ナレッジマネジメントとは?知識・経験の見える化で業務効率UP

#業務プロセス改善#Eラーニング#コミュニケーション#ビジネススキル#研修・ワークショップ#組織開発

26.Oct.2020

社員の知識やスキルにばらつきがある、社員が辞めてしまうことで業務の一部がブラックボックス化してしまったことがある、社員の成長がなかなか実感できない…。そういった経験をお持ちの場合は、ナレッジマネジメントの手法を導入することをおすすめします。ナレッジマネジメントが実現するのは、知識や経験の「見える化」です。これによって冒頭の課題を解決できるだけでなく、企業価値を大きく向上させたり、社員のスキルを底上げしたりすることもできます。
今回の記事では、ナレッジマネジメントの概要とフレームワークについて詳しく解説します。

ナレッジマネジメントとは

ナレッジマネジメントとは、言葉どおりに解釈すれば「ナレッジ」つまり「知識」や「知恵」をマネジメントするということです。想像しにくいかもしれませんが、体系化されたモデルもすでに存在し、組織にとっては欠かせないマネジメント手法でもあります。

定義

ナレッジマネジメントとは、企業に属する従業員がそれぞれに持つ知識や経験、ノウハウなどを社内で共有し全社で活用することで、企業の競争力を高めるマネジメント手法です。
なお、社員個人の持つこの知識やノウハウは「暗黙知」と呼ばれます。

ナレッジマネジメント誕生の背景

ナレッジマネジメントは、経営学者であり一橋大学の名誉教授でもある野中郁次郎氏が提唱した「知識経営」から生まれました。この知識経営を、ナレッジマネジメントと同義で解釈する人もいます。
野中氏は、ベテラン社員の「暗黙知」が会社の次世代を担う社員に継承される文化を、日本企業の特徴かつ強みであると考えていました。そこで、この「継承」をどの企業でも行うことができるよう汎化した手法が知識経営でありナレッジマネジメントです。

「暗黙知」を「形式知」に変えるナレッジマネジメント

社員個人がそれぞれに持つ知識やノウハウを「暗黙知」とお伝えしましたが、暗黙知は体系的でなく属人的で形のないものです。この暗黙知を形にしたもの、すなわち文章化や図式化によって第三者にも説明や表現のできる知識へと変換されたものを「形式知」と呼びます。
暗黙知はそのままでは継承・共有が難しいため、形式知へと変換することで他者や組織に還元します。また、新たに生み出された形式知によってさらに高度な知恵が生まれ、その知恵を生かすことで組織を進化させていくことがナレッジマネジメントの目的です。

ナレッジマネジメントが注目される理由

ナレッジマネジメントの概念自体は1980年代にすでに誕生していました。業務システムを活用して人の持つ知識やノウハウを管理することが技術的に可能となった時代ですが、最近になって再びナレッジマネジメントが注目されるようになったのは、社会の変遷による需要の高まりが背景に存在します。

終身雇用制度の崩壊

実は暗黙知であっても時間をかけて丁寧に伝えれば知恵の継承は可能です。これが企業において行われてきたのが、まだ終身雇用制度が採用されていた時代です。ベテラン社員が新人に手ほどきを行うことで知恵が引き継がれていく、終身雇用制度における日本企業の伝統的な文化ともいえるものでした。
しかし、終身雇用制度はすでに事実上の終焉を迎えており、知識やノウハウはより短期間で効率的に社内へ共有されることが求められる時代となったわけです。ここでナレッジマネジメントが最注目されることとなります。

企業の暗黙知を形式知へ転換するために

暗黙知は個人の中に蓄積されるものであり、主観的、感覚的なためそのままでは第三者が共有することができません。一方、形式知は文章や図、数式を活用して暗黙知を第三者に伝わるよう具体化したものです。業務マニュアルがその主たる例です。
暗黙知は個人の資産であり、その暗黙知を持った社員が離脱してしまうと企業から知識やノウハウが失われます。しかし、形式知は企業の資産であり、他の社員に共有できるように形式化されているため、もともとの暗黙知を所有していた社員が退職しても知識やノウハウは形として企業に残ります。
人材が流動化している昨今では、知恵を属人化してしまうと優秀な人材が欠けたときに企業の戦力までも削がれるリスクがあります。そのため、ナレッジマネジメントが着目されているというわけです。

ナレッジマネジメントで解決する問題

ナレッジマネジメントは、企業の抱えるさまざまな問題を解決するカギとなります。今や企業にとって欠かせない取り組みであることもわかるでしょう。

人材育成の効率化

「暗黙知」を他者に継承するには長い時間を要することはすでに解説したとおりです。教える側が自分の技術を自分自身でも言語化、パターン化できない状態のため、とにかく効率が悪くなります。さらに昨今は企業が人材を一から丁寧に育てる体力を持っていません。できるだけ早く戦力になってほしいというのが本音といえるでしょう。
ナレッジマネジメントによって暗黙知を形式知に変換することで、ベテランの技術を新人に継承しやすい状態を生み、人材育成の効率化へとつなげることがます。

業務の標準化・高度化

暗黙知には、スキルとは呼びにくいもののビジネスの動向を大きく左右するコツのようなものが多分に含まれます。得意先との交渉のテクニックや、顧客のクレームにうまく対処する秘訣、自社商品を営業先で魅力的にアピールする話し方などです。
これらのコツはこれまでは属人化されていることがほとんどで、第三者に共有されることはありませんでした。それが自分とライバルとの差をつける隠し技だったのかもしれませんが、企業からすればそういったコツも全社員に共有し、自社の資産としたいところです。
ナレッジマネジメントを活用することで、こうしたコツも業務へ標準的に取り入れられるようになり、社員がよりレベルの高い仕事を行うことができます。

