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ぬるま湯組織とは?心理的安全性との違いや問題点、対策を解説

「うちの職場、なんとなく居心地はいいけれど、何も変わらない気がする……」そう感じたことはありませんか?それは、あなたの組織が”ぬるま湯状態”に陥っているサインかもしれません。

ぬるま湯組織とは、変化や挑戦を避け、表面的な居心地の良さだけを追求する企業風土のことです。従業員の成長意欲が低くなり、優秀な人材が離れやすいのが特徴とされています。一方、よく混同される「心理的安全性の高い組織」は、安心感のなかで自由に意見交換が行われ、挑戦と学びが促進されるという点で本質的に異なります。

本記事では、両者の違いやリスクを明らかにしながら、リーダーや企業がどのように心理的安全性を高めてぬるま湯化を防ぐかについて、弊社ソフィアの調査データや事例を交えて詳しく解説します。

ぬるま湯組織とは?心理的安全性との違い

心理的安全性が高い職場とぬるま湯組織では以下のような違いがあります。

 【心理的安全性が高い職場の特徴】

  • 対立や意見の食い違いを恐れずに率直にコミュニケーションできる
  • チームメンバー同士がお互いのミスや誤りを受け入れ合い、改善のための議論を行う
  • 目標に向かって情熱を持ち、チーム全体で取り組む姿勢が見られる
  • 学び続ける姿勢が根付いており、新たな知識やスキルを積極的に身につけようとする

 【ぬるま湯組織の特徴】

  • 緊張感のない職場環境
  • 業務に対する関心や責任感の低下
  • 成長や挑戦への意欲が薄れている傾向
  • チーム内の協力やコミュニケーションの不足

ここで問題なのが、ぬるま湯組織には心理的安全性が高い組織と表層的に似通っている部分があることです。そのせいで心理的安全性そのものがネガティブに捉えられてしまうケースもあり、敬遠されがちになっているのも事実です。しかし、こうして見ればこのぬるま湯にこそ、心理的安全性が必要ではないでしょうか。ここでは具体的に、ぬるま湯組織・心理的安全性はどう違うのか見ていきましょう。

ぬるま湯組織とは?

ぬるま湯組織とは、時代に合わせて変化することを恐れ、新規性のあるアイデアやイノベーションに不寛容であり、リスクを取った業務・事業の遂行ができない組織を指します。ぬるま湯組織では、これまでの慣習・慣例を踏襲し続ける現状維持が優先されやすく、時代錯誤なやり方を継続されがちです。このため、生産性が向上しづらく、企業・組織としての成長も発展も停滞していることが特徴です。

また、社員は和を乱すことを嫌って意見・アイデアをぶつけることを回避し、成長意欲が低く挑戦することを回避しがちなことも特徴です。意見をぶつけ合ったり、踏み込んだコミュニケーションを取ったりする必要がないため、ある意味では居心地が良いですが、成長意欲のある社員にとっては居心地が悪く、ストレスのない職場になります。

人事の面でも影響があり、ぬるま湯組織は挑戦・成果を適切に評価しない傾向にあるため、不満・不安を抱いた若手や優秀な人材が離職しやすいことも挙げられます。人材が定着しないため、常に人手不足で非効率な業務体制になっている場合も珍しくありません。

第4次産業の知識集約型産業に移行する現代では、人的資本が重要視される時代になりました。複数の専門性や価値観を持つ多様な人材が集まり、新しいアイデアを出して価値を創造する時代です。つまり、人間同士の活動が中心となり、その活動を行うためには心理的安全性が欠かせなくなっています。良好な人間関係がなければ創造的な活動は難しく、チームや職場において心理的な安定が重要視されています。しかし、心理的安全性をただの良好な関係性と理解すれば、ぬるま湯組織となってしまうのです。

心理的安全性とは

心理的安全性は、1996年に心理学者で心理療法家であるカール・ロジャーズにより提唱された概念です。心理的安全性を簡単に説明すると、「個人の言動に対し、周囲がその発言を恥じたり、拒絶したり、言動を罰したりしないことが確信できる状態」を指します。

心理的安全性は、個人の言動によって人間関係が悪化することのない「チーム全体で共有された信念」といえる状態であり、心理的安全性が高まることによって身体的・認知的・感情的な自分自身を採用(受け入れる・許容する)し、集団内で表現することが可能になる、とエドモンドソンは説いています。

