【エンプロイーエクスペリエンス成功事例】具体的な施策から実施後の効果・変化まで紹介

時代の変化と共に、エンプロイーエクスペリエンス(Employee Experience)という言葉が取り上げられる機会も増えてきました。エンプロイーエクスペリエンスを向上させたいと思っている企業もあるでしょう。そこで、本記事ではエンプロイーエクスペリエンスを向上するための具体的な施策や実施後の効果・変化などの事例をもとに解説していきます。

エンプロイーエクスペリエンス(EX)とは?

ビジネスの現場で耳にすることがあるエンプロイーエクスペリエンス(Employee Experience)は、「従業員の経験(体験)」を意味します。従業員の満足度をはじめ、育成状況や所有スキル、心身の健康状態など、会社組織の中で従業員が関わるあらゆる経験を指す言葉です。ここでは、エンプロイーエクスペリエンスが注目されている理由や効果等について解説していきます。

エンプロイーエクスペリエンスが注目されている理由

ひとつの会社で定年まで働き続けるといった考え方は過去のものとなってしまいました。その中でスキルアップ、ワークライフバランスを重視する人が増え、自分にとって良い環境を与える企業や、自分らしいキャリアを積むために転職市場が活発化しています。

現在では就労の目的、キャリアパスなどの展望が不確定である社員が増えつつあります。それに伴い社員の働く意欲は低く、労働生産性の低下につながってしまいます。 企業側は貴重な人材の流出を防ぐと同時に従業員の業務に対するモチベーションを高めるために、従業員との良好な関係を構築する(社員ワークエンゲージメントを高める)ことがますます重要になってきています。

これら二つの理由から、EXの向上が効果的だと考えられます。従業員の定着率向上や労働生産性向上のために、会社内での経験、すなわちエンプロイーエクスペリエンスの重要性が取りあげられるようになりました。

エンプロイーエクスペリエンスの向上がもたらす効果

エンプロイーエクスペリエンスは従業員が業務や教育・育成、待遇、日々のコミュニケーションを通じて得た経験です。従業員が「働きたい」「今の仕事に誇りを感じる」「働く価値がある」といった企業に対して帰属意識を強く実感できるようになることで、定着率、離職率の改善に繋がり、従業員ののワークエンゲージメントを高めることができます。

エンプロイーエクスペリエンスの向上がもたらす効果について、詳しくは下記記事をご参照ください。

エンプロイーエクスペリエンスを向上させる方法

エンプロイーエクスペリエンスを向上させるためには、エンプロイージャーニーマップの作成が必要となります。このマップをデザインすることによって、実務、コミュニケーション、育成、キャリアアップ、退職までの流れを可視化することができます。そこから「目指すべき人物像」を明確にし現実とのギャップを埋めていくことでエンプロイーエクスペリエンスは高まります。また、人材配置は戦略的に行うことが重要となり、人事担当者だけでなく、部門間との密な連携を図ります。この横断的な施策を行うことで従業員がより業務内容との結びつきを感じることができます。

エンプロイージャーニーマップについて、詳しくは下記記事をご参照ください。

さらに従業員一人ひとりの福利厚生を充実させることも必要です。たとえば、出産育児、介護、またはリフレッシュなどにおける休暇の充実、住宅手当、資格取得手当、食事補助など金銭的支援の充実、人間ドックや健康診断といった健康支援の充実など、様々な面から従業員を支援する方法が考えられます。社内でサポートができる窓口を設置しましょう。

働きがいや意欲の向上は達成感や充足感をもたらします。そのため、就業目的の動機づけ、業務管理の方法などを見直しましょう。社内の各種制度、キャリア形成の重要性などといったメッセージを発信することも有効です。

エンプロイーエクスペリエンス向上に取り組む有名企業の事例

エンプロイーエクスペリエンスの向上はすでに多くの大手企業が取り組んでいます。企業事例を見て、どのように成果を出しているのか参考にしてみてください。

Airbnb

アメリカの口コミサイト「glassdoor」の「社員が選ぶ企業ランキング」で2015年に世界1位になった宿泊施設のソーシャルネットワークビジネスを行うAirbnbは、社員が働くうえで最高の経験ができる環境の整備に取り組んでいます。社員の健康を考え、社食の献立を考えたり、福利厚生の充実、最新テクノロジーを導入して効率化を促していたりと、働きやすさ、生産性を最大化させるために日々働く社員の環境の提供を徹底しています。

また、企業文化を浸透させるためにイベントを開催して社員間のコミュニケーションを促進させ、新入社員に対して組織風土のレクチャーやメンタル面でのサポートを手厚く行うオンボーディングを行っています。

Adobe

デジタルソフトの世界最大手のAdobeでは、Airbnb同様に人事部をエンプロイーエクスペリエンスと称し、日々向上に励んでいます。アメリカの企業では育休や産休の有給休暇が整備されていない傾向があります。その中で、同社は10日間の出産有給休暇や産後26週間の有休制度を設立しました。

また、マネージャーが従業員と面談を行い、一人ひとりの成長度合いのチェックや、キャリア相談ができる環境づくりなど、従業員のキャリアアップを支援するチェックイン制度を設けています。また、社員の健康を維持するためにフィットネスの割引制度、社員による株式の割引購入制度などがあります。

Starbucks

スターバックスは、長期を見据えた企業価値の向上、社会への貢献に繋がることを目的とし、従業員に対し大学の学費支給を負担するプログラムを提供しています。

また、アリゾナ州立大学と提携して80以上の授業のオンライン受講をサポートする取り組みも行っており、若い学生たちと企業との深い繋がりと信用を得ています。同社のエンプロイーエクスペリエンスへの投資額は25億ドルに及びます。

