【2025年最新】SDGsで女性活躍を推進するには?企業成長の鍵と成功事例・法改正を徹底解説
目次
SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる「ジェンダー平等」は、今や単なる社会貢献の枠を超え、企業の存続と成長を左右する経営の最重要アジェンダとなっています。ESG投資の拡大や人的資本経営への注目、そして2025年から2026年にかけて順次施行される「女性活躍推進法」の改正など、企業を取り巻く環境は激変しており、経営企画部門や事業責任者の皆様には、より高度で実効性のある戦略立案が求められているのです。
しかし、現場の実態はどうでしょうか。「制度は整えたが風土が変わらない」「女性管理職の数値目標が独り歩きしている」「施策に対する社員の冷ややかな視線を感じる」といった悩みを抱える企業が後を絶ちません。なぜ、多くの企業の女性活躍推進は「形だけの施策」に留まってしまうのでしょうか。
本レポートでは、世界経済フォーラムの「ジェンダー・ギャップ指数2024」などの最新マクロデータや法改正の動向を紐解きながら、弊社ソフィアの独自調査で明らかになった「従業員の戦略への共感はわずか1割」という衝撃的な実態と、そこから見えてくるインターナルコミュニケーションの課題に深く切り込みます。SDGsを起点とした真の女性活躍を実現し、組織の持続的成長を導くための具体的アプローチを、約15,000文字のロングフォームで徹底解説いたします。
SDGsと女性の関係性とはどのようなものか
男女平等や女性の社会進出が国際的にますます重要視される中、女性の活躍を推進することは現代社会における必須の課題となってきています。このような背景に後押しされ、企業の経営者やマネジメント層の皆様も、女性が今以上に活躍しやすい社内の環境構築を検討しているかもしれません。
実は、女性の活躍を推進することは、国連サミットで採択された世界共通の目標SDGsの考え方にも沿っています。SDGsは、男女の区別なく誰一人として取り残されない持続可能な社会を目指しているからです。
では、日本企業において女性の活躍を推進するにはどうしたらいいか、一緒に考えていきましょう。
SDGsは、持続可能な社会を構築するために女性の活躍が不可欠であることを認識しています。国連が発表している「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にも記載されているとおり、女性が活躍するためには「ジェンダー平等」と「女性のエンパワーメント」が重要となります。SDGsと女性の関係を詳しく見てみましょう。
ジェンダー平等を実現しよう
SDGsには17項目の目標がありますが、女性の社会進出に関係するのは5つめの項目で、「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」ことが定められています。
差別や暴力の対象となりやすかった女性は、歴史的に社会から疎外されてきました。今でも経済的に弱い立場になりやすい傾向があり、貧困に苦しむ人も男性より女性の割合が高くなりがちです。多くの国で少しずつ状況は改善しているものの、社会的な男女の不平等は完全に消えているとは言えません。
そのため、女性に焦点を当ててサポートすることで、SDGsの理想とする持続可能な社会の実現への一歩を志しているのです。SDGsの目標5では、以下のような具体的なターゲットを掲げています。「未成年者の結婚や強制結婚などの有害な慣行を撤廃する」「家庭内における男女の責任分担を進める」「政治・経済などにおける女性のリーダーシップの機会を確保する」など、様々な方向から女性の社会進出を目指しているのです。
企業活動に直結するSDGs目標5のターゲット詳細
企業経営の視点から特に注目すべきは、目標5に含まれる以下のターゲットです。これらは、CSR(企業の社会的責任)の範疇を超え、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の中核指標として投資家からも厳しくチェックされる項目となっています。
ターゲット5.1(差別の撤廃):
採用、昇進、配置、賃金など、あらゆる雇用プロセスにおける性差別を撤廃すること。これは日本における男女雇用機会均等法の遵守のみならず、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)の排除まで踏み込んだ対応が求められます。
