テレワークでのコミュニケーション不足を防ぐには?

テレワーク推進が叫ばれて久しくなりますが、いち早く導入した企業からは「コミュニケーション不足」の問題が挙がっていることをご存知でしょうか。うまく伝わらない、相手の意図が読めない、レスポンスに時間がかかる、業務以外の話をしない…。こうして多くの社員がストレスを感じ、疲弊しかかっています。
本記事ではテレワークのコミュニケーション不足問題に警鐘を鳴らすとともに、この問題を解決する方法について解説します。

テレワーク時のコミュニケーション

サイボウズ チームワーク総研の調査によれば、在宅勤務で会社の人とコミュニケーションをとる時間(Eメール、電話、チャット、Web会議など)は「業務に関わるもの」で1日あたり30分未満が6割、「業務に直接関わらないもの」に至っては、0分が4割を占めています。

オフィス勤務でのコミュニケーション手段は、対面での会話が主だったはずです。近くの席にいればお互いの仕事の状況もなんとなくわかりますし、仕事の合間に何気ない会話も生まれますが、テレワーク下では意識して連絡を取らなければ雑談もできません。こういった理由で、テレワーク下では社内コミュニケーション、特に業務以外での社内コミュニケーションが圧倒的に不足しているのです。

従業員が感じるテレワークの問題は〇〇?

実際にテレワークで働く社員が感じている問題点について見ていきましょう。
総務省の「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」によると、「テレワークによって孤立している感じがする」従業員は15.5%とそこまで高くない割合でした。一方で、「会社のルールが整備されていない」と答えた従業員は49.6%、「テレワークの環境が社会的に整備されていない」という回答が 46.1%と圧倒的に高く、テレワークに対応した会社のルールや環境づくりの遅れに問題があることが明らかになっています。

次に、テレワーク下でコミュニケーション不足が引き起こす問題を解説します。

テレワーク下のコミュニケーション不足によって起こりうる問題

ここでは、社員を管理する人事や総務などのコーポレート部門、マネジメント層にとっての視点から諸問題を解説します。

業務の評価が難しい

これまではオフィス勤務で業務への取り組みを間近で見られたため、成果だけでなくプロセスも含めて部下の評価を行うことができました。しかしテレワークになったことでそのプロセスが見えなくなり、評価指標が成果物に依存してしまいます。
また、評価される側も成果物のみで判断されることに不安を感じている場合も少なくありません。評価する側、される側の双方が納得できる明確な評価基準を設けるとともに、業務のプロセスを見える化するためにデジタルツールの導入が必要となるでしょう。

社員のメンタルケアが難しい

株式会社月間総務の調査によると、テレワークを推進する企業における7割超の総務担当者が「テレワークの方が(オフィス勤務に比べて)メンタルケアが難しい」と回答しています。また、従業員のメンタル不調の要因として考えられるものは、テレワークによるコミュニケーション不足・孤独感、外出しないことによる閉塞感、新型コロナウイルス感染への不安感、オンとオフの切り替えの難しさなど、コロナ禍でのテレワークという特殊な事情に起因するものが大半を占めています。これまでに前例のなかった状況に対応することで、テレワークをしている当事者にも、その従業員のメンタルケアを担う担当者にも負担がかかっていることが伺えます。

テレワークと合わせてビジネスICTツールを導入する企業は8割以上

総務省の「平成30年 情報通信白書」によると、テレワーク時のコミュニケーション不足問題を打破すべく、8割以上の企業がビジネスICTツールを導入しています。代表的なものはビジネスチャットツール、ビデオ会議ツール、タスク管理ツール、勤怠管理ツールなどです。
これらのツールを活用し、テキストや音声、ビデオによってリモートでもコミュニケーションをとることができるようになりました。ただし、これらのツールにはそれぞれメリットやデメリットがあり、セオリーを理解して使わなければ対面でのやりとりの代替とはなりえません。各ツールの特性を生かし、導入の目的と役割を明確にしつつ運用を行う必要があります。


テレワーク下でコミュニケーション不足となる原因

働き方がテレワークに変化するとなぜコミュニケーションが不足するのでしょうか。主な原因を2つ解説します。

業務に関する報告や連絡のみとなってしまう

多くの企業で使われているチャットツールでは、会話の内容が業務に関するものに終始しがちです。これは、文字というコミュニケーションの手段が、口頭のそれと比べて無駄を省く性質を持っているためです。業務の合間に交わされていた何気ない雑談がいっさいなくなるため、テレワークになってから雑談の重要性に気づいたという人も少なくないのではないでしょうか。
雑談からは相手の性格や価値観、考え方のクセが垣間見えます。これらがその相手とのコミュニケーションコストを下げる役割を持つのですが、雑談がなくなったことによってコミュニケーションコストが上がり、チャットツールでは相手の真意が読めずストレスを感じます。するとその相手とは距離を置くようになり、コミュニケーションはますます不足していくでしょう。

