人材育成

研修の内製化の準備とは?メリット・進め方・成功ポイントを解説

外部研修の活用が前提になっている企業でも、すべてを委託し続けるのが最適とは限りません。経営方針や現場の業務に直結する内容ほど、自社で設計し、自社で伝える価値は大きくなります。本記事では、研修の内製化の準備とは何かを軸に、進め方、向いている研修、失敗しやすいポイントまで体系的に整理します。

研修内製化で変わること

研修内製化の4つのメリット

研修を自社で内製化することには、大きく4つのメリットがあります。またこれは、研修を内製化すべき理由と捉えることもできるでしょう。

社員のスキルアップへの貢献

研修を内製化するということは、講師も自社で賄うということです。自分が身につけたスキルや知識を講師として第三者に伝えるには、これまでなんとなくこなしていたこと、あるいはぼんやりと知っていたことを、人に伝えられるようしっかりと学び直す必要があります。さらに、人前で話してわかりやすく伝えるプレゼンテーションの技術が磨かれるほか、受講者からの思いもよらなかった質問によって技術やノウハウの補完ができるかもしれません。

特に大企業では、現場の高業績者が必ずしも「教えること」が得意とは限りません。だからこそ、講師育成を通じて、説明力・傾聴力・問いかけ力・フィードバック力を鍛えられること自体が副次的な資産になります。弊社ソフィアの調査でも、1on1は6割超の企業で実施される一方、業務やキャリア形成への有用性評価は割れており、対話の質を高める管理職育成の余地があることがうかがえます。社内講師の育成は、こうした日常マネジメント力の底上げにもつながります。

自社の競争優位性の確保

自社が保有するさまざまなリソースの中には、他社に対して競争優位性を持つものがあります。例えば、長い年月を経て極限まで洗練された業務オペレーションが、高い効率と生産性で他社を卓越しているのならば、それは事業上の優位性といえるでしょう。

このリソースを研修のコンテンツとして社内に確立し、社内で伝承・確保し続けることは、競争優位性を維持するというメリットにつながります。このメリットは研修を内製化するからこそ生まれるものであり、外部の研修会社に委託した研修では得られません。

人的資本経営の観点でも、企業価値を高めるには、事業戦略に合った人材戦略と、付加価値を生み出す人材の確保・育成が重要だとされています。外部から一般論を学ぶだけでは埋まらない、自社独自の営業プロセス・品質基準・組織文化・意思決定のクセまで含めて内製コンテンツ化できれば、競争優位の再現性が上がります。

コンテンツの修正・変更への柔軟な対応

社会情勢とともに企業の体制は刻々と変わり、現場の業務がアップデートされることもあるため、研修コンテンツはしばしば修正や変更が必要になります。また、企業によっては、一般的なビジネススキルやコンプライアンスの研修であっても、自社用に内容をカスタマイズしたいこともあるでしょう。さらに、eラーニングのようなオンライン研修の場合は研修コンテンツをあらかじめ制作しておく必要があるため、制作を外部に委託するよりも内製化した方が、内容の修正・変更対応の柔軟性やコストの面でメリットが大きくなります。

IPAはDX関連の調査やガイドで、人材育成を戦略・技術と並ぶ中心テーマとして扱っています。実際、DXや業務変革が進む領域では、研修内容も短いサイクルで見直す必要があります。現場の実態・システム変更・役割定義の変更を研修に反映しやすいことは、内製化の大きな強みです。

業務への直結

研修コンテンツを自社にとって最適化できるのが内製化の強みです。そのため、学ぶべき内容を自社の現場環境にマッチさせやすく、受講者は学んだ内容を現場ですぐに実践できます。研修にありがちな「学んだつもり」「わかったつもり」を防ぎ、研修の効果を業務へと確実に直結させるためには、やはり内製化が適しています。

JILPTの2026年調査では、ものづくり産業のデジタル技術導入・活用に必要な人材確保の方法として、いずれの工程でも「社内人材の活用・育成」が半数超で最も高くなっています。これは、変化の速いテーマであっても、最終的には自社の文脈に落として実装できる人材を自社内で育てる必要があることを示しています。研修を業務に直結させるには、まさにこの”自社文脈への翻訳”が欠かせません。

