総論賛成・各論反対とは?合意形成するために注意すべき点とは?

総論賛成・各論反対とは、あらゆる合意形成の現場でよく見られる現象です。

国会における政策の議論や、各自治体での公共工事に関する議論などで、よく話題に上ります。そして、総論賛成・各論反対は、組織の合意形成に対する高い障壁でもあります。

多くの企業にとっても他人事ではありません。総論賛成・各論反対は、社内の議論でも日常的に発生している現象のはずです。少数メンバーで成り立つ企業であれば起こりづらいでしょう。しかし、そうでない限り、総論賛成・各論反対は組織には必ず発生する現象と言えます。

本記事では、総論賛成・各論反対が発生する状況と、それを乗り越えて合意形成をする具体的な方法について、解説していきます。

総論賛成各論反対とは

「総論賛成・各論反対」とは、大きな方針には賛成を取り付けることができても、方針が具体的な個別の議論に落とされると、反対意見が噴出するような状況を言います。

例えば、「企業収益の早期改善に伴い事業のポートフォリオを再編」という「総論」が提示されたとしましょう。「A事業を他社に売却し、B事業に投資を集中する」という「各論」に至った場合、A事業部の人は、「なぜ?我々の事業部売却が企業収益向上につながるのか?」「我々はお荷物なのか?」と抵抗し各論を反対するかもしれません。B事業部の人は「投資と言っても販売?製造?研究開発?・・」と、疑問を抱くかもしれません。このように、「総論」自体が複雑な内容を単純化したものに過ぎず曖昧なため、言葉だけが独り歩きする状況となり「各論反対」がでることは必然です。「総論賛成各論反対」という言葉自体が、悪い意味で扱われますが、むしろ現状では、「各論反対」すら出て来ない企業や職場が多いのではないでしょうか。各論反対とされる意見や反応は、議論の余地があり、企業や職場の計画であれば、不備の発見の可能性もあります。もしくは、心理的抵抗であれば、モチベーション問題の発見につながるかもしれません。

健全な企業なら総論賛成・各論反対は起きて当然

組織の問題を考える際に、総論賛成・各論反対は、組織や職場の意思決定や行動を合意形成する過程において、発生する現象と言えます。

私たちは物事を決める際、ついつい総論を合意してから各論を詰めるという進め方をしてしまいます。しかしこのやり方は、総論賛成なら各論も賛成であるはずだという考えに立脚したものであり、総論賛成・各論反対を引き起こします。

また、多様性が重要視される時代に、個人の意見が異なることの現れである、総論賛成・各論反対を批判するのはあまりいいことではありません。総合的な戦略がないと個別の戦略を作ることはできないという意見もありますが、個別を重視することは、総論を徹底するためにも重要と言えます。

先に総論についての合意形成を図るということは、「総論賛成・各論反対」における「各論」を軽視するという意味ではなく、「総論」という「各論」を議論する前提にある認識を揃えているに過ぎず、各論を実質的に合意するものではありません。そのため、総論賛成・各論反対に対する短絡的な批判は、実は「そもそも議論をする気がない」という心理的側面を内包しています。もし「総論賛成・各論反対」な状態になっていると感じるのであれば、その状態を批判するのではなく、議論や対話の機会と捉えるべきです。

議論や対話の際に重要なのはミドル層である中間管理職の立ち位置です。ミドル層である中間管理職が幹部や社員と双方向で腹を割って話せる状態にしておくことで、信頼が醸成され会社全体として総論と各論を共有することができます。各論反対が起きるのは当たり前であり、チャンスであるという捉え方をすることで、各論を共有しその上で議論しなければならないのです。

総論賛成・各論反対が起こる場面

それでは、具体的にどういったときに、総論賛成・各論反対の状況が生まれるのでしょうか。 たとえば、「デジタルトランスフォーメーション推進」という会社としての方針(総論)を、社員と議論して合意したとします。しかし、具体的な対策を考える段階になって、社員それぞれの個別の業務に影響がある話になってくると、「また仕事が増えた」「人が足りない」となります。

その「やりたくない」の背景には、不安や不信など心理的な問題と、業務量など物理的な問題が合わさって発露されています。しかし、社員それぞれに個別の理由があることも考えられます。経営陣は無理やり推進することもできるかもしれませんが、こうした社員個別の反対理由は、必ずしもわがままで、非合理的なものだとは言えません。

大規模組織では経営陣は、個別に専門化サイロ化された業務や社員一人一人の多様な状況を正確に把握することは物理的に不可能です。仮にすべてを把握したとしても、経営陣の意思決定や方針は総論にならざるを得ません。では、総論賛成・各論反対が起こることは組織の必然として諦めるしかないのでしょうか。

