SDGsが抱えている問題点とは 企業がSDGsに取り組む前に知っておきたいこと

2015年に国連で採択されたSDGsは、持続可能な社会を構築することを目指した17の開発目標です。世界中で注目を集め、国際機関や各国政府だけではなく、民間企業や個人などさまざまなセクターが取り組むべき目標として捉えられています。最近では、日本でも多くの企業がSDGsの取り組みを検討するようになりました。しかし、企業がSDGsを推進する中で、よく直面してしまう障壁もあります。SDGsに取り組む前に企業が知っておくべき勘所をお伝えします。

SDGsに取り組む企業が増えている

SDGsの前身に、2000年に国連で採択されたMDGs(ミレニアム開発目標)というものがあります。MDGsは発展途上国をターゲットとし、貧困の削減や初等教育の充実などを目指したもので、主に国や国際機関、NGOなどが注目する概念でした。
一方のSDGsは、自然環境の保全や労働環境の改善など、発展途上国だけでなく先進国や世界全体に関わるような課題の解決を目指しています。そのため、企業も社会の一員としてより良い未来の構築に貢献すべきという考えのもと、ビジネスに関連する目標も定められているのです。このような背景の中で、積極的にSDGsへの貢献を行う企業も増えてきました。
同時に、SDGsの認知度も大きく向上しています。2019年に行われた調査によると、日本企業の経営層の77%がSDGsを知っていて、多くの人が企業の取り組みに関心を抱いています。一般の従業員の間でも、2年前には8%程度だった認知度が現在は21%と倍以上になりました。SDGsを推進する企業が増えているほか、取り組みの内容を報告書やホームページなどで開示する動きも広がっています。
事業で社会に貢献することは、経営に良い影響を与えるだけでなく、企業ブランドの向上にもつながります。世界的に注目を集めるSDGsにコミットすることは、企業にさまざまなメリットがあるのです。

メリットばかりが語られやすいSDGs、取り組む企業が抱えがちな問題点とは?

SDGsに取り組むことによる企業のメリットは広く知られるようになってきた一方、SDGsに取り組む企業が抱えやすい問題点についてはなかなか語られることがありません。SDGsを進める中でどのような壁に直面するのかを見てみましょう。

自社の事業を通じてSDGsにコミットすることができない

一つめに、経営戦略とSDGsを結びつけることができないという課題があります。この背景にある原因は、SDGsの本質を理解しないまま単なる寄付活動やメセナ活動などの「社会貢献活動」と捉えている経営者が多いということです。SDGsへの取り組みは本来、事業とは別枠で行うのではなく、通常の事業活動の中で行っていくべきものです。
たとえば、自然環境を守るために植林活動をすることに決めたとしましょう。これだけでは、SDGsへの取り組みとしては不十分です。なぜなら本業とは別枠で植林活動をしたとしても、利益がなくなればその活動をやめてしまうでしょう。持続可能な活動にしなければ、SDGsにコミットした経営をしていることにはなりません。使っている原材料を環境配慮型のものに変更したり、サプライチェーンの見直しをしたりして、本業の活動そのものを自然環境に配慮した形にしなければいけないのです。
しかし、そうした取り組みを進めるとコストは増大し、短期的には利益が減少する可能性があります。業績にネガティブな影響を与えかねない取り組みを率先して行いたい企業は多くないのではないでしょうか。
しかし、環境配慮型のサプライチェーンを構築することは、すなわち持続可能なビジネスモデルを再構築することでもあります。そして、自社の取引先に新しい価値を提供することにもつながります。長期的な視野に立てばそれば必要な投資として自社に利益を生み出すでしょう。

