インターナルコミュニケーション

従業員エンゲージメント指標とは?指標に関する要素や調査方法を紹介!

目次

人的資本経営の潮流が加速する現代において、企業の持続的な成長を左右する最重要KPIとして「従業員エンゲージメント」への注目がかつてないほど高まっています。しかし、多くの人事担当者が「具体的にどの指標を測定すればよいのか」「数値は取れたが、どのように改善へ繋げればよいのか分からない」という課題に直面しているのではないでしょうか。

本記事では、従業員エンゲージメント指標の基礎的な定義から、eNPSやワークエンゲージメントなどの主要な測定指標、科学的な調査設計の手法、そして数値を改善するための本質的な施策までを網羅的に解説します。特に、従来の理論に加え、弊社ソフィアが2024年に実施した最新の「インターナルコミュニケーション実態調査」のデータを交え、日本企業が陥りがちな「ツールの導入は進んでも共感が生まれない」という現状と、その打開策について深く掘り下げていきます。組織と個人の絆を深め、業績向上に直結させるための実践的なガイドブックとしてご活用ください。

従業員エンゲージメント指標の定義と関連概念の整理

「従業員エンゲージメント」という言葉を耳にする機会が増えましたが、具体的に何を指し、何を指標としているのでしょうか。本章では、指標の定義や、よく似た用語である「従業員満足度」「ワークエンゲージメント」との違い、そして測定において注意すべき視点について整理します。指標を正しく理解することが、効果的な施策を実行するための第一歩です。

従業員エンゲージメントの定義と本質

組織に対する従業員の貢献姿勢を指すのが、従業員エンゲージメントです。それを数値化したものが、従業員エンゲージメント指標となります。

学術的および実務的な観点からさらに深掘りすると、従業員エンゲージメントとは、従業員が組織の掲げる目標やビジョンに深く共感し、その達成に向けて自発的に貢献しようとする「活力(Vigor)」「没頭(Absorption)」「熱意(Dedication)」が揃った心理状態を指します。単なる精神論ではなく、ウィリアム・カーン(William Kahn)教授が1990年に提唱した「組織のメンバーが仕事上の役割において、身体的、認知的、感情的に自身を表現している状態」という定義が基礎となっており、組織心理学の分野でも長年研究されてきた概念です。

従業員満足度(ES)との決定的な違い

よく混同される概念に「従業員満足度(ES: Employee Satisfaction)」がありますが、これらは似て非なるものです。従業員満足度は、給与、福利厚生、オフィス環境、人間関係といった「衛生要因」や「労働条件」に対して、従業員がどれだけ満足しているかを示す指標です。これはあくまで「従業員から会社への一方的な評価」であり、満足度が高くても、必ずしも業績への貢献意欲が高いとは限りません。「居心地は良いが、挑戦はしない」というぶら下がり社員を生むリスクさえあります。

一方で、従業員エンゲージメントで問われるのは、会社の目標について従業員が共感しているかどうかです。エンゲージメントは、企業と従業員が対等なパートナーとして、双方向の信頼関係(ラポール)に基づき、相互に貢献し合う状態を指します。従業員エンゲージメントが高ければ、会社とともに従業員もリスクなどを負う姿勢があると言えるでしょう。「人が資本」である組織を形成できているという証にもなります。

ワークエンゲージメントとの学術的な区別

また、「ワークエンゲージメント」という言葉も、従業員エンゲージメントと同じ意味で使われることが多くあります。ただし、厳密には以下のような違いがあります。

従業員エンゲージメント(Employee Engagement)は「個人と組織」の関係性に焦点を当てた概念で、企業への愛着やロイヤリティ、理念への共感を含みます。コンサルティング会社などがデータを取っていることが特徴的です。一方、ワークエンゲージメント(Work Engagement)は「個人と業務(仕事そのもの)」との関係性に焦点を当てた概念です。

このワークエンゲージメントは、オランダ・ユトレヒト大学のSchaufeli教授らが提唱した概念です。「仕事から活力を得ていきいきとしている(活力)」「仕事に誇りとやりがいを感じている(熱意)」「仕事に熱心に取り組んでいる(没頭)」、この3つが揃った状態がワークエンゲージメントの高い状態であると定義されています。

