職場で感じる「モヤモヤ」をなんとかしたいあなたへ |Vol.2 問題を、自分の外に出してみる

“他人事化”によって見えてくるものがある

「プロジェクトをスムーズに進行できない」
「あの人とはどうしても話が噛み合わない」

こんなことを感じるとき、「自分のせいでうまくいかない」「あの人のせいでうまくいかない」と、自分や他人に非があると考えてしまうことがあります。でもそこから先、どうやって問題を解決したらよいのかわからず、ずっと「モヤモヤ」してしまう……。このモヤモヤには、適応課題(解決するためには当事者の痛みや喪失をともない、その状況に適応することが求められる課題)が隠れているかもしれません。

前回のコラムでは、 “バルコニーに上がって”自分と自分に関係する人たちを客観的に眺めてみることが、適応課題をあぶり出す一つの方法だと紹介しました。適応課題はダンスフロアにあり、その中にはあなた自身もいます。バルコニーから全体像を俯瞰して見ると、問題を自分の中にあるものではなく、自分から切り離した形でとらえることができるのです。この手法を、心理療法の分野では「問題の外在化」と呼んでいます。

「外在化」とは、言い換えるならば “他人事化”。やっかいな問題に直面しているとき、“バルコニーに上がって”自分や自分を取り巻く環境を遠くから眺めてみると、自分や誰かが変わらなくても「状況認識が変わる」ことで、問題を解決できるというストーリーが見えてくることもあるのです。

メンバー全員が納得できる答えを出すためには?

「自分のせいでうまくいかない」「あの人のせいでうまくいかない」という考えの根底にあるのは、「自分は正しいことができていない」または「自分は正しいことをしている」という「前提」です。そのため、たとえばあなたと異なる「前提」に基づいて物事を考えている人に、「ここが悪いから直してほしい」と言っても、納得してもらうことはできないでしょう。その人が腹落ちしていないままあなたの指摘に応じたとしても、組織やチームにとっていい結果にはなりません。まずは、「前提」が一人ひとり異なるということに気付く必要があります。

組織やチームのメンバーの中で問題を「外在化」することには、二つの意味があります。

一つは、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)のように、自分ではそれが当たり前だと思っているために普段意識を向けていないことや、自分が無意識のうちに「前提」としていることに気づくこと。ほかの人と対話し、自分の考えとは異なる考えと向き合うことで、それに気づくことができます。
もう一つは、ほかの人が何を考えているか知ること。「外在化」によって、その人の考えやそれを形成するに至った背景などについても知ることができます。

また、ここで理解しておきたいのが、「社会構成主義」という考え方です。
社会構成主義とは、「関係が意味をつくる」という考え方にもとづいた概念。わたしたちは物事の解釈を、自分が置かれている立場や経験、価値観などを通して行っているので、同じことを見聞きしても、どんな意味としてとらえるかは、人それぞれ違ってきます。

例えば、とある小学校の先生がクラスの子どもたちに「あいさつをしましょう」と指導するのは、あいさつをするのは社会のルールだから身につけてもらいたい、それが子どもたちのためだと考えるからだとします。でも、そんな先生の気持ちを知らなければ、子どもたちはあいさつを強制されていると感じてしまいます。言葉だけでやり取りをしても、その言葉の背景にあるものを共有していなければ、お互いの認識にズレが生じてしまうのです。

つまり、「なぜそれをするのか?」「どんな目的で、それについて話しているのか?」までチームや組織で共有していないと、表向きはまとまっているように見えても、どちらかの考えに“従う/従わない”という関係性のなかで物事が進んでしまい、いい成果を生み出すことはできないでしょう。

お互いの認識を「外在化」し、双方の「前提」を共有したうえで話を進めると、メンバー全員が納得できる答えを出しやすくなります。

メタファーやモノに、内面を投影してみる

では具体的に、どうしたら「外在化」できるのでしょうか。おすすめしたいのは、メタファーやモノを使う方法です。

メタファーとしては、サッカーチーム(*1)や幕の内弁当に関係者を当てはめてみる方法があります。例えばサッカーチームなら、あなたのまわりにいる人たちでサッカーチームをつくるとしたら、誰がどのポジションになるのか。幕の内弁当なら、あなたのまわりにいる人たちを幕の内弁当の食材に当てはめてみるとどうなるのか。そして、それぞれのポジション・食材に当てはめた理由や、バランスのよいチーム・お弁当にするために変えるべきことなど、掘り下げて話し合ってみます。

モノについては、LEGO®のようなブロックを使う方法(*2)がよく挙げられます。自分の考えていることや置かれている状況をブロックで形作り、形になったものを対象に話を掘り下げていきます。また、それぞれが作ったものを組み合わせることで、チームメンバーと共通のイメージを作り上げることもできます。メタファーやモノに投影することで、それぞれの内面が表に出てくるとともに、「何を実現したいと思っているのか」「何を失うことを恐れているのか」といったことも共有でき、メンバー全員が納得できる答えを出しやすくなるのです。

*1デイヴィッド デンボロウ(2016)『ふだん使いのナラティヴ・セラピー: 人生のストーリーを語り直し、希望を呼び戻す』(小森 康永・奥野 光 訳)北大路書房. P100-115より
*2 参考:LEGO® SERIOUS PLAY®とは?(Rasmussen Consulting)

質問し合うことで、自分の思考の枠から抜け出せる

「外在化」する作業は、一人より複数で行うことをおすすめします。一人だけで考えてしまうと、自分にとって当たり前のことには意識を向けにくく、自分の思考の枠から抜け出せないことがあります。一方で、会話する相手がいると、アンコンシャス・バイアスに気づいたり、視点を変えて考えやすくなります。問題を自分の外側に取り出して一緒に眺め、共通認識の形成をはかっていくのであれば、1グループ3~6名で話すことをおすすめします。

また、メタファーやモノを使って「外在化」する過程で大事なのは、絶対に否定しないこと。その人が「前提」としていることや、その考えを形成している背景に目を向けて、「なぜ、この人はそう思ったのか?」「なぜそのようなものを作ったのか」と、考えてみてください。

「外在化」することは、内面を外に出すトレーニングになります。これを、業務の合間などに、日常的にできるのが理想的です。そこで次回は、日常のなかに、対話する場や機会を自然につくる方法などについて紹介します

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株式会社ソフィア

Learning Designer

古川 貴啓

組織の風土、行動を変えていく取り組みを企画設計から、実行継続まで支援しています。ワークショップなどの対話を通して新たな気づきを組織に生みだし、新らたな取り組みを始めるための支援を得意としています。

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