2023.04.03

ロジカルシンキングの鍛え方や思考法、必要なフレームワークについて紹介!

変化の激しい近年のビジネスでは、物事を素早く見極めて課題解決に向かうスピード感が重要になっています。変化によって起こりうる課題への対応として役立つのがロジカル・シンキングです。このロジカル・シンキングとは、物事において筋道を立てて捉え、矛盾なく考える思考法です。

ここからは、ロジカル・シンキングの鍛え方や、フレームワークの活用法について詳しく解説します。

ロジカル・シンキングとは?

ロジカル・シンキングとは、論理的思考力を意味し、物事を論理的に筋道立てて捉え、矛盾なく考える思考方法と広く言われており、その分類は思考コミュニケーションの2つに大別されます

ロジカル・シンキングは、「分ける」というシンキング「物事を筋道立てて整理する思考」と「矛盾なく説明するコミュニケーション能力」の思考力とコミュニケーション力になります。

また、ロジカルとは、感情や直感とは対比的な位置にあり、物事の間に関連性や繋がりを持たせて、考えを組み立てることを指します。感情や直感が、物事の関連性や繋がりよりも自分の感覚を重視するのに対し、論理は感覚よりも理屈を重視する傾向があると言い換えられます。

人々がお互いの認識を共有するには共通の足場が必要です。つまりは、共通の足場が論理ということです。相手に伝える前に、論理を使って「分けて整理」し「伝える」という順番で頭の中で処理されている為、ロジカル・シンキングには思考的側面とコミュニケーション的側面が存在します。

ちなみみに、「ロジカル・シンキング」という言葉自体に、学術的定義などはなく、有識者の説明や書籍を見てもそれぞれ相違があるなど、やや混乱している面もあります。定義など気になる方は下記の記事で詳細を説明します。

しかし、定義が曖昧であるかどうかというより、ビジネスにおいて有用性や利便性があれば良いため、ここでは道具としての活用に焦点を当ててご紹介していきます。

ロジカル・シンキングがビジネスにおいて重要な理由

近年、ビジネスの現場ではグローバル化が進み、国内外のあらゆる関係者と手を取り合って協力関係を結ぶことが増えています
また、ひとえに同業種であっても問題解決のアプローチがそれぞれ異なり、過去の成功の方程式や知識や常識もはおろか、他社事例も通用しません。そのような現場で必要とされるスキルについて紹介します。

  • 複雑且つ膨大なデータ/情報量を分析する業務
  • 複数の変動要素からなる問題事象を分ける、整理する業務
  • キャリア、国籍、宗教的といったバックボーンの多様性の中でのコミュニケーション
  • 異業種/多業種など、共通言語の少ない中でのコミュニケーション
  • 過去の培われた経験則では通用しない諸問題や事象

上記のような、ビジネスの多様性と人の多様性が絡み合う複雑な問題や事象を分けて整理し、お互いの認識の共有する足場に落とし込み伝達するスキルが必要です。

つまり、ビジネスの現場ではロジカル・シンキングによる思考法が求められていると言えるでしょう。

世界経済フォーラムの「仕事の未来2020」のレポートにおいては、「ロジカル・シンキング」は2025年に向けて求められる人材スキルの中の第4位に入っています。世界的なスケールで見ても、ロジカル・シンキングを使いこなすビジネスパーソンの必要性が高まってきていることは間違いありません。

参照:The Future of Jobs Report 2020 by World Economic Forum, 2020.10.20″

ロジカル・シンキングの鍛え方は?