これに対し、本稿で扱う従業員エンゲージメントは、企業と人がどれだけ信頼・理解し合っているのか、共感し合っているのかを表すものです。従業員エンゲージメントが高いという状態はつまり、理念やビジョンへの共感があり、職場・同僚・仕事に対する感情的なコミットメントがある状態のことを言います。

測定における「経営目線」の罠

ただし従業員エンゲージメント指標を取る際には、どうしても経営目線に陥りがちであることに留意する必要があります。「いかに効率よく働かせるか」「離職させないか」という管理的な意図が透けて見える調査は、従業員の心理的リアクタンス(反発)を招きます。現場の感情に寄り添う姿勢を保ち、正しくエンゲージメントを把握するためのポイントは、調査を「診断」で終わらせず、その後の「対話」と「環境改善」への約束として位置づけることです。

従業員エンゲージメント指標が重要視される背景

昨今、多くの企業がエンゲージメント指標を経営目標(KPI)に掲げるようになった背景には、構造的な市場環境の変化と、明確な経済的メリットが存在します。

1. 労働人口減少と人材流動性の高まり(リテンション)

少子高齢化が進む日本において、労働力不足は慢性的な課題です。さらに、終身雇用制度の崩壊とキャリア観の多様化により、優秀な人材ほど「自分の価値観に合う企業」を求めて流動するようになりました。エンゲージメントが高い従業員は、組織への帰属意識が高く、離職率が有意に低いことが多くの調査で示されています。リテンション(人材定着)の観点から、エンゲージメントの維持は採用コストの抑制とノウハウの蓄積に直結します。

2. 労働生産性と業績への直接的なインパクト

エンゲージメントは単なる「やる気」の問題ではなく、財務指標に影響を与える経済的要因です。ギャラップ(Gallup)社のメタ分析によると、エンゲージメントが高い上位25%のチームは、下位25%に比べて、生産性・顧客評価が高く、欠勤率が低いことが示されています。従業員が主体的・自律的に業務を改善し、顧客に対して高い付加価値を提供しようと努めることで、結果として「顧客エンゲージメント」が向上し、企業の利益率が高まるという「サービス・プロフィット・チェーン(SPC)」のメカニズムが働きます。

3. イノベーションの創出と組織の俊敏性

VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)と呼ばれる予測困難な時代において、トップダウンの指示待ち組織では変化に対応できません。現場の従業員が市場の変化を敏感に察知し、自律的に判断して行動する「自律型組織」への転換が求められています。高いエンゲージメントを持つ従業員は、組織のビジョンを自分事として捉えているため、前例のない課題に対しても創造的な解決策を提案し、イノベーションを牽引する原動力となります。

4. 人的資本情報の開示(ISO 30414)への対応

米国証券取引委員会(SEC)は2020年8月に新規則を採択しましたが、これは特定指標の義務的開示ではなく、「重要(material)」と判断される情報を開示すること」を求める原則主義(principles-based)のルールです。開示すべき具体的指標は企業が自由に判断できます。

投資家は、企業の持続的成長性を判断する材料として、財務諸表だけでなく「人材の質」や「組織の健全性」を厳しくチェックしています。エンゲージメントスコアは、この「組織の健全性」を示す最も代表的な非財務指標の一つとして、ステークホルダーに対する説明責任を果たす上でも不可欠なものとなっています。

従業員エンゲージメント指標の種類

エンゲージメントを測定するためには、目的に応じて適切な「指標(ものさし)」を選ぶ必要があります。大きく分けて「総合指標(結果系)」と「ドライバー指標(要因系)」、そして「状態指標」の3つに分類して整理します。

1. エンゲージメント総合指標(アウトカム指標)