ぬるま湯組織と心理的安全性の高い組織の違い

心理的安全性が高い組織とぬるま湯組織の最も大きな違いは、「安心感の質」と「組織の向かう方向性(ベクトル)」にあります。高い心理的安全性を持つ職場では、自由闊達な意見交換が促され、たとえ意見が対立しても建設的な議論につながり、失敗から学びが生まれます。一方、ぬるま湯組織では表面的な安心感のなかで衝突を避けるあまり意見の対立を見送ってしまい、結果として現状維持が優先されてしまいます。そのため、心理的安全性の高い組織は成長し続ける土台がありますが、ぬるま湯組織では組織成長が停滞し、外的変化への対応が遅れることになります。

具体的な違いを整理すると、以下のようになります。

コミュニケーションの深度:心理的安全性が高い組織では意見交換が活発で反論も歓迎されますが、ぬるま湯組織では表面的な会話に留まり、深い議論は避けられがちです。

フィードバックの質:高心理的安全性の職場では建設的なフィードバックが頻繁に交わされるのに対し、ぬるま湯組織では批判や指摘を避け、ポジティブな面ばかりが強調されます。

挑戦・変化への姿勢:心理的安全性が高いと新しい挑戦やリスクが歓迎される一方で、ぬるま湯組織では現状維持が優先されて挑戦や変化は敬遠されやすいと指摘されています。

組織の成長:心理的安全性の高い組織は失敗から学び続け成長しようとする文化がありますが、ぬるま湯組織は成長の機会が少なく学習意欲が低いため、生産性の向上も見込みにくいという特徴があります。

なぜ心理的安全性が高い組織はぬるま湯組織と呼ばれるのか?

心理的安全性が高い組織では、社員が自由に意見を述べ、挑戦する環境が整っています。これにより、外から見た場合には和やかで穏やかな雰囲気に見えることがあります。一方、ぬるま湯組織も表面上は緊張がなく、意見の対立や衝突が少ないように見えるため、両者が似たような状態に見えることがあります。

また、心理的安全性が高い組織では、社員同士のコミュニケーションや行動によってもその環境が実現されます。一方、ぬるま湯組織では表面的なやり取りが主流であり、まっとうな意見や挑戦が抑制される傾向があります。対面でのコミュニケーションでは、言葉以上に非言語的な要素が重要です。心理的安全性を謳いながらも、実際には表面的な議論やチームの失敗を避ける傾向がある場合、矛盾が見えてきます。個人の意見が押し通されたり、問題を無視する行動が見られることで、表面的には心理的安全性の高い職場に見えても、実は心理的安全性のない職場だということに気づくでしょう。

また、職場内では多様性を重視しつつも、自分の考えを述べることが損になると感じることがあります。このような状況では、本音と建前の間で葛藤が生じ、意見を述べる振りをすることや、挑戦を避ける風潮が生まれます。こうした偽善的な雰囲気が広がると、議論や挑戦が行われず、リスクを取る意欲も低下してしまいます。

心理的安全性を確保し、新しいアイデアを生み出すには、個人が自身の価値観や倫理観を基に、葛藤を引き起こす覚悟が必要です。しかし、これは現実的には難しい状況であり、特に不安定な雇用の中でリスクを冒して発言・行動できる人は少ないでしょう。

ブリッジウォーター・アソシエイツのアイデア能力主義

ブリッジウォーター・アソシエイツは、意思決定において「アイデアの能力主義」を重視しています。これは、最も優れたアイデアが採用されるという考え方です。レイ・ダリオ氏は、「徹底的な真実(正直さ)」と「徹底的な透明性」を重視し、全員の意見を尊重する文化を築いているのです。役職や過去の実績にとらわれず、会議には役員クラスから一般社員までが出席し、意見やアイデアを公開して議論しています。この文化を支えるのが「ドットコレクター」というツールで、率直な意見と透明性を実現し、ブリッジウォーター・アソシエイツの風通しの良い文化と強い組織を築いています。

ブリッジウォーター・アソシエイツのようなヘッジファンドは、1つの意思決定で巨額の資金を動かすため、その責任や高額な給与という前提があります。そのため、目標やタスクの困難さや規模は人的資本を酷使しなければ達成できないこともあります。

各職場やチームでは、タスクの大きさや難易度に応じて、メンバー同士がどこまで踏み込めるかが重要です。しかし、恐れや葛藤から逃げることもあるでしょう。そこで心理的安全性が重要で、透明性や正直さが必要です。心理的安全性を確保することで、チームはより一層進化し、成果を上げることができます。

