
2020.05.27
在宅勤務のデメリットとは?起こりうる問題と解決方法を解説

目次
感染症拡大という社会情勢の急激な変化に伴い、主に都心部の企業において在宅勤務の導入が急ピッチで進められるようになっています。しかし、十分な準備を行わないまま在宅勤務を導入してしまった企業では、さまざまなトラブルが噴出していることをご存知でしょうか。待望の在宅勤務だったはずが現実は早くオフィス勤務に戻りたいという声も一部で上がっており、ネットニュースなどでもしばしば取り上げられている状況です。
本記事では在宅勤務のデメリットと起こりうる問題について紹介するとともに、その解決法を踏まえて在宅勤務を円滑に導入するポイントを解説します。
在宅勤務が注目される背景
在宅勤務そのものは以前から一部の企業で導入されていましたが、国を挙げて働き方改革推進の動きが高まり、その一環としてここ数年で在宅勤務が改めて注目されるようになっていました。
在宅勤務は、従業員が時間や場所に縛られることなく柔軟に勤務できる新しい働き方「テレワーク」の一形態を指し、働き方改革ではこのテレワークを推進しています。育児や介護といった従業員の家庭事情による離職を抑止する効果や、遠隔地の優秀な人材をリモートで雇用するといった効果、災害時にも事業を継続させられるといったメリットが期待でき、冒頭で述べた通り昨今の社会情勢も相まって急速に導入が進んでいます。
在宅勤務のデメリットと解決方法
現状、突然の社会需要に応える形で突貫工事のように在宅勤務を導入した企業も多く、数ヶ月経って企業と従業員双方のデメリットが少しずつ浮き彫りになっています。あなたの会社にこれから在宅勤務を導入する際、以下のデメリットを事前に把握した上で在宅勤務の構築体制を整えておくと、トラブルの発生を未然に防止できます。
従業員がオンとオフを区別できなくなってしまう
仕事との距離感は人によって千差万別です。会社でどれだけ意欲的であり、実際に成果を上げていたとしても、終業後は決して自宅に仕事を持ち帰らないというスタンスの人もいるでしょう。
本来、自宅は心身ともにリラックスするための空間です。在宅勤務によって仕事とプライベートの垣根がなくなってしまい、ストレスを抱える人が急増しています。この状況が最近では「在宅うつ」という言葉も生まれるくらいに深刻であることを、企業は把握、理解する必要があります。
この問題を解決するためには、従業員にとって快適な就労環境を作るサポートと適切な業務管理が必要不可欠です。自宅での就業環境整備にかかる費用の負担や、日々のストレスチェック、業務の配分量など、個々人を近くで観察できないぶん、今までよりさらに気を配る必要があります。
労働時間管理が難しい
就労状況を目視できない在宅勤務では、2つの面で労働時間の管理が困難です。
1つ目は「社員が業務に就いていない」という状態です。離席して他のことをしていたり休憩時間を多く取得しているという事態は、経営者の方々が真っ先に上げる懸念点です。
2つ目は、逆に「業務をしすぎてしまう」状態です。在宅勤務が性に合っている人は集中しすぎてしまい、休憩や終業のタイミングを自分で作れないケースが実際に指摘されています。また、時間内に作業が終わらなかったことを言い出せずに長時間労働を続けていたケースもあります。自宅での時間外労働はオフィスでの残業と異なり、従業員の精神的負荷が高まりやすいということを念頭に置いてください。
リモートワークにおける労働時間管理のツールとして、オンライン打刻機能やプレゼンス機能(従業員が離席していないことをチェックする機能)を持ったグループウェアがいくつもありますので、必要に応じて導入を検討してください。また、時間外のアクセス制限も有効です。
セキュリティの確保が難しい
これまで社内ネットワークによって厳重に取り扱われていた情報が、在宅勤務によって外部に流出してしまう可能性も大いに危惧すべき事項のひとつです。
シンクライアントによるリモートデスクトップや仮想デスクトップを活用するほか、暗号化通信、本人認証を行うことで遠隔作業でもセキュアな状態を維持することが重要です。
機器導入にコストがかかる
セキュリティ確保の点で触れたシンクライアントの導入には大きなコストがかかります。代替案として、内蔵しているハードディスク内に情報を保存できるリッチクライアント型パソコンを会社が貸与することで、セキュリティを確保しながらイニシャルコストを抑えられます。また、クラウド基盤のデジタルワークプレイスなど、グループウェア活用もコストの低減には効果的です。