ターゲット5.4(無償労働の評価):
育児や介護といった家庭内の無償労働を認識・評価し、公共サービスやインフラ、社会保障政策の提供、および家庭内での責任分担を通じて、その負担を軽減すること。企業においては、長時間労働の是正や男性育休の取得促進がこれに直結します。
ターゲット5.5(意思決定への参画):
政治、経済、公共分野での意思決定において、女性の参画と平等なリーダーシップの機会を確保すること。これは「女性管理職比率」や「女性役員比率」の向上という形で、最も定量的な成果が求められる領域です。
日本の女性活躍の現状はどうなっているのか
女性活躍の重要性が認識されるようになる中、多くの国が男女平等に向けて歩みを進めています。社会の広い範囲で女性が進出しているのは、決して欧米の先進国に限った話ではなく、新興国や発展途上国でもビジネスや政治などさまざまな分野で女性が活躍している国がたくさんあります。では、日本はどのような状況なのでしょうか。
G7の中で最低ランク:ジェンダー・ギャップ指数2024の詳細分析
毎年、世界経済フォーラム(WEF)が「ジェンダー・ギャップ指数(Global Gender Gap Index:GGGI)」を発表しています。経済・教育・健康・政治の4分野で測定されたデータをもとに、各国の男女格差を示している指標です。
2024年6月に発表された最新のジェンダー・ギャップ指数で、日本の順位は146か国中118位でした。前年の125位からはわずかに順位を上げましたが、依然としてG7(主要7カ国)の中では最下位という状況が続いています。
分野別スコアに見る日本の構造的課題
日本の総合スコアは0.663であり、これは「男女完全平等」を1.0とした場合の達成度を示しています。分野ごとの詳細を見ると、日本の課題が「経済」と「政治」に偏っていることが明白です。
| 分野 | 順位(2024年) | スコア | 特徴・課題 |
| 教育 | 72位 | 0.993 | 識字率や初等・中等教育への就学率では男女差はほぼ解消されていますが、高等教育(大学等)への進学率には依然として課題が残ります。 |
| 健康 | 58位 | 0.973 | 出生時の男女比や健康寿命においては、世界的に見ても高い平準性を維持しています。 |
| 経済 | 120位 | 0.568 | 労働参加率の格差は縮まりつつあるものの、「管理職ポジションにおける女性比率」の低さと「男女間の賃金格差」がスコアを大きく引き下げています。 |
| 政治 | 113位 | 0.118 | 国会議員や閣僚に占める女性の割合が圧倒的に低く、意思決定層への女性参画が最も遅れている分野です。 |
主要7か国(G7)の中では、ドイツが7位と高順位を維持しているほか、フランスやイギリスも上位にランクインしています。一方、日本はOECD加盟38か国中でもワースト2位(最下位はトルコ)であり、東アジア・太平洋地域においてもフィリピン(25位)やニュージーランド(4位)に大きく水をあけられています。
もちろん、日本社会において女性が虐げられているというわけではありません。また何十年も変化していないというわけでもなく、男女平等は徐々に進んでおり、昔と比べると女性の権利は格段に向上しています。しかし、男女平等に向けた社会変化はほかの国でよりスピーディーに進んでいるため、世界からは取り残されつつあるのが現実なのです。
女性活躍がもたらす経済効果:GDPへのインパクト
女性活躍の推進は、人権的な側面だけでなく、日本経済の再生にとっても切り札となります。内閣府やIMF(国際通貨基金)などの試算によれば、女性の労働参加と活躍推進はGDP(国内総生産)に多大なプラス影響を与えると予測されています。
労働力人口の維持・増加:
少子高齢化により生産年齢人口が減少する日本において、女性(特にM字カーブの底となる30代〜40代)の就業率が男性並みに上昇すれば、数百万人規模の労働力が市場に供給されます。内閣府の試算では、女性の労働参加が進めば、日本のGDPを数パーセント〜十数パーセント押し上げるポテンシャルがあるとされています。
多様性によるイノベーション:
同質性の高い組織よりも、ジェンダーやバックグラウンドが多様な組織の方が、リスク管理能力が高く、イノベーションを生み出しやすいことが多くの研究で示されています。経済産業省も「ダイバーシティ経営」を推進しており、多様な人材の能力発揮が企業価値向上(PBR向上など)に直結すると強調しています。
