チームビルディングの具体例!企業事例やおすすめの手法も紹介

ビジネスにおける多くの場合、個人だけでなく、チームで仕事を進めていきます。その中でも大切なのは、個人の力を最大化して、目的を達成していくことです。目的を効果的に実現できるチーム作りを行うことをチームビルディングと言います。

本記事では、チームビルディングの概要や背景などについて詳しく解説します。また、実践にあたっての具体的な手法や、チームビルディングに焦点を当てた企業の改革事例も紹介します。

チームビルディングとは

チームビルディングとは、チームでひとつのゴールを目指すために効果的な組織を作っていくことです。これまで、組織力を高めるためには、単にタスク処理の仕組みを磨けばいいと考えられることが往々にしてありました。実際、PDCA、KPT、WBS、MBOなどのフレームワークやツールは、あらゆるジャンルのビジネスにおいて浸透し、活用されています。また、プロジェクトをマネジメントするための方法や、タスク管理のツールも、ビジネスのジャンルを問わず浸透し、発展してきました。

しかし、このようなタスク最適化を追求し続けてきた結果、今では最適化の限界が訪れており、アプローチを変える必要が出てきています。成果を出す組織を作るためには、タスクにおける問題ではなく人と人との関係性、チームワークにアプローチする必要があるのです。チームビルディングでは、メンバーそれぞれのスキルや特徴を最大化しつつ、チームで一丸となって動いていける環境を作り上げていきます。

チームビルディングの重要性は、さまざまなバックグラウンドを認め合う現代社会において、ますます高まっています。メンバーそれぞれの背景が違うため、かつての組織のように自然にチームがひとつになることは難しく、組織はなんらかのかたちで働きかけをする必要が出てきているのです。チームビルディング研修を取り入れて、組織力を高めようとする企業も多々存在しており、さらには、外部の組織と連携して、チームビルディングの指導を取り入れるという話もよく聞かれます。

チームビルディングはビジネスに限らずどのシーンでも重要なもので、小学校から職場まで、幅広い範囲でその大切さが謳われます。スポーツのチームや、学校のイベントごとなどを通して、チームで動くということを若くから体験してきたという人は多いでしょう。しかし現実問題、社会に出てからはチームというものに悩まされる人が多くいます。チームを組むことで人間関係に悩んだり、物事が思うように進まずにストレスを感じている人も多くいますし、コミュニケーションの課題が人間関係の悩みになり、失敗したり、うつ病になったりという重大な問題に発展することも少なくありません。チームワークは、本来は成果を生み出すためにあるにも関わらず、さまざまな問題を引き起こす原因になっているのです。そのため、改めてチームビルディングについて真剣に考えるべきタイミングが来ているといえるでしょう。

チームワークが企業の資産になる時代

チームワークは、今や企業の資産です。不確実な時代だからこそ、状況に連動するようにチームを変化させ、柔軟に対応することが大切です。チームワークの有無で、組織の課題解決能力は大きく左右されますが、チームワークを作るのは一朝一夕にできることではありません。だからこそ、チームワークが良い企業は、それだけで貴重な資産を持っているといえるでしょう。

チームワーク改善に取り組む際には、必ずしも今ある組織の中だけで完結させることにこだわる必要はありません。組織の内外から適任の人材を集める「非公式」なチームが、課題解決に大きく寄与する例は多々あります。「タスクフォース」「横ぐしプロジェクト」「委員会」などの突発的に組まれたチームが企業の方向性を明確化し、より戦略的な課題を提示するケースも多く存在します。人事部や広報部などが顕著ですが、最近では単なるルーティン業務は機械化され、人事部がHRBPに変容したり、PRが SR、ER、PR、など分化したりなど、課題解決にあたるようになっています。企業は静的(スタティック)な状態から、動的(ダイナミック)な形態へと変化しているのです。柔軟な発想で、チームワークにテコ入れをしていきましょう。