組織に対する最終的な評価や態度、行動意向を測定する指標です。経営レベルでのKPIとして設定されることが多い数値です。

eNPS(Employee Net Promoter Score)は「あなたは親しい友人や知人に、あなたの職場を就職先としてどの程度勧めたいと思いますか?」という究極の質問に対し、0〜10点の11段階で回答してもらうものです。推奨者(9〜10点)はロイヤリティが高く、周囲にポジティブな影響を与える層。中立者(7〜8点)は現状に大きな不満はないが、熱狂的でもない層。批判者(0〜6点)は組織に対して不満を持ち、ネガティブな発言をする可能性がある層です。計算式は「推奨者の割合(%)- 批判者の割合(%)」となります。このスコアは、従業員のロイヤリティをシンプルかつ強力に可視化できるため、多くのグローバル企業で採用されています。

また「会社に対して総合的にどのくらい満足しているか」を問う総合満足度の調査や、「今後2年間、今の会社で働き続けたいですか?」といった質問で将来的な離職リスクを予測する継続勤務意向(リテンション意向)の測定も、アウトカム指標として広く活用されています。

2. エンゲージメントレベル指標(状態指標)

従業員の現在の心理状態や業務への没入度を測定する指標です。

学術的に最も信頼性が高いとされるユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)は、「活力(仕事をしていると力がみなぎる)」「熱意(仕事に誇りを感じる)」「没頭(仕事をしていると時間が経つのを忘れる)」の3要素を測定します。9項目版(UWES-9)や3項目版(UWES-3)などの短縮版も開発されており、実務でも使いやすくなっています。

3. エンゲージメントドライバー指標(要因指標)

エンゲージメントを向上させたり、逆に低下させたりする「原因」となる要素を測定する指標です。ここを改善することが、総合指標の向上に繋がります。

組織ドライバーは人間関係や職場環境の状態を指し、経営陣への信頼・企業理念への共感・心理的安全性・公平な評価制度・福利厚生などが含まれます。職務ドライバーは職務の難易度を指し、仕事の裁量権(自律性)・役割の明確さ・業務量・成長機会などが含まれます。個人ドライバーは個人的資質が業務に及ぼす影響を指し、自己効力感(やればできるという感覚)・レジリエンス(逆境力)・楽観性などが該当します。

従業員エンゲージメント指標に関係する要素

これらを踏まえ、従業員エンゲージメントが高く、生産性の高い組織を目指しましょう。エンゲージメントスコアは、単独で存在するのではなく、様々な環境要因の複合的な結果として表れます。ここでは、特に影響力の大きい3つの要素について解説します。

1. 働く環境(コミュニケーションとインフラ)

まずは、働く環境です。ここには物理的なオフィス環境だけでなく、ITインフラや組織風土が含まれます。たとえばコミュニケーションが取りやすい環境であれば、業務上の不自由がなくなるだけでなく、精神的なつながりを感じながら仕事ができます。それによって企業への愛着が高まり、エンゲージメントが向上すると考えられます。

特に近年では、デジタルワークプレイスの整備状況がエンゲージメントに直結しています。弊社ソフィアの調査(インターナルコミュニケーション実態調査2024)では、従業員数1,000名以上の大企業において、チャットツールの導入率は76.0%に達していることが明らかになりました。しかし、単にツールを導入するだけでは不十分です。同調査では、部門間での活用度に大きな格差があることや、情報共有において「情報がない」「遅い」「見つからない」という「三重苦」が発生している実態も浮き彫りになっています。

こうした情報の非対称性やコミュニケーションの不全は、従業員のストレスを高め、組織への信頼を損ないます。他にも、残業の有無、プライベートの時間が確保できるかどうかなどによって、エンゲージメントは大きく左右されます。評価の面では、正当な評価が受けられる環境であることが、組織への貢献意欲に大きく関わるでしょう。

また、コミュニケーションの活性化を促すためにはデジタルワークプレイスを取り入れ、より質のよいコミュニケーションを重ねましょう。と同時に、働く環境は組織風土や文化に大きく影響を受けます。社員の成長意識が低い、社内の雰囲気が暗く社員間のコミュニケーションがない、などの場合は早急に組織風土や文化を改善しなければなりません。

2. やりがい(貢献実感と承認)