ぬるま湯組織が生まれる背景と原因

ぬるま湯組織が形成される背景には、組織文化や制度、人事制度などのさまざまな要因があります。たとえば、パーソル社の解説によれば、年功序列制度を採用している企業や、働き方改革で残業を大幅に抑制した結果、働きやすさだけが残りやすい組織ではぬるま湯化しやすいと指摘されています。つまり、努力・成果よりも「いたずらに居心地の良さ」が優先される仕組みがぬるま湯文化を助長するのです。

また、弊社ソフィアの調査でも、大企業では終身雇用や年功序列、人間関係に重きを置く文化が根強く、変化に消極的な意識が見受けられました。多様な意見よりも調和を重視する風土のなかでは、新規提案が避けられやすくなるため、知らず知らずのうちにぬるま湯的な組織風土が形成されてしまう可能性があります。さらに、リモートワークの普及などで非公式コミュニケーションが減ると、組織内の緊張感が薄れ、問題意識の共有不足が顕在化しやすくなるとの指摘もあります。

要するに、ぬるま湯組織は「働きやすさ」を追い求めるあまり変化を恐れ、組織文化が硬直化することで生まれると言えるでしょう。

ぬるま湯組織のリスクと問題点

ここまでぬるま湯組織の定義や成因を見てきました。では、放置した場合にどのような問題が生じるのでしょうか。

ぬるま湯組織がもたらすリスクには、従業員のモチベーション低下、生産性の停滞、イノベーションの欠如などがあります。周囲との衝突を避けて現状維持を続けると、組織は外部環境の変化に対応できなくなり、成果が上がりません。実際、ぬるま湯組織では有能な人材が離職しやすくなることが知られています。パーソル社の分析では、ぬるま湯組織には残業がほとんどなく働きやすい反面、従業員のやる気が低く、仕事にやりがいを感じない人が多くなると述べています。こうした環境では、いわば「ぶら下がり社員」が増え、努力しない社員と同じ報酬を受け取ることへの不公平感から有能な社員は離れてしまう傾向があります。

また、心理的安全性が欠如している組織では、組織全体の学習機会も損なわれます。HRプロによれば、ぬるま湯組織では成長の機会が少なく、失敗から学ぶ文化が醸成されないため、学習意欲が低下する点が大きな問題とされています。これは企業の長期的な競争力の低下にも直結するといえるでしょう。

弊社ソフィアの最新調査でも、大企業の従業員の半数以上が「職場に必要な情報や意見交換が不十分」と感じており、部署間・部門間でコミュニケーションが断絶すると組織力は徐々に失われていく傾向が明らかになっています。情報共有が不足し問題提起が抑制されると、組織は停滞し、結果的にビジネス機会を逃しやすくなります。

まとめると、ぬるま湯組織は表面的な居心地の良さが一時的に得られるものの、組織の活力や成長エンジンを失い、優秀な人材が抜け、生産性が上がらないという大きなリスクを抱えることになります。

ぬるま湯組織にならないように組織の心理的安全性を高めるにはリーダーが重要

チーム・組織の心理的安全性を高めるためにリーダーが重要なのは、昨今の脱工業化が進んだビジネスにおいて、「人」が事業に与える影響が大きなウェイトを占めるようになり、人材に重きを置いた仕事が増えてきているからです。とくに、ITテクノロジーが一般的に普及された現在、データドリブンを用いた意思決定が企業・組織では重要視されていますが、リーダーはデータ分析を行いながら仮説を打ち立て、それらを訴求するアクションを遂行することで、新たなビジネスモデルを世に提起することが求められています。

また、多様性を取り入れながら集団を牽引する能力も必要とされており、チーム・組織においては、異なるバックグラウンドや価値観を持つ人を受け入れ、束ねながら集団を統率しなければなりません。中でも、グローバルな事業・案件を扱っている場合や、異業種のプロフェッショナルが集合して遂行するビジネスの現場において、多様性への対応はリーダーに必要な資質の1つだといえます。

どちらの能力も、現代のビジネスにおいて、ぬるま湯組織にならぬように注意しながら、心理的安全性を高める上で必要です。リーダーとは、チーム・組織の文化や環境を作り上げ、社員が信頼関係を結びながら、安心感を持って働くための環境を築く上で中心的な役割を果たす重要な存在です。つまり、チーム・組織内で心理的安全性を高めるためには、適切なリーダーの育成は企業・組織の課題でもあるといえるでしょう。

心理的安全性を高める方法と対策

心理的安全性の高い職場をつくり、ぬるま湯化を防ぐには、組織内のコミュニケーション文化を積極的に改革する必要があります。具体的には、管理職とメンバー間、メンバー同士の対話を深めるための施策が重要です。たとえば、パーソル社は上司と部下が1on1ミーティングを定期的に行い、お互いの意見を十分に聴く場を設けることで、率直な意見交換がしやすくなると推奨しています。また、会議中は相手の話を遮らず耳を傾ける、否定的な言葉を避ける、相手から学ぼうとする姿勢を示すなどの基本行動も大切です。

