DX推進指標とは?2026年改訂の要点と自己診断・社内展開の使い方
最終更新日:2026.03.24
目次
DX推進指標は、DXの現在地と次の一手を整理する自己診断ツールです。2026年2月にデジタルガバナンス・コード3.0に基づき改訂され、設問や成熟度レベルも見直されました。関連部門の目線を揃え、社内ポータルで進捗を共有してDXを加速させたい方に向け、一次情報をもとに使い方と運用のコツを解説します。
DX推進指標の概要
DX推進指標とは
DX推進指標とは、DXによって経営改革が行われた際の「自己診断指標」あるいは「自己診断ツール」 です。KPIは組織における目標達成の度合いを示す数値として、マーケティングや経営分野などで幅広く用いられており、一度は耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
このDX推進指標に関連して独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、各企業の自己診断結果を収集・分析することを目的に「DX推進指標自己診断結果入力サイト」を公開しています。
DX推進指標は、経営者や社内の関係者がDXの現状や課題に対する認識をそろえ、次のアクションに繋げるための「自己診断(セルフチェック)」として 位置づけられています。まずは定点観測の仕組みをつくり、診断結果を議論の土台にすることが重要です。
ポイントは「診断票を埋めること」ではなく、診断を通じて”ギャップ”を言語化し、優先順位と実行計画(誰が・いつまでに・何を)へ落とし込むことです。後半では、社内ポータルでの見せ方まで含めて解説します。
DX推進指標が必要とされる背景
DX推進指標が取りまとめられた経緯
プロジェクトの進行において、その規模の大小にかかわらずKPIの設定は不可欠であり、これはDX推進の場合も同様です。「自社のDXが、現在どの程度の『成熟度』に到達しているのか」を企業自身が把握できていない状況では、これまでの取り組みが正しかったのかどうか、そして今後どのようにDX推進に取り組んでいくべきなのかの判断基準が持てなくなります。
また、DX推進の知見が少ない一般企業では、DX推進の成熟度を自社で判断することは難しく、客観的な指標が必要 となるでしょう。そこで、DX推進における目標達成に対する度合いを測る指標として、経産省によって「DX推進指標」が取りまとめられるに至ったわけです。
DXは”IT導入”に見えやすい一方で、本質はビジネスモデル、業務、組織・プロセス、企業文化・風土までを含む変革です。だからこそ、DX推進指標のように「経営と現場の対話」を前提にした枠組みがないと、部門ごとに活動が分断し、PoC止まりになりやすくなります。
2026年改訂の要点
2026年2月、経済産業省とIPAは、DX推進指標を改訂しました。背景には、技術の大規模かつ急速な進展など、企業DXを取り巻く環境変化があります。
改訂の大きなポイントは、デジタルガバナンス・コード3.0に基づいて、自己診断に用いる「設問」と「成熟度レベル」を見直したことです。定性指標の構成も、従来の”経営×ITシステム”の二分法から、コード3.0に沿った構成へ再整理されています。
実務上の注意点として、新しい指標での自己診断結果の受付開始は2026年4月3日予定です。現行の「DX推進指標自己診断フォーマット Ver2.4」で提出したい場合は、2026年4月2日までに提出を完了する必要があります。提出計画がある企業は、社内稟議・セキュリティ確認も含めて逆算して進めることをおすすめします。
さらに、成熟度レベルは「レベル0〜4=個社内の取り組み」「レベル5=個社の取り組みを超え、社会価値を創出している水準」として再定義されています。旧版のレベル解釈で議論している場合は、どの版(旧/新)で話しているかを会議冒頭で揃えるようにしましょう。
旧版(〜2026/4/2目安)と新版(2026/4/3〜)の読み替え早見
- 目的:どちらも「現状認識の共有 → アクション化」
- 枠組み:旧版は”経営面”と”IT面”を中心に構成/新版はデジタルガバナンス・コード3.0準拠へ再編
- 成熟度:旧版は0〜5の6段階(レベル5=グローバル競争で生き残れる成熟度という考え方)/新版はレベル5を「社会価値創出」水準として整理
DX推進指標の項目と構成
指標の内容と分類
DX推進指標とは、自社におけるDX推進の「成熟度」を各企業が自己診断できる指標です。自己診断を行うために、いくつかの質問に社内で回答する形式を採用しています。
本指標は、DX推進に際して企業が直面する課題や、その課題を解決するために押さえておくべき事項を中心に以下の2つのカテゴリーから構成され、さらにこれらは「定性指標」と「定量指標」に分類されます。
- DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
- DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標
定性指標は合計35項目あり、さらに「キークエスチョン」と「サブクエスチョン」に分類されます。キークエスチョンは「経営者によって回答されることが望ましい質問」とされ、サブクエスチョンは「経営者が経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門などと議論しながら回答を導き出すもの」とされています。
なお、2026年改訂では、設問構成がデジタルガバナンス・コード3.0に基づく形へ整理されています。旧版を運用している企業でも、「コード3.0が求める論点(データ活用・連携、人材、サイバーセキュリティ等)」を先回りで棚卸ししておくと、版移行がスムーズになるでしょう。
定性指標:DX推進の枠組み
- DX推進の意識が社内外で共有できているかどうか
- ビジョンの実現に向けて経営層がリーダーシップを発揮しているかどうか
- 失敗しやすいDX推進を行う上での覚悟や心構えがしっかりとできているかどうか
- DX推進を行う部門やそれを支援する部門などが明確に定められているかどうか
- DX推進に必要な人材(=DX人材)を確保できているかどうか
- DXを自社のビジネスモデルに落とし込めているかどうか
定性指標:ITシステム構築の取組状況
- 自社のレガシーシステムにおいて課題を抽出できているか、さらに対応策を練られているかどうか
- ビジョン実現のためにコストや人材を企業が十分にかけられているかどうか
定量指標:DX推進の取組状況
- 競争力はどの程度強化されているか
- DX推進の社内における進捗状況
定量指標:ITシステム構築の取組状況
- ITシステム構築の進捗状況
自己診断の進め方
自己診断の考え方と実務のコツ
DX推進指標の各質問項目は、質問のレベル(キークエスチョンあるいはサブクエスチョン)に応じて、経営者自ら、あるいは経営幹部・事業部門・DX部門・IT部門など関連部門を交えて議論しながら回答し、「成熟度」の自己診断結果を測定するものと想定されています。
実務でおすすめなのは、最初から全35項目を完璧に埋めようとせず、まずは「議論が割れる論点」を抽出することです。割れた論点こそが、DXのボトルネック(認識ズレ・責任の曖昧さ・データ/システムの分断・人材不足等)だからです。
また、社内ポータル担当(広報・人事)を早い段階で巻き込み、診断結果を「誰に、何を、どう見せるか」まで設計しておくと、診断が”経営とITの内部資料”で終わりにくくなります。
評価の方法とエビデンスの重要性
定性指標における「成熟度」の回答にあたっては、回答を裏付けるエビデンスを合わせて答えることが望ましいとされています。理由は以下のとおりです。
- エビデンスの存在によって経営者や発言権のある人間のバイアス(認知の歪み)がなくなり、毎回の回答結果にブレが少なくなる
- DX推進の担当者が人事異動や退職などによって別の担当へ変わってしまった場合に、前任者の判断を後任に正しく引き継げる
- 診断結果を後続の民間サービス(コンサルティング会社など)に引き継いで継続実施する場合にも、円滑に引き継ぎができる

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成熟度レベルの読み解き方
成熟度レベルの基本的な考え方
定性指標では、自社のDX推進における「成熟度」を6段階で評価します。DX推進指標は、日本企業が国内のみならず国際社会での競争力を高め、国際市場でも勝ち抜けるデジタル企業への変革を促すことを目的としていることから、最終的なゴールである「レベル5」においては「グローバル競争で生き残れるレベルにまで成熟している状態」となっています。
自社が現在どの成熟度レベルに該当しているかを参考にすることで、次にどのレベルを目指すべきかを把握できます。また、次のレベルに向けた具体的なアクションプランの策定も可能となるでしょう。以下に1〜5の成熟度レベルの内容をご紹介します。
- レベル:0
経営者が無関心、関心があるものの全く取り組んでいない - レベル:1
企業内の一部で散発的実施:実施されているが全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施にとどまっている - レベル:2
全社の経営戦略に基づいて、一部の部門で取り組んでいる - レベル:3
全社の経営戦略に基づいて、部門を横断して取り組んでいる - レベル:4
全社戦略に基づき持続的実施しつつ定量的な指標により持続的に取り組んでいる - レベル:5
