ボトムアップの意味ともたらす効果は?導入に向けたステップを解説!

ボトムアップとは、経営層・上層部が、現場の意見を吸い上げるかたちで意思決定を下すことです。従業員の意見を取り入れられるようになり、モチベーションアップ、組織の質の向上などにつながることが期待されます。他にもさまざまな効果があるボトムアップですが、メリットばかりではなく注意すべき点もあります。

この記事では、ボトムアップを取り入れるかどうか検討している方に向けてボトムアップを詳しく紹介します。導入する際に覚えておきたいステップも含めて徹底解説するため、ぜひ参考にしてください。

ボトムアップの意味

まずはボトムアップという言葉が指す意味と、なぜボトムアップという組織づくりの方法が重要だとされているのかについて整理しましょう。

ボトムアップの意味

ボトムアップとは、現場の意見を経営層・上層部がしっかりと把握した上で意思決定を下すことです。

その前段で従業員のリアルな意見を取り入れ、商品やサービスのブラッシュアップ、組織の質の向上などにつながることが期待されます。アイデアを提案するのは現場ですが、最終的にその案を取り入れるかどうかは、経営層・上層部が判断します。

ボトムアップの重要性

ボトムアップは、組織の運営において重要だと言われています。ボトムアップによって、どのようなプラスの変化が起こるとされているのでしょうか。

現代は不確実な要素が多く、すこし先の未来も見えにくいほど、さまざまな側面で世の中が変化しています。この時代において、正確に予測を立てて未来のための意思決定をするのは非常に困難です。

だからこそ、権限を下におろすかたちで、よりリアルな意見を、スピーディーに取り入れていくことが大切です。トップ型組織や自立型組織ではこのような柔軟な対応が難しいので、組織の力を落とすことにもなりかねません。

ボトムアップが文化として根付けば、社内コミュニケーションも円滑になります。組織内のやりとりが増えることで、とくに上司と部下の間が融和します

それにより意思決定のスピードも上がり、意思決定の内容もより柔軟なものに変化していくでしょう。従業員のモチベーションを高めながら、組織内のコミュニケーションを促進できるのがボトムアップの強みです。

ボトムアップを採用するということは、上層部が自らの予測する力や計画する力を良い意味で諦め、広く新しい発想を社の内外から取り入れることを意味します。今どんなに好調な業績に企業もそれは、過去の反映でそうなっているだけであり、未来の業績を保証するものではありません。この意味で、企業は常に革新を求められています。

商品やサービスの新しさは、どこから来るか、わからない時代になっています。何かと何かと掛け合わせることがイノベーションのであるのであれば、掛け合わす情報や人が発信するが重要になり、イノベーションと掛け合わす社内コミュニケーションは重要な関係にあります。

新規事業の提案や業務改善の提案など社内イベントにおいて、実際には採用される内容や効果の出る内容は、ほとんどが現在主流の部門から出てくるというより、現在の傍流の部門から出てくる場合が多いです。その理湯は、単純で主流部門や稼ぎ頭部門は、経営として最大の注力がされているため、ある意味完成しているという認識も多く、逆に言えば大きな変化を嫌う傾向にある

つまり、ボトムアップを成功させるためには、社内の一定の多様性が行き渡り、新しいアイディアを言い出しやすい雰囲気があるかどうか?が決め手となります。主流ではなく亜流の、稼ぎ頭の部門ではなく、傍流の部門の意見も多く発言できることが重要です。

また、新しいアイディアを出す人は、誰からどこから出てくるかが、分からないものなので、経営者は特に画一的な人事制度上の尺度で、社員を評価する部分と、並行して感性や個性と言った企業の中で、評価されにくい側面にも、目を向ける視点や目に見えない評価が必要です。わかりやすい言えば、出来る変人をどれだけ多くかかえているか?が、新規事業を成功させる第一歩になります。

トップダウンとボトムアップの関係性

ボトムアップについて詳しく語る前に、ここでトップダウンについてあらためて整理しておきます。

トップダウンはボトムアップの反対に置かれる概念だと思われがちですが、単純にそうとも言い切れない側面もあります。トップダウンと言っても、トップだけで物事を決めるわけではありません。トップが意思決定をする判断材料に現場の意見が反映されることもあるからです。

そのため、考えようによってはすべてトップダウンともボトムアップとも呼べるのです。ここでは「トップがアイデアを出しトップが意思決定を下す」という部分について、トップダウンの特徴を整理していきます。

