社員のSDGs理解を深め「自分ごと化」するワークショップとは
最終更新日:2026.03.09
目次
環境・社会・ガバナンスの3つの観点を含めた投資活動であるESG投資が広がってきていることも、企業がSDGsに取り組む大きな理由になっています。
そのような流れを受け、企業ではSDGsを意識した事業モデル・戦略の推進を可能にするために、SDGsに対する従業員の理解を促進し、SDGsを自分ごととして深く考えられるようにするためのワークショップや研修を行うことが多くなりました。
当記事では、SDGsに対する従業員の正しい理解を促進し、自分ごととして考えてもらうことができるワークショップスタイルのプログラムをいくつかご紹介し、その特徴について解説します。
SDGsワークショップとは
SDGsワークショップとは、従業員がゲームや討議を通じてSDGsを体験的に学ぶ研修スタイルのことです。講義中心の座学研修とは異なり、参加者が能動的に考え、手を動かしながら学ぶため受け身になりません。
SDGsの理念や課題を自ら体感しながら学ぶことで、「わかったつもり」で終わらず深い理解につながる点が特徴です。また、ワークショップ形式は参加者同士の対話や協力を促し、当事者意識を育む効果があります。
長期的かつ抽象度の高いテーマであるSDGsに対しても、体験型のプログラムであれば興味・関心を高め、理解を定着させることができるでしょう。企業研修の現場でも、こうした能動的な学びにより「SDGsを自分ごととして捉える」意識変革を促せる点で、SDGsワークショップが注目されています。
SDGsをワークショップで学ぶメリットは
SDGsワークショップには、企業の従業員教育においてさまざまなメリットがあります。主なメリットをいくつか挙げましょう。
当事者意識が芽生えやすい
体験を通じて学ぶことで、SDGsの課題を自分ごととして捉えやすくなります。グループで課題解決に取り組んだり意思決定を行ったりする中で、「自分たちの行動がSDGs達成に影響する」という実感が得られるのです。
受け身になりがちな講義形式と比べ、参加者に主体性と当事者意識が生まれやすいのが特徴です。
理解が深まり定着する
ワークショップでは単に話を聞くだけでなく自ら考え手を動かすため、知識の定着度が高まります。例えばSDGsの17目標について、自分で調べたりゲームをしたりすることで「なぜSDGsが必要なのか」を腹落ちさせることができるでしょう。
ソフィアの調査でも、社員研修における課題として「受講しても実務に役立たない/活用法がわからない」(25.8%)「内容がつまらない」(22.4%)といった声が上位に挙がっています。ワークショップであれば楽しみながら学び、実践イメージも掴みやすいため、研修内容が現場で活かされやすくなるでしょう。
部署を超えた一体感の醸成
グループワークでは普段接点の少ない他部署の社員とも協力し合います。SDGsをテーマに共通のゴールに向かって議論やゲームに取り組むことで、チームワークや社内の一体感も生まれます。
実際に、ある企業の社内イベントでSDGsビジネスゲーム「ワールドリーダーズ」を実施した際も、普段業務で関わらないメンバー同士がゲームを通じて会話し、協力しながら楽しんでいたと報告されています。このようにワークショップは社員同士のコミュニケーション活性化にもつながるのです。
SDGsワークショップにはどんな種類があるのか
SDGsをテーマに実施されている主なワークショップの種類をご紹介します。研修の目的や参加者の属性に合わせて、さまざまなプログラムが開発されています。ここでは代表的な体験型プログラムをいくつか取り上げます。
いずれのプログラムも体験後の「振り返り」によって学びを深め、自分ごと化を促す設計になっている点が共通しています。
バックキャスティング思考のワークショップ
バックキャスティングとは、まず将来の「ありたい姿(理想像)」を描き、そこから逆算して現在やるべきことを考える思考法です。SDGsの目標(2030年のあるべき姿)を意識して企業のビジョンや戦略を策定する際に、このバックキャスティング思考を取り入れたワークショップが有効とされています。
バックキャスティング型のワークショップでは、以下のような手順で進めます。
将来の理想像を描く