コミュニケーションが希薄化する
在宅勤務が普及すると、社員同士が直接顔を合わせなくなり、雑談の機会も極端に減ります。これらは社員の意欲やエンゲージメントの低下につながる可能性があります。
解決方法としては朝夕にビデオチャットで顔を合わせたりボイスチャットで挨拶するなど、コミュニケーションツールを最大限に活用し、社員間の交流を絶やさないことが重要です。
従業員の評価が難しい
在宅勤務は個々の従業員の業務プロセスが不明確になりがちです。成果だけでなく過程も重視する日本企業においては、勤務時間内でどんな作業をどの程度行ったか、個人の成果だけでなくチームにどれだけ貢献したかも評価指標になります。マネジメント層はそれらを参考に業務の質や量のレベルを調整し、最終的には査定の対象とし、給与額の決定につなげます(ただし、営業部門に関しては完全成果主義のところもあります)。
個人の作業状況をチームメンバー全体が把握できるよう明確に伝えるのも在宅勤務における評価対象のひとつであるということを、マネジメント層と一般社員との間で共通見解として持っておきましょう。ただし、上司に提出する詳細な作業報告書の作成にメンバーが膨大な時間を使うようになっては本末転倒です。デジタルワークプレイスを導入すれば、余計な手間をかけずに各人の仕事状況をオンライン上で見える化できます。

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在宅勤務を導入するポイント
これまで挙げた在宅勤務のデメリットを踏まえた上で、あなたの会社が在宅勤務を導入する際に起きうる問題を未然に防ぐポイントを解説します。
在宅勤務導入の目的を明確化し全社で共有すること
現在は感染症の感染防止に対応するという明確な目的がありますが、これから在宅勤務を導入する企業においては、導入の目的を明確にし、全社で共有しておくことが重要です。社員にとっては負担が大きくなる場合もある以上、目的が不明瞭なままトップダウンで導入を図ると、現場に混乱と不満を招くことになります。
部門や人を限定し段階的に行うこと
業務内容がリモートワークに適した部門や部署を選定し、在宅での就労環境(机や椅子、インターネット環境など)ができるだけ整備されている社員に限定して少人数から試験的に導入していきましょう。そこからのフィードバックと改善を経ながら徐々に対象者を広げていくことで、トラブルを防止することができます。
在宅勤務の効果を評価・改善すること
在宅勤務導入後は、現場の声を丁寧にヒアリングし、効果を測定していきましょう。すでに発生している課題だけでなく、将来的に課題になりそうな点まで網羅して一つひとつ改善していくことが、長期にわたって在宅勤務を成功させる鍵です。
デジタルワークプレイスを導入すること
デジタルワークプレイスとは、業務に必要なツールやコミュニケーションに関するツールをオンライン上にまとめたグループウェアです。代表的なサービスがOffice365(現 Microsoft 365)で、各種アプリケーションをインストール不要で使えるほか、社内ドキュメントを閲覧したり、同時に共同編集ができたり、さらにそれらをオンライン会議の中で行うことができたりと、豊富な機能がシームレスに連携し、一ヶ所に揃っています。
そこにアクセスすれば、いつどこにいてもすべての業務を行うことができる、また自分のスケジュールや作業状況をオンライン上でチームメンバーと共有できるなどのメリットがテレワークという新しい働き方に適しており、導入時のコストが低く簡単に導入できる利便性もあって、現在とても注目を集めているサービスです。
まとめ
在宅勤務のデメリットにフォーカスを当てて解説を行いましたが、在宅勤務はきちんと課題を解消すれば、メリットのほうが大きく上回る勤務形態であり、これからの時代に即した働き方でもあります。将来的にはテレワーク本来の機能を発揮し、より柔軟な働き方へと発展していくでしょう。
今回は簡単な紹介に留めましたが、デジタルワークプレイスなどの導入と組み合わせると、真の意味で時間や場所にとらわれない自由な働き方を実現し、従業員の離職防止や採用時の魅力向上にもつなげることができます。
これからあなたの会社に在宅勤務を導入する際は、今回紹介したデメリットとその解決方法を参考に、施策を進めてみてください。
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