ナレッジの属人化防止

弊社ソフィアの調査では、ナレッジ共有の仕組みとして「口頭で都度伝える」が40%で最多でした。一方で、「情報がいろいろな場所にあり、どこにあるのか分からない」「個人の頭の中にしかなく、引き継ぎができない」という課題も見られます。研修を内製化し、教材・ケース・FAQ・チェックリストまで含めて残せば、現場OJTだけに依存した伝承よりも、知識を組織資産として蓄積しやすくなります。

経営戦略と人材戦略の接続

経産省は、人的資本経営を「人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営」と説明しています。研修を内製化すると、経営が求める人材像・現場の求めるスキル・評価制度で見たい行動を一つの線で結びやすくなります。大企業の人事にとって、これは研修部門だけの話ではなく、経営・人事・事業部門の共通言語を整える施策でもあります。

内製化すべき研修と外部委託すべき研修の見極め

すべての研修を内製化すればよいというわけではなく、コンテンツの内容によって内製化に適した研修とそうでないものがあります。

この判断を曖昧にしたまま進めると、社内講師の負荷だけが増え、成果が出にくくなります。先に結論を言えば、自社独自性が高く、現場適用が重要で、繰り返し運用するテーマは内製化に向いています。逆に言えば、汎用性が高く、最新性や法改正対応が重要で、専門資格や外部知見が強みになるテーマは外部委託との相性が良いです。

企業ビジョン・ミッション研修

企業のビジョンやミッション、バリューは各企業が独自に定めているため、受講者の理解を深めるには同じ会社の社員から伝えたほうが熱量も高く、説得力を持ちます。逆に言えば、外部から招聘した講師のような第三者の口から語られても、説得力に欠けるでしょう。

オリジナリティを持たせやすいコンテンツではありますが、こうしたメッセージ性の強い発信が一方的に行われると敬遠してしまう社員もいるほか、伝えたい想いが強すぎることでコンテンツの内容に偏りが生じてしまうこともあります。

そのため、共感や納得を得やすいよう、ビジョンやミッションが反映された出来事を社員が実際に体験した事例を挙げたり、実際に当事者やキーパーソン、経営層が登壇して語ったりといった工夫が重要です。

特に大企業では、ビジョンそのものよりも「自部門の仕事にどうつながるのか」が見えないことで浸透が止まりやすいです。だからこそ、方針説明だけで終わらせず、現場の具体事例・意思決定の判断軸・管理職の行動例まで教材化することで、理念浸透研修が”腹落ちする学び”になります。

自社が求める人物像を具現化する研修

企業が掲げるビジョンやミッションはその企業の独自性を表すものであり、そのビジョンやミッションに基づいて企業が求める人材像も、もちろん他社とは異なるものになるでしょう。こうした「企業が求める人物像」が明確に定義され、それに基づいて設計される研修は内製化に適しています。

社員にとっては、自身の市場価値を高める上で「自社ならではの学び」を得ることができ、それがさらに先輩社員の口から語られることによって、自社のブランドを強く感じられます。

また企業にとっては、自社の差別化の主要因であるスキルセットを、社内講師育成を通して社内で伝承していくことができます。

このテーマでは、抽象語だけで終わらせないことが重要です。「主体性」「顧客志向」「変革推進力」といった言葉を、観察可能な具体行動に落とし込めるかどうかで、研修の実効性が変わります。ここで後述するコンピテンシーの明文化が効いてきます。

業務に関わる研修

実務に関する研修は自社のノウハウを反映させやすく、また現場ですぐ実践させたいものなので、勝手を知っている自社で内製化するほうが望ましいといえます。OJTが主流になってしまうと指導・教育に関する業務が属人化したり、教える内容にばらつきがあったり、先輩社員が急に退職したときに誰も教えられなくなったりといったリスクがあります。そこで教えるべき内容を業務に関する研修へとコンテンツ化することで、一定水準の必須スキルをムラなく伝えられるようになります。