自社にとって魅力的な将来の「ありたい姿」を自由に描きます。SDGs達成に貢献している理想の自社像を、現状の延長にとらわれずに思い描きます。
現状の強み・課題を洗い出す
理想像とのギャップを洗い出すため、自社の強みや課題を整理します。
アクションプランを設定する
時間軸(期限)を設定し、理想像を実現するための具体的な施策や行動計画を逆算で立てます。
SDGsの基本知識をインプットした上でこのワークを行えば、参加者はSDGs達成に向け自社が提供すべき価値を再定義する機会になります。例えば長期ビジョンや経営戦略にSDGsを組み込む際にも役立つ手法です。
なお、バックキャスティング思考を効果的に行うには、現在の市場や競争環境に縛られず大胆に未来を構想する発想力がポイントとなるでしょう。
カードゲーム「2030SDGs」
「2030SDGs」は、一般社団法人イマココラボが提供する有名なSDGsカードゲームです。参加者は2030年までの社会変化を疑似体験しながら、SDGsの必要性を学ぶ内容になっています。与えられた時間カードとお金カードを使ってプロジェクト活動を行い、最終的に様々なゴール(目標)の達成を目指すゲームです。
ゲームの流れとしては、前半と後半の2回に分けてカードゲームによるプロジェクト体験を行い、その間に気づいたことを共有・振り返ります。具体的には以下のようなステップです。
イントロダクション
SDGsの基本説明を受けた後、ゲームのルールを説明します。
ゲームプレイ(前半約8〜11分程度)
参加者はチームに分かれ、カードゲーム「2030SDGs」を体験します。配られた資金や時間を使い、SDGsに資するプロジェクトを模擬的に実行します。
中間共有
前半の結果や感じたことをグループ内で共有します。
ゲームプレイ(後半約10〜15分程度)
条件を変えて再度ゲームを行い、異なる戦略を試します。
振り返りとアクション計画
ゲームを通じて得た気づきを話し合い、自社で取り組むべきSDGs課題や行動計画をチームごとに提案します。ここまで踏み込むことで、ゲームでの学びを実際の自社課題に落とし込むことができるのです。
この「2030SDGs」ゲームの特徴は、楽しみながらSDGsの本質を理解できる点です。ゲームに熱中するうちに「なぜSDGsが必要なのか」「社会とのつながりを自社や自分ごととしてどう捉え直すか」を体感できる設計になっています。
ワークショップ後には「会社として取り組むべきSDGsが見えてきた」「SDGsを身近な自分の行動として考えるきっかけになった」といった参加者の声も報告されています。初めてSDGsを学ぶ社員にもおすすめのプログラムです。
カードゲーム「SDGs de 地方創生」
「SDGs de 地方創生」は、日本政府の「SDGsアクションプラン2021」にも掲げられた「SDGsを原動力とした地方創生」に特化したカードゲーム型ワークショップです。地方創生(地域活性化)という具体的テーマを通じて、SDGsの考え方を学べるプログラムになっています。
参加者はゲームの中で「行政担当者」や「地域住民」といった役割を担い、与えられた限られた時間内で「人口」「経済」「環境」「暮らし」の4指標についてどんなアクションを起こすかを検討します。ゲーム内の各アクションは日本各地の実際の地方創生事例がモデルになっており、地域課題の解決策を体験的に学べるのが特徴です。
参加者は地域の視点からSDGsを考え、課題解決策を模索する疑似体験をします。ゲーム終了後の振り返りでは、「自分なら地域のために何ができるか」という視点でディスカッションを行い、SDGsの地域活用について理解を深めます。
このプログラムは自治体職員向け研修や、地域密着型の企業の社員研修にも適しています。SDGsの目標達成には国や企業だけでなく地方自治体や住民一人ひとりの取り組みが重要であることを実感でき、地域課題の解決に向けた協働の大切さを学べます。所要時間は3〜6時間程度、6〜48名の参加者で実施可能とされており、比較的大規模な研修にも対応できるゲームです。
カードゲーム「SDGsアウトサイドイン」
「SDGsアウトサイドインカードゲーム」は、SDGsをビジネスに統合する視点を学べるワークショップです。従来、企業の事業は自社の製品(プロダクトアウト)や顧客ニーズ(マーケットイン)を軸に考えるのが一般的でしたが、このゲームではさらに一歩先の「社会のニーズ」まで視野に入れて事業を発想する体験ができます。