社内でSDGsにコミットできない

会社としてSDGsの取り組みを打ち出しても、社内で合意形成ができないという問題もあります。理由の1つとして、前述したようにSDGsが単なる社会貢献活動事業と捉えられていて、事業とは関係ないという意識が社員の中にもある、ということが挙げられます。企業というのは利益の最大化を目指して活動する存在なので、短期的な利益に直結しない活動は組織にとっても二の次になってしまいがちです。
さらに、SDGsへの取り組みを進めるためにはコストや手間がかかります。たとえば一般的に、環境に配慮した材料を使った製造を進めるとコスト増に直結します。また、活動内容を開示するための報告書の作成など、新たな業務も発生するでしょう。積極的にSDGsに取り組んでいる大企業などでも、実際には経営層や関連部門の一部社員しかSDGsの本質を理解しておらず、その他の社員は自社の取り組み内容すら把握していない、ということも珍しくありません。

サプライチェーンを管理しきれない

より実務的な面では、サプライチェーンの中で、それぞれのパートナーがSDGsに準じているかどうかを管理しきれないという課題があります。サプライチェーンが複雑だったり関係会社への依存度が高かったりする企業では、すべてを把握するのが難しいと言えます。また、製造や管理を委託先に丸投げしている場合は、SDGsの理念に沿わない環境があったとしても、是正しにくい場合もあります。
サプライチェーンを管理するためには、アンケートなどを実施して定期的に監査することが重要です。運営やマネジメントの体制を把握しようとすることで、ある程度のリスクはコントロールできるようになるでしょう。対外的にSDGsへの賛同を公表しているのに、サプライチェーンの把握・管理が適切にできておらず、何らかの問題が指摘された場合、むしろ企業イメージの低下を招くことにもなりかねません。

企業がSDGsに取り組む前に認識すべきこと

以上の障壁を踏まえた上で、実際にSDGsの取り組みを始める前に、次のようなことを認識しておくのが大切です。

自社のビジョンを見直すことも視野に入れる

SDGsへの取り組みを内外にわかりやすく伝えるためには、自社の経営理念や企業ミッションをより社会的な視点でリデザインすることが必要になります。これは、近頃では「企業のパーパス」などと呼ばれています。SDGsに沿った経営は、現代における企業の当然の役割として社会から求められているものであり、その流れは今後も一層強くなっていくでしょう。

SDGsは経営戦略であり、CSR活動とは異なるものであることを知る

SDGsへの取り組みを開始するにあたっては、SDGsとCSRとの違いを整理することも重要です。「企業の社会的責任」という意味のCSRは、SDGsよりも以前から知られている概念でもあり、すでにCSRに対応するための部署などをもうけている企業もあるでしょう。CSRとSDGsは、どちらもより良い社会を目指す活動という面では共通しますが、少し異なる部分もあります。
CSRは、企業が消費者や従業員、地域社会といったステークホルダーから信頼を得るために行う「経営基盤」という意味ですので、その活動は管理が主体となります。一方でSDGsは、企業活動を通して経済的価値と社会的価値を共創するという考え方です。事業活動を通して全社員が一体となって取り組むべき経営戦略であるといえるでしょう。

社内の合意形成に時間がかかる

SDGs推進の活動指針を定めるためには、社内での合意形成にある程度の時間がかかることを織り込んでおく必要があります。SDGsというのは企業理念の中核に据えて企業戦略として取り組んでいくべきものでもあり、中長期かつ緻密な計画が必要だからです。
上から押し付けられただけの指針では、社員の合意形成は難しくなります。経営層が常に、従業員の共感できるようなブランド構築のストーリーを発信し続ける必要があります。
また、活動指針は初めに一度だけ合意できればよいというものでもありません。方向性は間違っていないか、社内の認識に問題はないかという観点から、継続的に情報共有や振り返りをする必要があります。コミュニケーションを取り続けることが大切です。

SDGsウォッシュを防ぐ必要がある

SDGsに取り組んでいるように見せかけているものの実態が伴っていないような状態を、SDGsウォッシュと言います。企業イメージを高めるために意図的にSDGsウォッシュが行われる場合もありますが、気を付けなければいけないのは、意図せずSDGsウォッシュをしている可能性もある、ということです。