小さく勝つチームワークとスケールさせる組織

状況に合わせて柔軟に対応できるチームを作るという場合は、まずは小さく勝つチームワークを実践してから、それをスケールさせていきましょう。現在の日本企業では、従来のコーポレート部門や現場部門における公式なチームよりも、横断的なプロジェクトチームが価値創造や課題解決において重要な役割を果たしています。これらのプロジェクトチームは、異なる部門や専門分野からのメンバーが集まり、特定の課題や目標に対処するために組織されます。そのため、柔軟性が高く、イノベーションを促進する環境が整っています。

このようなアプローチにより、企業は迅速かつ効果的に変化に適応し、競争力を維持することができるのです。かつての経営企画がやっていたように、まずは社内施策としてトライアルし、オペレーションに落とし込んでいくという手法が効果的です。

専門性より関係性が資産になる

SNSが盛んになり、転職も増えた現代社会において、外部からリソースを取り入れて思い通りの専門性を集合させることは比較的容易です。しかし、集まったチームをうまく機能させたり、企業のゴールに順応させるのは難しいものです。たとえば、海外法人が日本の企業を買収する際、チームまるごと買収し、外部からの転職組もいるという状況だと、関係性を作るのに苦労します。専門性は確保できても、チームワークを作るのは単純な話ではありません。だからこそ関係性が大事な資産になるのです。

レジリエンスとアジリティが資産になる

業績を拡大するためには、組織を大きくすることが必要です。しかし組織を拡大すると、個人個人の力を存分に発揮するための土壌を作りにくくなります。企業は、必要なリソースを配分し、チーム単位で運用していかなくてはなりません。柔軟な対応が必要となる現代において、大きくても自由に動きにくい組織では、成果が出せずに衰退してしまいます。レジリエンスのあるしなやかな組織、そしてアジリティの高い柔軟な組織を目指す必要があります。

チームビルディングの現代主眼は、専門性から関係性へ

企業の運営には専門性・多様性が重要です。そのため、昨今は多くの組織が求める専門性を社内外から集めてチームを構成しています。しかし、専門的なチームをしっかり統合した上で最大のパフォーマンスを発揮できるようにするのは非常に困難です。まだまだ成功の方程式は確立されておらず、取り組み方には諸説ある状況でもあります。単に優秀な人を集めれば優秀な成果が出るとも限らないのが難しいところです。

実際に、大企業に他業種から代表取締役が呼ばれるとき、大抵の場合は、これまでのプロジェクトを成功させた仲間が一緒に呼ばれます。これは縁故で呼んでいる訳でも、ひいきしている訳でもなく、新社長にとってコミュニケーションが取りやすく、成功体験もある仲間の方が、これからの仕事を進めやすいからです。チームビルディングを意図的に行うのが難しいからこそ、最初から関係構築できている仲間に頼るのです。

コンサルティング出身のDX推進部や中国企業による日本や台湾企業の優秀な技術者のヘッドハンティングにおいて、とびぬけて優秀な社員を引き抜くことは可能であっても、技術の転移が失敗する事例も存在します。

一方で「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC」において侍ジャパンは、他の強豪国をおさえて優勝を勝ち取りました。この成功は、個々の選手の実力や技術だけでなく、チームの協力や指導者のリーダーシップなど、さまざまな要素が組み合わさって成り立っています。成功を導く要因は複雑であり、単純に優秀な個人や技術だけでなく、チームワークや環境の整備なども重要な役割を果たしているのです。

企業がチームビルディングに取り組んだ際の成果

チームビルディングの重要性や、時代背景による変化について整理しました。では、企業がチームビルディングに取り組むと、組織はどのように変わっていくのでしょうか。考えられる成果について、3つの観点で整理します。組織の変化をイメージしながらチェックしてみてください。

コミュニケーションの活性化

チームは、複数人でのコミュニケーションによって形成されていくものです。チームビルディングではゲームや研修を通してカジュアルに互いの距離を縮めていきます。普段関わりのない相手ともコミュニケーションを取ることになるのです。