言い換えれば、自社や顧客にとってだけでなく社会全体にとって価値ある事業とは何かを考えるマインドセットを養うゲームです。
ゲーム内では、会社の持つ資産やノウハウ、プロモーション手段などのカードを組み合わせ、社会課題の解決につながる新規事業アイデアを考えて競い合います。例えば「自社の技術A」と「地域の課題B」を組み合わせてビジネスプランを発案し、SDGsの目標達成に貢献しながら収益も上げられるかを検討するといった内容です。ゲーム終了後には各チームが発案した事業アイデアを発表し、講師や参加者同士でフィードバックを行います。
このワークショップの特徴は、ゲーム感覚で新規事業立案を体験できる点です。楽しさの中にも真剣な議論があり、参加者は夢中になって取り組むことが多いようです。さらに振り返りの場で自社のビジネスと社会課題の接点を言語化することで、深い気づきを得られることが大きなメリットだとされています。SDGsを意識した事業開発や企業戦略の検討に役立つプログラムであり、経営企画部門の研修などにも有効でしょう。
ボードゲーム「Sustainable World BOARDGAME」
「Sustainable World BOARDGAME」は、SDGsの17目標それぞれに対して「自分ならどう貢献できるか」を考えさせるボードゲーム型ワークショップです。ゲームの中で、参加者はSDGsの各ゴール達成と自己成長という二つの目標を同時に追求するよう促されます。
漠然と捉えがちな壮大なSDGsのゴールを身近に引き寄せ、自分自身の成長目標と関連付けて考える設計になっている点が特徴です。
プレイを通じて「持続可能な世界のために自分ができることは何か?」を各自が真剣に考えるため、SDGs達成に向けた主体性の醸成につながります。例えばゲーム内で与えられた課題に対し、「自社の業務でこの課題に貢献するには?」といった観点で解決策を模索するため、SDGsを自分の仕事に照らし合わせて考える力が養われます。
SDGsの本質的な理解には、「壮大な目標に対して自分にできることを具体的に想像すること」が重要ですが、本ワークショップはまさにその訓練となるでしょう。参加者からは「SDGsという言葉は知っていたが、自分の行動と結びつけて考えられたのは初めて」「大きな目標も自分の小さな行動からだと実感できた」という声もあります(※ソフィア研修受講者の声より)。
ボードゲーム「Get The Point」
「Get The Point」は、小学生から社会人まで幅広い層が参加できる、短時間で持続可能性とは何かを考えられるカード&ボードゲーム型ワークショップです。持続可能性というテーマをゲームを通じて学ぶことで、難しい概念も楽しみながら理解できます。
ゲーム自体のクオリティが高くエンターテインメント性があるため、参加者は夢中で取り組むうちにSDGsの考え方に触れられます。
このワークショップでも終了後の振り返りが重要な位置づけとなっています。ゲームで体感したことを振り返り、自分の日常行動にどう落とし込むかを考えることで、学びを実際の行動変容につなげる効果があります。
例えばゲーム内で出てきた環境問題に対し、「明日から職場や家庭で何をしてみようか」といった具体的アクションを各自考えて発表します。短時間のプログラムですが、ゲーム→振り返りのプロセスによって単なる知識習得で終わらない実践志向の学びが得られるよう工夫されています。社員研修はもちろん、社内イベントやSDGs啓発セミナーの一コンテンツとして導入する企業もあります。
なぜSDGsワークショップでは体験と振り返りが重要なのか
SDGsを経営に統合する際には、往々にして管理部門と現場での亀裂が生じます。なぜなら、SDGsと整合性のある業務の進め方をすることで、コストや手間が発生するからです。現場の従業員にとって、本来の業務以外でかかるコストや手間は「厄介事」でしかありません。
亀裂を防ぐためには、決してただの慈善活動ではない「SDGsの取り組み」に対して、社員の共感を得ることはもちろん、SDGsへの取り組みが自社とってどんな価値や利益をもたらすか、理解を促すことが重要となります。そして、SDGsという抽象度の高いテーマにおいて、従業員の正しい理解と、納得と共感を得るには「体験」が必要です。