たとえば、サプライチェーンの管理が適切でなければ、下請け企業で不適切な労働や環境に悪影響のある製造などが行われていても気が付くことができないかもしれません。このような場合、たとえ下請けでSDGsの理念にそぐわないビジネスが行われていたことを知らなかったとしても、SDGsウォッシュとして批判されてしまう恐れがあります。
意図的なSDGsウォッシュは論外ですが、これまでの商慣行などから無意識のうちにSDGsウォッシュをしてしまっている場合もあるので、注意が必要です。SDGsに対する正しい理解と、自社の活動全体の適切なマネジメントを行うことで、SDGsウォッシュを防ぐよう心掛けるのが大切です。

すでにSDGsに沿って経営している日本企業は多い

SDGsというのは2015年に採択された比較的新しい概念ですが、SDGsの根底にある考え方がまったく新しいものというわけではありません。たとえば日本には古くから、「売り手」「買い手」「世間」が共に満足する経営を目指す「三方よし」という精神があります。このようなメンタリティは、多くの日本企業に根付いているものです。
つまり、あらためてSDGsに自社の製品やサービスを紐づかせなくても、もうすでにSDGsに沿った経営がなされている場合があるのです。
1つ、例を見てみましょう。

総合化学メーカーの住友化学は以前から、「自社の発展のみでなく社会に貢献するような事業を行う」という理念のもとで事業を行っています。これは、まさしくSDGsの考え方の根底にあるものです。
この理念を具現化した取り組みとして、住友化学では、自社の技術を利用して製造した蚊帳をアフリカなどのマラリア流行地域に提供しています。マラリアは今でも多くの命を奪う病気ですが、貧困のせいで適切な予防策がとれていない地域も多くあります。そうした地域で、蚊帳を提供するだけでなく、現地の企業に無償で製造技術を提供して現地生産を進め雇用を生み出すなど、地域の発展につながる取り組みを行っているのです。
このように、自社技術を利用して社会課題の解決を目指す姿勢は、まさしくSDGsにつながる考え方です。そのため、すでに実践している自社の取り組みをSDGsの目標と結び付けて発信することで、SDGsへのコミットメントを対外的に示すことも可能なのです。

社内コミュニケーションの重要性

SDGsのための企業の行動変革の重要性を理解してもらうためには、社内コミュニケーションが欠かせません。
SDGsが企業にとって新たなビジネスチャンスにつながることや、企業の持続可能性に関わる重要課題であること、もはや取り組まないことがデメリットでしかないことなどを、企業内で発信し続けることが必要です。
企業におけるSDGsの導入指針については、「SDGsコンパス」によって示されています。

  1. SDGsを理解する
  2. 優先課題を決定する
  3. 目標を設定する
  4. 経営へ統合する
  5. 報告とコミュニケーションを行う

SDGsコンパスは、SDGsの社内理解の推進・浸透のステップが描かれています。
SDGsへの取り組みは、短期的に成果が出るものではありません。間断ないコミュニケーションを行い続けることで少しずつ浸透していくものだと理解し、進めていきましょう。

まとめ

この記事では、企業がSDGsの活動に参入するにあたってどのようなことが課題となるのかを見てきました。SDGsへの取り組みは社会貢献や企業の新しいビジネス創出などメリットとなる一方、その導入に失敗すれば経営に大きなダメージを与えます。それは、SDGsは企業の内部改革の問題ではなく、ステークホルダーからの評価につながるからです。SDGsへの理解を深めると同時に、どのような問題があるのかも把握し、取り組みを始めるためのヒントとするとよいでしょう。

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株式会社ソフィアサーキュラーデザイン

ソフィアサーキュラーデザイン代表取締役社長、サステナブル・ブランド・コンサルタント

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大手メーカー系コミュニケーション部門での責任者としての実績からデジタルマーケティング、インターナル広報、メディア編集など、企業のコミュニケーションに関わる戦略策定、実行支援をお手伝いします。

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