この問題を解決するためには、ミドル層である中間管理職の役割が重要になります。ミドル層である中間管理職のコミュニケーションが機能していない場合は、社員の業務も心理も発露されない面従腹背の状況になります。面従腹背とは、表面上は理解しているように見せているものの、内心では納得していないという状態です。総論賛成・各論反対の問題を解決するためにはミドル層である中間管理職が、社員一人一人の意見を取り入れ、ボトムアップのコミュニケーションを機能させなければなりません。そのためには、当事者意識と議論や対話を中心としたコミュニケーションスキルが重要となります。

総論賛成・各論反対すら起きない場合

各論反対すら顕在化せず、面従腹背の状態が続く場合があります。

昨今の総論は「SDGs/ESG」「DX」など、そもそも社会的にも曖昧模糊としているものが多く、実態としても表面上しか理解できない可能性すらあります。面重複背の従業員は、「やっているふり」をするので、高いパフォーマンスは期待できません。

しかし経営側から見ると、表面上はきちんとやっているように見えるので、パフォーマンスが低い原因は何なのか、問題の認識さえ危うくさせます。さらには社員のアンケートにも問題が可視化されないケースも少なくありません。各論反対すら起きないケースは、このような面従腹背の可能性があるため、むしろ注意が必要です。

総論賛成・各論反対における合意形成の本質とは?

総論賛成・各論反対の合意形成のプロセスには、「心理的な納得」と「論理的な納得」が必要です。意見の対立においては、わかりやすく言うと、「心理的な納得」のためには、相手の感情に訴え口説く、説得のようなアプローチが必要となります。「論理的な納得」のためには、双方が譲歩できるラインを探り、妥協案や折衷案を出すことが必要です。

論理的に納得していたとしても心理的に納得していなければ、表面上は合意形成したように見えても、アクションまでつながりません。面従腹背となってしまうため、「心理」と「論理」の両面から納得できるような議論が求められます。

総論賛成・各論反対の合意形成において重要なのは、「心理」と「論理」の両面から納得できることです。しかし、ビジネスにおいては時間的とリソースなど制約があり、心理と論理の完全に整合性の取れた合意形成など存在しません。そのため、各論の議論において、「心理」と「論理」の両面から納得できる状態に近い状態に持っていく必要性があるのです。

総論賛成・各論反対以外に、合意形成できない場合

総論と各論がある議論のなかで、合意形成できない状況は、大きく以下の3つのケースに分けられます。

  1. 総論にそもそも反対
  2. 総論に賛成だが各論には反対(=総論賛成・各論反対)
  3. 総論には反対だが各論には賛成

たとえば社内改革を進めようといったときに、反対意見が出てくることは少なくありません。1.のように社内改革そのものに反対が出る場合や、2.のように具体的な対策で反対が出る場合(=総論賛成・各論反対)、3.のように改革の思想には賛成できないが個別の対策は賛成できるという場合が考えられます。

どれも、合意形成が難しいケースと言えますが、1.の場合は、総論の議論をまず深めること、3.の場合は、合意が取れている個別の具体的な対策から進めて行くことが選択肢のひとつと言えます。

本記事の主眼である2.の場合も、実は1.である人がまぎれていることがあります。その場合は、総論の議論を続けましょう。

また、1~3のどの場合でも、単に方針や施策について、詳細を理解できていないために反対をするケースもあります。その場合も、丁寧な議論と説明の時間をとることが重要です。

総論賛成・各論反対の中で合意形成するために

それでは、総論賛成・各論反対を、どうやって乗り越えていけばよいのでしょうか。合意形成するためには、反対者も含めてとことん話し合うという基本に帰る必要があります。誰がどのような意見で賛成や反対をしているのか、きちんと向き合いましょう。 そもそも総論賛成・各論反対のような状況を引き起こさないために、各論についての具体的な話や情報開示をせずに総論を通してしまうような会社があります。全部をつまびらかにすると、反対する人が増えることを恐れるためです。しかし、そうした対応をとっていると、施策を実施する段階になって問題や反発が発生し、最悪の場合は総論にすら反対される状況にもなりかねません。

もちろん各論に反対する人の中には、単に利己的で、既得権益を守りたいだけの人もいます。なぜ相手が反対をしているのか、総論賛成・各論反対の心理を見抜き、丁寧に合意形成をしていくべき相手なのか、そうでない相手なのか、きちんと見極める必要があります。

反対者と向き合い、反対者も賛成しうる案を模索する中で、各論に複数の選択肢を用意することもできます。また、反対者以外の意見も取り入れて、反対者の意見をどの程度重要視するべきか、バランスを考えることも重要です。

まとめ

今回は、総論賛成・各論反対について解説しました。総論賛成・各論反対はどの組織でも発生する現象ですが、円滑な合意形成にとっては障壁となります。

総論賛成・各論反対の心理を理解し、単に批判して終わりではなく、具体的な対策をとりましょう。総論賛成・各論反対の中で合意形成するためには、反対者も含めてとことん話し合う必要があります。その際に重要となるのが、社内コミュニケーションのあり方です。

社内のコミュニケーションの円滑化にお困りの際は、ぜひソフィアにご相談ください。インターナルコミュニケーションのプロフェッショナルが、貴社をお助けいたします。

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