ロジカル・シンキングは、鍛えることで精度を高めていくことができます。ここからは、ロジカル・シンキングを習得し鍛えるための具体的なアプローチについて解説します。

また、ここで。しかし、先人の知恵としてフレームワークを頼ることは、ビジネスのショートカットを生み出します。
下記のような手段や枠組みを媒介にして、並べて整理することは「分かる」ことが重要ですが、万能ではない事も理解する必要があります。

 

ディベート

ディベートとは、テーマとして掲げた1つの内容に対し、賛成派・反対派のどちらかの立場を取って議論をすることです。さまざまな課題や問題について深く掘り下げ、肯定・否定の両側面から意見を出し合いながら多角度的に物事を見る練習になるため、ロジカル・シンキングの習得には適しています。同時に、クリティカルシンキングも身につきます。

So What?/Why So?「だから何?」「それはなぜ」という「結論/主張と理由/根拠」を示すコミュニケーションの基礎的な訓練になります。
ディベートでは、「結論/主張」に対して「理由/論拠」と「事実/データ」で支える三角ロジック/トゥールミンモデルを活用します。

具体的には、「主張」の部分に企業であれば身近な社内制度などを題材に応用することもできます。

たとえば「フリーアドレス制をやめるべきである」と設定して、なぜやめるべきなのか?という「データ」「論拠」で整理し、肯定と否定に分かれ論争します。主張部分のテーマは、職場や事業部単位の来年度の施策や計画など、現実のケースを活用が増えています。非常に実利的です。参加者の情報格差もなく、上下関係など影響力やパワーの問題も平準化します。これは客観性と計画などリスクの洗い出しにもなります。

とはいえ、ディベートはただのゲームと言えども、社内の人間関係が気になる方は、第三者のファシリテーターを活用するとスムーズに進められます。

肯定・否定の2つの視点から物事を観察できるディベートによって、相手に物事を論理的に説明するために事実を解釈し、客観性を育むことでロジカル・シンキングの土台を作ることができるでしょう。ロジカル・シンキングに取り組む際に重要となる視点がこの客観性です。どんな人でも思い込みや感情的な主観で物事を見ている一面があるため、意識して俯瞰でみることがポイントです。

文章を書く

文章を書くこともロジカル・シンキングを習得・鍛えるためのトレーニングになります。文章と言ってもどちらか言えば、論文に近い文章です。

文章を書くことは頭の中の考えを可視化することであり、時間をおいて何度か読み直すことによって思考を客観視することができます。
本文をいきなり書くのではなく、自分の頭の中にある情報を一旦書き出し、分けて、並べる作業からはじめ、文章全体の大枠で「文章構成」をつくります。構成によって文字という最小単位を並べていく作業です。

これはロジカル・シンキングの「分ける」作業と「並べる」作業という基礎的な内容です。これができれば、パワーポイントの資料にするにも、動画なのか、口頭なのかという表現方法の違いであり、文章としてのテキストで整理することは初動として適切です。

さらに、わかりやすく構造化された論理的な文章を書くことで、ロジカル・シンキングの考え方の要である「矛盾しないように物事を論理的に組み立てる力」を鍛えることができます。
文章を書くことで思考を可視化することができ、文章に落とし込まれた理屈を客観的に観察することで論理性を高められるため、ロジカル・シンキングを習得するための重要な手法になります。

分け方をつくる(整理学)

頭の中で散らかっている情報や知識を体系的に整理し、因果関係や繋がりを正しく分ける整理学を学ぶこともロジカル・シンキングを習得するための土台作りになります。

整理学の「乱れたものを整える、不用のものを取り除く」作業は、どこに何があるか誰にでもわかるようにし、利用しやすい状態に整頓する作業であり、ロジカル・シンキングにも通ずる手法だと言えます。

整理学を取り入れ、日頃から頭の中にある情報や知識を体系的に整理する練習をしておくと、ロジカル・シンキングの土台が出来上がっていくことでしょう。

ロジカル・シンキングは、実践しないと鍛えられない

事業は成熟化し複雑化しており、個別の課題解決に向けて意思決定権限・責任が現場に移譲され、ビジネスユニットや個人は自律分散化しています。企業を超え、地域を超え、業界を超えた連携が増えることとなります。