一度会話をすると、相手の人柄や温度感が想像できるようになるので、コミュニケーションのハードルが一気に下がります。業務における職場のコミュニケーションも大きく活発化するでしょう。人と人の関係性が深まると、それが組織への帰属意識に直結し、貢献意欲が高まります。それによって従業員は主体的に動くようになります。その結果、生産性の向上や、離職率の低下という効果が期待できます。

チームパフォーマンスの向上

チームビルディングでは、ゲームなどを通してチームで動くことの重要性を伝えていきます。日々の業務でも、個々で動くのではなく常に周囲と連携しようという姿勢が生まれるでしょう。その結果、自分の役割を見極めて、チームのために適切な行動をとれるようになり、チームパフォーマンスの向上に寄与します。従業員に「仕事は自分だけでなく、誰かと協働しながら進めるもの」という前提を植え付けられることが、組織にとってはプラスの影響になるのです。

心理的安全性の向上

チームビルディングでは、誰もが自分の意見を気兼ねなく発言できるような環境を目指していきます。年次などに関わらず、何か意見を言えば周囲は耳を傾けてくれて、受け入れてくれるだろうと信じられるような土壌を作っていくのです。つまり、心理的安全性が高いチームを組み立てられます。その結果、それぞれが意思を伝えられるようになり、協力しながら主体的に動くことができ、大きな成果へとつながっていきます。

チームビルディングにおけるタックマンモデルの5つの段階

チームビルディングを進める上で、心理学者のブルース.W.タックマンが1965年に提唱した5つの発展段階が参考になります。5つの段階を意識することで、自分たちの現在地を俯瞰しながら状況を精査することができます。

➀形成期
チームのメンバーが決まった最初の段階であり、メンバー同士お互いのことをよく知らない状態です。

➁混乱期
チームを実際に動かしていく中で、チームの目的や目標に対する意見の食い違いが発生します。業務の進め方に対して対立も起こります。共有できるゴールが見えず混乱するフェーズです。

③統一期
チームの目指すべき目的が明確になるフェーズです。それぞれのメンバーの特徴が共有され、果たすべき役割が見えてきます。チームとしての統一感が生まれてくる時期です。

④機能期
共通のゴールに向かって、メンバー同士が動く時期です。一致団結して取り組むことで、成果を出していけます。

⑤散会期
目的を達成したか、もしくは時間的な制限などの理由によりチームが解散になる段階です。

チームビルディングに取り組む際のポイント

闇雲にチームをまとめようとしても、成果を出すのは難しいものです。では、チームビルディングに取り組むときに、どのようなことを意識したらいいのでしょうか。おさえておきたいポイントを以下に整理します。

明確な目標や価値観をチームに共有する

チーム全員が同じ方向を見ながら行動することが、チームワークの大きな前提になります。そのため、まずはひとつの明確な目標を提示することが重要です。目標は、できるだけ具体的に、かつ達成しやすいものに設定しましょう。達成へのステップがイメージしやすいものだと、足並みを揃えて目標に向かっていくことができます。目標を決めて達成できると、今後の業務におけるモチベーションにもなります。

目的や課題に適した手法を選定する

チームビルディングにおけるゲームやアクティビティは多種多様なので、自社の目的や課題に合わせた手法を選定することが大切です。たとえば、縦の繋がりが課題の企業の場合、上下関係を気にせず楽しめるゲームなどが最適でしょう。チームビルディングの手法を学んだ上で、状況ごとに最適な方法を客観的に選び取っていきましょう。選択が難しい場合は、他の組織の力に頼って客観的に手法をピックアップしてもらうのもおすすめです。

リーダーが複数存在する状態

階層上の優劣や、年齢序列によってリーダーを決定することは、本質的ではありません。全員がリーダーになれるくらい自発的に動けるメンバーばかりが揃うと、組織の力は大きく向上していきます。チームの状況は常に変わり、かつメンバーの状態も課題も、その時々で変動します。転職をして組織を渡り歩くのが一般的になった昨今では、タイミングごとに適したリーダーを据えて、どんどん組織に変化を起こしていくことが大切です。