グローバル競争で生き残れるレベルにまで成熟している
なお、2026年改訂では、レベル0〜4を「個社内の取り組み」、レベル5を「個社の取り組みを超え、社会価値を創出している水準」として整理しています。会議での読み違いを防ぐため、資料には「旧版/新版どちらの定義か」を併記することをおすすめします。
参考として、IPAの自己診断結果分析(2024年版)では、成熟度がレベル0〜2未満に偏り、レベル4以上は全体の1%と報告されています。「自社は遅れているのか?」という不安に対して、まず業界水準を知ることが、合意形成の助けになるでしょう。
定量指標の設定と活用
定量指標の考え方
定量指標については、自社がDXを推進することで伸ばそうとしている定量指標を自ら選択して算出します。さらに、「3年後の数値目標」を立てて進捗管理を行っていくといった活用方法も想定した上で、企業が質問項目に回答するものとなっています。
定量指標は「測れるもの」よりも「意思決定に使うもの」を選びましょう。たとえば、顧客価値(NPS等)、収益性(粗利構造)、生産性(リードタイム)、品質(不具合率)、人材(リスキリング到達率)、データ(重要データの整備率)など、戦略と直結する指標に絞ると運用が回りやすくなります。
社内ポータルでの公開を前提にする場合は、「数値+解釈+次の一手」をセットで出すことが重要です。数字だけだと、現場は”自分ごと化”しにくく、逆に反発を招くこともありますので注意が必要です。
IPA提出とベンチマーク活用
IPAの案内では、自己診断結果を提出するとベンチマークレポートを取得でき、他社や業界の取り組み状況と比較して自社の位置づけを把握できる、とされています。個々の企業の診断結果を外部に公表するものではない点も明記されています。
また、ベンチマークデータは一般公開ではなく、提出企業のみが取得できる仕組みです。社内稟議や広報設計の観点では、まず「どこまで社内公開するか(全社/管理職/推進チーム)」を決めておくとスムーズに進めやすくなります。
DX推進指標活用のメリット
指標を活用することで得られる効果
DXに取り組む企業がDX推進指標を活用することで、以下のようなメリットを享受できるようになります。
認識の統一
自社がDXを推進できているかどうか、またそれがどの程度の成熟度で達成できているのかを、客観的指標を用いて判断できます。極めて失敗しやすいDX推進においては、関係者間で生じた瑣末な認識のズレでさえ致命的なリスクになりかねません。DX推進指標に回答する際には関連部門が一堂に会することになりますが、その際に足並みをしっかり揃えるという意味でも認識の統一は必須といえます。
また、認識の統一という意味では、関係者のみならず全社レベルにおいてもDX推進指標が役立ちます。DX推進には社員一人ひとりの意識改革も重要になってくるため、理解や納得感を得られるように企業が社員に対してアプローチを行う必要があります。社内報や社内SNSなどの社内コミュニケーションツールを利用してDXのビジョンを示すとともに、DX推進指標を用いて自社のDX進捗状況を全社に共有しましょう。
競合他社との比較
DX推進指標を用いて自己診断を行うと、詳細なベンチマークデータが提供されます。本データにおいては、他社のDX推進成熟度と自社の成熟度を相対的に比較できるため、競合他社との比較も可能です。国内企業との競争で勝てる見込みがないようであればグローバル競争などは論外ですから、まずは国内市場でDX推進のパイオニアとなるつもりで進めていきましょう。
また、個々のデータ項目において、他社と比較して何が秀でており、何が追いついていないのかの把握もできるため、自社のウィークポイントを見つけやすいこともDX推進指標を活用するメリットのひとつです。
ネクストアクションの検討
DX推進指標には6段階のレベルが設けられており、現状のレベルを把握することで、次のレベルに到達するために行うべきことがそのままネクストアクションに繋がります。まだ実践のプロセスに決まった型やセオリーのないDX推進において、貴重な足がかりとなるでしょう。
企業事例の参照と活用
国内での成功事例が少なく、情報収集がしにくいDX推進において、経産省の下にさまざまな企業事例が集まるというのはとても貴重なことです。企業によって状況が異なるため事例を完全に模倣して採用することは難しいですが、同じ取り組みを自社で行う際の参考材料にすることはできるでしょう。なお、今後は経産省のWebサイトにおいてこうしたDX推進に関するさまざまな情報が刷新されていくと予測されます。更新はこまめにチェックしておくと役に立つかもしれません。
進捗確認と変化の把握