トップダウンは情報の正確性と緻密性を損なう可能性がある

トップダウンの組織では、経営層・上層部が、意思決定における重要な役割を担います。経営層・上層部にとっては、計画通りに物事を運ぶために適した方法でしょう。

しかし、経営層・上層部は、現場で起こっている細かい状況や、ニーズの兆しなどの小さな変化を必ずしも把握できているわけではありません。数千人、数万人規模の大企業では不可能です。創業者が経営者の場合は、現場の細かい文脈や顧客ニーズのインサイトを正確を少ないボトムアップの情報で、把握できるのは、自分で業務を創り育てた経験がある為可能な場合があります。しかし、現在のほとんどの内部昇格による経営陣においては、至難の業です。

下した意思決定が現場にそぐわないものになる可能性も十分にあります。だからこそ細かい情報収集、分析をした上で意思決定を下すことが大切です。

そのためには、実際に現場でリアルな状況に触れている従業員と密接に関わらなくてはなりません。従業員からの情報提供や、経営層の判断についてフィードバックをもらったりすることで、正確性を高められます。

さらに権限委譲された中間にいる組織のリーダーが、トップダウンとボトムアップを組みあわせつつ判断を下すことができれば、効果的に意思決定が行えるでしょう。

正確さを重視して丁寧に行えば、当然スピードは落ちてしまいます。しかしいくら迅速に意思決定ができても、中身が曖昧で方向がズレたりしていたら意味がありません。速さと正確さのバランスをとりながら進めていきましょう。

企業の上層部へ行けばいくほど、現場の社員との接触が減り、直属との部下とのみ情報伝達を行う傾向が増えていきます。純粋なトップダウンをありえず、トップダウンするとしても現場の1次情報をできるだけ、取り入れていかねばならない訳ですから、経営陣に最大の業務はコミュニケーションにあります。

勿論すべての声を実現できるわけではありません、しかし、現場に出ることで、その場の雰囲気や社員の態度などから経営者は多くのヒントを得らるはずです。企業の現場の生き物のようなもので、うまくいっている場合もあれば、落ち込む場合もあります。経営者は何よりも現場に社員や顧客の声に耳を傾けることが、コミュニケーションこそが、トップダウンを成功させる鍵となります。

トップダウンは生産性やモチベーションの低下を招くことがある

トップダウンで組織を動かす場合に注意すべきなのは、一方的な命令や指示が、従業員の自律性を弱める可能性があることです。従業員が、自分のアイデアが活かせず、能力が評価されていないことに不満を抱き、モチベーションを保てなくなることがあります。結果として生産性が下がり、組織としての弱体化も懸念されます。

酷い場合は、「言ったもん負け文化」という状況にまで発展します。これは、「言ったもん勝ち」をアイロニックに揶揄した言説です。提案やアイディアを職場や組織に発信すれば、その提案やアイディアを実行する業務にアサインされ、業務が増え、且つあまり評価もされない。従った「言った人が負ける」という構図になるということです。

社員の自律性が社員の得にならず損をする組織構造や組織文化は、ボトムアップなどは到底起きません。逆に言えば、ボトムアップを促進することは、社員の自律を促し、社員が得をし「言ったもん勝ち」の状況にすることに他なりません。

結局、社員の自律性とボトムアップの組織運営は因果関係にあり、ボトムアップを目指すことは、社員の自律をめざすことと同義です自律的な組織を作れば、従業員一人ひとりの能力が発揮され、結果各々が判断軸を持ちながら自発的に行動するようになるでしょう。自主的に動く社員が多くなると、現場の雰囲気も変わります。

もしこのような組織を作ることができれば、リーダーシップがなくても組織は動きます。リーダーはリーダーシップをとるよりも、単に目標を明確に示し、どのようにして達成していくのかを助言するだけで十分です。従業員のふるまいについて適切にフィードバックを返せると個々の成長を促せます。

組織の力を効率よく高めるためには、自律性が必須だと言っても過言ではありません。トップダウンは場合によっては組織内の反発のもとになることもあるので、どの意思決定の仕組みがもっとも組織のためになるか、今一度考えることが大切です。

ボトムアップがもたらす効果

ボトムアップで組織を運営すると、組織の成長につながると言われます。具体的にどのような変化が起きて、組織は成長していくのでしょうか。以下では、ボトムアップがもたらす効果についてまとめます。

社員の自己実現

ボトムアップを取り入れると、社員の自己実現につながります。ボトムアップでは現場の声や具体的なアイデアが組織に積極的に取り入れられていくので、従業員は自分の存在価値を感じることができます。

自己実現欲求が満たされ、組織に貢献している感覚も得られるので、仕事へのモチベーションが大きく向上するでしょう。

このような環境は社員の成長を促し、個々の能力を最大限に引き出すという点において非常に効果的です。一人ひとりの従業員のパフォーマンスが上がれば、組織全体としてのパフォーマンスも向上し、大きなプラスが得られるでしょう。

