社員のペルソナ設定が組織活性化につながる理由

ペルソナという言葉を聞いたことがあるでしょうか。マーケティング関連の部門以外の方にとってはあまり馴染みのないものかもしれません。ラテン語の「persona」が由来であり、心理学の領域で用いられ始めたペルソナにはもともと「(古典劇において役者が用いた)仮面」という意味があり、ビジネスシーンでは主にマーケティング領域において、商品やサービスのターゲットとなる架空の人物像を作り上げてビジネスを加速させる手法を指します。
実はこのペルソナが、近年は経営課題の解決にも用いられるようになってきており、「社員ペルソナ」と呼ばれています。そこで本記事はこの社員ペルソナについて概説するとともに、社員ペルソナの設定が組織活性化において効果的である理由についても解説します。

そもそもペルソナとは

ビジネスにおけるペルソナはもともとマーケティング領域で生まれ、活用されている概念なので、まだご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。
マーケティングにおけるペルソナとは、サービスや商品を利用する典型的なユーザー像を意味します。実際にペルソナどおりの人物が存在しているかのように、デモグラフィック(人口統計学的)な分類である性別や年齢、居住地や年収に加えて、サイコグラフィック(心理学的)な側面の性格や価値観、ライフスタイルなどを加えて架空の人物を作り上げたものです。
ペルソナを設定することで、「この人はきっとこのような生活をしているから、こういう商品を求めているはず」「こういう広告に反応するはず」というように商品企画や販促企画の具体的なアイディアを出しやすくなり、これはペルソナマーケティングと呼ばれます。
そして、このペルソナをインターナルコミュニケーションやHRの領域に応用させたものが社員ペルソナです。社員ペルソナでは顧客ではなく自社で働く社員のペルソナを設定します。

なぜ社員ペルソナが必要なのか

経営課題の解決において社員ペルソナが必要とされている背景には、大きく分けて人材の多様化、企業の事業形態の変化という2つの要因があります。

多様な社員に対する変革の推進

企業のグローバル化やダイバーシティ推進という流れの中で、会社はさまざまな考え方の従業員が一堂に会する組織となりました。
企業は利益を追求や事業を通じた社会貢献に向けて経営ビジョンを掲げ、そのビジョンを体現する従業員を求めます。しかし、表面的には社員全員が自身の任務を忠実に遂行しているように見えても、実際には自社のビジョンや方針と、部署・チームの方針、自分に与えられた業務を紐づけることが難しく、掲げられたビジョンが自分事になっていない社員が少なからず存在していることも事実です。
理由のひとつとして、業務が細分化されすぎて自分がなんのために働いているのかを考えなくなることが挙げられます。目の前の木は見られているものの、森を見られていない状態ともいえるでしょう。従業員がこのような視野狭窄に陥ることは、大手企業がしばしば直面するリスクです。また、企業は時代のニーズに合わせて常に変革を求められる一方で、考え方や働き方を変えたくない従業員も常に一定数存在します。
企業規模の拡大によって社員が「見えなくなる」ことは、企業における経営課題のひとつです。社員ペルソナは、従業員の心理面、行動面の両方を考慮に入れて社員の人物像を見える化します。企業の変革やコミュニケーション施策に関わるメンバー全員で社員ペルソナを共有することによって「どのような心情でどのような行動をする社員に対して、どのような施策を打つべきか」具体的に検討することが可能になり、社員の抵抗問題の解決につなげることができるのです。

顧客起点の事業形態の変更、製造業のサービス産業化

また、商品だけでなくサービスを提供するようになった大企業や製造メーカーにとっても、社員ペルソナは有用です。製造業からサービス業へと事業を広げた企業は、企業の制度や仕組みもサービス業に見合った設計にするべきですが、それらを変えるにはかなりの時間を要します。一方で、事業部門や現場が顧客にサービスを提供し、ブランドイメージに見合った顧客体験を創造できるように、現場の改革や教育を進めることが必要です。
そこで、制度や仕組みを変える前に、対処療法的に社員ペルソナを活用した意識改革や変革施策を実施することもあります。変化するビジネスに見合った形態にするために制度や仕組みを柔軟に変えることは困難ですが、社員ペルソナを元にしてロールモデルを作り上げることで、より柔軟に、社員の意識や考え方の改革につなげることができるのです。

社員ペルソナ設定で解決できること

では、社員ペルソナを設定することで上述の経営課題をどのように解決できるのでしょうか。
大手企業では社員のスキルを人口統計学的なデータとして可視化・分析するタレントマネジメントシステムを導入していることも多くありますが、社員ペルソナを設定することで、タレントマネジメントをもってしてもわからない従業員の心理学的な要素を具体化することができます。これに基づいてコミュニケーション施策を立てることで、従業員へ伝わりやすいコミュニケーション・メッセージを企業が発信でき、自社への理解や共感、納得感を得られるほか、社員の主体的な行動を促進する材料にもなるわけです。
また、ロールモデルとなる架空の人物である「モデルペルソナ」を同時に設定することで、眼前の業務に気を取られていた社員に対して企業の求める人物像を明示することができ、彼らの視野を広げられるほか、意識改革やモチベーションアップにもつなげられます。結果として、組織を大きく活性化させることが期待できるのです。