なお、コンプライアンス研修や情報セキュリティ研修、プライバシーマーク研修など、どの会社でも学ぶべき内容が共通していることが明らかなコンテンツはこれまでどおり研修会社に委託したほうがよいでしょう。こちらは法令に関するものも多分に含まれることから、情報をアップデートする必要を考えると専門家の手に委ねたほうが確実です。

弊社ソフィアの調査でも、「他の部署の情報にアクセスしづらい」ことが22.5%、「情報がいろいろな場所にあり、どこにあるのか分からない」が27.6%の課題として挙がっています。業務研修を内製化する際は、自部署だけの手順教育で終わらせず、前後工程や他部署連携の観点まで含めて教材化すると、単なる作業教育よりも価値が高まります。

管理職の1on1・フィードバック・評価運用に関する研修

大企業で実務上ニーズが高いのに、外部の汎用研修だけでは自社にフィットしにくいのが、管理職向けの1on1・フィードバック・評価運用の研修です。弊社ソフィアの調査では、上司との1on1は「実施が義務付けられている」34%と「任意で実施/推奨されている」28%を合わせて6割超に広がっています。一方で、1on1が業務遂行やキャリア形成に役立っているとする前向き回答は4割程度にとどまり、運用の質に差があることがうかがえます。ここは、自社の等級制度・目標管理・評価方針に合わせて内製化する価値が大きい領域です。

他部署理解・ナレッジ共有を促す研修

部署間コミュニケーションは、弊社ソフィアの調査で7割以上が必要性を感じている一方、施策としては「定例会議・全社集会」が中心で、「勉強会・セミナー」は25%にとどまっています。だからこそ、他部署の業務理解・共通知識・成功や失敗事例の共有を目的とした社内研修は、単体の知識習得以上に連携促進の効果を持ちます。特に、企画部門・事業部門・コーポレート部門の接続が重要な大企業では、こうした横断研修を内製化すると実務的なメリットが大きいです。

外部委託に適した研修

一方で、すべてを内製化する必要はありません。コンプライアンス・情報セキュリティ・プライバシーマークのように、法令や最新動向のアップデートが重要なテーマは外部委託が有効です。また、一般的な業務スキル研修や、専門的スキル・最新事例の研修も外部委託に向くと整理されています。つまり、自社独自性が低く、第三者性や最新性が価値になるテーマは、外部の知見を積極的に活用すべきです。

判断に迷ったときは、次の観点で仕分けするとわかりやすいでしょう。

・自社独自の文脈がないと成立しないか

・現場への即時適用が重要か

・法改正や技術更新への追随がどれだけ必要か

・社内講師を継続的に確保できるか

・毎年繰り返し実施するテーマか

研修内製化の準備の始め方

「研修の内製化」は多くの企業で議論に上がるものの、その多くが検討や推進の途中で頓挫してしまっているのが現実です。やるべきことを明確にし、強力に推進していくために、ここでは内製化に必要な準備の要点を解説します。

目的とKPIの設定

最初に決めるべきは「どの研修をつくるか」ではなく、「何を変えたいのか」です。新人の立ち上がり短縮なのか、管理職の1on1品質向上なのか、特定業務のミス削減なのかで、研修設計は変わります。目的を曖昧にしたまま教材づくりに入ると、見栄えは良くても成果が測れない研修になりやすいです。

KPIは、少なくとも次の三層で設計しておくと運用しやすくなります。

実施KPI:対象者カバー率、受講率、完了率

学習KPI:理解度テスト、演習達成度、講師評価

業務KPI:現場実践率、ミス削減、立ち上がり期間、上司評価、他部署連携の改善

コンピテンシーの明文化

「コンピテンシー(competency)」は、「高業績者の行動特性」を意味する言葉です。企業の文脈では「特定の役職や職務、役割において優秀な成果を発揮できる社員の行動特性」と定義されます。噛み砕いて言えば、「その人を『仕事のできる社員』にしている要素はなにか」というものでもあります。