人材流動化が進み転職、出向、外部連携はいつでも起こる状態に変化しました。日本独特のコミュニケーションである阿吽の呼吸、以心伝心といったこれまでのコミュニケーションは通じなくなってきています。ビジネスと人財は多様化しています。それは、共通前提や共通言語がないとも言えます。多様性を繋げるには、論理という共通の足場でつながりコラボレーションする他ないと言えます。

過去の経験則では判断できない内容が増えているため、ビジネス上の課題は、実行段階の前に、ロジカル・シンキングで整理しないと、複雑あるいは難解なままで解決策を導いた場合結果がでません。

解決策をみつけやすくするためには、課題を細分化したり要約したりする必要があります。この物事を細分化、もしくは要約する作業をロジカル・シンキングを使って行います。実際の課題や普段業務を「分ける」「わかる」から始めることが非常に重要です。

日々続けている定型業務などは、深く思考しながらやっている人はいないでしょう。一連の業務を見直し、「分ける」もしくはフレームワークを活用して「分ける」ことができる人が実は少ないのです。

また、研修やeラーニングは受講すればできるような錯覚を起こすようになっています。それは、実際に活用させるための動機付けの為です。

実務的な活用価値の高いロジカル・シンキングなどは、リアルな実際の経験学習を織り込まない限り不可能です。ロジカル・シンキングは大企業の社員であれば、ほぼ全て社員が受講しているもしくは知っています。仮に受講した社員が自部門の業務や情報をMECE(ミッシー)を活用し情報を相互に、重複せずに、全体として、漏れない状態に可視化することができるかというと、途端に外部パートナーを活用しようかと思うはずです。理解している人が多い割には出来る人が少ないというのがロジカル・シンキングの特徴であり、知る事と行動経験する事で相互作用から産み出される「知行合一」が必要なのが、ロジカル・シンキングです。

ロジカル・シンキングで活用すべきフレームワークや思考法

ロジカル・シンキングで活用すべきフレームワークや思考法にはどのようなものがあるのでしょうか。ビジネスの場で特に活用していきたい、ロジカル・シンキングの代表的な5つの思考法を解説していきます。

演繹法と帰納法の違いについて

ロジックの最も基本的な考え方は演繹法と帰納法に分かれます。この言葉を聞いただけで難しそうと思われた方もいるかもしれませんが、この2つは両方とも誰でも使っています。つまり当たり前にやっていることで、呼び名だけが聞き慣れないというだけなのです。

また、実務的にもこの言葉は使いません。上司から「これは演繹的にやって」と指示されることもないでしょうし、演繹と帰納は組合せて使いますので実務上分ける必要もありません。

それでは何のために覚えるのかというと、演繹的と帰納的では有効な場面が違い、使いこなすコツも違いますので、そのスキルを磨こうと思ったらやはり何が演繹で何が帰納かわかっていた方が学びやすいでしょう。というわけで、定義の話は省略して実例をご紹介します。

    1. 学習における演繹法と帰納法

英語学習で、文法と単語から教えるのは演繹法的です。
英語学習で、とりあえず会話からやるのは帰納法的です。

    1. 新製品開発における演繹法と帰納法

米国ではやっているものを真似して日本でつくるのは演繹法
テストマーケティングを繰り返して最終製品をつくるのは帰納法

    1. コロナパンデミック対策における演繹法と帰納法

マスク、手洗い、3密を避けることは演繹法的(スペイン風邪以来の対策)
PCR・抗原検査による隔離策は帰納法的

つまり

演繹法とは 演繹法とは、普遍的な法則に当てはめてやり方を決める方法です。
帰納法とは 現実の事象を集めてそこからやり方を決める方法です。

上記3つともどちらか片方ということではなく両方を組み合わせてやっていますが、どちらにウェイトを置くかはその時の状況によりますし、それぞれの勘所やメリット・デメリットも違います。

