営業部門の組織力強化:属人化を脱却し強い営業チームを作る7つの方法
最終更新日:2025.11.19
目次
企業の成長のために、営業部門の組織力強化は不可欠です。営業部門のパフォーマンスは利益に直結するからこそ、組織として力を入れるべきポイントといえるでしょう。
とはいえ、多くの企業で営業ノウハウの属人化や社内コミュニケーション不足といった課題が見られます。弊社ソフィアの調査では、従業員1,000名以上の企業の約79%が自社の内部コミュニケーションに問題を感じていることが明らかになりました。
本記事では、営業組織が抱える課題とその解決策となる組織力強化の具体策を解説します。従来の慣習や文化にとらわれない組織改革のヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
営業部門の組織力強化が難しい3つの理由
まず前提として、営業部門の組織力強化は簡単な作業ではありません。多くの企業の営業部門には、以下の3つの阻害要因が存在すると考えられます。
ブラックボックス化・属人化したノウハウ
最初の阻害要因は、営業ノウハウのブラックボックス化・属人化です。経験豊富なハイパフォーマーの営業担当者でも、自身のノウハウを言語化できないというケースは少なくありません。また、自分の価値を高めたいがためにノウハウを共有したがらない人もいて、周囲がその知見を把握できず個人に蓄積されてしまう例も見受けられます。
実際、営業に関する専門教育は体系立てて行われにくく、大学や専門学校にも「営業」を専門的に教える講座は基本的に存在しません。そのため何も対策しなければ、営業ノウハウは自然とブラックボックス化してしまうのです。
こうした情報の属人化・ブラックボックス化は、営業活動全体の非効率や商談機会の損失、顧客関係の断絶、品質管理の困難さなど多くの問題を派生させます
この課題を放置すると、社員のモチベーション低下や有望な人材の離職にもつながりかねません。属人化を解消し組織的なナレッジ共有を進めることが、営業組織強化の第一歩といえるでしょう。
営業組織のマネジメントが難しい
2つ目の阻害要因は、営業組織のマネジメントが難しいことです。前述のように営業分野には確固たる方法論がなく、属人的に業務が進められがちです。その結果、各担当者がそれぞれ独自のやり方で営業活動を行うケースも多く、マネージャーは個々の手法を踏まえて管理せざるを得ません。
全員に画一的な基準を当てはめづらいため、効率的に統制・育成することが難しく、最終的に「気合と根性」といった精神論に頼ったマネジメントに陥ってしまうことも散見されます。
また、属人的な営業組織ではマネージャーがチーム全体の状況を把握するのが困難です。属人化によって「今どの商談がどうなっているか」が見えにくくなるため、的確な支援やリソース配分が後手に回る恐れがあります。
売上が個人に依存してしまい組織が安定しない
3つ目の阻害要因は、売上が特定個人に依存してしまい組織として業績が安定しないことです。営業成績が好調に見えても、その内訳を見ると一部のトップセールスが大半の売上を稼いでいるケースがあります。個人に頼りすぎる組織では、エース社員が異動・退職した途端に売上が急落するリスクが高く、継続的な成長という観点で不安が残るでしょう。組織全体で「稼ぐ力」を底上げできなければ、企業の将来は安定しません。
このように、属人化やブラックボックス化によって営業部門が「個人商店化」していると感じる企業は多く、強い営業組織を作ることが喫緊の課題となっています。そのためには、個人に依存せず組織全体で成果を上げられる体制=営業部門の組織力強化が不可欠なのです。
営業部門の組織力強化に向けた事前準備

営業部門の組織力を強化するには、いきなり場当たり的に施策を講じるのではなく、まず現状を正確に把握し組織内で共有すること、そして組織として目指すべき指標を定めることが重要です。
ここでは、営業組織強化に本気で取り組む前段階として欠かせない2つの準備ポイントを解説します。
現状を把握する