上記のように、SDGsを推進するには社員一人ひとりの腹落ち感や共感を得ることが不可欠です。座学で方針を伝達するだけでは、「本業以外の手間が増えた」と現場が感じてしまい、経営層との間に溝が生じかねません。
その溝を埋めるには、社員自身がSDGsの意義や自社にもたらすメリットを実感することが重要です。ワークショップはまさにその実感を得る機会を提供します。自ら体験し課題解決を疑似体験することで、「SDGsの取り組みは決してただの綺麗事やボランティアではなく、自社の価値向上につながる」という理解を促せるのです。
体験後には必ず「振り返り」で気づきを言語化し共有するため、参加者同士で納得感を深め合えるのもポイントです。
実際に、前述の各種プログラムはいずれも体験→振り返りによって参加者の納得感や共感度合いを高める設計になっています。例えばカードゲームをした後にディスカッションを行うことで、ゲーム中は気付かなかった視点にハッとしたり、自分とは違う意見に共感したりといった「気づきの深化」が起こります。
こうしたプロセスを経て初めて、社員はSDGsを自らの問題として捉え、日々の業務改善やアイデア創出に結び付けていけるのです。ソフィアが2024年に実施した調査でも、従業員の約1割にとどまり「自社のビジョン・ミッション」に強く共感していないという傾向が見られました。
裏を返せば、多くの社員は会社の掲げる理念や長期目標を自分ごと化できていない可能性があります。しかしワークショップを通じてSDGsという会社の長期ビジョンと自分の役割を結び付けて考える体験を積めば、社員の意識も行動も少しずつ変わっていくでしょう。
また、体験と振り返りを組み合わせた研修は学習効果の持続性という点でも優れています。人は自ら体験して得た教訓ほど忘れにくいものです。ワークショップで感じた驚きや達成感、難しさといった情緒的な記憶が、その後の行動変容を後押しします。
例えばゲーム型研修で楽しく競い合った記憶は、研修後に職場でSDGsの話題を継続するきっかけにもなります。「そういえば研修で○○という課題が出たけど、うちの部署でも似たようなことがあるね」といった具合に、社内コミュニケーション活性化や課題共有にも波及するのです。
ソフィアの調査によれば、社内コミュニケーション促進の取り組みとして「研修・トレーニング」を行っている企業は51%に上り、その多くで一定の効果が実感されています。SDGsワークショップのように参加者同士の対話が生まれる研修は、コミュニケーション活性化策としても一石二鳥と言えるでしょう。
まとめ
企業がSDGsの目標を追求するうえで、社員一人ひとりの主体的な取り組みが不可欠です。そのための手法として、SDGsワークショップは非常に有効な手段と言えるでしょう。体験を通して学ぶことで、SDGsへの取り組みを「自分ごと化」させることができるからです。
ゲーム感覚で楽しめる手法であればハードルも低く、SDGsをより身近に感じられます。事実、近年多くの大手企業が社内研修やイベントでSDGsワークショップを取り入れ始めています。大手上場企業を中心にCSRレポートの名称を「サステナビリティレポート」へ変更する動きもあり、SDGsはもはや企業の事業活動に不可欠な要素となりつつあります。
単にSDGsとは何かを知るだけでなく、社員自身がSDGsを自分の仕事や生活に落とし込んでいくことが重要です。
本記事で紹介したように、SDGsワークショップは社員にその第一歩を踏み出させる強力な支援策となります。SDGsを本質的に理解し、自分ごととして捉えるには、ワークショップ形式での体験と振り返りが有効です。ぜひ貴社でも、自社の従業員のSDGs理解を深めるためのワークショップ導入をご検討されてみてはいかがでしょうか。
社員がSDGsの意義を腹落ちして理解し、日々の業務の中で「自分たちにできること」を考え行動し始めれば、企業全体のサステナビリティ推進力は飛躍的に高まるはずです。
貴社のSDGs研修プログラムについて具体的なご相談がございましたら、ぜひ弊社ソフィアまでお問い合わせください。無料相談も随時受け付けております。経験豊富な専門スタッフが、貴社の課題に合わせた最適なワークショッププランをご提案いたします。



