経営者視点はなぜ必要?経営者視点を身につけるためのポイントを解説

幹部候補の社員など、企業の中で次世代リーダーと目される人材は、「経営者視点」を持つことが経営者から期待されています。しかし、たとえ経営幹部であっても、全社が見えるようなポジションにいなければ、本当の意味での経営者視点はなかなか身につかないものです。そもそも会社を経営する立場にない人材に「経営者視点を持て」というのは無理があり、次世代リーダーに経営者視点を身に着けさせることの難しさを実感している経営者も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、なぜ次世代リーダーが経営者視点を持つことが必要なのか、あらためて確認しながら、経営者ではない社員に経営者視点を身に着けてもらうためのポイントについて解説していきます。

経営者視点とは

まず、そもそも経営者視点とはなんなのでしょうか。

経営者の「視点」は、「①視点」、「②視野」、「③視座」に分解することができます。

「① 視点」は、どこを見ているか、ということを表しています。

経営者が見るべきところは、具体的には、

  • 自社の財務状況
  • 市場の状況
  • 自社のビジネスの仕組みやオペレーション
  • 社内人員やその他のリソースの配置、活動状況
  • 競合他社、顧客、取引先の動向

などがあり、その他社内外のあらゆる情報を多角的に見る必要があります。これが経営者の視点です。

「② 視野」は、見ている範囲の広さや遠さを表しています。

経営者は、物事の全体像を捉え、俯瞰的に見ています。
例えば、ある特定の顧客の売上が急激に伸びることは、営業的な面からみると素晴らしいことのように思えますが、特定の顧客の売上シェアが高まることはリスク要因にもなりますし、与信の面でのリスクも考える必要があります。
このように、ある特定の分野から見たらポジティブなことでも、他方でリスクがあるというようなことはあらゆる場面で起こります。そのようなときに、経営者は全体的な視野でバランスを見る必要があるのです。また、短期的ではなく、3~10年というような長期的なスパンで見ることも経営者の持つ視野の特徴であると言えます。

「③ 視座」は、どこからものを見ているか、ということを表しています。

ビジネスにおいて何かの課題や問題にぶつかった場合、問題のある特定の部分や、側面のみを見て判断するのではなく、さまざまな側面から物事をとらえて、時には全く反対からみたり、批判的に考えることのできる能力も重要になります。
例えば、Aという商品の売れ行きが悪い場合、同じ市場に対して営業工数を増やすという対策ではやや短絡的です。A商品を売っている市場にB商品は売れないか、逆はどうか、売れ行きの悪いA商品はそもそもニーズが少ないので積極的に販売せずにB商品の販売にリソースを注ぐかなど、多様な視座から眺めてみれば選択肢は増え、新たな気づきやアイデアも生まれるかもしれません。

また、経営者になれば、ステークホルダーを含めたあらゆる立場の人たちのことを考えなければなりません。部門部署、社員、顧客、取引先、株主など、それぞれの立場に立って会社やビジネスを客観的に見ることが重要になります。

多角的な視点、広い視野、高い視座、これら3つの要素を総合したものが「経営者視点」であると考えられています。

経営者視点を持つべき理由

では、なぜ企業の次世代リーダーは経営者視点を持つべきなのでしょうか。

それは、各部門・部署に経営視点を持った人間がいることで、各組織における判断や行動のスピードと精度が上がりやすくなるためです。

より現場に近い人材が経営者視点を持ち、経営の意向を踏まえたコミュニケーションを現場と行うことで、会社のビジョンや戦略に対する当事者意識が現場に生まれ、それらに沿った判断や行動ができるようになります。
また、リーダーが経営者に近い視点を持っているため、経営層とコミュニケーションをとる際にも、経営者が求めている情報を適切に伝えやすくなり、判断やレスポンスのスピードも上がりやすくなることも考えられます。