業務へのやりがいは、エンゲージメント指標に直結します。やりがいを高めるためには、まずは各々の業務における成果を認めることが大切です。成果が認められることで「自分は企業に貢献しているのだ(自己効力感)」という意識を持ち、それが企業への愛着につながっていきます。

また、やりがいを高めるためには、社員の業務に対する納得も必要となります。自分の仕事が誰の役に立っているのか、どのような社会的価値を生み出しているのかを理解することです。会社の理念やビジョンに共感でき、業務に対してしっかりと納得できていれば自然とやりがいも出てきます。

3. ビジョンへの共感(戦略への納得感)

企業ビジョンと従業員の方向性が一致しているかどうかも重要です。従業員が企業ビジョンに共感している場合は、仕事に対して積極的に取り組むことができます。

ビジョンには本来「将来の見通し」や「展望」といった意味があります。企業の「あるべき姿」や「理想像」を明文化したものがビジョンとなるため、従業員に対するビジョンの浸透は重要です。ビジョンを浸透させ、共感を促すことにより、「社員のモチベーションが向上する」「社員一人ひとりが適切かつ迅速に判断できる」「意見をまとめやすくなる」などのメリットがあります。企業のビジョンは社員に一体感をもたらし、モチベーションを向上させる役割を持つため、積極的かつ丁寧にビジョンへの共感を促しましょう。

しかし、現実は厳しいデータが示されています。弊社ソフィアの調査によると、経営層が発信する経営戦略に対して、現場社員の共感・納得が得られている割合はわずか約1割にとどまることが明らかになっています。多くの企業で「戦略が現場に響いていない」「自分事として捉えられていない」という深刻な課題が存在しており、これがエンゲージメント向上の大きな阻害要因となっています。

従業員エンゲージメント指標の具体的な調査方法

では、従業員エンゲージメントはどのように調査・測定されるのでしょうか。代表的な2つの調査手法と、具体的な質問設計についてご説明します。

従業員エンゲージメントサーベイ(センサス調査)

従業員エンゲージメントサーベイ(センサス)では、1年に1回あるいは半年に1回などの長いスパンで、全従業員を対象に一度にたくさんの質問(50〜100問程度)を行います。

メリットとしては、組織全体の健康状態を網羅的に把握できる点が挙げられます。部署別・階層別・属性別(年代・性別・勤続年数)の詳細なクロス集計や、ドライバー分析(要因分析)が可能であり、抜本的な組織課題の特定に適しています。一方、デメリットとしては、質問数が多いため回答者にとって負担が大きくなること、また実施から分析・フィードバックまでのサイクルが長くなりがちなことが挙げられます。

従業員パルスサーベイ

従業員パルスサーベイは、週次・月次といった短いスパンで従業員に対する質問(5〜10問程度)を行う調査方法です。「パルス(脈拍)」のように、組織の状態を頻繁にチェックすることを目的としています。

メリットとしては、短い間隔で行うため、組織の変化や傾向、特定の施策実施後の反応をリアルタイムに把握するのに適している点が挙げられます。回答負荷が軽く、習慣化しやすいのも特徴です。デメリットとしては、質問数が限られるため課題の深掘りには向かず、センサス調査と組み合わせて活用するのが一般的です。

従業員エンゲージメントの質問例

従業員エンゲージメントを調査する際は、どのような質問を投げかけるかが重要です。質問は、下記のような項目で行うのが一般的です。

ウェルビーイング(心身の健康状態・ストレスレベル・安全性)、リーダーシップ(経営層への信頼・上司の支援行動・方針の明示)、ワークライフバランス(業務量の適切さ・休暇の取得しやすさ・柔軟な働き方)、インターナルコミュニケーション(情報の透明性・部門間の連携・フィードバックの質)、個人的キャリア(成長機会・教育研修・将来のキャリア展望)、リテンション(継続勤務意向・離職リスク)などがカテゴリーとして設けられます。