演繹法

演繹法とは、一般的に知られているルールや法則といった前提から、論理を組み立てることで結論を導き出す思考法です

演繹法は前提となる原理が正しいことが根本にあるため、原理が正しければ結論も正しくなるという考え方です。
例として、「野菜はビタミンを含む」という一般論に対して「ニンジンは野菜である」という物事を当てはめて考えることにより、「ニンジンにはビタミンを含む」という結論が出ます。

つまりこの場合は、「野菜はビタミンを含む」が前提の原理となり、「ニンジンは野菜である」という揺るぎない事実を提示することで、「ニンジンはビタミンを含む」と結論付けているのです。
ただし、前提となる原理が間違っている場合は、結論を含めた全ての論理が間違っているという事態もありえます。演繹法はロジカル・シンキングの中でも有効な思考法ですが、前提となる原理の正誤についてはしっかりと見極めておく必要があるでしょう。

ビジネス界では正確かつ速やかな対応が求められ、手順を省略することも重視されます。「○○神話」や「○○の法則」、「金科玉条」といった言葉に表されるように、組織内でも演繹法に頼った意思決定が多く見られます。ただし、不確実な状況下での大前提の抽象化は、問題を深刻化させる結果にもなり得ます。こうした背景から、ビジネス現場では、仮説を立てる演繹法が適切であると言えます。

☆成功例

    アップル社が2007年に発売したiphoneは演繹的推論による成功例です。まだそのようなコンセプトの製品が世の中にない(帰納的検証はできない)段階でこれまでのトレンドや売れる法則から人々がこういうものを求めているのではないかという仮説を立てて開発しました。

★失敗例

    ブロックバスターは演繹的推論による失敗例です。同社はDVDレンタル店で圧倒的地位を築いたために、顧客がDVDレンタルを望んでいるという演繹的推論に固執しました。その結果、オンラインストリーミングに投資せずNetflixに対抗する機会を逸しました。

これは多くの衰退企業に当てはまる演繹的推論の典型的失敗パターンです。

ある事業が成功したとすれば、そのやり方が成功するというデータは社内に山ほどありますので、それに類似したことは説明しやすいし、承認もされやすいという構造ができます。重要なのは出口戦略であり、そのためその事業が衰退期に入ったときいかに方向転換し、損失を抑えられるかを考えなければなりません。

帰納法

帰納法とは、複数の実例から共通する項目をまとめることによって事実を導き出し、一般化するように「推論=結論」を導き出す思考法です。

統計分析などにも使用されている思考法で、膨大なデータから傾向やパターンをあぶり出し、統計的な説得力の高い推論を導き出すことで相手を納得させる根拠として提示します。

帰納法の考え方の例を出すと、「今日、東京は気温が高い」「今日、宮城は気温が高い」「今日、島根は気温が高い」の3つの事実があるとします。この場合に共通する事実は「気温が高い」ということであり、ここから帰納法として導き出す推論(結論)は「今日、日本は気温が高いかもしれない」となります。太平洋側と日本海側の都道府県3つとも気温が高ければ、日本全体の気温が高いと推測してもおかしくはありません。

帰納法のアプローチはいくつかの事実から導き出す推論(結論)が基本であるため、可能性として考えられる推論(結論)は他にもあることには注意が必要です。

上記の例で言うなら、気象条件的にたまたま東京、宮城、島根の気温が高かっただけと推論する人もいるでしょうし、物事を見る角度や切り口によって推論(結論)が変わるのも帰納法の特徴だと言えます。

データ分析において、収集、整理、分析、統合のプロセスは帰納法的であると言えます。しかしながら、収集段階でややバイアスがかかってしまう場合があるため、取得されたデータや事象は演繹法的な前提に基づいています。また、データや事象を収集し、ビジネスの成功仮説を構築するには、相当な時間と労力が必要となります。そして、ただ帰納法に深入りしてしまうと、ビジネスチャンスを逃し、失敗するおそれがあることに留意すべきです。すなわち、ビジネスにおいて、帰納法的な実験を実施し、仮説を迅速に切り替え、行動を起こすスピードが重要視されます。

