経営ビジョンの必要性について解説します。

経営ビジョンとは?経営理念との違い

経営ビジョンとは、企業が向かうべき理想の姿に進むために描く方向性や将来像を指します。経営ビジョンは内外環境の変化に合わせて柔軟に変えて行く必要のあるものです。
一方、経営理念とは、企業の経営に関する考え方や価値観を意味します。なぜその企業が世に存在するのか、なぜ企業が経営を行うのかを明文化したものです。
経営ビジョンこの経営理念に基づいて作成され、その多くは「いつまでにどういった姿を目指して活動していくか」という時間軸を含んでいます。

なぜ経営ビジョンが必要なのか

現代は、Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字をとった「VUCA」の時代と呼ばれています。簡単にいえば「先が読めない」時代です。
そのため、ビジネスにおいて絶対的な成功の方程式は存在しませんし、これまでの成功体験をもとに経営戦略を立てたとしても成功するとは限らず、状況が刻々と変わる中で計画も柔軟に素早く変更することが求められます。そのため、まずゴールとなる未来の状態を定めておき、さまざまな施策を試しながら目標にたどり着くことを目指す必要があるのです。これは、ありたい姿(ビジョン)から逆算していまやるべきことを考える、バックキャスティングという考え方です。

経営ビジョンがなければ、現状を起点としてこの先のシナリオを描くことしかできません。しかし、経営ビジョンで将来ありたい姿が描かれていれば、不確実な状況であっても「ありたい姿」に至るまでのさまざまなシナリオを描くことができ、成功に向けて試行錯誤することが可能です。

こういったい理由から、先の読めない時代において、経営ビジョンの存在は不可欠です。経営ビジョンをもって社員や投資家などのステークホルダーからの信用を勝ち取らなければ、企業はいつか存続の危機に直面するかもしれません。

経営ビジョン作成の注意点

経営ビジョンの重要性についてご理解いただけましたでしょうか。ここからは、実際に経営ビジョンを作成する際の注意点を3つ解説します。

経営理念をベースに考える

経営ビジョンは、経営理念に基づいて、経営理念の実現のために策定される方向性や将来像のことです。経営理念と経営ビジョンとに繋がりを感じられない場合、ステークホルダーから「経営の理念・方針に一貫性がない」と捉えられる恐れがあるので注意しましょう。

変化を前提に考える

経営理念は大きく変わらないものですが、経営ビジョンは時代や経営状況の変遷によって変化しうるものです。ましてや不確実性の高い現代においては、変化することを前提とした経営ビジョンの策定が必要です。

例えば10年単位で経営ビジョンを策定しても、いまの時代、10年で内部・外部環境のいずれも全く変わらないということはまずないでしょう。中には、3年から5年のスパンで経営ビジョンを策定し直す企業も存在します。環境の変化に合わせて策定し直すことも視野に入れながら作成していきましょう。

ステークホルダーの感情を動かす「その企業らしい」言葉を選ぶ

経営ビジョンはあくまで方向性を示すものです。こうありたいという姿、理想像がイメージできれば、必ずしも詳細な手法論(戦術や計画)にまで落とし込む必要はありません。
ただし、抽象度が高すぎて自由な想像が可能な言葉だと、受け手がどう解釈すべきか迷ったり、間違った解釈をされて誤解を招いたりすることもあります。自社ならではのユニークな言葉を用いて、受け手の中に具体的なイメージが湧く表現を心掛けましょう。

例えば、 ソフトバンクグループ株式会社の「300年間成長し続けるグループ」の「300年」は具体性が高く、ただ「成長し続けるグループ」とするよりイメージを抱きやすくなります。また、同社の「次の時代を担う後継者の育成」も具体的でわかりやすいものです。

社内外の誰もが理解しやすい言葉で経営ビジョンを作ることで、広く浸透しやすくなるのです。

経営ビジョンの作り方

当然ですが、経営ビジョンは過去や現在ではなく未来を描くものです。しかしこの不確実性の高い時代において、未来を描くことは極めて困難です。このジレンマを常に念頭に置きながらビジョン作成を進める必要があります。

以下に、経営ビジョンの作り方を具体的に解説していきます。

自社を取り巻く現状の環境を分析する

まずは未来を想起するために、環境分析を行っていきます。
未来は必ずしも現在の状況の延長線上にあるとは限りません。将来の自社の姿は、自社をとりまく環境の影響下で変化していくものなので、ビジョンを描くための環境分析を行う際にもそれらを含めて検討する必要があります。

市場の環境分析にはさまざまな手法があります。

  • PEST分析(マクロ環境分析を行うマーケティングフレームワーク)
  • 5フォース(競合他社や業界全体の状況と収益構造を明らかにし、その中で自社の利益の上げやすさを分析するフレームワーク)
  • 3C(市場・顧客、競合、自社の3つのCから企業を取り巻く環境を明らかにし、今後の経営戦略を導き出すフレームワーク)
  • バリューチェーン(製品の製造や販売、開発や労務管理などの活動を価値のある連鎖として捉え、競合と比較して強み・弱みを分析して事業戦略の改善策を探るフレームワーク)

上記は、多数ある分析手法の中の一例です。自社の業態や組織に合った、使いやすい手法を選んで分析を行っていきましょう。

分析結果とあわせて未来を予想する

シンクタンクや戦略コンサルティングファーム、メディア、リサーチ会社などからは、世界や日本の情勢や経済の予測、市場の動向、この先予定されている主なイベントなどの情報が定期的に発信されています。環境分析と合わせて、こういった未来に関する情報や仮説、また中長期的な予測などを収集して整理しておきましょう。また、メディアのオピニオンリーダーが語る事例や意見もときには有益です。