自社の管理者研修を内製化しようとする際、「自社において優れた管理者とはどのような存在か」を明確にできないと、研修コンテンツを作ることができません。

また現場の業務に即した研修についても、「業務を効率化し適切にミッションをこなす」ために必要な言動がどのようなものなのか、その正体が掴めていなければコンテンツの設計は困難です。

まずはロールモデルたる人物を社内から探し出し、その人たちの行動からコンピテンシーの発見を試みてみましょう。

デジタル関連やDX関連の研修であれば、IPAのデジタルスキル標準のような外部指針を参照しつつ、自社の役割定義に置き換える方法も有効です。共通基準を使うことで、完全なゼロベースで設計する負荷を下げつつ、自社用にカスタマイズできます。

現行研修の棚卸しと優先順位づけ

準備段階では、今ある研修を「階層別」「テーマ別」「部門別」「法定・必須」「任意・選抜」などに分けて棚卸しすることが重要です。この作業はできるだけ前の段階で行っておくと、実務では動きやすくなります。進め方の可視化は、内製化を進める上位記事に共通する論点でもあります。

優先順位づけでは、次の4象限で考えると判断しやすいでしょう。

独自性が高く、頻度も高い

独自性は高いが、頻度は低い

独自性は低いが、頻度は高い

独自性も頻度も低い

このうち、最初に内製化しやすいのは「独自性が高く、頻度も高い」テーマです。

指導トレーナーの育成

内製化した研修で講師を務める「指導トレーナー」の育成も行う必要があります。まずは、講師にはどんな能力が必要なのかを、内製化をけん引する担当者が把握するようにしてください。

指導トレーナーは、自分自身が教えるコンテンツについて熟知しているだけでなく、会社の状況や現場の課題を理解し、育成する後輩のあるべき姿を描けていることが理想です。単に業務知識を伝えるだけではOJTと大差なくなってしまいますので、研修講師としてどう振る舞うべきかを伝える必要があります。

ただし、この点は自社にノウハウがないことも多いはずですので、内製化の支援を得意とする企業に相談してもよいでしょう。

社内講師の選抜では、「業務に詳しい人」だけで決めないことが大切です。説明力・傾聴力・場づくり・質問への対応・受講者を動かすファシリテーション力まで含めて見極める必要があります。いきなり単独登壇させるのではなく、最初は共同登壇・見学・模擬登壇・フィードバックを回す”トレーナー養成”の工程を設けると失敗しにくくなります。

指導トレーナーの評価設計

最初の指導トレーナーを育成すると同時に、指導トレーナーをどのように評価するかを検討し、具体化していきましょう。あわせて、研修に必要なツールの導入と管理・標準化を行うのもこの段階です。これらの地盤固めが以後の指導トレーナーのスムーズな育成につながります。最初の指導トレーナーが人事異動などで離脱してしまうと内製化が立ち行かなくなってしまうこともありますので、内製化のプロセスを具体化し、汎用的に活用できるよう挑戦してみてください。

評価項目は、満足度だけでは足りません。説明のわかりやすさ・時間設計・質疑対応・演習の運営・受講後の行動変化まで含めて見ていくと、講師の成長につながります。また、講師業務が”善意の持ち出し”にならないよう、人事評価や役割定義と接続しておくことも重要です。

教材設計と学習導線の整備

内製化は、資料をつくって終わりではありません。大企業で定着しやすいのは、事前課題・集合研修・演習・現場実践・上司との振り返り・後日フォローを一本の導線として設計するやり方です。弊社ソフィアの調査では、社員同士の関係性構築に最も役立つものとして「一緒に仕事をする経験」が40.1%で突出していました。つまり、学びを定着させるには、研修の場だけでなく、仕事の場に戻したあとに使う設計が欠かせません。

ナレッジ基盤と運用ルールの整備

弊社ソフィアの調査では、ナレッジ共有の実態として「口頭で都度伝える」が最多でした。この状態では、研修を実施しても、内容が更新されず、部門ごとのローカルルールに埋もれやすくなります。そこで、教材・FAQ・講師マニュアル・ケース集・録画・更新履歴を残す場所を決め、誰がいつ更新するのかをルール化しておくことが重要です。研修の内製化は、教材制作プロジェクトであると同時に、ナレッジマネジメントの設計でもあります。