社員のモチベーションは、実は給与や収入だけではありません。もしお金がだけが基準ならば、今では大企業となっているメーカーが、当初は給与が出せるが分からないような状況で、社長と社員が、新商品を創っていった過程を説明できません。新しいものを創っているという感覚は、お金と別な次元で、人を興奮させ、力を発揮させます。

一方、日本企業の多くは、新しいアイディアや業務改善の提案をしにくい状況にあるのではないでしょうか? 新しいアイディアを出しても、採用されない。業務改善の提案をしても、自分の増えるだけで、周囲の不況を買ってしまう。「言ったもん負け文化」です。

これでは、社員は何もしないことが自分の取って一番良い処世術だと思うようになります。人は習慣化されてしまうと、そこから抜け出すことは難しい。

多くの社員にとって、会社こその自己実現の場です。生活の多くの時間を職場過ごすわけです。その中で、自分が提案したアイディアや改善が少しづつでも現実化していくことこそ、社員としての、幸福であり、企業のとしての発展の鍵です。これを忘れて、日々の目の前の仕事だけが、過ぎ去ればいいという社員ばかりになると、その会社にもう発展はありません。、トップのその危機感を持てるかどうか?。社員がその危機感を理解をするかどうかにかかっています。

イノベーションの促進

ボトムアップで意思決定を下す際は、社員の小さなアイデアや提案に寄り添い、真摯に検討を重ねることになります。

今までにない視点のアイデアが生まれるので、サービスや製品にイノベーションが起こる可能性も十分にあります。現場から上がってきたアイデアを組み合わせるなど、柔軟な意思決定がされる環境になると、社内全体におけるイノベーティブな雰囲気も生まれ、組織が活発化するでしょう。

新規事業の提案やデジタルトランスフォーメーションなどのイノベーションの種を多く企業が血眼になった探索してします。

人間の本質には、「人は新しいものを創りだす時、本質的な喜びを感じる」という本能があると、古くはアリストテレスから、近代では、ヘーゲルやマルクスに至るまで、多くの哲学者は提示しています。だからこそ、カール・マルクスは、共産社会になって、報酬が意味をなさなくなっても、人は新しさを創り続けると、説きました。しかし、実際の共産国家のほとんどは、「言ったもん負け文化」が社会主義国で蔓延することになり、旧ソ連と東欧諸国の崩壊を招きました。これは格好の反面教師でしょう。

人間を新しいものを創りだす喜び生き物であるということは、イノベーションであり、変化を産み出すことで、それはボトムアップで起きるものです。しかし、ボトムアップは、変化を恐れず、新しい提案を出せば、採用されるかどうかは別にしても、レスポンスがある事。何よりもそのような前向きな姿勢を組織全体として評価する雰囲気がある事。これらが、今後伸びていく会社と徐々に崩壊していく会社の分かれ道ではないでしょうか?

顧客満足度の向上

上記のようなイノベーションが起こると、従業員のアイデアが反映されたサービスや製品が生み出されることになります。従業員は、経営層よりも顧客に近い存在であることが多いので、自然と顧客が欲しているものにサービスや製品を近づけていくことができます。その結果、顧客ニーズを満たし、顧客満足度の向上に貢献します。

また、自身の意見やアイデアが取り入れられ、モチベーションを高めた従業員は、従来よりも主体的に業務に関わるようになります。これが顧客目線でサービスの質の向上になるケースも多く、従業員が積極的に顧客とコミュニケーションをとるようになれば、信頼関係も強くなり、顧客の満足度はさらに上がるでしょう。

営業現場や顧客の第1線の部隊は、日々顧客対応に時間を謀殺され、顧客満足度を更に上げる業務を中々進まないものです。

現場のリーダーが常に最先端に気を配り、変化を恐れず、役職に関係なく顧客や営業メンバーの意見を聴こうという姿勢を示せば、最初は冷ややかに見ていた社員たちも、やがては、目の前の仕事をどうしたら効率的にできるか?、顧客のからの要望をどうしたら製品化できるか?、について徐々に口を開き始めるでしょう。リーダーがボトムアップをを求めるならば、職場の改善はまずはリーダーからです。リーダーが何も変化せずに社員にだけ変化を求めても、聴く社員はいないし、いたとして、つぶされて、最悪の場合には離職にもなり得ます。

ボトムアップの導入のステップ

ボトムアップのメリットを多数紹介してきました。組織をうまく運営するためにも、ボトムアップは有効です。そこで実際にボトムアップを導入したいと思った際に知っておきたい、導入までのステップをご紹介します。