これは、経営学者であり一橋大学の名誉教授でもある野中郁次郎氏の提唱する「全員経営」のあり方に近いものです。
野中氏は、著書『全員経営』の中で、組織の構成員一人ひとりが実践知を発揮し、価値を創造する企業体制の構築方法について解説しています。実践知とは、現場で適切な判断を下すために必要な認識のことです。

VUCAの時代と言われ、企業として事業環境の変化への対応がこれまで以上に求められる中で、現場レベルでの判断や行動のスピード、コミュニケーションのスピードに対する要求も同様に高まっています。判断や行動のスピードと精度を上げるためには経営者視点が必要であり、経営者視点は実践知の発揮にも寄与するものなのです。

社員が実践知を発揮できるようになるには、社内の情報がフラットであることが必要です。それは、経営陣が見ているのと同じようなデータに、社員もアクセスできる環境を整えるということです。BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)やイントラネットを利用すれば、社員が実績値を発揮するために必要な情報を社内に開示することは難しくありません。

社員が経営者視点を持てない理由と、持たせるための方法

ここまで、次世代リーダーと目される社員が経営者視点を持つべき理由について解説してきました。では、なぜなかなか社員が経営者視点を持てないのでしょうか。

最も大きい理由は、記事の冒頭でも述べたとおり、「そもそも会社を経営する立場にない人材に『経営者視点を持て』というのは無理がある」ということです。経営者が見ている情報に触れることができなければ経営者視点を持ちようがありません。また、もし情報だけ持っていたとしても、経営に対する責任も権限もなく、経営対する影響力がまったくないのであれば、経営者視点が身に着く可能性は低いと言えます。

次世代リーダー層の社員が経営者視点を持つためには、経営側はどのような環境を要するべきなのでしょうか。最後に、社員に経営者視点を持たせるための方法について解説していきます。

コミュニケーションプラットフォーム上でデータを開示する

1つ目の方法は、前述したとおり、経営者が見ているさまざまな経営指標を社員に開示することです。これによって社員に「経営に参画できている」という意識を持つことができます。

ERPシステムを導入したり、主要な経営数値レポートをBIツールなどでグラフ化し、イントラネット上で社員に共有するなどの方法があります。
また、社長ブログや社内報などで、経営層が自ら経営指標や経営判断についての解説や見解を発信するなど、社員に関心を持ってもらう工夫をするのも良い方法でしょう。

責任の範囲を増やしていく

会社についていくら知っていても、自分に影響力があると感じることができなければ、本当の意味で責任を持った行動や判断はできるようになりません。
それぞれの人材の現状の立場よりも、1段、2段重い役割を与えていくことで、社員の視点も責任感も上げていくことができます。一足飛びに経営者視点を持たせるにはリスクがあるため、地道な教育が必要ですが、1段ずつ経営者視点に近づけることで、最低限のリスクで着実に成長を促すことができるのです。

経営業務を経験させる

経営者視点を身につけるいちばんの近道は、実際に経営業務を経験することです。具体的には、子会社の経営や、新規事業に、中期経営計画の策定などに携わらせることが考えられます。

これらの試みは、いきなり丸投げして任せていてもうまく進まないことも多々あります。また、経営に関わる重要な役割であるため、うまくいかない場合のリスクも重大です。そのため、リスクヘッジのために外部コンサルタントやコーチャーを付けるケースもあります。

まとめ

経営者という立場に立つ人は限られており、社員全員が経営者視点を持つことは現実的ではありません。
しかし、次世代のリーダーはもちろんのこと、部門や部署を率いる立場のマネジャー層、現場のリーダー層などが少しずつ経営者視点を身に着けていくことができれば、より現場が自律的に物事を判断し、責任を持った行動につなげることができます。それによって、企業全体の活動量、活動スピードが向上し、生産性の高い組織にしていくことが可能になるのです。

しかし、社員に経営者視点を養うのは、簡単なことではありません。お困りの際は、お気軽にソフィアにお問い合わせください。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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