パイロット実施と改善サイクル

最初から全社展開を狙うより、対象部門や階層を絞ってパイロット実施し、改善してから広げる方が成功確率は高まります。研修実施後の見直しや継続的なブラッシュアップは、成功ポイントとして広く挙げられています。理解度だけでなく、現場で使えたか・上司が観察できたか・運営負荷が過大でなかったかまで確認してから次回版をつくると、内製化の精度が一気に上がります。

ここまでをまとめると、準備の実行順は次のようになります。

目的設定 → テーマ選定 → コンピテンシー明文化 → 講師選抜 → 教材設計 → ナレッジ基盤整備 → パイロット実施 → 改訂 → 展開

この流れをあらかじめ描いておくことが、頓挫を防ぐ最短ルートです。

研修内製化を成功させる運用のポイント

最後に、研修内製化を成功させる3つのコツをお伝えします。

従業員のあるべき姿の定義

経営ビジョンという「会社のあるべき姿」が策定されていれば、会社に属する従業員のあるべき姿も見えてくるでしょう。もちろん現場視点も忘れてはいけません。「こうなってほしい」という理想像をイメージしてコンテンツを作り、講師は指導をしていくことこそ、内製化のメリットを大きく引き出す要素となります。

経産省の人的資本経営でも、経営戦略と連動した人材戦略の実践が重視されています。従業員のあるべき姿を描くときも、理想論だけではなく、今後の事業ポートフォリオ・必要となるスキル転換・管理職の役割変化まで見据えて設計することが大切です。

状況の可視化

内製化にあたっては、現在まで自社で実施してきた研修をすべて洗い出してみましょう。洗い出したものを種類別に分けてテーマまでわかるようにしておくと、これまで選んでいたコンテンツの傾向や、不足している内容、厚くしたい内容などが浮き彫りになるはずです。

このとき、研修一覧だけでなく、教材の保管場所・更新責任者・実施頻度・受講対象・評価方法まで一緒に見える化しておくと、後から内製化対象を判断しやすくなります。テーマ棚卸しだけではなく、運用棚卸しまで行うことがポイントです。

内製化コンテンツの見極め

内製化するコンテンツは、以下のような観点(一例)を参考に、見極めていきましょう。

  • 作業負荷(内製化の実現に労力がかかりすぎると感じられたら外部へ)

  • コスト(低コストで実施できるもの、ただし対パフォーマンスも重視)

  • 講師の育成度(社員が教えられるレベルかどうか)

  • 独自性の有無(ビジョンやミッションなど自社独自のコンテンツになる場合は内製化)

  • 専門性の有無(ノウハウや知見、技術が自社だけのものであれば内製化)

これらに加えて、更新頻度第三者性の必要度も考慮に入れると判断しやすくなります。たとえば、評価者研修のように自社制度との整合が大切なものは内製向きですが、法改正に追随が必要なテーマは外部の専門家を使う方が安全です。

一度にすべてを内製化しないこと

よくある失敗は、「これを機に全部内製化しよう」とすることです。内製化は、教材・講師・運営・評価・更新体制が揃ってはじめて回るため、対象を広げすぎると破綻しやすくなります。最初は、理念浸透・業務手順・管理職の対話スキルのように、自社独自性が高く再現性をつくりやすいテーマから始めるのがおすすめです。

講師業務を正式な役割として評価

社内講師の協力が得られない原因の多くは、「忙しいのに評価されない」ことにあります。内製化を本気で進めるなら、講師業務を役割として定義し、準備工数や貢献度が評価される状態をつくる必要があります。

研修後の実践と上司の対話をセットにする

研修直後は理解したように見えても、現場に戻ると元のやり方に戻ることは珍しくありません。そこで、上司との1on1やチームミーティングの中に、「研修で学んだことをどう使ったか」を振り返る場を組み込みましょう。弊社ソフィアの調査では、情報共有施策として1on1や定期面談が高い活用率を持っているため、研修の定着導線としてこれらを使うのは合理的です。

