ロジカルシンキングをゲームで鍛える方法は?ロジカルシンキングゲームの具体例を紹介

ロジカルシンキングとは、物事を筋道立てて整理し、矛盾なく説明する力のことです。
近年は、ロジカルシンキングを身に着けるために、ゲームを取り入れた研修が注目されています。楽しみながら実践的に思考力を鍛えることで、座学だけでは難しかった思考の定着が期待できます。本記事では、ロジカルシンキングの概要とゲーム研修の効果、具体例までをわかりやすく紹介します。

ロジカルシンキングとは?

ロジカルシンキング(論理的思考)とは、情報を分類・構造化し、因果関係を明らかにしながら筋道立てて結論を導く思考法です。主張と根拠の一貫性を重視し、物事を矛盾なく説明する力と、それを他者に分かりやすく伝える力の両方が求められます。
現代のビジネスでは、複雑な課題を整理・分析して的確な判断を下すための「考え抜く力」が不可欠とされており、経済産業省の「社会人基礎力」にも位置づけられています。組織の意思決定や問題解決の質を高めるうえで、ロジカルシンキングは欠かせないスキルと言えるでしょう。

ロジカルシンキング研修にゲームを取り入れるメリット

ロジカルシンキングの研修手法として、なぜゲームの活用が注目されているのでしょうか?
従来の座学中心の研修では「理論を学んだだけでは現場で使えない」という声も多く聞かれます。そこで近年、研修にゲーム要素を取り入れる手法が脚光を浴びているのです。

楽しく学べてモチベーションが向上する

第一に挙げられるメリットは、受講者が楽しみながらトレーニングに取り組めることです。座学中心の研修では受け身になりがちですが、ゲームを取り入れることで主体的に「学びたい」という意欲を引き出せます。結果として学習効果の向上が期待できるでしょう。

コミュニケーション活性化による学習効果

多くのゲーム型研修には、チームで協力してゴールを目指す要素が含まれています。そのため、自然なコミュニケーションが生まれやすくなります。

たとえば、複数人で情報カードを交換しながら最適な解決策を導く「情報共有型ゲーム」では、相手の意見を正しく理解し、自分の考えを論理的に伝える力が求められます。役割分担をして進める戦略型のボードゲームでは、意思疎通の質がゲームの結果に直結するため、対話の量と質が自然に高まります。

このような環境では、普段あまり接点のないメンバー同士でも、立場を越えて協力し合う姿勢が育まれやすくなります。
研修後には「声をかけやすくなった」「他部署の人の考え方がわかった」などの声も多く、結果として実務でも報連相が活発化し、チーム全体の生産性向上や風通しの良い職場づくりにつながります。

安全な場で試行錯誤し、実体験から学べる

さらに重要なポイントとして、論理的思考力は実践と失敗からの学びによって磨かれるということが挙げられます。ゲーム内であればミスをしても実害はなく、何度でも試行錯誤できます。
たとえば「なぜ上手くいかなかったのか?」を振り返り、改善策を考えることで失敗から教訓を得る訓練になります。
ゲームで培ったトライ&エラーの経験は記憶に残りやすく、実際の業務で同じ状況に直面した際に活かしやすくなるでしょう。

ロジカルシンキングを鍛えるゲームの具体例

実際に企業研修で活用されているロジカルシンキング向上ゲームにはどのようなものがあるでしょうか?
ここからは、ボードゲームやグループアクティビティなど代表的な例をご紹介します。それぞれのゲームの特徴と、論理思考力につながるポイントを一緒に見ていきましょう。

1. 人狼ゲーム

「人狼ゲーム」は数名~十数名の参加者で行う推理コミュニケーションゲームです。 参加者の中に紛れた人狼を討論によって見抜くことを目的とし、各自が村人・人狼・占い師・騎士などの役割を担ってゲームを進めます。昼夜のターンを繰り返し、人狼を処刑できれば村人側の勝利、村人が全滅すれば人狼側の勝利となります。

論理思考力向上のポイント

人狼ゲームがロジカルシンキング研修によく取り入れられるのは、論理的な推理力と説得力を養えるからです。
具体的には、限られた情報から矛盾のない推論を組み立て、他の参加者に自分の考えを筋道立てて説明する訓練になります。誰が嘘をついているのかを見極めるには、前提条件を洗い出して因果関係を考える必要があり、まさに論理思考の実践と言えるでしょう。
また、自分の考えを簡潔に伝え、相手を納得させるコミュニケーション力も鍛えられるため、チーム討議や報告・説得の場面にも役立ちます。

2. ビブリオバトル

「ビブリオバトル」は京都大学で考案された書評ゲームです。 参加者がそれぞれおすすめの本を持ち寄り、順番に紹介し合います。一人5分程度で本の魅力をプレゼンし、全員の発表後に「一番読みたくなった本」に投票します。

論理思考力向上のポイント

ビブリオバトルを通じて磨かれるのは論理的な伝達力です。制限時間内に要点を整理し、聞き手に伝わりやすい順序で話す練習になるため、自分の考えを論理的に構成する力が鍛えられます。
また「相手にどう伝わるか?」を意識して話す必要があるため、相手の理解度を考慮したコミュニケーション能力も養われるでしょう。プレゼンテーション力向上にもつながるため、研修として取り入れる企業が増えています。

