SDGsに中小企業が取り組むメリットは?中小企業での取り組み事例をご紹介

SDGs(Sustainable Development Goals)は「持続可能な開発目標」を意味します。
2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に盛り込まれた世界規模での目標ですが、日本の中小企業にとっても他人事ではありません。
しかし「具体的にどのように動けばいいのか分からない」中小企業の経営者は多いはずです。
この記事では、SDGsのアクションプランをベースに、中小企業がSDGsに取り組むことのメリットや事例を紹介していきます。

SDGsと中小企業の現状

SDGsには、2030年を期限とした17つのゴールが定められています。

簡潔に説明すると、「経済・社会・環境の3つの側面において、持続可能な開発に取り組んでいくこと」が世界において求められているということです。

日本政府は、SDGs達成に向けた取り組みの中で、大企業に比べて中小企業のSDGsの浸透が遅れていることを課題とし、日本の企業数で見ると全体の99.7%を占める中小企業の取り組みが、SDGsへの取り組みを加速する上で欠かせないとしています。

実際、中小企業がSDGsに取り組むことがどのように重要なのか、見ていきましょう。

SDGsへの取り組みは中小企業こそ大切!

  • 「地球を考える」ことの重要性

    SDGsに企業が取り組まなければならない背景には、地球規模で自然災害による被害が増えていることが挙げられます。具体的には地震、洪水、火山の噴火、森林火災、干ばつ、嵐などです。

    自然災害は産業革命以降の急激な経済成長による温暖化が大きな原因の一つとなっていて、それら災害による経済損失は今後5年間で107兆円とも言われており、企業にはその深刻さを認識することが求められています

  • SDGsに則さない産業を続けていると事業の存続が危ぶまれる

    2018年に関東経済産業局が中小企業500社を対象に実施したアンケートで、「SDGsについて全く知らない」と回答した企業は84.2%でした。中小企業への浸透度はまだ低く、知っていてもボランティアのような社会貢献活動の一貫というイメージが強いかもしれません。

    しかし、大企業の多くはすでにSDGsの取り組みを加速させているため、環境や人権問題を疎かにする中小企業は、サプライチェーンから排除され、ビジネスのチャンスを失い、事業の存続自体が難しくなる可能性があります。

  • 優秀な人材の採用に効果的

    SDGsに取り組むことは、企業の社会的責任という側面もありますが、企業にとって有利に働く点も見逃せません。
    就職情報を扱う企業の調査では、2017年卒の理系学生の就職先選社理由として「社会貢献度が高い会社」が1位にとなっており、これからの社会を担っていく層のSDGsへの関心度の高さが伺えます。言い換えると、SDGsを意識しない中小企業では、優秀な人材を採用し、定着させることが難しくなっていくと言えます。

  • 地域社会への貢献につながる

    国内におけるSDGsの取り組みにおいて、地域社会への浸透は必要不可欠です。日本国内の地域において、人口減少、地域経済の縮小などが課題としてあげられていますが、地域社会と経済を支える中小企業がSDGsに取り組むことで、地方創生の視点から地元を活気づけることにもつながります。

SDGsに中小企業が取り組むメリット

SDGsに取り組むには時間もコストもかかるため、後回しになってしまっている中小企業は多いのではないでしょうか。前述した以外にも、中小企業がSDGsに取り組む上でのメリットが存在します。ここでは中小企業がSDGsに取り組むことで見込めるメリットについて、大きく4つに分けて見ていきます。

経済面

  • ビジネスのネットワークが広がる

    日本政府が定めたSDGsのアクションプランには、ESG投資を後押しすることが盛り込まれています。ESG投資とは「Environment・Social・Governance」の頭文字からつくられた言葉で、環境・社会・企業統治に配慮する企業を機関投資家が優先して投資することを意味しています。投資が受けやすくなるというのは、これから事業の拡大を目指す中小企業にとって大きなメリットと言えます。

    またSDGsに取り組むことで、SIB(Social Impact Bond=行政の成果連動型支払契約と民間資金の活用を組み合わせた資金援助)も受けやすくなります。

  • 売り上げ利益の向上

    SDGsに取り組むことで、社会貢献への関心が高い企業との新規取引の増加、売り上げの増加が期待できます

    SDGsの大きな課題である環境問題への関心は消費者の間でも高まってきているので、SDGsに取り組むことで、より消費者に選ばれやすい商品・サービス展開が可能になります。

  • イノベーション/ビジネスチャンス

    政府は、バイオエコノミー(化石資源を基盤とする社会・経済からの脱却を目指す概念)や、ロボットやICTを活用するスマート農業など、企業のイノベーション技術を後押しする方針も示しています。さらにSociety5.0(仮想空間と現実空間を融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を目指す社会)の実現にも取り組んでいく考えです。SDGsに取り組むことで、IOT、AI、ビッグデータなど最新のテクノロジーを用いたイノベーション技術の開発に積極的に取り組んでいくことができます。

  • PRコスト、マーケティングコストの削減

    自社の商品やサービスがどのようにSDGsの目標と合致しているかを伝えることが、そのまま企業のPRへとつながります。SDGsに取り組むことはコストのかかることですが、社会に貢献する企業として注目されることで、PRコストとマーケティングコストの削減につなげていくことができます。

環境面

  • エネルギー使用量削減

    SDGsには、気候変動の抑制、生物多様性の保全、資源循環への貢献など、環境面への課題が多く盛り込まれています。電気やガスなどのエネルギーの使用量を見直して削減したり、太陽光発電や再生可能エネルギー比率の高い電力を使用することで、環境負荷の低減と付加価値の高い持続可能な生産の両立が可能になります。