具体的な質問文の例としては、会社・組織への評価として「今の会社で働くことを誇りに思いますか?」「今の会社が働きやすい会社だと家族や友人に推薦する可能性はどれくらいですか?(eNPS)」「今後2年間今の会社で働く予定はありますか?」「経営陣は従業員とうまくコミュニケーションしていると思いますか?」「給与と福利厚生に満足していますか?」などが挙げられます。業務・自己成長については「今日の仕事についてどう思いますか?」「自分のスキルやキャリアが伸びているのがわかりますか?」「今の会社での仕事は意味があると思いますか?」「職場であなたを刺激し、元気づけるものは何ですか?」といった質問が推奨されます。人間関係・サポートについては「あなたのマネージャーは素晴らしいリーダーだと思いますか?」「職場で意思決定を行う権限があると感じますか?」「職場でアイデアや意見を共有することに抵抗はありませんか?」「あなたのチームは協力して作業を完了していますか?」「問題を提起したり、上司に助けを求めたりすることに抵抗はありませんか?」「あなたのマネージャーはあなたのキャリア志向に興味を持っていると思いますか?」「あなたの仕事量は合理的だと思いますか?」などが参考になります。

また、社内アンケートは「本音が書けない」「本音を書かない」という従業員もいるため注意が必要です。「これを書いたら評価に響くのではないか」という不安から、当たり障りのない回答(中心化傾向)をしてしまうことがあります。組織内の信頼関係がない場合、誰も本気で答えてくれず、意味のないデータしか出てこない恐れがあります。アンケートの結果次第では、場合によっては「うちの会社は信用できない」と、相互不信が深まることもあるでしょう。そのため、定量的な調査だけでなく、従業員の本音を聞きたいのであれば直接ヒアリング(1on1やフォーカスグループインタビュー)したほうが良い場合もあります。

従業員エンゲージメント向上のための5つの本質的施策

ここまで、従業員エンゲージメントの調査方法を紹介してきました。しかし、調査はあくまで「診断」であり、重要なのはその後の「治療・改善」です。そもそもエンゲージメントを向上させるにはどうすればよいのでしょうか。いくつかの要素に分けて解説します。

1. ビジョンの共有と浸透(インターナルブランディング)

企業理念や経営ビジョンに共通認識を持つと、組織に貢献したいという気持ちに結びつきます。

ビジョンは掲げるだけではなく、しっかりと浸透させることで、企業をあるべき姿へと導くことができるものです。ビジョンが社内に浸透していれば、企業が岐路に立たされたとき、社員の意見をまとめやすくなります。また、統一されたビジョンは社員に一体感をもたらします。結果、モチベーションを向上させるためのトリガーとなるのです。

ビジョンが組織に浸透し力を得ていくプロセスは、「認知」「理解」「共感」「実践」「協働/影響」という5つのフェーズをたどると考えることができます。認知はビジョンの存在を知ること、理解はビジョンの意味や背景を正しく理解すること、共感はビジョンに対して「自分ごと」として納得し感情的に同意すること、実践は日々の業務判断や行動にビジョンを反映させること、そして協働/影響は周囲と協力してビジョンを実現し他者にも良い影響を与えることです。

まず重要なのはビジョンの存在を周知したうえで理解を促し、その内容に共感してもらうことです。そのあとで初めて、従業員はビジョンを実践します。そして各々がビジョンを実践するようになれば、組織には協働意識が芽生え、組織はより強固に団結していくのです。

弊社ソフィアの調査で明らかになった「戦略への共感わずか1割」という課題を克服するには、経営層からのトップダウン発信だけでなく、ミドルマネジメントが自部門の言葉に翻訳して伝えるプロセスや、現場社員同士がビジョンについて語り合う「対話の場」の創出が不可欠です。

2. 社内コミュニケーションの活性化(「三重苦」の解消)

社内コミュニケーションを活性化し、従業員にとって働きやすい環境を作ることも大切です。

企業の規模やオフィスの形態、社員の人数などによって社内コミュニケーションを活性化させるためにできることは異なります。そのため、導入目的を明確にしたうえで、企業にあった取り組みやツールを選ぶことがポイントです。