☆成功例

    Amazonは、顧客体験を徹底的に分析し、オンラインでの購入体験を改善することに焦点を当て、顧客満足度の高いオンライン書店を作り上げ今日の成功の礎を築きました。

★失敗例

    1985年にコカ・コーラが20万人という膨大な人数の味覚テストの結果をもとに売り出した「ニュ・コーク」の失敗が最も有名です(コーラの味を変えて大々的キャンペーンを行った3ヶ月後に「コカ・コーラ・クラシック」として旧製品を復活させました)。

弁証法

弁証法は、18世紀後半の哲学者のヘーゲルが提唱した、相反する要素が対立しながらも、新しいものを生み出す力を持つという哲学概念です。

このような一見相矛盾する2つの目的を二者択一ではなく、また折衷案でもなく、同時に達成するための構想力が求められています。弁証法とは、対立する物事から新しい見識を見いだす思考法で、ビジネスの現場でもよく用いられている手法です。「正」、「反」、「合」の要素を追って考えていくことで結論を導き出します。

例えば、
飛行機を運航したい(正)を考えたとして、飛行機の運航は環境に悪い(反)という対立する意見が出たとします。相反する正と反の意見を考えることで、環境に優しい燃料を使った飛行機を運航したい(合)といった、落としどころとしての「合」の意見を導き出すことにより新しい見識を結論づけるのが弁証法です。

現実社会では、0か100かのような極端な結論を出すことが難しい場面が多く、「正」、「反」両意見のバランスを取った「合」を用意する必要があります。そうした状況に柔軟に対応するための思考法として弁証法を活用することができます。

(正)
「飛行機を運航したい」
(反)
「飛行機の運航は環境に悪い」
(合)
「環境に優しい燃料を使った飛行機を運航したい」

ビジネスにおける確率論には、高い失敗率が指摘される多くの論説があります。ただ、ロジカル・シンキングに基づくと、失敗を前提条件として考えた方が妥当性が高いと言われています。

しかし、失敗する可能性の高いビジネスプランやデータを提示する起業家は見受けられません。要するに、演繹法か帰納法かにかかわらず、成功につながるプランと資料が本質です。アンチテーゼとして失敗する可能性のあるデータや事象に着目し、演繹法と帰納法を用いて思考することが非常に重要だと考えられます。

もし自己のバイアスがあると感じるのであれば、他者に自分の案を反証してもらうことも適切かもしれません。その際、耳障りな情報や批判的な視点からも学ぶことができ、優れたアイデアや革新的な発想を生み出すこともあります。

現代のビジネスにおいては、矛盾する要素を統合して新たなビジネスチャンスを生み出すためのフレームワークとしての役割があると言えます。例えば、環境保護と利益追求は本質的に相反するものと考えられてきましたが、現在では環境汚染に関するコストが経済的・社会的に膨大なものとなっており、これら2つを同時に達成する方法を模索しなければ企業が生き残ることは難しくなっています。

MECE

MECEとは、「ミーシー」もしくは「ミッシー」と呼ばれ、
Mutually(互いに)、
Exclusive(重複せず)、
Collectively(全体的に)、
Exhaustive(漏れがない)の頭文字を取った言葉です。

物事の全体像を把握しつつ必要な要素を抜け漏れなく集め、集めた要素同士が重複しないように分類し、誰もが課題や問題を把握できる状態にする考え方です。

例えば、日本国民をMECEで分類するのであれば、年齢と性別ごとに分けることで漏れなく重複せずに網羅することができます。

事象やデータ/情報を、分けて、並べる際に、1つ1つの事柄が、相互に、重複せずに、全体として、漏れない状態、MECE(ミッシー)で整理するという考え方でありスタンスです。
結論からいえば、ビジネスにおいては、MECE(ミッシー)で整理できる状態は、ほぼ存在しません。新人研修など「MECE(ミッシー)」の考え方を理解する為に、穴埋めのような演習がありますが、理解には役立ちますが、思考訓練には無意味です。
新人研修など「MECE(ミッシー)」の考え方を教える為に、完全にMECEになるような例題で説明することがあります。それが誤解(完全にMECEでなければいけないような)を与えている場合もあります。この誤解から、目的とは関係なくただMECEにし易い方法で分けるといった本末転倒の理解をする人も居ますので注意が必要です。

