未来小説2118 ~3.ミスターTの助言~

#コミュニケーション#メディア&コンテンツ

06.Aug.2018

100年後の日本を舞台に、コンサルティング会社「ネオソフィア」が組織の課題に挑む!
ソフィアの若手メンバー発案・執筆により、本業の枠を越えて、SF小説の連載を始めてしまいました。今回は第3回、どうぞお楽しみください。
※続きはメンバーの気が向いたら公開されます

3.ミスターTの助言

2118年、組織の間で深刻になった元気格差――その課題に立ち向かうため、ネオソフィア社長・瀬又は、過去にさかのぼって企業を元気にする「タイムリープ風土改革プログラム」を発表した……。
連載第2回はこちら

「おお!」「Great!」「Bravo!」

瀬又社長の高らかな宣言に、会社全体から拍手と歓声が上がった。ゲンキもせいいっぱい拍手を送った。誇らしい気持ちでいっぱいだ。
タイムリープ風土改革プログラムは、3年前から時間をかけて進めてきたプロジェクトだった。ゲンキはそのプロジェクトメンバーのひとりとして、プログラムの設計に携わってきた。難航したが、なんとかここまでたどり着くことができた。

このプログラムでは、依頼のあった企業の元気指数の変遷と歴史的事実から過去の転換点を見極め、コンサルタントがタイムリープを使って当時に戻って施策を実施する。タイムリープを医療関係以外の事業で活用するのは、地球内でもかなり珍しい。20年ほど前に実現したばかりのまだ安定していない技術であるのに加え、歴史に悪影響を与えないようNASTAによって厳しく利用が規制されているからだ。今回ネオソフィアでタイムリープを行う際も、戻れるのは150年前まで、1社につき5人・3往復までと決められている。未来への移動は禁止。
それでも過去から組織を元気にするなんて、今までどこの企業もやってこなかった。そうだ、世界初、いや宇宙初なのだ!

「各報道には、すでに本日一斉に情報公開をして広告を出しています。問い合わせがくるのが楽しみだね。それじゃあ、みんな、今年も楽しく働きましょう!」

嬉しそうな顔で瀬又社長が締めくくる。
それを合図にして、社員たちはそれぞれの仕事に戻っていく。ゲンキはまだうきうきしていて、すぐにはメッセージ確認に戻れなかった。瀬又社長と目が合うと、彼が気取ったウィンクを返してきたので、ゲンキはぐっと親指を立てた。

『それじゃ、11時からのミーティングでまた』

「はい、よろしくお願いします」

ゲンキに一声をかけて、佐尾さんの3次元画像がふわりと消える。
さて、ぼくも気合を入れて仕事を始めるか。
そう思ったときだった。光タッチパネルの上に『来客です』というアナウンスが現れた。新年早々に来客なんて、と思ったが、カメラ画像に切り替えてみると見覚えのある顔があったので、ははあ、と頷く。

「ミスターT、年明け早々にお元気ですね」

『朝のニュースで見たから、お祝いを言いにきたんだよ。運動もかねて』

「わざわざありがとうございます」

ドアのロックを解除すると、まもなくしてかすかなモーター音を響かせてひとりの老人が入ってきた。

「やあ、あけましておめでとう。ゲンキ」

「ミスターT、あけましておめでとうございます」

「例のプログラム、ついに始動したそうだね」

ぽんぽんとゲンキの肩を叩く手や全身に、うすい甲冑のようなものが取り付けられている。パワードスーツと呼ばれる運動補助のための機械だ。これをつければ、どんな人も軽々重い荷物を持ち上げたり歩いたりできる。

彼はミスターT。ときおりこの会社にやってくる謎の老人だ。ノーアポで突然やってきては、社内をうろうろして、社員たちと話して帰っていくのだ。以前話した際によっぽどゲンキのことが気に入ったのか、訪問時の呼び出しはいつもゲンキにかかってくる。瀬又社長の知り合いだそうだが、本名はもちろん、詳しいことは誰も知らない。うわさでは、かつてコミュニケーション活性化の世界で名を馳せたスゴイ人なのだという。パワードスーツに身を包んでいるためいたって丈夫に見えるが、実際はかなり高齢のはずだ。一体何歳なのだろうか。

「もう依頼は入ったのかい?」

「いえ、まだですよ。でも楽しみです、どんな企業を元気にできるのか」

上機嫌に答えると、ミスターTがにやりと笑った。

「ゲンキ、年寄りからひとつだけアドバイスをしよう」

「アドバイス?」

「昔の企業は、今では信じられないことがたくさんある。施策を打つ前に、『根回し』と『忖度』だけは身につけておけよ」

「ネマワシ? センタク?」

睡眠と洗濯にかかわる何かだろうか。聞いたことがない。

「そのうちわかるさ」

ミスターTはにやにやしたまま他の社員のところへと行ってしまい、意味を教えてはくれなかった。あいかわらず不思議な人だ。そのとき、受付AIのナデシコからイヤフォンに呼び出しがかかった。

『田中ゲンキさん。タイムリープ風土改革プログラムについて、クラウド面会の依頼です。おつなぎしますか?』

さっそくきたか。ミスターTの言葉は気になっていたが、まずは受注するところからだ。ゲンキは深呼吸をすると、3次元画像でのクラウド面会システムを立ち上げ、イヤフォンの通話ボタンをオンにした。

「つないでくれ。……はい、ネオソフィア・コンサルタントの田中です」

つづく

※このストーリーはすべてフィクションであり、現在各機関で発表されている未来予測にもとづくものではありません。

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この記事に関連するメンバー

岡田 耶万葉

組織内の人々の心をつなぎ、前に進むエネルギーを生み出すコンテンツ作りを精一杯お手伝いいたします。