社員へのアンケート調査の実施

ボトムアップを導入することを提示する前に、社員にアンケート調査を行います。組織に関する幅広い意見や要望を細かく把握して、現状の組織が抱えている問題点を洗い出しましょう。

アンケートの結果を分析すると、とくに多くの従業員が不満を覚えているポイントがあるかもしれません。改善すべき要素が見つかった場合は、どこを改善するのか、どのような不満があがったのかをあらためて整理した上で、具体的な改善案を作成します。

リスクマネジメントの策定

続いて、現状の組織にボトムアップを取り入れることを想定し、細かいリスクを洗い出していきます。リスクが顕在化したときに冷静に対処できるように、リスク回避策をあらかじめ定めておきましょう。

ボトムアップ文化を醸成させるためのワークショップ

いよいよボトムアップを進めていく段階です。まずはボトムアップの意義やメリットについて、従業員に説明し納得してもらいましょう。

ボトムアップで物事を進めると決めたら、次に行いたいのは現場の雰囲気の改革です。従業員が自分たちのアイデアを出してくれないとボトムアップは成功しないので、どのようなパーソナリティの社員でも意見やアイデアを提示しやすい雰囲気づくりを、意識的に推し進めていきます。
同時に、従業員のチームビルディングやコミュニケーションスキルを高めていくことも大切です。環境と構成員の能力の両輪で変えていくことで、スムーズな浸透・実現を図ります。

ボトムアップのデメリット

ボトムアップには、メリットばかりではなくデメリットもあります。以下では考えられるボトムアップのデメリットをまとめます。

幅広い視野の欠如

ボトムアップを行うと、個々の小さな要素に注目するかたちになり、視野が狭まることがあります。その結果、大局的な視野が欠けてしまうことが懸念されます。全体像をうまく見ることができなければ、プロジェクト単位の成功や、ビジネスそのものの成功が遠のく可能性があるでしょう。意識的に視野を広げ、全体的な方向性に誤りがないかを考えるようにしましょう。

時間とコストがかかる

ボトムアップの手法は、うまく取り入れようとすると時間とコストがかかります。なぜなら個々のアイデアや意見を聞き、それらの要素を分析し、工夫しながら組み合わせることでようやく意思決定になるからです。円滑に進めるためには、社内コミュニケーションが活発になるように推進したり、意思決定のフローをブラッシュアップしたりする必要があります。

ボトムアップを行う上での成功のポイント

ボトムアップにはデメリットもありますが、あらかじめ意識しておけば、デメリットを回避することもできます。ボトムアップを成功させる上で重要になるのは、どのような点でしょうか。押さえておきたいポイントを最後に解説します。

コミュニケーションプラットフォームを用意する

コミュニケーションをいかにスムーズに取れるかが、ボトムアップの成功を左右します。そこでおすすめなのがITツールを活用しコミュニケーションプラットフォームを充実させることです。たとえばチャット機能を活用すれば、従業員の意見の取りまとめが簡単です。どこにいてもリアルタイムで社員の意見をまとめられます。これにより施策に反映するまでのスピードが上がり、時間や人的コストがかさむ懸念を払拭できます。

積極的な意見や前向きな意見を言いやすい環境を整える

ボトムアップでは、従業員からの意見がなければ組織は動きません。そこで、いかに発言しやすい雰囲気があるか、自由な発言が歓迎される雰囲気があるかが大事です。

もし現状の社内の雰囲気に課題がある場合、意図的に空気感を変えていかなくてはなりません。前向きにチャレンジしてアイデアを出せば歓迎されるという環境ができれば、従業員は能動的に物事を考えるようになるでしょう。若手でも柔軟な意見を提案してくれるはずです。

社員が「自分が上司の立場ならどうか」と俯瞰して物事を見られるようにもなるかもしれません。より広い視点を持てるようになり、従業員のスキルアップのきっかけにもなります。

双方向のコミュニケーションを促す

ボトムアップで多くのアイデアを出すためには、積極的に意見を交わすことが重要です。意見を交わす場の前提条件は、双方向のコミュニケーションがあることです。

どれだけオープンな組織風土を醸成できるかにかかっています。組織によってはなんらかの暗黙のルールがオープンなコミュニケーションを阻害しているケースもあるはずです。組織をがんじがらめにしている要素を外していくことで、新しい風土を作っていきましょう。

まとめ

経営層・上層部が、現場の意見をもとに意思決定を下すボトムアップです。従業員のモチベーションアップや組織の質の向上などにつながることが期待され、多くの企業から注目を集めています。ボトムアップの効果をより生かすためには、意見を出しやすい雰囲気づくりや、コミュニケーションをスムーズに取れる環境づくりが重要です。

ボトムアップを取り入れる場合、上記を意識して円滑な組織運営に役立ててください。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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