では、MECE(ミッシー)が無意味でしょうか? 相互に重複し抜け漏れがあり網羅されていない状態は、事象や問題が整理されていない状態であり、誰かに伝えることは不可能です。多くの事象や問題を、相互の重複しないように、如何に分けきるか? そして、並べた要素が、全体を完全に網羅し、漏れない状態で並べきれるか?という思考活動になります。ここにMECE(ミッシー)の価値があります。つまり、MECE(ミッシー)は、スタンスであり、考え方です。

ロジックツリー

事象や問題を、分類し小分けに分けて、且つ階層で並べる手法です。「売上高」を「客単価」と「客数」に2つ分けて、「売上高」を上に書き「客単価」と「客数」をその下に置き、全体のつながりをわかり易く可視化する方法です。
ツリー(木)という名称は下に行くほど枝分かれしていく姿が木に似ているからです。問題の構造を可視化する手法として最も多用される図解のひとつです。ツリーには縦と横のルールがあります。

横のルールは2つあり、ひとつは同じ抽象レベルのものを並べること、もう一つはMECEに挙げることです。抽象レベルとは、たとえば「動物」と「桜」では違います。「動物」には「植物」が同じレベルになりますし、「桜」には「馬」などが同じレベルになります。普段意識していないと少し迷う場合があるかもしれませんが、常に意識すればすぐ判断できるようになります。

以下のように大きく3つの手法に分かれています。

ロジックツリー
要素分解ツリー
(WHATツリー)
物事の要素を分解することで全体像を浮き彫りにし、問題点を特定して解決や改善をするために使用するツリーです。会社の売上先の割合を把握し、マーケティング戦略で選択肢をあぶり出すなど幅広く使われます。
原因究明ツリー
(WHYツリー)
個別の問題自体をテーマとし、問題が発生した原因や理由を掘り下げるために使われるツリーです。会社の売り上げが下がったといったテーマに対し、改善策を出す前段階の根本的な原因を可視化するために使われます。
問題解決ツリー
(HOWツリー)
問題解決の方法を導き出すためのツリーで、考えられるアクションと優先順位を把握することに役立ちます。顧客を増やすための方法といった戦略の選定から、プランの優先順位を決定する際などに使われています。

上記のMECE(ミッシー)を前提に考えると、ツリー上の、1次階層、2次階層と深く分解していく思考は、最終的には事象やデータとの関係性、事象や問題の中に重要な要素を炙り出すことが可能になります。ロジックツリーで陥りがちなことは、事象や問題を分けきれなかったり、また分けすぎて抽象度の違う要素を同じ階層に並べてしまったりすることはよくあります。ツリーが4段5段となってくると難しくなりますが、少なくとも上から3段はフレームに基づいて分類しましょう。3段目の数が膨大になる場合は、2段目と3段目の間にもう一段入れられるはずです。よく考えてみましょう。ただ、これは慣れの問題なので、ご自身の業務を分けて、並べてみることを繰り返せば、すぐに身につきます。

マトリクス

マトリクスは映画ではありません。事象や問題などを、軸を決めて「列(縦軸)」と「行(横軸)」に並べて整理する枠組みです
たとえば自動車を購入する場合、横軸に対象となる製品名を並べ、縦軸に評価項目を並べると比較しやすい表ができます。

同様に外部委託先選定における比較表から、成績表まで「列(縦軸)」と「行(横軸)」に並べて整理すると複数の要素が一覧で比較でき分かりやすくなります。この場合重要なのは比較項目がMECE(ミッシー)に基づいているかどうかです。もちろん比較する必要のない項目まで挙げる必要はありませんが、重要な観点を落としていないか注意が必要です。