日本政府の取り組みと法改正の動向(2025年-2026年)
では、日本政府は女性の活躍推進に向けてどのような取り組みを行っているのでしょうか。
政府はSDGsを推進するために8分野からなる「SDGs実施指針」を定めており、そのうち1つ目の「あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現」という分野で、女性の活躍推進に注目しています。
こうした背景のもと、法整備や体制構築も加速しています。特に企業の経営企画・人事部門が直近で対応を迫られているのが、「女性活躍推進法」の改正と「人的資本経営」における開示義務化です。ここでは、2025年から2026年にかけての重要な法的変更点を詳しく解説します。
2025年改正・2026年施行「女性活躍推進法」の重要ポイント
「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」は、これまでも数度の改正を経て対象企業の拡大や公表義務の強化が行われてきました。2025年に公布され、2026年4月1日から施行される改正法のポイントは以下の通りです。
1. 情報公表義務項目の追加(301人以上企業)
これまで、従業員数301人以上の大企業に対しては「男女の賃金の差異」の公表が義務付けられていましたが、今回の改正により、さらに「女性管理職比率」が必須公表項目として追加される見込みです。
| 企業規模 | 改正前(〜2026年3月) | 改正後(2026年4月〜予定) |
| 301人以上 | 「男女間賃金差異」+その他1項目以上 | 「女性管理職比率」+「男女間賃金差異」+その他公表項目 |
| 101人〜300人 | 1項目以上を選択して公表 | 「女性管理職比率」および「男女間賃金差異」を含む項目から選択(※詳細は省令による) |
これにより、大企業は「賃金格差」と「管理職比率」という、結果数値のごまかしがきかない2大指標を常に市場に晒すことになります。投資家や求職者はこれらの数値を厳しくチェックするため、企業は数値の改善に向けた実効性のある施策(パイプラインの構築、昇進基準の見直し等)を加速させる必要があります。
2. 対象企業の拡大と責務の強化
2022年の改正で、行動計画策定・届出義務の対象が「従業員101人以上」の企業に拡大されましたが、今後さらに中小企業への適用拡大や、サプライチェーン全体での取り組み推奨など、社会全体での機運を高める施策が検討されています。また、改正法では法の有効期限が10年延長され、令和18年(2036年)までとなるなど、長期的な視点での取り組みが求められています。
人的資本経営と「女性管理職比率」の開示義務化
2023年3月期決算より、上場企業などを対象に有価証券報告書における「人的資本」に関する情報開示が義務化されました。ここでは、以下の3指標が「記述欄」ではなく「データ欄」での記載必須項目となっています。
- 女性管理職比率
- 男性の育児休業取得率
- 男女間賃金差異
金融庁や内閣府の方針では、これらの数値を開示するだけでなく、「なぜその数値なのか(要因分析)」「目標達成に向けてどのような戦略(人材育成、採用、定着支援)を実行するか」というナラティブ(物語)の開示も求めています。単なるコンプライアンス対応ではなく、企業価値向上のための「投資」としての女性活躍推進が問われているのです。
働き方改革と行政による多角的支援
法改正に加え、働き方改革関連法による残業規制の強化や、多様な働き方の推進も女性活躍を後押ししています。時短勤務やリモートワーク、フレックスタイム制などを推奨し、様々な立場の女性にとっても働きやすい環境が目指されています。出産や子育てなど、ライフステージの変化に応じて働き方を柔軟に変えることが、女性が働き続けることのできる社会につながるのです。
企業単位で積極的にこのような体制づくりを進める上場企業は、経済産業省が「なでしこ銘柄」や「Nextなでしこ」として認定することで、各企業の取り組みが可視化しやすくなっています。
また、行政では、待機児童の解消を目指して保育所の整備などの取り組みが進められています。女性だけでなく男性による育休の取得についても啓蒙し(「イクメンプロジェクト」など)、夫婦が家庭での役割分担を行いやすくなるような社会環境を構築することで、女性も外に出て働き続けることができるよう後押ししているのです。