組織力強化に着手する前に、現在の営業部門の課題や業績をきちんと把握しましょう。具体的には、売上・利益の推移、各営業担当の成約率、商談の進捗管理状況、顧客満足度、社員の定着率などをデータとして可視化します。
感覚や主観に頼るのではなく、定量的な数値として実態を明らかにすることで、何が問題なのか・どこを改善すべきかが見えてきます。例えば「特定の営業担当だけが圧倒的に売上を立てている」「ベテランと新人の成約率に大きな差がある」といった事実が浮かび上がれば、属人化の度合いが分かるでしょう。
また、課題を把握したら、それを組織内で共有することも大切です。営業マネージャーだけでなく、現場の営業担当者も含めて「今うちのチームはこういう状況だ」と認識を揃えます。現状が共有できていなければ、どれほど優れた施策を打ち出しても現場の協力を得られず形骸化してしまいかねません。
視点を変えれば、問題意識を共有できれば自然と「改善しなければ」という機運が高まるものです。データに基づいた現状認識を起点に、組織全体で改革の必要性を腹落ちさせましょう。
組織として目指すべき指標(KPI)を設定する
現状を把握したら、次は組織として目指すべき明確なKPI(重要業績評価指標)を設定します。ここで重要なのは、単に「売上○億円達成」といったトップダウンの目標を掲げるだけでなく、組織全体が納得感を持って取り組める目標を作ることです。
例えば「売上額」だけでなく、「チーム全体での成約率向上」や「営業ナレッジ共有数」「新規顧客開拓件数」「顧客満足度スコア」など、営業組織の健全性や成長を測る多角的な指標を設けましょう。こうした指標は営業担当者一人ひとりが日々の業務で意識しやすく、個人の努力が組織の成果に結びついている実感を得やすくなります。
また、KPIを設定する際には、できる限り現場の意見を取り入れることが望ましいです。経営陣やマネージャーだけで決めた目標は、現場から「押し付けられた」と感じられがちですが、メンバー自身が「この目標を達成したい」と思えるものなら主体的に動けます。
一言でいえば、KPIはチームの羅針盤です。明確で納得感のある指標を掲げることで、組織全体が同じ方向を向いて進むことができるでしょう。
営業部門の組織力を強化する7つの方法
ここからは、営業部門の組織力を高めるための具体的な施策を7つ紹介します。どれも実践的な内容ですので、自社に合った形で取り入れてみてください。
個々の営業担当のスキルを底上げする
組織力を向上させるには、まず個々のメンバーのスキルを底上げすることが基本です。いくらチームワークが良くても、一人ひとりの営業力が低ければ組織としての成果は上がりません。
具体的には、営業ロールプレイングやOJT(On-the-Job Training)、外部研修の活用などによってメンバーの実力向上を図りましょう。特に新人や成果が伸び悩んでいる社員には手厚くフォローし、早期に独り立ちできるよう支援します。
また、ハイパフォーマーの成功パターンを横展開することも有効です。トップセールスが持つ商談テクニックやヒアリング術、顧客へのアプローチ方法などを言語化し、他のメンバーが学べる機会を設けます。例えばトップセールスの商談に同行させてもらったり、録画した商談動画を教材として活用したりすれば、実践的なスキル習得が進むでしょう。
換言すれば、属人的だった成功ノウハウを組織知として共有し、誰もが一定水準以上の営業活動ができる状態を目指すのです。個人のレベルアップが組織全体の底上げにつながります。
営業ナレッジを共有する
営業組織全体のスキルを底上げするには、自社で蓄積した営業ナレッジを組織内で積極的に共有することが非常に重要です。営業という業務は業界・商材・顧客によって成功パターンが異なり、他社の成功事例がそのまま自社に当てはまるとは限りません。そのため、社内で生まれた成功ノウハウこそが貴重な財産となります。
例えば「新人営業が○○の手順で大口契約を獲得した」「△△業界向けには▲▲の提案トークが効果的だった」といった事例をチームで共有すれば、他のメンバーもすぐ自分の営業活動に活用できます。各人が持つ経験知を言語化してデータベース化したり、定期的に成功事例共有ミーティングを開いたりして、組織内にナレッジを蓄積しましょう。