膨大な知識へのアクセスが可能に

ナレッジマネジメントには、知識を「管理」する役割もあります。例えば、マニュアル化された知識は社内ポータルのようなツールと組み合わせることで、全社員が部署を超えてアクセスできます。他部門の業務フローを知ることで同じ業務を別の角度から見直すよいきっかけともなり、そこから新たなアイディアが創出されることもあるかもしれません。

蓄積されたノウハウで新たな戦略を立てることができる

ナレッジマネジメントは、経営手法といわれることもあります。自社事業で得た知識やノウハウ、技術をもとにして新たな経営戦略に役立てることができ、ときには新たな事業が生まれることもあるでしょう。企業の成長を停滞させないためにも、ナレッジマネジメントは必須といえます。

ナレッジマネジメントのフレームワーク

ここまでナレッジマネジメントの概要を解説しましたが、より理解を深めるにはフレームワークを知っておくとよいでしょう。今回は、社内の知識を共有・蓄積するための、ナレッジマネジメントのフレームワークである「SECI(セキ)モデル」を紹介します。

SECI(セキ)モデル

SECIモデルとは、組織が暗黙知を管理し、それらの知を形式知に変換したり、新たな知を育んだりするための枠組みです。
SECIモデルは以下、4つのプロセスで構成されます。

・共同化(Socialization)

共同化は、経験を通して個人の暗黙知を別の個人に伝えるプロセスです。この時点で暗黙知は形式知になっておらず、自社のプロダクトやサービスに関する内容であっても具体的に形容できない状態です。この知識を「なんとなく」レベルでも同じ見解として感じられるよう、あるいは口頭での継承が円滑になるよう、「同じ体験をする(共体験)」ことで暗黙知を伝達していきます。
例えば、新たなプロダクトの開発において試作品ができた際、実際に全員がそれを試用してみることで、開発者の加えた細かな工夫や、仕様ではわからない実際の使い勝手がチーム内に共有されるというものです。

・表出化(Externalization)

表出化は、個人の暗黙知を「具体化」することでメンバーと共有を試みるプロセスです。表出化の手法としては、言葉によるもの(ミーティングや1on1、引き継ぎなど)だけでなく、実際にモノを作って具体化するもの(プロトタイピング)、音声や映像を使ったもの(録音・録画など)、その他あらゆる手段が活用できます。以上のような方法で知識が形式知化されていきます。

・結合化(Combination)

結合化は、表出した形式知に別の形式知を組み合わせることで、新たな知を生み出すプロセスです。業務効率化や新たな戦略の立案フェーズがここに含まれます。また、部門を横断してのプロジェクトチームの編成や、多様な人材を一箇所に集めてのブレインストーミングによって知を創出し、その上で実際の効率化や戦略立案を具体的に落とし込んでいくフェーズも含まれます。

・内面化(Internalization)

内面化は、個人が新たに得た形式知を身につけるプロセスです。表出化プロセスは暗黙知の持ち主、内面化プロセスは形式知を受け取るメンバーがフォーカスされると考えるとわかりやすいでしょう。内面化プロセスを経て習得した新たな知は、各個人の中でそれぞれの暗黙知として深化していきます。

こうして醸成された暗黙知が再度共同化プロセスに戻り、これらのサイクルを何度も繰り返すことで個人のスキルアップおよび組織の資産価値向上につながるわけです。

SECIモデルの実現に寄与する「場」

組織が知識を創造し、それらを共有、活用し、最終的に蓄積させるには、それぞれに「場」を設けることが必要となります。創造する場、共有する場、活用する場、蓄積する場、というものがそれぞれ必要です。この場がなければ、いくらフレームワークがあってもサイクルが回りません。またこの場をどのようにデザインするかによって、ナレッジマネジメントの成果が大きく左右されます。それぞれの場をSECIモデルの各プロセスに合わせて解説します。

・創発場(共同化に対応)

個人の暗黙知を共有する場です。先述の「同じ体験をする」という、個人の暗黙知を共有する場が該当します。また、日本企業でしばしば行われてきた「背中を見て学ぶ」や「仕事のやり方や技術を『盗む』」などの行為も、この創発場に含まれます。

・対話場(表出化に対応)

個人の暗黙知を言葉にし、対話を通じて形式知に変換する場です。ミーティングや1on1、社内SNSなどが該当します。ここで重要なのは、会話ではなく「対話」であることです。表面的なやりとりに留まらず、知を感覚レベルで共有し、形式知に変換できるよう深いコミュニケーションが必要です。

・システム場(結合化に対応)

形式知を相互に移動し、共有し、編集し、構築し、新たな形式と生み出す場です。経営企画や人事などの部門がこの役割を担うことが多くなります。

・実践場(内面化に対応)

形式知を個々人の暗黙知へと身体化するための場です。ここでは、単なる形式知の伝達ではなく、形式知に束ねる形で何らかの経験的要素や人間的要素を提供することで暗黙知としての移転・発展を促すことができます。サービス業などで特に重要な場です。PoC(概念実証)やトライアルの機会がこの場に該当します。これらを通して個人が得た知識が、また創発場に戻ることでSECIモデルのサイクルが生まれます。

そして、これらのサイクルは社内の資産としても蓄積されていくのです。

まとめ

後半は概念の割合が多く難解だったかもしれませんが、会社の中で具体的に落とし込んでいくと、意外なほど理解しやすく体感も得やすいのがナレッジマネジメントです。
興味はあるものの自社への導入が難しいという場合はぜひご相談ください。

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