さらに日本では通信教育の補助や従業員のスキル開発支援を行うプログラムが充実しています。企業の満足度やエンゲージメントを高めることに成功をしているスターバックスは、同時に従業員の能力を伸ばすことにも成功しています。

エンプロイーエクスペリエンスとインターナルコミュニケーションのデータ活用のポイント

一般的なエンプロイーエクスペリエンスのデータは、人事イベントやアンケートを実施した際に取得していますが、インターナルコミュニケーションでは、社内のコミュケーションのログデータ=行動データ(イントラ、社内SNS、Web社内報、各種のコミュケーションデータログ)を取り扱っています。

従業員のウェブメディアへのアクセスログや経営業績データを複合的に分析し、フィードバックするワークショップを開催することで、データの背景要因(定性情報)を捉えることが可能となり、従業員の現在の状態を可視化することが可能です。ただ、個人を特定する情報は取得できないことを前提に注意して分析する必要はあります。

これらの行動データは、個人における行動の意図や意識は分かりませんが、ログデータとタレントマネジメントシステムのデータ統合分析を常に行っているため、より有益なデータとしてエンプロイーエクスペリエンスの向上に活用するのに適しています。

ソフィアがエンプロイーエクスペリエンス向上に関わったプロジェクト・事例(製造販売を営む企業グループ)

ソフィアではエンプロイーエクスペリエンスの向上に関わったプロジェクトの成功事例があります。各企業の問題点は企業の数だけ存在し、それぞれの企業に合わせた施策を提供することが成功の鍵となります。

デジタルワークプレイス導入(Microsoft 365)とコミュニケーション変革

近年、システムはクラウド・コンピューティングが主流となり、デジタルフォーメーションの実現は急速に進んでいます。システムが人に合わせるのではなく、人がシステムに合わせる働き方が要求されつつあります。

しかし、企業の問題として多く挙げられるのが、組織の変革に専門的な知識や技術を持った人材が不足していることです。マネジメントを行う上でプロフェッショナルなパートナーを探している企業が多くあります。

そのような状況を踏まえ、ソフィアは場所や時間に影響されないデジタルワークプレイスとしてMicrosoft365の導入を提案しました。今までのようなシステムの導入や保守が主流業務だった情報システム部門が、従業員の働き方やコミュニケーションスタイルを変えるといった業務にあたることは難しいです。そこで、ソフィアと協業しコミュニケーション変革をシステム導入と並行して進めることで、デジタルワークプレイスというシステムを最大限の活用できるようになりました。 これまでシステム変革や保守にかけていた情報システム部門の人的コストを、人や組織に変革するコストに投入できるようになりました。

また、情報システム部門との協業でデジタルワークプレイスを最大限に生かした効率的な働き方の実現に向けて、人や組織を変革するためのコミュニケーション支援およびインプリメンテーショントレーニングを実施しました。

カスタマーエクスペリエンス向上のためのエンプロイーエクスペリエンスの可視化

カスタマーエクスペリエンス(顧客の体験価値)を高めることは優先的に取り組むべき課題です。ある企業事例では、このカスタマーエクスペリエンスの向上の取り組みを実施し、戦略的に対外コミュニケーションを設計したことで、エクスペリエンスを7倍向上させることに成功しました。しかし結果的に、業界平均を大きく上回る離職という課題が浮上しました。

ソフィアで実際に行ったこの課題の施策として、入社し部署配置が行われ、業務に従事し、そしてプロジェクトで成果を出して退社するまでのあらゆる従業員の社内経験やイベントを書き出し、さらにモチベーションや心理状態を可視化しました。そして「従業員のエクスペリエンスの現状」「あるべき従業員エクスペリエンス」を設定し、イベントごとに施策を実施しました。その結果、離職率を下げることに成功し、顧客満足度向上の支援にも繋がりました。

アクションや施策につながらない社内アンケートの統廃合と再分析

5000人もの従業員を持つ大企業の事例では、これまで様々な社内アンケート調査を実施するものの、分析や考察までで止まってしまい、その後に具体的なアクションや施策にはつながらない点がこれまでの課題でした。また人事や経営企画、コンプライアンスなど、様々な部門が独自のアンケート調査を実施するため、アンケート回答の負担が大きいという問題もありました。

そこでソフィアは、まず既存のアンケートの統合分析とともに、社内WEBメディアへの従業員のアクセスログや経営業績データなども複合的に分析しました。次の段階として、分析データをフィードバックするワークショップを開催することで、そのデータの背景要因(定性情報)をとらえ仮説を立てます。これまでバラバラに行われていたアンケートを一本化し、そのデータから 納得感のある具体的なアクションプラン立案と実施に踏み出すことに成功しました。

その他の事例は下記にまとめておりますので、ぜひご一読ください。
エンプロイーエクスペリエンスの事例集

まとめ

エンプロイーエクスペリエンスの向上は単なる組織改革ではなく、従業員の働きやすさ、仕事の充足感、そしてワークエンゲージメントを高めるための手法です。多くの企業がエンプロイーエクスペリエンスの向上に取り組み、業績や企業価値、また従業員の離職率の低下などに直接繋がっていることを実感しています。エンプロイーエクスペリエンスの向上を実施することで、見えてこなかった課題や問題点を見つけることもできます。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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