コンフリクト(対立)の健全な扱い方

リーダーやメンバーが意見の衝突を恐れず、建設的な議論に昇華できる場を作ることが重要です。具体的には、対立が起きたときに避けず対話につなげるよう促します。衝突が生じた場合には、単に避けるのではなく、お互いの意図や背景を確認し、「なぜ意見が異なるのか」「どんな解決策があるのか」を協力して考えます。争いを不健全に終わらせないよう、議論後には必ずプロセスを振り返り、得られた学びや改善点を共有する仕組みも欠かせません。こうした対処が可能になると、失敗やミスも組織の成長につながる貴重なフィードバックとなります。

自己開示と共感の促進

心理的安全性を高めるには、メンバーが自分の考えや感情を安心して表現できることも必要です。そのためにはリーダー自身が自己開示し、失敗談や弱みを共有して率先垂範することが効果的です。リーダーが先に失敗体験や考え方をオープンにすることで、「誰も非難されない」という空気が作られ、メンバーも次第に心を開きやすくなります。ただし、自己開示はTPOをわきまえつつ、業務に関連する内容を共有することがポイントです(例:新規企画で失敗した経験やそこから得た教訓など)。同時に、共感的なコミュニケーションも重要です。メンバーが話す際には相槌や言葉かけで関心を示し、感情や意見に真摯に耳を傾けます。相手の立場に立ったフィードバックを心がけることで、相互理解が深まり、安心して意見を言える風土が醸成されていきます。

チーム・組織での習慣化

これらの取り組みは一時的ではなく組織文化として定着させる必要があります。日常的に1on1や振り返り会議を行う、成功例・失敗例を共有する場を設ける、意見募集フォーラムを活用するなど、継続的な仕組みづくりが大切です。たとえば弊社ソフィアの調査でも、情報共有のために「定例会議・全社集会」を設けている企業は約半数ある一方で、何ら対策を講じていない企業も約26%存在していることがわかりました。こうした結果からも分かるように、部署横断的なコミュニケーションの仕組みづくりや、メンバー同士が気軽に意見交換できる文化を意図的に構築することは、組織の活性化に直結します。

透明性とフィードバックの徹底

さらに、意思決定や業務プロセスに透明性を持たせ、フィードバックを徹底することも有効です。ブリッジウォーター社のように「アイデア能力主義」を掲げ、優れたアイデアを率直に取り上げる文化を参考にするとよいでしょう。このように組織全体で率直な意見交換が常態化すれば、誰もが挑戦しやすい環境になります。

まとめ

ぬるま湯組織と心理的安全性の高い組織は、表面的な安心感は共通しても、その本質には大きな違いがあります。ぬるま湯組織は安定した環境を維持しますが、変化や挑戦を嫌い、組織成長を阻害してしまいます。一方で、心理的安全性の高い組織は安心感のなかに健全な緊張感を持ち、失敗から学び続ける文化を築くことで、長期的な成長を目指すことができます。

組織開発の観点からは、ぬるま湯組織に甘んじることなく、リーダーが中心となって率直なコミュニケーションと学習文化を育むことが重要です。あなたの職場でも、今日からできる小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

ぬるま湯組織とは?心理的安全性が高い組織との違いについてよくある質問
  • ぬるま湯組織に陥りやすい企業の事例
  • 具体的な企業名を挙げることはできませんが、年功序列が根強い業界や、過度に労働時間を制限する働き方改革を推進した結果、ぬるま湯化が指摘されるケースがあります。制度のあり方と組織文化のバランスを意識することが、ぬるま湯化の防止につながるでしょう。

  • 心理的安全性を向上させる研修・施策
  • 1on1ミーティングの導入や、アサーティブ・コミュニケーション研修、フィードバックの練習ワークショップなどが効果的です。また、弊社の調査では、上司と部下のコミュニケーションの改善がモチベーション向上につながると回答する社員が多いことが分かりました(※弊社調査より)。

  • 部署間の情報共有が不足していると感じた場合の対処法
  • まずは定例会議やタウンホールミーティングなど全社的な情報共有の場を設けることが有効です。弊社ソフィアの調査でも「定例会議・全社集会」を活用している企業は多い一方、約26%の企業では特に施策が実施されていませんでした。まずは小規模でもよいので、部署を超えた情報交換の場を設け、風通しを良くすることから始めてみましょう。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。