採用におけるペルソナ設定とは

HR領域におけるペルソナの活用は、採用広告のターゲット設定などマーケティング目的のものを除くと、採用におけるミスマッチを防ぐ目的に用いられることがほとんどです。
冒頭で述べたとおり、企業で働く人材は多様化しました。それによって、企業と求職者とのミスマッチが以前より起きやすくなっているのです。また、採用が売り手市場の時期にはミスマッチを感じた新入社員が早々に離脱してしまうことも多く、企業は無駄なコストをかけて貴重な時間を浪費するリスクがあります。
このような事態を未然に防ぐため、採用場面でペルソナを用いる動きが広がりつつあります。企業が求職者を選ぶ際の基準に「カルチャーフィット」というものがあります。英語で文化という意味で使われる「カルチャー (culture)」と適合という意味で使われるフィット(fit)を合わせた人事用語です。企業として、カルチャーフィット、つまり自社の文化に適合した社員を採用することで得られるメリットは大きく、スキルフィットよりも重視される傾向になりつつあります。ペルソナを活用することで、自社が求める人物像を明確にできるほか、その人物にピンポイントで訴求できる求人を行うこともできるのです。

社員ペルソナ設定の方法

社員ペルソナの重要性を理解し、設定をしてみようと思い立っても、おそらく最初は何から手をつけていいか分からないのではないでしょうか。ここからは、社員ペルソナを設定する際のポイントを解説します。

組織の課題解決に必要な社員ペルソナ設定

冒頭でお伝えしたとおり、「社員が見えなくなる」状態特に、「社員の心理や感情が見えなくなる」は経営課題に結びつくコミュニケーション上の課題のひとつといえます。こういった課題を洗い出し、優先順位をつけた上で、現状の社員像と目指すべき社員像のモデルを描いた社員ペルソナを設定することは、コミュニケーション課題の解決において力を発揮します。
ただしこの一連の作業には、極めて専門的で特殊なスキルを持ったヒアリングチームの存在が不可欠です。知識やスキルの不足した状態で社員ペルソナ設定取り組むと、ヒアリングで得た情報にバイアスがかかってしまい、適切な社員ペルソナ設定が困難になることがあります。もし自社で初の試みであるならば、社員ペルソナ設定を得意とする外部パートナーの協力を仰いだほうがよいでしょう。
なお、社員ペルソナは数年に1度変える必要があります。なぜなら、繰り返しになりますが企業や企業を取り巻く社会、そして人の考え方も常に変化し続けるからです。コミュニケーションの課題に向き合う以上、こうした考え方の変容を軽視することのないようにしましょう。

採用におけるペルソナ設定

採用におけるペルソナは、自社が求める人材を詳細に詰めていくことで設定ができます。手がかりとして、「企業の社風にマッチし、スキルを満たす人材(ターゲット)」と「求職者の入社動機(ニーズ)」とが挙げられます。前者は経営層やマネージャーがうまく言語化できるはずです。また後者は、入社時期の浅い社員にヒアリングすることでキャッチアップできます。
こちらもやはり初回の設定を社内だけでやろうとすると非常に困難なので、外部の企業に相談することを推奨します。

まとめ

社員ペルソナ設定はマーケティング領域の概念を応用することから、他の施策と比べるとハードルが高いように思えるかもしれません。また、初めての取り組みにあたっては専門チームの招聘が望ましいことから、なかなか手をつけにくいものともいえます。しかし、コミュニケーションの課題解決や人材不足の中での採用活動は、今や企業にとって死活問題であるともいえることから、二の足を踏んでいては、リスクが増大するばかりです。
3度のノーベル賞受賞経験を持つ「行動経済学」の第一人者、ダニエル・カーネマン氏の著書『ファスト&スロー』には、「人は直感的な判断(ファスト)で認識し、論理的な熟考(スロー)で判断する」と記されています。つまり、施策の中で人の直観的な感情を考慮に入れないというのは、ある意味で施策自体が全て無駄であるとも言えるのです。ソフィアでは社員ペルソナ設定の支援に多数の実績を持っていますので、お気軽にご相談ください。

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株式会社ソフィア

コミュニティデザイナー

佐々木 祥太

学生時代から多くのワークショップの現場に立ってきた経験を活かして、参加者視点でワークショップのプログラムを設計し、オフライン・オンラインどちらであっても組織の可能性を最大限に引き出すご提案をしています。

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