特にチームで関わり合うことが多い企業では、上司や同僚とのコミュニケーションを円滑にし、良好な関係性を作れるよう支えていきましょう。相談や雑談がしやすい環境を作ると、ちょっとしたもやもやが解消され、心理的安全性(Psychological Safety)が高まり、エンゲージメントに作用するはずです。そのためには、1on1ミーティングを実施したり、ランチミーティングを日常的に取り入れたりするのがおすすめです。また、社内イベントを実施して、普段の業務とは違った環境でコミュニケーションの機会を作るのもいいでしょう。

また、コロナ禍の影響で、ここ数年で多くの企業が在宅勤務を開始しました。在宅勤務が続くと、コミュニケーションが希薄になりがちです。そのまま放置すれば、企業の生産性低下や離職率の高まりを招くリスクがあります。ビジネスチャットツールを導入したり、オンラインイベントを実施したりし、テレワークという新たな働き方に対応できるよう、コミュニケーション方法の最適化に努めましょう。

ただし、ツール導入は万能薬ではありません。弊社ソフィアの調査でも、チャットツールの導入率が76%を超えているにも関わらず、現場では情報が「ない・遅い・見つからない」という課題が根強く残っていることが示されています。ツールを入れるだけでなく、「対話(Dialogue)」「教育(Education)」「ツールの活用ノウハウ(Tool Usage)」の三本柱で戦略的にコミュニケーション設計を行うことが、真の活性化には必要です。

コミュニケーションが深まって働きやすくなれば、自ずと組織への帰属意識が高まるでしょう。

3. 従業員エンゲージメント調査の実施(PDCAサイクル)

従業員エンゲージメントの実態を定期的に調査し、把握することも大切です。誰が見てもわかりやすいように実情を可視化し、課題を明確にしていきましょう。

ただし調査の際は、従業員が本音を書けるようなものにするように工夫が必要です。いくら組織をよくするための調査であっても、従業員がその調査にメリットを感じなければ、回答する行為そのものに不満が募ります。「調査疲れ」を防ぐためにも、設問数が多くて煩雑なアンケートには答えたくないと思う人も多いため、「答える側のメリット」を明確に示しながら調査を進めることが大切です。「この回答結果をもとに、オフィスの環境改善を行います」「人事制度の見直しに活用します」といった具体的なコミットメントを事前に行うことが有効です。

また、調査をしても悪い回答にフタをして良い回答だけを報告するというようなことがあると、従業員の不信感は募るばかりです。ネガティブな結果も含めて透明性を持って開示し、経営陣が真摯に向き合う姿勢を見せることが重要です。従業員の本音に愛を持って耳を傾ける姿勢を示すことで、従業員エンゲージメントを高めるきっかけになるはずです。

4. 働きやすい職場環境の整備(制度と風土の両輪)

職場に愛着がわくように環境を整えることも重要です。

職場環境は、組織の風土に左右されます。もし組織風土に問題がある場合、求心力が低下し、さまざまな悪い兆候が現れるでしょう。たとえば社員の成長意識が低かったり、雰囲気が暗かったり、さらにはコミュニケーションが希薄で各々が勝手な判断で物事を進めていたりします。このような場合は、まず社員インタビューや意識調査によって状況を把握した後、改革の重要性を経営層から説く必要があるでしょう。そして組織に合った具体的な行動指針(バリューズやクレド)を示し、評価制度と連動させることで各々の意識変革を促していきます。

他にも、休みが取りにくかったり、残業を強いられたりするような環境では、従業員の不満が募りエンゲージメントが低下するというケースがあります。この場合、フレックスタイム制を導入したり、リモートワークなどの柔軟な働き方を許容したりすることで、従業員のワークライフバランスを整えていきましょう。自分で働く環境を選択できる(自己決定権がある)と、従業員の気持ちは明るくなります。

とはいえ、選択肢を増やしすぎてしまうと不安や混乱につながりかねません。上司や同僚と相談しながら、環境を選べるような状態が理想的です。

5. エンプロイーエクスペリエンスの充実(EXデザイン)