もちろん、自社の事例であっても営業担当ごとに顧客状況は異なりますが、少なくとも同じ商品・サービスを同じ市場に売って得られた成功パターンであれば再現性は高いものです。社内Wikiやナレッジ共有ツールを使って誰でも必要な情報にアクセスできるようにし、営業ノウハウの属人化を防ぐ仕組みを作ります。
営業組織が最も求める「一人に依存しないチームワーク」を実現するには、ナレッジ共有による営業プロセスの標準化が避けて通れません。属人的だった成功体験をベストプラクティスとして共有・横展開することで、組織全体のレベルアップにつなげましょう。
組織内の連携を強化する
強い営業組織を作るには、メンバー同士が円滑に連携できる環境づくりも欠かせません。営業現場では個人プレーに陥りやすい傾向がありますが、情報共有や助け合いを促進することで1+1を3にも4にもする組織力が生まれます。
具体的には、社内コミュニケーションの機会と仕組みを増やすことが有効です。現在は社内SNSやビジネスチャットツール、オンライン会議システムなどが普及していますので、そうしたデジタルツールを積極的に活用して部署や拠点の壁を越えた情報共有を促しましょう。
例えば「週次でオンライン営業会議を開き最新の案件状況を共有する」「全社横断の営業ナレッジ掲示板を設ける」などの施策が考えられます。リモートワークが増えてオフィスで気軽に雑談・相談しづらい今こそ、オンライン上で気兼ねなくやり取りできる場を設けることが大切です。そうした環境づくりにより、チーム内外での相互援助と情報循環がスムーズになるでしょう。
また、営業部門内だけでなく他部署との連携も重要です。先述のとおり部門間のコミュニケーションに課題を感じる企業は6割近くにのぼります。例えばマーケティング部門からのリード提供状況や、カスタマーサクセス部門との情報共有など、関連部署と綿密に連携することで営業機会の最大化が図れます。社内の縦割りを超えて組織全体で顧客を支える意識を醸成しましょう。
社員の働く動機付けを行う
人が働く理由は給与や賞与、評価といった外発的動機だけではありません。もちろん報酬は大切ですが、それだけでは社員の主体性・創造性を長期的に引き出すことは難しいでしょう。「成長したい」「チームや会社に貢献したい」などの内発的動機を持って努力している人も多くいます。
そこで、営業組織力の向上を図る上では個人が持つビジョンと会社のビジョンとを結び付け、社員が『自分も組織に貢献したい』と能動的に思えるよう動機付けすることが大切です。
具体的には、会社のミッション・バリューを現場社員に浸透させ、自分の仕事がその実現にどう役立つのか腹落ちさせる施策が考えられます。たとえば「我が社のサービスで〇〇産業を活性化する」というビジョンがあるなら、営業部門の一人ひとりが自分の目標としてその一端を担っていると実感できるような仕掛けを作ります。
経営理念の共有や部署ごとのビジョン策定ワークショップを行ったり、社内報や朝会などで社員の貢献を紹介したりすると良いでしょう。社員が企業ビジョンに共感・コミットできるとき、仕事は単なるノルマではなく意義ある挑戦に変わります。
その結果「自ら貢献したい」という内発的な意欲が高まり、組織全体のエンゲージメント向上と業績向上につながっていくのです。実際に営業組織の実態調査でも、属人化の解消によって社員のモチベーション低下や離職といった問題の改善が期待できるとの指摘があります。組織目標と個人の目標を紐付け、一体感を持って取り組める環境を整えましょう。
失敗を許す環境を作る
失敗を許容できない風土では、社員は委縮してしまいチャレンジ精神が損なわれます。営業活動においては3割の成功率でも優秀と言われるように、どんなハイパフォーマーでも打率10割はあり得ません。裏を返せば、営業では誰でも必ず失敗するという前提に立つ必要があります。
にもかかわらず、「大口案件を失注するとは何事だ」「目標未達の理由は何だ」などと失敗を過度に詰問される職場では、社員は失敗を恐れて守りに入り、新しい挑戦をしなくなってしまうでしょう。これでは組織として成長が止まってしまいます。