女性活躍のカギは体制整備と風土変革・意識改革
諸外国に比べると見劣りする部分もあるものの、女性の活躍に向けた体制の整備は日本でも徐々に進んでいます。人々の意識にも大きな変化が見られ、男女問わず多くの人が「女性が社会に進出するのは良いことだ」と考えるようになってきました。
2019年に内閣府が行った調査によると、「子どもができても女性は仕事を続けるべき」と考える人が60%を超える一方、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という戦後の高度経済成長期に主流だった考え方に賛成する人は過去最低の35%まで減少しています。
ただし、企業ごとに見るとまだその変化に追いついていないケースも多いのが現実です。制度を作っても魂が入らず、形骸化してしまう。その原因はどこにあるのでしょうか。女性活躍のカギは何なのでしょうか。
日本企業が抱える構造的課題
まずは、女性の活躍を推進するにあたって日本企業が抱えている構造的な問題を見てみましょう。
1. 女性社員の管理職昇進意欲の「壁」
厚生労働省の委託により行われた調査によると、およそ半数の企業が「女性社員の管理職昇進意欲の向上」を女性活躍の推進に向けた課題の1つと捉えているようです。女性社員の割合は多くの会社で上昇傾向にあるものの、管理職に限って見るとその割合はまだ低いのが現状です。
ここで注意すべきは、「女性自身の意欲が低い」と安易に結論づけてはいけないという点です。意欲を阻害している要因として、以下のアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が職場に潜んでいる可能性があります。
固定的性別役割分担意識:
「リーダーは男性が向いている」「女性は補助的な業務が得意だ」という無意識の思い込みが、重要なプロジェクトや意思決定の場から女性を遠ざけています。
過剰な配慮(マミートラック):
子育て中の女性社員に対し、本人の意向を確認せずに「大変だろうから」と責任ある仕事を外してしまう、いわゆる「優しさという名の排除」がモチベーション低下を招いています。
ロールモデルの不在:
社内に女性管理職が少なく、既存の管理職が長時間労働を前提とした「男性モデル」で働いている場合、女性社員は「あのような働き方は自分には無理だ」とキャリアアップを諦めてしまいます。
一例として、下記の表のように、個々の能力や意欲・状況に合わせてどんなサポートを行えば良いか、可視化しておくと良いでしょう。
| 昇進意欲が低い | 昇進意欲が高い | |
| 人事評価が高い | キャリア開発(不安の払拭、多様なロールモデルの提示) | 昇進昇格(挑戦的なアサイン、スポンサーシップ) |
| 人事評価が低い | ライフキャリア開発(長期的な視点の醸成、強みの再発見) | スキル開発(不足スキルの習得支援、フィードバック) |
2. 両立支援と「代替要員」の問題
「両立支援制度利用者の代替要員確保やサポート体制作り」も、多くの企業が課題に挙げる点です。法律が整備され、大企業だけでなく中小企業においても育休や産休といった制度は整ってきています。その反面、育休・産休により戦力が減少した職場では、残された人々に多くの負担がかかってしまうというケースも多くあります(いわゆる「周囲へのしわ寄せ」問題)。
そのため、速やかに代わりの人材を投入できるような仕組みや、業務の属人化を解消しチームでカバーできる体制が必要とされているのです。また、一度職場を離れると元に戻るのは簡単ではありません。育休後にスムーズに復帰するためには、休業中のサポート体制や復帰前のセミナーなどの導入も必要です。
そして、「両立」を女性のみが担うものととらえずに、会社全体としての長時間労働の抑制や男性社員の育休取得の推進などで、男性が家庭内の役割を担いやすくすることも不可欠です。
3. 推進体制とリソースの不足
そもそも「女性活躍推進の体制整備や担当者の時間確保」に課題があると考えている企業も30%を超えています。体制を変更したり改善したりしながら運用していくためには、専門の担当者や担当部署が必要です。人手不足や業務繁忙が原因で、迅速な体制整備ができない企業もあるのです。
会社都合の多様性推進や女性活躍推進では、従業員の共感は得られない
前段でも述べたように、制度面・風土面も含めて、企業における女性活躍推進は喫緊の課題であり、急速に取り組みが進んでいます。しかし、従業員の実感としてはどうでしょうか?