従業員エンゲージメントの向上には、エンプロイーエクスペリエンス(EX:従業員体験)が大きく関わってきます。

エンプロイーエクスペリエンス(Employee Experience)とは「従業員の経験(体験)」を意味する言葉です。従業員の満足度をはじめ、育成状況や所有スキル、心身の健康状態など、会社組織の中で従業員が関わるあらゆる経験を指します。元々は「顧客体験」を意味する「カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)」から派生して生まれた概念です。入社前の採用面接から、入社後のオンボーディング、日々の業務、評価面談、異動、そして退職に至るまでの「従業員ライフサイクル」のすべてのタッチポイントにおける体験の質を高めることが求められます。

昨今エンプロイーエクスペリエンスが注目されるようになった背景には、働き方の変化があります。ひとつの会社で定年まで働き続けるといった働き方はすでに過去のものとなり、会社員は自分のスキルアップやワークライフバランスのために、環境のよい企業・自分の価値観に見合った企業を選んで積極的に転職をするようになりました。これにより企業は、自社の貴重な人材を他社へ流出させないために社員との良好な関係性を構築することに全力を挙げなくてはならない状況に置かれ、エンプロイーエクスペリエンスを重視するようになりました。

エンプロイーエクスペリエンスが充実したものになると、従業員は企業に対して帰属意識を強く感じるようになり、エンゲージメントが高まると考えられています。ただし従業員エンゲージメントは、無理に管理できるものではありません。むしろ、無理にコントロールしようとすればするほど下がるものです。意図してコントロールするのではなく、「環境をデザインする」という視点での工夫が必要です。たとえば「何をどの程度までできればどう評価されるのか」「何を達成すれば昇進や待遇のアップにつながるのか」という基準を明示すると効果的でしょう。さらに、評価基準を決めるプロセスそのものに携わらせることも、エンプロイーエクスペリエンスを充実させるフックになるはずです。

エンプロイーエクスペリエンスの向上のためには、エンプロイージャーニーマップの導入も有効です。エンプロイージャーニーマップとは、人材の募集・採用・入社後の研修・現場での実務・日々のコミュニケーション・業務形態の変容(働き方改革やテレワークの導入など)・育成やキャリアアップ・人事評価・そして退職までを一連の「フロー」として可視化し、それをベースに従業員の経験をデザインするものです。従業員の希望を踏まえつつ「目指すべき人物像」を明確に提示することで、従業員の意欲を高水準で維持することができるでしょう。

まとめ

従業員の会社への信頼度・愛着度を指数化したものが従業員エンゲージメントです。これを高めることで優秀な人材の定着率が向上し、結果として企業のパフォーマンス向上にもつながります。従業員エンゲージメントを高めるためには、職場環境やビジョンへの共感などの要素が不可欠です。

ポイントを整理した上で、自社のエンゲージメントについて実態を調査していくのがおすすめです。特に、弊社ソフィアの調査で明らかになった「戦略への共感不足」や「コミュニケーションツールの活用格差」といった現代的な課題にも目を向け、単なる数値測定にとどまらない、本質的な組織開発のアプローチが求められます。

エンゲージメント向上のためには、エンプロイーエクスペリエンスを充実させることが大切です。変化の多い時代の中で組織の改革を目指すのなら、自社に合った効果的な手法を取り入れていく必要があります。調査設計から施策実行まで、ぜひソフィアまでお問い合わせください。

よくある質問
  • 従業員エンゲージメント指標とは何ですか?
  • 従業員が現在働いている会社をどれだけ信頼しているか、会社にどれだけ貢献したいと考えているかという意味で活用されます。

  • 従業員エンゲージメントはどのように調査しますか?
  • ●従業員エンゲージメントサーベイ:
    1年に1回などの長いスパンで、一度にたくさんの質問を行います。質問数が多いため回答者にとっては負担が大きいものになりますが、それだけたくさんの情報を得られます。

    ●従業員パルスサーベイ:
    週次、月次といった短いスパンで従業員に対する質問を行う調査方法です。短い間隔で行うため、変化や傾向を把握するのに適しています。

    ●従業員エンゲージメントの質問例:
    質問は、下記のような項目で行うのが一般的です。

    ・ウェルビーイング
    ・リーダーシップ
    ・ワークライフバランス
    ・インターナルコミュニケーション
    ・個人的キャリア
    ・リテンション

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。