また、企業戦略論の大家のイゴール・アンゾフのマトリクスは、縦軸を市場と置き「既存市場」と「新規市場」に分けて、横軸を製品サービスと置き「既存製品サービス」と「新製品サービス」に分けて、マトリクスをつくりました。

「既存製品サービス」 「新製品サービス」
「既存市場」 「市場浸透」 「製品開発」
「新規市場」 「市場開拓」 「多角化」

・ 「既存市場」×「既存製品サービス」は「市場浸透」
・ 「既存市場」×「新製品サービス」は「製品開発」
・ 「新規市場」×「既存製品サービス」は「市場開拓」
・ 「新規市場」×「既存製品サービス」は「多角化」

という「列(縦軸)」と「行(横軸)」で並べることで、「新規と既存」「市場と製品」とい軸から、4つの個別の象限が生み出されます。よく失敗するのは、縦横の軸が完全に独立していない場合です。たとえば市場と製品は独立していますが、市場と店舗というような2軸にするとかなり重複しているような場合があります。

4象限にこだわる方がいますが、実務においては軸の分け方は無数にあり、何が最適かは目的にもよりますし、その作業に投入できるリソースに制限される場合もあります。「分ける」「並べる」ことによって「意味を生み出す」という手法であり、比較表もマトリクスであり、戦略論もマトリクスです。

ベン図

ベン図は、情報やデータの「全体」と「部分」に分けて、部分を並べて、「部分の重複」「部分の大きさ」など関係性を四角と丸で図解する手法です。

一般的には全体集合を四角で表現し、部分集合を円や楕円で表現します。部分集合の〇が2つあり、部分集合同士が重複している部分がある場合は部分集合A、部分集合B、ABの重複部分と、それ以外の4つの事象があることが表現できます。
全体の中に、集合がいくつあるのか?相対的な規模はどのくらいあるのか?関係は?など、全体と部分を相対的に明示できます

実務においては、大局を整理したり説明する上で役にたちます。逆に、部分集合が4つ以上あるような場合は、意味が乗数的に増えて、解像度が上がりすぎて、大局的に整理できず説明不能になります。

フレームワークは「分ける」と「並べる」が基本要素

これまで説明してきた通り「MECE(ミッシー)」は、考え方やスタンスで手法ではありませんが、「ロジックツリー」「マトリクス」「ベン図」などの図解は常にMECEを意識して作成し、逆にそれらの手法はMECE(ミッシー)の考え方になっているか確認するための手段にもなっています。

また、ロジカル・シンキングの思考においても、コミュニケーションにおいても、「分けて」「並べて」みることが基本で、それをもとに比較したり、取捨選択したり、組合せたりして意味を見出していきます。

従って、今回紹介したもの以外のフレームワークも「分けて」「並べて」整理するのに便利であればロジカル・シンキングの道具箱に入れておくべきフレームワークと言えます。

ただ、フレームワークは手段にすぎないと言うことだけは常に意識してください。作業になれてくると目的を忘れてしまいフレームワークさえ埋めればロジカル・シンキングができているような錯覚に陥ることがあります。
個人で作業をする場合もチームで取り組む場合も「この作業は何の目的でやっているのか?」「これで目的が達成できるのか?」と問うて見ることは非常に大切です。

まとめ

今回、ロジカル・シンキングを鍛えるための方法についてご紹介しました。ロジカル・シンキングを鍛えることで、ビジネスシーンにおける問題解決に役立てることができます。紹介した鍛え方を意識的に取り組むことで、物事を論理的に捉え伝える能力の習得及び向上に期待できます。また、ロジカル・シンキングは論理的思考の総合的なフレームワークの名称であり、その中にはさまざまな思考法があります。必要とされる場面に適切なフレームワークを使うことで、問題点や課題を解決に導くことができます。ロジカル・シンキングを鍛えることで、変化の早い現代のビジネス社会に対応できる思考力を習得しましょう。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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