3. マーダーミステリー

「マーダーミステリー」は参加者それぞれに物語中の登場人物の役割が与えられ、ストーリーの真相(犯人や動機)を解明していくゲームです。6~20名ほどの比較的大人数でプレイでき、各自が与えられた情報をもとに議論し推理を進めます。人狼ゲームに似ていますが、全員に固有のストーリー背景や秘密があり、協力と対立が入り交じるのが特徴です。

論理思考力向上のポイント

マーダーミステリーを研修で行うと、状況を論理的に分析する力と根拠をもとに他者を説得する力が身につきます。自分のキャラクターの情報だけでなく他者の発言からも論理的に矛盾を突き、真実に迫る必要があるため、クリティカルシンキング(前提を疑う力)も求められます。
また、自分の推理が正しいと信じても相手を納得させられなければ意味がないため、論理に基づいた説得スキルの向上にもつながるでしょう。
近年はオンラインで実施できるマーダーミステリーも登場し、リモート研修にも活用しやすくなっています。

4. ナンバーワン・ベーカリー

「ナンバーワン・ベーカリー」は「儲かるパン屋を作ろう!」をテーマにした起業体験型のボードゲームです。参加者はパン屋のオーナーとなり、商品仕入れや価格設定、マーケティング施策などの経営判断を行って、最終的な利益No.1を目指します。

論理思考力向上のポイント

このゲームでは論理的な意思決定力が鍛えられます。売上・費用・利益といった数字の関係を考えながら、限られた資源で最適な行動を選ぶ必要があるため、合理的思考(目的に照らして最善手を導く力)が養えるのです。
市場ニーズを推理し、仮説を立てて売れ筋商品を当てるといった要素もあり、論理思考だけでなくビジネスセンスも問われます。またゲームを通じてキャッシュフローやマーケティングの基礎知識も学べる副次効果があり、若手社員のビジネスリテラシー向上にも役立つでしょう。

5. コリドール

「コリドール」はフランス生まれのボードゲームで、2~4人のプレイヤーが自分の駒を相手陣地まで進めることを競います。
特徴は、相手の進路を妨害する「壁」を置けることです。プレイヤーは持ち駒の移動と壁の設置を駆使して、できるだけ早くゴールに到達する戦略を考えます。1ゲーム20分程度と短時間で楽しめるため、研修でも扱いやすいゲームと言えるでしょう。

論理思考力向上のポイント

コリドールを用いる目的は論理的な戦略立案力の育成です。ゴールまでの最短経路を考えつつ、相手の動きを予測して壁を配置する必要があり、先を読む力や仮説思考が試されます。常に自分と相手の状況を分析し最適解を探す過程で、問題解決力や計画立案力の向上が期待できるでしょう。
シンプルなルールながら論理思考の訓練になるため、アイスブレイクを兼ねた研修ゲームとしても人気です。

6. ロストレガシー

「ロストレガシー」は16枚程度のカードを使って行う推理ゲームで、プレイヤーは場に隠された1枚の「遺産」カードを探り当てることを競います。
各カードには特殊な効果(他人の手札を覗く、カードを交換する等)があり、運と戦略のバランスが絶妙なゲームです。短時間で繰り返し遊べるため、研修にも取り入れやすいでしょう。

論理思考力向上のポイント

ロストレガシーで鍛えられるのは状況把握と論理的推論力です。限られた手がかりから遺産の所在を推測するには、他プレイヤーの発言や行動を論理的に分析する必要があります。「もしAさんがそのカードを見たと言うなら、自分の手札にはないはずだ」といったように仮説と検証を繰り返すうちに、自然と因果関係の考察力が磨かれるのです。さらに、ゲーム展開に応じて作戦を柔軟に練ることで戦略的思考も養われます。

7. ブレインストーミング

「ブレインストーミング」は厳密にはゲームではありませんが、グループで自由にアイデアを出し合う発想トレーニング手法です。与えられたテーマについて制限時間内にできるだけ多くのアイデアを出し、その後でアイデアを分類・評価します。

論理思考力向上のポイント

ブレインストーミングを研修に取り入れることで、発散的思考と収束的思考の両面を鍛えることができます。
まず、固定観念にとらわれず多角的に考えるラテラルシンキング(水平思考)的な発想力が身につきます。一方で、出たアイデアを論理的に整理して分類し、本質的な解決策をまとめるプロセスではロジカルシンキングが求められます。
つまり、ブレインストーミングは創造性と論理性の架け橋となる練習と言えるでしょう。チームで行えば心理的安全性の醸成にも役立ち、活発な議論を通じて相互理解が深まる効果も期待できます。

まとめ

ロジカルシンキングの重要性からゲーム研修の具体例まで幅広く紹介してきました。
論理的思考はゲームを通じた実践演習によって、楽しみながら自然に鍛えることができます。研修に人狼ゲームやビブリオバトルなどを取り入れれば、受講者の集中力やモチベーションが高まり、学んだフレームワークや思考法を自ら使ってみる機会が得られるでしょう。
ただし、重要なポイントは研修後の振り返りと職場実践への橋渡しです。
ゲーム内での気づきを話し合い、自分の業務に当てはめて考える時間を設けることで、研修効果が現場で定着しやすくなります。

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