
2023.01.26
ワークエンゲージメントとは?メリットや高める方法を紹介

目次
IT化、デジタル化による劇的な産業構造の変化によって、ワークエンゲージメントの重要性は日々高まっています。では、ワークエンゲージメントとは具体的にはどのようなものなのでしょうか。ワークエンゲージメントを高める方法や高めるメリットなどを詳しく解説します。
ワークエンゲージメントとは?
ワークエンゲージメントとは具体的にどのようなものなのでしょうか。ここでは、ワークエンゲージメントが話題になっている理由や定義について解説します。
なぜ今ワークエンゲージメントが話題になっている?
ワークエンゲージメントは2000年代初頭に、働く人に対するケアやセーフティネットの必要に伴い研究機関が唱え始めました。ではなぜ今ワークエンゲージメントが話題になっているのでしょうか。
日本では、1970年から2010年にかけて第1次産業と第2次産業の就業者全体の割合が減少しているのに対し、第3次産業の就業者数割合は増加しています。第3次産業の就業者数割合の増加により、より一層人に価値を置いたビジネスが重要となりました。また、第4次産業革命により、ITやAIの技術を人がどのように活用するのかが問われています。ワークエンゲージメント、つまり人と仕事との距離感に重きを置いて考えなければならない時代となっているのです。
ワークエンゲージメントの定義
ワークエンゲージメントは2002年、オランダのユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ教授によって初めて提唱されました。「活力」「熱意」「没頭」の3つが揃った状態を特徴とし、仕事で得る“持続的かつ安定的なポジティブな感情と認知”を概念として定義づけられています。
ワークエンゲージメントの測定には様々な方法がありますが、国際比較が可能で学術的に広く活用されているのが、シャウフェリ教授が開発したUWES:Utrecht Work Engagement Scaleです。また、ワークエンゲージメントのメカニズムについては、「仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)」で可視化することができます。これらの結果や分析に基づいて、ワークエンゲージメントを高めることによって、働く人の心身の健康を守り、仕事のパフォーマンス、組織コミットメントに影響を与えるという構造とになっています。
【仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)】
ワークエンゲージメントに関連する概念として以下の4つの領域があります。
1. | ワークエンゲージメント 活動水準が高く、態度・認知が肯定的で、ポジティプで充実した心理状態を示しています。 |
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2. | ワーカホリズム 仕事への責任を過度に感じ、仕事をしなければならないという強迫観念を持っている状態です。 |
3. | リラックス 仕事の目的や会社のビジョンを理解しつつも、ワークエンゲージメントほどポジティブではなく活動水準が低めです。 |
4. | バーンアウト ワークエンゲージメントの対局の概念。仕事への態度・認知が否定的な状態かつ活動水準が低下した状態です。 |
ワークエンゲージメントのポイントとなる3つの要素
ワークエンゲージメントとは、活力・熱意・没頭の3つの要素で構成されており、仕事に対してこれら3つの要素すべてが揃い、達成感に満ちた状態をいいます。さらにこれらの状態は一時的ではなく、持続的かつ全般的な感情と認知によって特徴づけられています。
活力
- 仕事から活力を得ていきいきとしている状態はワークエンゲージメントが高いです。仕事に取り組むエネルギーを高い水準で保持することができ、「活力がみなぎる」「精力的になる」「元気が出る」「楽しい」といった心理状態となります。困難な課題に直面しても粘り強く取り組むことができ、そういった場面でも比較的早く立ち直ります。朝起きた時は、出社意欲に満ち、職場にいると楽しい気持ちになります。
熱意
- 熱意があると仕事に誇りとやりがいを感じることができます。新しい挑戦や困難な課題も意欲的に挑戦することができ、探求究心が強くなるでしょう。楽しさ、喜びを仕事から得ることができる状態です。
没頭
- 没頭とは仕事に集中して取り組んでいる状態です。時間を意識することなく業務に没頭でき、満足感、幸福感を得ることができます。仕事への集中力が高まり、仕事の質の向上に繋がります。
日本はワークエンゲージメントが低い
2021年の米ギャラップ社の調査で、日本のワークエンゲージメントは5.3%(世界平均20%)と、東アジア諸国の中で最も低い結果となりました。経済産業省の調査でも日本はワークエンゲージメントが低いことが分かっています。
ワークエンゲージメントは、従業員エンゲージメントと同じ意味で使われることが多いので、この二つの違いについて整理しましょう。ワークエンゲージメントは「個人」と「仕事」に使われるのに対し、従業員エンゲージメントは「個人」と「組織」が対象範囲に含まれます。
ワークエンゲージメントは、働く人のポジティブで充実した心理状態を示します。また、従業員エンゲージメントは、貢献度、信頼性といった企業と人との相互理解度・共感度を示します。ワークエンゲージメントは、研究機関がアセスメント項目やデータを発表しているのに対し、従業員エンゲージメントは、コンサル会社などが中心にアセスメント項目やデータを出しているという違いもあります。
ワークエンゲージメントを高めるメリット
