オンボーディングとは?実施の目的とプロセスを解説

#コミュニケーション#チームビルディング#ビジネススキル#研修・ワークショップ#組織開発

26.Oct.2020

近年トレンドになっているオンボーディングですが、日本では「オンボーディング=新人研修」として解釈されていることがあります。
これは発祥地である海外の定義を踏まえると正確ではありません。本来、オンボーディングとは、新人研修に限らずより広く大きな枠組みで教育・受け入れ体制を敷くことによって、新入社員がいち早く会社やチームに馴染み、自分の強みを萎縮することなく生かして伸び伸びと活躍できるようにサポートする、より広義な取り組みを指します。
この定義を誤ると、オンボーディングを正しく実施できない可能性があるため注意しましょう。

そこで本記事ではこのオンボーディングについて概要と実施の目的、導入する際のプロセスについて解説します。

オンボーディングとは

オンボーディング(on-boarding)とは、新卒や中途の新入社員が早期に活躍できるように、一律に行われる研修とは別に、個々が業務で必要となる知識や技術を提供したり、会社やチームにいち早くなじめるようサポートしたりといった、一連の取り組みを指します。
アメリカでは会社で迎える新しい人を「乗組員」に例えて、「Welcome on board!(乗ってくれてありがとう)」という言葉をかけるそうです。この言葉が語源となり、オンボーディングという言葉が誕生しました。

オンボーディングの概要

オンボーディングの概要は今述べたとおり、新入社員に対する組織としての支援活動を意味します。日本では「新人研修」や「OJT」という言葉が一般的で、オンボーディングもイコールで捉えられがちです。しかし、海外で発祥した本来のオンボーディングはより広義で、さらに「情報の提供」や「価値観の共有」に重きが置かれています。
ここでいう情報や価値観とは、社内制度や評価制度(つまり「組織が人材をどのように考え、扱うか」ということ)、企業のミッションやビジョン、経営層やマネジメント層の仕事のしかたや人となり、部署やチームの人間関係などです。
こうした情報を知らないと、新しく組織に所属した人間はコミュニケーションが手探りの状態になり、本来の持ち味をうまく出すことができません。個を主張する海外とは逆に、和を重んじる日本であればなおさらです。
こうした情報や価値観を早くに伝えておくことで、新入社員にとっては自分がどう立ち振る舞うことが最善なのかという指針になります。業務における早期戦力化の面だけでなく、新入社員が組織の一員として自分らしさを遺憾なく発揮して活躍できるようにするという意味合いが、オンボーディングにはあるのです。

オンボーディングのために行われる取り組みの例

オンボーディングで行われる取り組み例をご紹介します。

・チームや部門の壁を超えたつながりの構築

垣根なく行われる社内のイベントやソーシャライズパーティ、社内SNSなど、海外のオンボーディングでもっとも肝要とされているものです。自己紹介などを行うラフなミーティングをはじめ、ランチ会や歓迎会などをオンボーディングの観点から見直して実施してみるとよいでしょう。
メンバーとの関係性を構築する機会を設けることでコミュニケーションに費やすコストが下がり、早期から協力体制を敷いて共同作業を行えるようになります。こういった機会は、今後の業務上の連携を円滑にするため、新しいメンバーの専門性の付加価値を他の組織にも及ぼすため、つながりによるイノベーションの創出のためなどに用いられます。

・職場内のスムーズな人間関係構築のためのコミュニケーション機会

研修やOJTに加えて、対面でのコミュニケーション機会を増やすことで、新入社員が馴染みやすい雰囲気や、チームメンバーの人となりを知るきっかけをつくります。関わる人間の仕事のやり方やクセを知ることで、新入社員は自分がどのように振る舞うことが適切かを早期に察することができます。すると、探り探りではなく堂々と自分の個性を前面に出して、その人らしさをいかんなく発揮しつつ業務を遂行できるようになるでしょう。

・資料や冊子の制作と配布

会社の風土や価値観をわかりやすく伝える資料や冊子(クレドなど)も、新入社員が自社を知るために役立ちます。こうした資料は外部に向けて作られることが多いものですが、オンボーディングの一環として内部に向けたものも制作しておくとよいでしょう。また、社内ポータルサイトにそういった情報を掲載する手もあります。

・社内のTIPSをまとめたもの

入社したてのころは、企業独自の自社ルールがわからず苦戦したり疎外感を覚えたりすることも多々あります。一見すると人材育成の範疇ではないように思えるかもしれませんが、和を重んじる日本人は規範意識に敏感なこともあり、こうした面でのサポートも行って然るべきです。会社は自宅と同じくらい長時間過ごす場所ですから、社内ルールは早くに知っておくと新入社員も安堵するでしょう。

日本でオンボーディングが行われるようになった背景

パーソルキャリア株式会社が実施している転職動向の調査によると、2020年6月の転職希望者は過去(※)最多となっています。
優秀な社員の流出はどの企業も危惧すべきところであり、新たに採用した人材を定着させるためにオンボーディングの重要性が注目され、海外に倣って行われるようになりました。
また、社会人経験や業務経験のある中途採用者への教育は新卒社員と比べて軽視されてきたという風潮もあり、中途採用の社員に向けたオンボーディングが最近は特に重視されています。