そこで、営業部門では失敗を受け止め次に活かす文化を醸成しましょう。失敗したとしても感情的に叱責するのではなく、「何が良くて何が悪かったのか」を当事者と一緒に冷静に分析し、次回に向けた改善策を考えるのです。
失敗から得た学びも貴重なナレッジとして組織内で共有すれば、他のメンバーの教訓にもなります。例えば失注した案件についてナレッジ共有会で原因と対策をチームで話し合う、失敗談を共有できる社内報コーナーを作る、といった取り組みも有効でしょう。
営業の組織力を強化し、稼ぐ力をアップさせるためには、組織としての学習能力が必要不可欠です。失敗から学び続ける組織は着実に賢く、強くなっていきます。
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成功体験を積み重ねる
営業組織全体の学習能力を高めるために、小さな成功体験を着実に積み重ねていくことも欠かせません。新しい施策や手法を導入する際は、いきなり全社規模で展開すると反発が大きく失敗しがちです。
まずは一部のチームや小規模なプロジェクトでパイロット的に試行し、失敗と改善を繰り返しながら実績を作っていきましょう。小さくとも明確な成功事例やインパクトのある数値成果が上がれば、それが社内の後押し材料となり、組織全体への展開がスムーズになります。
たとえ今は各営業がバラバラに動く「個人商店」的な組織であっても、誰もが再現可能な勝ちパターンを皆で探し共有することで、やがて自然と組織内にその手法が伝播していきます。
強烈な成功体験は社員の自信を育み、さらなるチャレンジ意欲を引き出すものです。「○○を試したら契約率が▲▲%向上した」「△△業界で新規開拓に成功した」など成功事例を称賛し組織内に共有すれば、他のメンバーも「自分もやってみよう」と前向きになるでしょう。
成功→共有→横展開というサイクルを回し続けることで、組織全体の稼ぐ力が確実に底上げされていきます。
成果を称賛し、適切なフィードバックを行う
強い組織を作る上で見落とせないのが、メンバーの成果をきちんと評価・称賛し、建設的なフィードバックを行うことです。営業は数字で成果が見えやすい分、達成できなかった点ばかり指摘されがちですが、優れた成果や取り組み姿勢は積極的に言葉に出して称えましょう。
上司からの「ありがとう」「助かったよ」といった感謝の一言があるだけで、メンバーのモチベーションは大きく向上します。日々の営業活動で成果を上げた社員を月次表彰する、成功事例を社内報で紹介するなど、努力が報われる文化を醸成することが大切です。
同時に、結果が出なかった場合には次に繋げるためのフィードバックを欠かさないようにします。ただ叱責するのではなく、「次回は○○を試してみては?」「△△のプロセスを改善しよう」といった具体的なアドバイスを与え、部下の成長を支援します。
フィードバックの場を定期的に設けることで、メンバーは自分の課題に気付きやすくなり、上司との信頼関係も深まるでしょう。なお、フィードバックは上司から部下への一方通行だけでなく、メンバー同士でのピアフィードバックも有効です。
お互いに良い点や改善点を伝え合う文化が根付けば、組織全体で学び合う風土が強化されます。称賛と改善提案がバランス良く行われる職場環境は、安心して挑戦できる心理的安全性の高い組織風土の土台ともなるでしょう。
まとめ
今回は、営業部門の組織力強化について、課題と具体的な改善策を解説しました。営業部門の業務は属人的になりやすく、ノウハウを体系化・共有することが難しい領域です。
しかしながら、丁寧にコミュニケーションを重ねることでノウハウを組織として言語化し、部門を越えて共有し、それをもとに失敗と改善を繰り返して成果を積み上げていくことで、確実に営業組織は強くなります。
属人化したブラックボックスをオープンにし、誰か一人に頼らなくてもチーム全体で高い成果を出せる営業組織を目指していきましょう。
そのためには、ボトムアップ型のマネジメントスタイルで現場を活発化させ、生き生きと働ける環境を提供することも重要です。