ワークエンゲージメントを調査することで、従業員の働くことに対する心理状態を可視化できるため、人材の流出や多様化する価値観への理解に対する課題が見えてきます。また、ワークエンゲージメントを高めることで、従業員のモチベーションが上がり、その結果、業績の向上が期待できます。
パフォーマンスの向上
ワークエンゲージメントを高めることによって仕事に対しポジティブな状態で取り組めるため、活力・熱意・没頭ができパフォーマンスが向上します。また、バーンアウトも防ぐことができるため突然、生産性が低下するという事象もなくなります。
メンタルヘルス対策
ワークエンゲージメントを高めることによって心が健康に保たれ、業務における心理的ストレスの発生が起こりにくくなる上、ストレスからの回復力が備わります。心の健康により仕事に対して高いモチベーションで取り組むことができ、生産性を引き上げることができす。また、モチベーションの高い従業員が増えることにより、組織の活性化につながり、働きやすい環境の構築が期待できます。
離職率の低下
エンゲージメントサーベイによって、従業員の本音を引き出し、これからのキャリア設計に寄り添うことができます。結果的に優秀な人材を失うことなく離職率を下げることにつながります。
ワークエンゲージメントを高める方法を紹介
ここでは、ワークエンゲージメントを高める具体的な方法を紹介します。
「個人の資源」「仕事の資源」のこの2つの要素が相互に関わり合うことでワークエンゲージメントを高めることができます。心理的ストレスは、これらの要素のバランスが取れなくなったときに起こります。この基本的要素をまず理解することが重要です。
個人の資源を管理する
個人の資源とは、従業員の内的要因であり、心理的ストレスを軽減させモチベーションを高めることです。チームや組織の中で自分の能力やスキルを最大限に発揮できる力を持つことが、自信に繋がります。また、ポジティブな考え方、レジリエンス(立直り、乗り越えること)やストレスを緩和させるセルフケアの向上も必要となります。
仕事の資源を管理する
仕事の資源は、会社側からアプローチする外的要因です。従業員が仕事に対して感じる精神的な負担やモチベーションのことを言います。仕事量のコントロール、コーチングやトレーニングの機会を与えることで適正な状態へと近づけます。また、パフォーマンスに対して正当でポジティブなフィードバックを行うことは従業員のワークエンゲージメントを高め、活力・熱意・没頭それぞれにおいてプラスに作用します。
仕事に取り組みやすい環境づくり
従業員が気持ちよく働ける環境づくりは重要です。心の健康を保つためには清潔で明るく綺麗なオフィスは欠かせません。仕事仲間や上司、部下とすぐにコミュニケーションが取れる開放的なオフィスは、チーム全体のワークエンゲージメントを高めるのに効果的です。
昨今、ワークエンゲージメントの向上を考えたオフィス設計を行っている企業も増えてきました。
仕事に取り組みやすい環境づくりには、「最終的に自分たちが決めたことがチームや組織に影響を与える」という組織風土も重要です。意思決定の際には選択肢をどれだけの範囲で与えられるかなど、組織文化が鍵となります。
様々な状況下で従業員に適した選択肢を与えると、ワークエンゲージメントは向上します。また、自身が選択した目標を達成した場合なども、ワークエンゲージメントは向上するでしょう。
しかし、実際にはワークエンゲージメントを管理することは難しく、ルールや制約の多い大企業で、上記をどう反映するのかが課題となります。まずは、リーダーシップをとってルールそのものを変えていく施策が必要です。課題を取り入れ、それを解決するプロセスそのものがワークエンゲージメントを高める上げるプロセスとなるでしょう。
そのためには、組織においてのコミュニケーションも重要です。特に上司や仲間とのコミュニケーションがしやすい場所の提供、また気軽に会話ができるチャットツールを導入し、いつでも意見交換がしやすい環境を整えましょう。コミュニケーションが円滑に取れることで、意思決定をスムーズに行うことができ、高いパフォーマンスを発揮できます。
ワークエンゲージメントの向上は報酬よりも組織改革が重要
「厚生労働省 令和元年版 労働経済の分析」によると、職場環境を改善させることにより、ワークエンゲージメントが上がる可能性が示唆されています。人件費を増加するといった費用負担が難しい企業であっても、業務改善によって見直しや工夫を行うことにより、ワークエンゲージメントの向上が可能です。
「厚生労働省 令和元年版 労働経済の分析」では、「年収のみが増加」では、ワークエンゲージメントのスコアに変化はみられませんでした。しかし、「仕事上の人間関係のみが良好になった」場合、ワークエンゲージメントのスコアに大きな向上がみられました。
つまり、報酬よりも人間関係や組織風土といった心の健康を保つ方がワークエンゲージメントに大きな影響を与えることがわかります。
まとめ
時代は劇的に移り変わり、従業員の価値観は多様化していきます。その中でのワークエンゲージメントの向上は重要な課題といえるでしょう。現在において企業のあり方にも変革が求められています。ソフィアでは「働く人の体験」を中心に置いた組織マネジメントを支援する会社として、一人ひとりの能力発揮と、組織の力を最大限につなげるワークエンゲージメントを実現するソリューションも提供しています。
ワークエンゲージメント向上を検討の際には、お気軽にお問い合わせください。
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株式会社ソフィア
先生
ソフィアさん
人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。
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