オンボーディングを行うことによる効果

オンボーディングには従業員の定着(組織への馴染み)や早期戦力化をはじめ、さまざまな効果が期待できます。

離職防止による採用コストの削減

離職率の高い企業にとって、社員がすぐに辞めてしまうことが原因の採用活動は頭の痛い問題です。社員の離職率が低下することで、採用活動が必要最低限に抑えられるため、不要なコストを削減できます。

社員のエンゲージメント向上

採用面接だけで企業の情報や価値観のすべてを伝えることは困難です。また、これまでは新入社員が入社するとすぐにOJTということも多く、企業のカルチャーを深く知る機会がないまま実務に入っていました。オンボーディングを行うことで新入社員が企業や企業活動を深く理解するきっかけとなり、エンゲージメントを向上させることができます。

オンボーディングのプロセス

オンボーディングはこれまでの新人教育よりも内容が広範囲にわたることから、人事担当や現場の管理職がプロセスをしっかりと策定した上で臨む必要があります。

目的の設定

ここでいう目的とは、自社のオンボーディングによって新入社員が会社の風土や価値観を理解した上で、企業やチームにおけるその人のミッションとしてどのようなスキルを身につけ、どのように活躍してほしいかという、あるべき状態のことです。
オンボーディングと一口にいっても、企業の情報や価値観も企業ごとに異なれば、企業が求める人材も異なります。つまり、限られた期間の中で何を伝えるかを、教育担当者自身がまずは整理・把握し、伝達できるようにしておく必要があります。またここでは業務知識だけでなく、オンボーディングが本来重きを置く「情報の提供」や「価値観の共有」についても含めることを忘れないようにしてください。
またここでは、研修だけでなく研修後の配属先での教育についても指針を立てておきましょう。

環境の構築

情報の伝達や価値観の共有には密なコミュニケーションが不可欠なため、どのようなサポート環境が最適かをしっかりと検討する必要があります。1on1(ワンオンワン)やメンター制度だけでなく、社内ポータルやSNSといったITツールの利用も欠かせません。数あるコミュニケーション手法の中から適切なものを選択、あるいは組み合わせて活用しましょう。
また、オンボーディングは新入社員がチームや会社に慣れるまで継続的に行う必要があることから、チーム内の受け入れ環境、研修後のフォロー環境についても考えておくべきです。

プランの作成

オンボーディングは継続して行う必要があると述べましたが、タイムラインを引いて、入社当日、1週間、1ヶ月、半年後…と、それぞれのポイントで達成すべき「あるべき姿」を設定しておきましょう。それぞれの取り組みが短期的なものなのか、長期にわたるものなのか、いつどのタイミングで実施すべきなのか、設定したスケジューリングを踏まえてそれぞれのプロセスにおける具体的なプランを作成してください。

プランの見直し

作成したプランは、人事担当と管理職だけでなく、オンボーディングに巻き込むすべての社員と共有し、ズレがないことを確認します。また、現場から理解と納得を得ておくことも重要です。
なお、オンボーディングは「新しく加わった人を全員で歓迎し支援する『文化』の醸成」と言い換えることもできます。ようこそ!という気持ちは、メンバーの誰もが抱くものです。ただこれまでは、その気持ちを個人的に伝える機会がなかったり、チームとして感じてもらったりする取り組みがそれほど重視されておらず、初日にあいさつもそこそこに実務に放り込まれるというケースも少なくありませんでした。
早期戦力を急く気持ちも理解できますが、オンボーディングの観点を持ち、歓迎の気持ちをまとめて形にするために既存社員をうまく巻き込むことで、よりオープンな文化を作ることができるでしょう。

実施

プランが定まったら、オンボーディングを実施します。はじめのうちはうまく回らない部分も多いはずなので、どこが課題なのかを関係者一人ひとりが記録しておくとよいでしょう。また、プランが軌道に乗るまでは新入社員はテストパイロットになります。自社の教育体制がまだ構築中であるという「情報の伝達」も忘れずに行っておくことで、新入社員にも納得感が生まれるため不用意に不安にさせずに済みます。

振り返り

実施後は、あらかじめ定めたポイントを経過するごとに振り返りを行います。ここでは、受け入れる側である管理者や現場社員のほか、オンボーディングの対象となった新入社員本人にも意見をヒアリングしましょう。なお、ただそれぞれが感想を言い合って終わりにならないよう、評価指標をあらかじめ設けておくことも有効です。施策ひとつにしても、視点が異なると見えなかった課題が浮き彫りになってくるので、関係者全員からもれなく意見を吸い上げるようにしていきましょう。振り返りができたら、改善策を考えて次回につなげていきます。

まとめ

本来のオンボーディングは、さまざまな視点からのサポートを、多くの既存社員を巻き込みながら長期的に行うものです。したがって、新人研修のコンテンツを企画・制作するようなものとは性質が異なり、一朝一夕で完成させることは難しいといえるでしょう。また、こうした大規模な施策は多数の成功事例やときには失敗例をも経て、徐々にアップデートしていくものでもあります。難易度の高い取り組みではありますが、成功すれば企業にとって非常に有益なものとなります。今後人材の流動化が加速する中で、オンボーディングは企業にとって不可欠な活動であるという認識のもと、取り組んでいきましょう。

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