環境分析と並行してこれらの情報も収集したうえで、あわせて議論し、未来を予測してみましょう。

将来の社会課題やニーズを予想する

想定した自社の事業領域における将来を予測する中で、対象としている顧客層にとって必要なこと、喜ばれること、社会的課題として解決されるべきことなどを挙げていきます。3年後、5年後はある程度具体的に予想できるかもしれませんが、10年後のイメージとなるとおそらく曖昧模糊となるはずです。それでも可能性レベルで構いませんので、社会におけるさまざまな課題を挙げてみてください。

予測した将来で自社が果たすべき役割を考える

予測した未来とそこでの市場や顧客のニーズに対して、自社がどのように価値を提供していくか、期待に応えていくかといった役割を考えます。
ここで行っておくべきは「振り返り」です。新たな経営ビジョンを策定する前に、創業時の企業理念や当初のビジョンは言うまでもなく、それらを策定するに至った背景や現在に至るまでの重大な経営トピックなどを一度整理し、振り返っておくことで、これからあるべき姿を発見するヒントになることがあります。

ビジョンを言語化する

ここまでで経営ビジョンの大枠はできているかと思われますが、関係者内では共通理解があっても、それ以外のメンバーや社外のステークホルダーへは正しく伝わらない可能性が高い状態です。ここからはユニークな表現を用いながら、具体的にイメージしやすい経営ビジョンへと明文化する必要があります。

わかりやすく、簡単で、共感を呼び起こし、ユニークであるものを心掛けつつ、口にしたときの語感にも工夫を凝らしてみましょう。
また、経営ビジョンを刷新した場合は、経営理念との整合性を確認します。経営理念は基本的に大きく変わらないものではありますが、場合によっては時代の変化に合わせて全体を再構築する必要もあるため注意です。経営理念と経営ビジョンの間に齟齬があると、現場の混乱を招いたり、採用などの求人活動で不利になったり、ステークホルダーからの共感を得られなかったりする場合があります。整合性がを十分に取れるよう注意してください。

従業員のインタビューを行う

経営ビジョンは、その会社の社員が行動の指針として参考にするものです。そのため、社員にとって納得できるもの、共感できるもの、心が躍るものでなければ経営ビジョンとしては未完成といえます。作成した経営ビジョンについて社員にヒアリングを行い、社員が組織のあるべき理想像にたどり着きたいと思えるかどうかの確認をしましょう。
なお、経営ビジョンを明文化する前段階で従業員の意見を聞くことにより、経営ビジョンに従業員が参加できたという価値を持たせることができることもあります。しかし、基本的にはビジョンを言語化した後に意見を聞く流れのほうが策定はスムーズです。

社員に浸透させる

経営ビジョンが策定できたら、経営ビジョンに基づいた経営管理や事業活動を行っていきます。経営ビジョンに沿って、あるべき姿へ前進しているという実感こそが、社員への経営ビジョン浸透につながるでしょう。言葉を作って終わりではなく、これらの体験をデザインすることまでが経営ビジョン策定のプロセスに含まれます。

経営ビジョンは、策定すること自体にさほど大きな意味はありません。企業の中には、社員の人数分だけ個人の未来やビジョンがあり、さらにそれを取り巻く、企業の未来やビジョンがあります。つまり、経営ビジョンは組織や構成員に伝えるだけではなく、共感を得て巻き込んで初めて策定した意味があるということです。

浸透しておらず、共感を得ていないビジョンは経営者の妄想に過ぎません。しかし逆に言えば、どんなに高く厳しい経営ビジョンでも、それが浸透し共感を生んでいれば、そのビジョンは妄想ではありません。そして、一見実現不可能と思えるような壮大なビジョンをもし実現することができたなら、その企業は成功者といえるでしょう。

未来に向けたさまざまなシナリオや計画の検討を、経営ビジョンが加速させる

現状において未来を考える上での不確実性は、企業において「計画」や「戦略的」という名の付いた取り組みをほぼ無意味にしてしまうような状況です。数か月先ですら予想のつかない中、いくら経営ビジョンの達成にむけてさまざまな予想をして緻密な計画を立てても確実とは言えず、度々変更を迫られることは目に見えています。

こういった中で組織内に経営ビジョンを浸透する意義は、社員の思考や行動に統制をかけ、一方向に進ませるためでは決してありません。ありたい企業の将来像に対する社員の共感は、目の前の仕事に対する動機づけにつながります。また、ビジョン実現に向けた活動に対して、所属員がさまざまな意見を出し合い、多種多様なシナリオを提案・議論することにもつながります。
不確実な時代において、未来に向けて多様なシナリオを併せ持つことは企業の強みになります。経営ビジョンが浸透していることで、複数のシナリオを検討しながら、状況の変化に応じて最適な道を選び取ることが可能になるのです。

まとめ

ひと昔前までは、経営ビジョンの刷新などはそれほど注力しなくても企業は生き残っていられました。しかしこの「VUCA」の時代、不確実な世の中では企業価値やあるべき姿が社会とともに刻々と変化します。
経営ビジョンを考えることは、市場における自社の競争力や魅力、価値を再確認することにつながります。先が見えないからといって頻繁に変える必要はありませんが、もし最近経営ビジョンがアップデートされていないとしたら、まずは振り返りからはじめてみましょう。

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