チャンスが来た、好ましい変化だと歓迎する社員もいるでしょう。しかし一方で、「いきなり、なんだ?」「数値目標合わせのために利用されているのではないか」と訝しむ反応もあるかもしれません。
1985年に男女雇用機会均等法が制定されてから、日本社会・日本企業は表向きには女性活躍を推進してきました。しかし実際には、政治・文化・経済などあらゆる場面において、意思決定をするメンバーは男性の数が圧倒的に多く、男性中心的な考え方が根強く残っています。活躍しようにも女性社員が置かれている立場を上層部が十分に理解していないような環境下にあって、「SDGsのゴールに向けて」とか「イノベーションを生み出すための女性活躍」という会社主語のストーリーを打ち出しても、従業員からは「会社の体面だけを考えた取り組みであって自分たちのためのものではない」と見透かされるでしょう。
【衝撃の事実】戦略への共感はわずか1割:弊社ソフィアの調査より
ここで、インターナルコミュニケーション(IC)の専門コンサルティング会社である弊社ソフィアの調査から見えてきた、衝撃的なデータをご紹介します。
弊社ソフィアの調査では、2024年8月から9月にかけて国内企業の従業員を対象に「インターナルコミュニケーション実態調査」を実施しました。その中で、従業員に対し「会社の経営目標や戦略に共感しているか」を尋ねたところ、「共感している」と回答した社員は約1割にとどまるという結果が明らかになりました。
これは、女性活躍推進を含む経営戦略全般において、以下のような深刻な「組織の断絶(ギャップ)」が存在することを示唆しています。
経営層の思い込み:
経営層は「何度も伝えているから伝わっているはずだ」と考えているが、実際には現場に届いていない、あるいは「自分事」として捉えられていない。
腹落ち感の欠如:
「なぜ今、女性活躍なのか」「それが自分たち(男性社員含む)にどのようなメリットをもたらすのか」という文脈(コンテキスト)が共有されず、スローガンだけが空回りしている。
「1on1ミーティング」のパラドックス
さらに、弊社ソフィアの調査では、コミュニケーション施策に関する興味深い矛盾も浮き彫りになりました。多くの企業が組織活性化のために導入している「1on1ミーティング」について、以下の結果が出ています。
実施している施策の第1位:「1on1ミーティング」
効果が出ていない施策の第1位:「1on1ミーティング」
つまり、最も多くの企業が取り組んでいるにもかかわらず、現場では「効果がない」と感じられている施策の筆頭が1on1なのです。これは、女性活躍推進の文脈でも非常に危険な兆候です。
上司と部下の対話の場である1on1が、「業務進捗の確認」や「一方的な指導」の場になってしまっていれば、女性社員が抱えるキャリアの悩みやライフイベントへの不安、アンコンシャス・バイアスによる生きづらさを吸い上げることはできません。むしろ、質の低い1on1は心理的安全性を損ない、離職の原因にもなり得ます。
解決の糸口:「対話・教育・ツール」の三本柱
では、女性社員が活躍に向けて行動し、周囲がそれを積極的に後押しするような組織風土をつくるにはどうしたらいいでしょうか?