準備不足で起きやすい失敗

研修内製化では、次のような失敗が起こりやすいです。

  • 目的が曖昧で、受講後の変化が測れない
  • 教材はあるが、誰も更新しない
  • 講師は選んだが、育成していない
  • 研修は実施したが、現場実践までつながらない
  • すべてを内製化しようとして運営負荷が破綻する

逆に言えば、これらを先に潰しておけば、内製化はかなり進めやすくなります。準備で失敗要因の大半が決まると考えた方が実態に近いでしょう。

まとめ

研修の内製化は、単なるコスト削減策ではありません。自社の競争優位性・理念・人材像・現場ノウハウを組織の中に蓄積し、再現可能にするための仕組みです。特に大企業では、経営戦略と人材戦略をつなぎ、部門間でばらつきがちな知識や判断基準をそろえる手段として、大きな意味を持ちます。

内製化によって得られるメリットは大きく、実施の仕方によっては企業を大きく成長させるきっかけになります。しかしこれまで内製化を経験したことのない企業にとってはハードルが高く感じられることも事実です。もし内製化に興味はあるものの何から手をつけていいかわからない、内製化についてもっと詳細を知りたいという場合は、お気軽にお問い合わせください。

ソフィアでは、調査・課題整理・研修設計・講師育成・運用定着までを一気通貫で支援しています。内製化を「全部自社でやり切ること」ではなく、「自社で持つべき核を定め、必要な部分だけ外部伴走を使うこと」と捉えると、現実的に前へ進めやすくなります。

関連サービス

お問い合わせ

  • 研修の内製化は、まず何から始めればよいですか。
  • 最初にやるべきことは、教材作成ではなく、目的と対象の明確化です。何の課題を解くのか、誰に何をできるようになってほしいのかを定め、そのうえで現行研修の棚卸しを行います。ここが曖昧だと、コンテンツだけが増えて定着しにくくなります。

  • 研修はすべて内製化したほうがよいのでしょうか。
  • いいえ。理念浸透・管理職育成・業務手順・自社独自ノウハウは内製化と相性が良い一方で、法改正対応・高度専門知識・汎用スキル・最新事例のキャッチアップは外部委託の方が適していることがあります。内製化と外部活用の使い分けが現実的です。

  • 社内講師が忙しく、引き受けてもらえない場合はどうすればよいですか。
  • 単独登壇を前提にせず、共同登壇・模擬登壇・講師補佐から始めると現場の心理的負荷を下げられます。また、講師業務を評価や役割定義に組み込むことも重要です。講師の承諾が取りにくいこと自体は、典型的な課題の一つとして広く挙げられています。

  • KPIは何を見ればよいですか。
  • 受講率や満足度だけでは不十分です。理解度・演習達成度・現場実践率・上司の観察評価・業務指標への影響まで、段階を分けて見ていくのがおすすめです。大切なのは、研修が”実施されたか”ではなく、”行動が変わったか”を捉えることです。

  • eラーニングだけで内製化は成立しますか。
  • 成立するテーマもありますが、それだけでは不十分なことが多いです。弊社ソフィアの調査では、情報共有施策として研修・トレーニングだけでなく、1on1や定期面談も高い活用率でした。学びの定着には、コンテンツ配信に加えて、対話や振り返りの場が必要です。

  • 外部支援はどの段階で使うのが効果的ですか。
  • 内製化の核は自社に持ちつつ、設計初期の課題整理・講師育成・教材品質の底上げ・法改正や最新専門知識の補完など、難易度の高い部分だけ外部支援を使うのが効果的です。これなら、内製化の目的を損なわずに、立ち上がりの失敗を減らせます。

株式会社ソフィア

エグゼクティブラーニングファシリテーター

平井 豊康

企業内研修をコアにした学習デザインと実践を通じて、最適な学習経験の実現を目指しています。社内報コンサルティングの経験から、メディアコミュニケーションを通じた動機付けや行動変容の手法も活用しています。