学習と関係性

チームビルディングがうまくいっているかどうか、定期的に振り返ることも大切です。プロジェクトが完了したらフィードバックを行い、それを実際にどう活かして次回につなげるかまで考えます。PDCAではなくPDSA、つまり「check」を「study」へと変えることが重要です。チーム全員で課題点を認識し、次の舞台で実践することで、一丸となって新たなプロジェクトに進んでいくことができるでしょう。

チームビルディングを実践した企業の具体例

チームビルディングの手法を取り入れることで、企業は短期間でも大きな変化や進歩を見せることがあります。実際にチームビルディングを実践した企業の例をひとつご紹介します。

三井不動産ビルマネジメント株式会社は、2016年よりブランドビジョン「ビジネスシーンの明日を変えていく」を掲げ、総務部が中心となって社内外に向けた浸透活動を行っていました。そして2023年6月、今後のさらなるブランドビジョン推進に向けた取り組みとして1泊2日のチームビルディング合宿を実施しました。オフィスを離れて観光地に滞在し、チーム全員で本音をぶつけ合いました。2日目のグループワークでは会議室から出て、グループごとに湖畔を散策しながら意見を出し合うなど、非日常感あふれる印象的な経験に入社1年目のメンバーが、合宿を通してめざましい変化を見せるなどの成果がありました。合宿を通して「自分の意見を言っていい」「わからないことはわからないと言っていい」という心理的安全性が確保されたことが、その後オフィスに戻ってからのチームメンバー同士の関わり合いに多大なるプラスの影響を与えたのです。

おすすめのチームビルディングの手法

ここまで、組織がチームビルディングを行う重要性について解説してきました。最後に、チームビルディングを行うにあたって効果的な手法を3つご紹介します。どれもすぐに試せるものなので、一度組織で実施してみて、変化を感じてみてください。

①パーソナルヒストリカルレビュー

パーソナルヒストリカルレビューは、その名の通り、個人の歴史を開示するものです。たとえば「自分年表」を作ったり、人生の浮き沈みをグラフ化したりして、自分の人生をチームに伝えます。自己開示すると、チームにおけるアイデンティティが確立されて心理的安全性が増します。互いの存在を認め合い信頼できる土壌を作ることが、チームビルディングの一端を担うのです。

②議論・合意形成、ディベートやディスカッション

チームを作るためには、互いに意見を言葉にして対話し、議論を深めていくスキルが必要です。また、意見が食い違ったときの対応力も大切です。全員が納得いくようなかたちで合意形成できると、組織が分裂することなく、気持ちよく一体感を持って前に進めます。感情的にならずに、相手の意見を一度受け入れながら、さまざまな角度で論理的に吟味していけるよう、トレーニングを進めていきましょう。

③NASA実習

NASA実習とは、宇宙船が壊れてしまい、月面の母船から離れた場所に不時着してしまったことを想定して、解決策を話し合う実習です。手元にあるアイテムから生存のための方法を各自考え、アイテムに優先順位をつけます。その後にグループで話し合いを行い、再度優先順位を決定します。このゲームで重要なのは、自分の意見をしっかりと伝え、チームで納得して答えを導き出すことができたかです。合意が得られるような伝え方や、相手の意見の受け止め方を養います。

まとめ

目的を効果的に実現できるチームを作ることをチームビルディングといいます。チームビルディングで重要なのは、タスクにおける問題ではなく人と人との関係性、つまりチームワークです。目的や課題に適した手法を選定すること、明確な目標や価値観をチームに共有するなど、チームビルディングに効果的な要素をおさえて組織に変革を起こしていきましょう。チームビルディングの手法を取り入れることで、企業は短期間でも大きな変化や進歩を見せることがあります。本記事で紹介した手法も参考に、ぜひ取り組んでみてください。

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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