自社の歴史や現状をしっかりと認識した上で、自社なりの多様性や女性活躍の考え方や今後のストーリーを構築し、制度や風土を再構築していく必要があります。
弊社ソフィアの調査レポートでは、組織のズレを解消し、共感を生むためのカギとして以下の「三本柱」を提言しています。
1. 対話(Dialogue):一方通行から双方向へ
経営層からのメッセージ発信(タウンホールミーティング等)において、単に方針を伝えるだけでなく、社員からの質問や意見をリアルタイムで受け付ける双方向性を確保することが重要です。また、部署を超えた座談会やワークショップを通じて、女性社員同士、あるいは男女混合で「キャリア」や「働き方」について本音で語り合う場を設けることで、相互理解と心理的安全性を高めます。
2. 教育(Education):管理職の意識変革
多くの男性管理職は、自分自身が少数派の立場に身を置いた経験や、キャリアやライフにおいて障壁にぶつかった経験が乏しく、女性社員に対して共感的理解をすることが難しい状況があります。
しかし、まずは日本社会や日本企業、そして自社の女性活躍における理想と現実のギャップを直視し、社員個人の資質だけでなく社員が置かれた環境や関係性にキャリアアップを阻む要因がないか考えてみてください。アンコンシャス・バイアス研修や、傾聴力を高めるための1on1トレーニングを実施し、管理職が「多様な部下」をマネジメントできるスキルを習得させることが不可欠です。
3. ツール(Tools):情報の透明性とメディア活用
社内報やイントラネットなどのメディア活用も重要です。弊社ソフィアの調査では、社内報における「媒体選択」と「双方向化」が情報発信力アップのカギであることが示されています。
単なる制度紹介や成功者のキラキラした事例だけでなく、失敗談や葛藤を含めたリアルなストーリーを発信したり、社員がコメントできるデジタルプラットフォームを導入したりすることで、情報の透明性を高め、「自分たちのためのメディアだ」という共感を醸成します。
実際に女性が活躍している企業事例
女性活躍の推進を阻む課題やコミュニケーションの壁を見てきましたが、中には独自の工夫で壁を乗り越え、女性活躍を高いレベルで実現している企業もあります。
女性活躍推進法に基づいて取り組みを進める優良企業に対して、厚生労働省は「えるぼし」マークを認定しており、さらに経済産業省と東京証券取引所は「なでしこ銘柄」を選定しています。これらの認定を受けた企業の取り組みは、多くの示唆に富んでいます。
※「えるぼし」とは
「えるぼし」は、企業における女性の活躍状況を3段階で認定する厚生労働省の制度です。「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の5つの基準で選定され、5つの基準すべてを満たした企業のみが「えるぼし(3段階目)」を獲得できます。
では、実際に「えるぼし」や「なでしこ銘柄」に選定されている企業の具体例を見てみましょう。
コニカミノルタ:経営戦略としてのキャリア形成支援
電気機器メーカーのコニカミノルタは、「女性従業員のキャリア形成支援」に力を入れることで女性の活躍推進を図る中、早くから「えるぼし(3段階目)」の認定を受け、ダイバーシティ経営をリードしてきました。
取り組みのポイント:
ダイバーシティを高めることが企業の成長につながると考え、その一環として女性も活躍しやすい労働環境の整備を進めました。
コニカミノルタが活動を始めたのは2010年度です。特筆すべきは、フェーズを明確に分けた点です。まずは女性の「働きやすさ(制度整備)」に焦点をあてた施策を進めて土台固めを行った後、管理職への登用などにより女性の「働きがい(キャリア開発)」を高めるという、二段階のステップを踏みました。
具体的施策
女性向け:
キャリア開発研修やワークショップの開催。
上司向け:
上司に対しても説明会やワークショップを行い、双方向からの意識改革を実施。
経営戦略化:
2018年度には女性活躍推進を明確に経営戦略の1つと位置付け、初の女性執行役員も誕生しました。
株式会社リコー:ワークライフ・マネジメントの徹底
事務機器などのメーカーであるリコーは、「ワークライフ・バランスの推進」を進めることで女性が活躍しやすい職場環境の構築を目指しています。
取り組みのポイント:
社員がワークライフ・バランスを高めることのできる制度が充実し、育児や介護などの様々な事情を考慮しつつ社員一人一人が自律的に「ワークライフ・マネジメント」を行えるよう支援しています。
具体的施策
制度の充実:
「育児短時間勤務」や「看護休暇」に加え、月10日まで取得可能なリモートワーク制度、退職した元社員への再雇用制度など、柔軟な働き方を用意。
男性へのアプローチ:
女性だけでなく子育てを行う男性に向けたセミナーを行うことが特徴的で、社会の意識(性別役割分担意識)を変えていこうという意図が読み取れます。
数値目標:
女性管理職比率の向上に向けた意欲的な目標を掲げ、次世代リーダー育成のための研修も定期的に開催しています。
味の素株式会社:ASV経営と連動したダイバーシティ推進
食品大手の味の素は、事業を通じた社会課題解決(ASV:Ajinomoto Group Shared Value)の中核にダイバーシティを据え、「なでしこ銘柄」にも選定されています。
取り組みのポイント:
アンコンシャス・バイアス研修:
全社員を対象に無意識の偏見に関する研修を実施し、組織風土の変革を推進。
働き方改革:
所定労働時間の短縮や、午後4時半退社の推奨など、長時間労働の是正を徹底。これにより、限られた時間で成果を出す文化を醸成し、女性も男性も活躍できる基盤を作りました。
パイプライン構築:
「AjiPanna Academy」という女性人財育成プログラムを立ち上げ、若手から管理職候補まで段階的なキャリア支援を行っています。
建設業界の挑戦:橋本組・鹿島建設
男社会のイメージが強い建設業界でも、変化が起きています。
株式会社橋本組:
静岡県の建設会社でありながら、女性比率26%を実現し、「えるぼし認定(3段階目)」を取得。ライフステージに左右されない働き方を整備し、人材確保につなげています。
鹿島建設:
「鹿島たんぽぽ活動」として女性技術者が中心となり現場環境(トイレや更衣室など)の改善を実施。また、男性育休取得率100%を目標に掲げ、ペア休(上司と部下がペアでウェビナー受講)などのユニークな施策を展開しています。
まとめ
日経新聞が行ったSDGs経営調査によると、今回ご紹介したコニカミノルタとリコーの2社はSDGsに貢献する経営を行っている企業として非常に高い評価を得ています。女性の活躍を目指した取り組みを見ても、両社が積極的に働きやすい職場環境の構築をしようとしているのがわかるでしょう。
このように、女性の活躍を推進するためには様々な仕組みが必要となります。しかし、制度を作るだけでは不十分です。弊社ソフィアの調査が浮き彫りにしたように、戦略に対する従業員の共感を得るための「対話」や、管理職の「教育」、そして情報を透明化する「ツール」の活用が不可欠です。
- それぞれの持つ無意識のバイアスを認識する。
- 社内に男性に有利で女性に不利な制度や文化がないかチェックする。
- 男女にかかわらず仕事と家庭の両立がしやすい制度を構築する。
- キャリアアップについて考えることのできる機会を提供する。
- 長所をより活かすことのできる業務やポジションのリクエストができる柔軟な体制を築く。
これらを、多方面からの働きかけによって段階的に進めることによって、男女にかかわらず活躍することのできる企業へと変わっていくのです。すぐに大きな変化は生じなくても、地道な取り組みにより少しずつ確実に環境は変わっていくはずです。企業としてSDGsに貢献するためにも、女性活躍の推進を進めていきましょう。
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