DX指標へ定期的に回答することで、自社における成熟度の経年変化を把握できます。いつごろまでにどうなっていたいのかという目標(KPI)に対して今DXがどの程度進んでいるか、あるいは遅れているかを判断する材料にもなります。逆に言えば、一度診断してしまえばそれで事足りるわけではありません。DX推進のプロジェクトの進捗状況を見ながら定期的に社内で話し合い、状況の変化について議論する必要があるといえます。
社内ポータルを活用した診断結果の展開
DX推進指標の価値は、診断票そのものより「社内の認識合わせ」と「行動変容」を起こせるかにあります。そのためには、社内ポータル(イントラ)で”わかる・探せる・腹落ちする”形で見せる設計が重要です。
弊社ソフィアの調査では、社内コミュニケーションに「大いに問題がある」20%、「多少問題がある」59%で合計79%が課題を感じていました(フル_IC実態調査2024_材料 スライド6)。また「部門間」や「上司と部下」「経営陣と社員」など縦横のレイヤーで問題が起きていることも示唆されています(同 スライド7)。DXのような部門横断テーマほど、情報設計を誤ると分断が進みます。
さらに、同調査ではコーポレート部門の取り組みについて「十分理解を得られている」が10%程度にとどまり(同 スライド25)、経営目標・戦略を「十分把握している」が8%程度という結果も出ています(同 スライド27)。DX推進指標を”社内に共有する”とは、単なる公開ではなく、理解→共感→行動へ橋を架けることだと捉える必要があります。
社内ポータルに載せると効果が出やすい「5点セット」
- DXのビジョン(何のために)と、DX推進指標で測る理由
- 診断結果の要点(全社の現状・目標・ギャップ)※数字だけでなく解釈も
- 重点アクション(今期やることを3〜5個に絞る)
- 部門別の関与点(現場が「自分の仕事」に置き換えられる導線)
- Q&A(よくある誤解:DX=IT導入、などを潰す)
また、弊社ソフィアの調査では、社内広報の効果測定を「十分実施している」企業が15%程度にとどまる傾向も見られました(同 スライド43)。DX推進指標を社内に展開する際も、閲覧数や理解度チェック(短いパルスサーベイ)を最低限回し、次の改善につなげる設計が重要です。
DX推進のためには組織を変えていかないと意味がない
組織を変えることの重要性
DX推進指標の中には、「マインドセット、企業文化」という項目があります。一見するとDXとは無関係なように思えますが、非常に重要な指標のひとつです。具体的には、「挑戦を促し失敗から学ぶプロセスをスピーディーに実行し、継続できる仕組みが構築できているか を問うものであり、DX推進という大規模かつ高難易度のプロジェクトを成し遂げるために必須となる組織的な仕組み・プロセスの構築 といえるでしょう。
このことからわかるとおり、DX推進においては困難なチャレンジを厭わない「企業文化」や「推進体制」などが組織に根づいていることが必要であり、現状そのような文化や体制が組織に備わっていない場合は、組織を変えることが重要な位置づけのひとつとなっています。しかし、DXという初めてのプロジェクトを行いながら組織を変えていく試みというのは並大抵のことではありません。そこで、ITベンダーだけでなく、組織風土の変革を解決できる外部パートナーを新たに選定する必要がある といえます(これは「外部との連携」に該当するといえるでしょう)。国内で、組織風土改革の支援実績を持つ企業は少ないなかで、ソフィアは多数の実績を持っています。DX推進の際はぜひお問い合わせください。
まとめ
DX推進指標活用のポイント整理
DXに限らず、大規模なプロジェクトにおいて目標設定と進捗管理を行うことは不可欠であり、KPIとなるDX推進指標の存在は、とかく五里霧中になりがちなDX推進において非常に有用な指標であるといえるでしょう。これからDX推進に取り組む企業だけでなく、すでに取り組んでいる企業にとっても有益なツールですので、ぜひ積極的に活用してみてください。
DX推進となるとどの企業もまずIT人材の確保やツールの選定に走りがちですが、大きなプロジェクトを成功させるには、挑戦を厭わない企業文化や組織風土、適切な推進体制がなければDX推進は決して成功しません。しかし、目に見えない組織風土の変革は見落とされがちなのが日本企業の現状であり、だからこそ日本のDX推進は立ちいかなくなっている状態であるともいえます。自社で必ずDX推進を成功させたければ、組織を変えることからはじめましょう。
加えて、2026年改訂で設問・成熟度の考え方が見直されています。旧版の運用を続けている企業も、提出・対外説明・社内浸透の観点で「どの版で自己診断しているか」を明確にし、必要に応じて移行計画を立てることが重要です。
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