  • 資源の使用削減/再利用

    SDGsの目標として、地球環境と天然資源の永続的な保護・確保が重要な課題となります。具体的には、食品廃棄や産業廃棄物などの抑制が挙げられます。企業として、生産やサービスなどの業務プロセスを見直すことで、資源に配慮した経営にシフトすることができ、持続可能な生産消費形態を確保することにつながります。

社会面

  • 地域貢献

    政府はSDGsの達成に向けて優れた取り組みを進める都市を「SDGs未来都市」として選定し、特に先導的なモデル事業には補助金を交付しています。さらにアクションプランでは、企業、自治体、NGO・NPO、大学、研究機関との連携を進める「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を促進していく方針も示しています。SDGsへの取り組みを始めることで、企業として地域の地方創生に参加することが可能となります。高い専門性を持った外部の機関や自治体と連携することで、新たな価値の創造にもつなげていくことができます。

  • 企業イメージ/信頼度の向上(ブランド力アップ)

    SDGsへの取り組みは、企業内外のあらゆるステークホルダーに対するアピールポイントとなります。グローバル競争に勝ち抜くために、大手企業はSDGsへの取り組みを強化しています。SDGsへの取り組みは優秀な人材の採用に効果的なだけでなく、企業のブランド価値を高めることにもつながるため、ブランド力をアップさせるために有効な手段となります。

企業内面

  • 経営の見直し

    SDGsに取り組むことは事業・経営資源を振り返ることにもつながります。事業とSDGsの関係性を整理することで、経営ビジョンを見直すためのツールとして活用することができます。

  • ロイヤリティの向上

    SDGsを通して課題を見える化することで、従業員の社会貢献への意識が高まります。組織に一体感が生まれモチベーションの向上が期待できます。また、従業員に対して研修などを通して、SDGsの取り組みを自分ごと化させることで、社会貢献に対する意識づけを強化することが可能です。

  • 人材不足解消

    SDGsへの取り組みは人材確保にも貢献します。
    大手広告代理店が2019年2月に全国10〜70代の6,576人を対象に実施したSDGsの認知度調査では、全体平均が16%だったのに対し、学生は24.8%でした。この結果は若い世代の社会貢献に対する意識が高まっていることを示しています。SDGsに積極的に取り組んでいるかどうかは、優秀な学生が企業を選ぶ判断基準の一つになると言えます。

実際にSDGsに取り組んでいる中小企業

ここではSDGsに実際に取り組む日本の中小企業を紹介します。

大川印刷

神奈川県横浜市の大川印刷は2018年12月、外務省主催の第二回ジャパンSDGsアワードで「SDGsパートナーシップ賞」を受賞しました。

全社員へのSDGs教育を実施して、ボトムアップでSDGsの経営戦略を策定したことが大きく評価されました。パートを含む全従業員を対象にワークショップを開催して、各自の問題意識とSDGsを関連づけ、従業員主体で問題解決に向けたプロジェクトチームを立ち上げています

策定されたSDGs経営戦略に基づいて、カーボンオフセット、森林認証紙・間伐紙、ノンVOCインキ(石油系溶剤0%)、電気自動車を利用したエコ配送など、営業から納品に至るまで一貫して環境への負荷を軽減する取り組みを実施しています。

石坂産業

埼玉県入間郡の石坂産業は、産業廃棄物を資源に変える取り組みを進めています。

リサイクルが困難なガラスや木片などが混ざった混合廃棄物を積極的に受け入れ、全てのゴミを再び資源に戻すことを目標にリサイクル率98%という高い水準を維持しています

資源再生プラントは全天候型で、太陽光発電、雨水循環システム、省エネ設備などを導入して地球温暖化対策にも取り組んでいます。

業界初の電動式油圧ショベルをメーカーと共同開発して取り入れるなど、CO2削減への取り組みが注目され、国内外からの見学者が多く訪れる企業です。

まとめ

SDGsは世界の共通言語になりつつあります。世界規模での課題が示されることはスケールの大きな話に聞こえますが、これからは中小企業においても取り組みが求められてきます。

SDGsを課題ではなく潜在的なマーケットと捉えることで、経営の見直しやイノベーション開発を進めるチャンスに変換させていくことができるというのに加え、SDGsを潤滑油にして地域の地方創生に参加し、自治体や専門機関との連携を深めていくことで、持続的に企業価値を高めていくことが可能となります。

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よくある質問
  • SDGsとは何ですか?
  • SDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)は2015年の国連サミットで採択された目標で、「持続可能性」が重要なテーマとなっています。それまで、世界では経済成長に重きが置かれていて、20世紀には各国が大幅な経済発展を遂げることに成功しました。しかしその裏では、自然環境の破壊や格差の拡大など、多くのひずみもあったのです。
    そうした世の中の負の状態を正すため、将来の世代から搾取することなく現在の世代のニーズを満たす「持続可能な開発」という考え方のもと、国際社会が一丸となって取り組みを進めることになりました。このような背景からSDGsが採択され、世界各国でさまざまなステークホルダーがSDGsを推進するようになったというわけです。

株式会社ソフィアサーキュラーデザイン

ソフィアサーキュラーデザイン代表取締役社長、サステナブル・ブランド・コンサルタント

平林 泰直

大手メーカー系コミュニケーション部門での責任者としての実績からデジタルマーケティング、インターナル広報、メディア編集など、企業のコミュニケーションに関わる戦略策定、実行支援をお手伝いします。

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