コミュニケーションツールがうまく使いこなせていない

社会人人生の大半において対面での会話を中心とするコミュニケーションを行ってきたミドル層やシニア層にとっては、ICTツールの利用は億劫だったり、対面でなければ不安を覚えたりすることがあります。チャットツールの絵文字利用に抵抗を覚えたり、挨拶文のない短いやりとりに不快感を示したりすることもあるでしょう。
さらに、デジタルネイティブ世代のITリテラシー低下問題も挙げられます。彼らはチャットやSNSをスマートフォンで使うことはできるものの、パソコンでメールを送信することや目上の人とオンラインでコミュニケーションをとることには慣れておらず、ビジネスシーンでつまずく場面が多々あります。プライベートではスマートフォンを駆使してさまざまなアプリを使いこなせるものの、仕事になると途端にIT弱者の人材と化してしまうことがしばしば起きているのです。

オンラインコミュニケーションの特性を理解できていない

コミュニケーションには、「同期型」と「非同期型」の2種類が存在します。同期型のコミュニケーションは相手の反応に速報性を求めるもので、直接会っての1対1の会話、電話、打ち合わせなどが該当します。一方で非同期型のコミュニケーションは相手の反応をすぐに求めません。代表的なものは手紙やeメール、LINEなどです。
本来であればツールの特性(どちらに該当するか)を把握したうえで利用をすべきですが、実際にはそこまで考えて連絡していないことも多いのではないでしょうか。非同期型のツールで速報性を求めれば相手から返信がないことで不安や不満を感じるでしょう。こうしてコミュニケーション不足が生じるわけです。

テレワーク下でコミュニケーションミスが起こる原因

テレワークでのコミュニケーションには不足だけでなくミスも生じます。

文章のみのやりとりだと認識違いが起こりやすい

先ほども挙げたチャットツールですが、文字による情報伝達は口頭と比べて情報量が圧倒的に少なくなります。すると、些細な言い回しで誤解を生んだり、認識に齟齬が生まれたりすることもひんぱんに生じます。この誤解や齟齬を正す手段も同じく文字なので、事態は余計に深刻化するのです。

コミュニケーションにタイムラグが生じる

チャットツールはビジネス上では比較的同期型であるとはいえ、それでも離席やふとした漏れで気づかないことや、急ぎの案件に対応しているうちに返信しそびれることがあります。こうしたタイムラグが業務上で致命的なミスを起こすこともあるでしょう。重要な話や込み入った話、返答に急を要する話は電話やビデオ会議ツールなどで補足などをすべきです(ビデオ会議ツールは同期型コミュニケーションツールです)。

テレワーク下でコミュニケーション不足に陥らないために

コミュニケーション不足やミスを防止するには、各ツールの特性、すなわち同期型・非同期型の理解をしたうえでうまく使い分ける必要があります。同期非同期がうまく噛み合わないとコミュニケーション不足を感じやすくなるため要注意です。その他にもいくつか気を付けるべきポイントがありますので、以下にご紹介します。

意図的に業務以外のコミュニケーションの時間を作る

テレワークでは過集中になり、デスクから離れずに数時間経っていたということもしばしば起きえます。この間、もちろんコミュニケーションはないわけですから、ある程度の時間でブレイクタイムを設けましょう。
例えば同期型のツールであればこの時点で開放して会話をしてもよいでしょうし、非同期型であれば自分やグループ宛てに届いていた他愛もないメッセージに返信をしてもよいでしょう。このように、オンとオフを切り替えて業務外のやりとりを許容するルールづくりも必要です。

対面のコミュニケーションの機会を作る

対面のコミュニケーションはもっとも速報性の強い同期型の手段です。伝えればすぐに返ってくるやりとりはコミュニケーションに充足感をもたらすでしょう。コロナ禍のうちは大人数では集まれませんが、シフト勤務とオフィス勤務を組み合わせて同僚と対面する機会を設けると効果的です。

時間を決めて毎日コミュニケーションをとる

ICTツールでも同期型コミュニケーションは可能です。例えばランチ時や業務終了後にビデオ会議ツールを開放して雑談をするなど、対面での速報性に近いコミュニケーションも実現できます。テキストチャットは非同期の面もあるほか1対1のクローズドなやりとりになりがちなので、できれば顔の見られるビデオチャットで休憩室のようにオープンな雰囲気を作り出していくとよいでしょう。

コミュニケーションツールは段階的に浸透させる

これまで挙げた解決方法は、一度に導入してもチームメンバーには意図がわからず、いたずらに混乱させたり、ルールが守られず無法地帯と化したりするリスクがあります。テレワーク導入後に課題を抽出して、それを解決できるツールを少人数で使ってトライアルアンドエラーを繰り返し、段階を経て徐々に広めていくことを推奨します。

まとめ

冒頭で少し述べましたが、テレワーク自体は決して不便なものではなく、業務効率や生産性の点で大きなメリットを有しています。ただ現時点では共通のセオリーとなるコミュニケーションルールがないために、企業内で問題が生じている状態です。
社内外のコミュニケーション問題の解決を支援するソフィアでは、オフラインだけでなくオンラインコミュニケーションの問題についても長い間向き合い、解決の実績を出してきました。テレワークでお困りの際はお気軽にご相談ください。

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