SDGs促進の鍵は社内浸透!企業価値を高める実践手法と成功事例【2025年版】
目次
近年、SDGs(持続可能な開発目標)への対応は、企業の社会的責任という枠を超え、経営戦略の中核を担う重要課題となっています。「SDGs促進」という言葉が飛び交う中で、多くの経営者や部門長が直面しているのは、「対外的なアピールはできているが、現場の実態が伴っていない」「従業員一人ひとりの行動変容につながらない」という深い悩みではないでしょうか。
実際に、世界的なESG投資の潮流やサプライチェーンからの要請により、SDGsへの取り組みは待ったなしの状況です。しかし、形だけの目標設定はかえって「SDGsウォッシュ」というリスクを招きかねません。真のSDGs促進とは、経営層のコミットメントと現場の納得感が両輪となって初めて加速するものです。
本レポートでは、SDGsの基礎知識から最新の達成状況、そして多くの企業が陥りがちな「社内浸透の壁」について、弊社ソフィアが2024年に実施した最新の「インターナルコミュニケーション実態調査」のエビデンスを交えながら深く掘り下げていきます。なぜ戦略が現場に響かないのか、その構造的な原因を解き明かし、リコーやオムロンといった先進企業の成功事例とともに、貴社の企業価値を飛躍的に高めるための具体的なロードマップをご紹介します。
SDGs促進とはどのような活動なのか
企業活動においてSDGsへの対応は必須
近年SDGsへの注目が集まり、企業活動においてもSDGsへの対応が必須と考えられるようになってきました。企業はどのようにSDGsに取り組めばいいのでしょうか。
かつては、環境保護や社会貢献活動といえば、企業の利益追求とは対立するもの、あるいは余裕のある企業が行う「ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)」の一環として捉えられがちでした。しかし、現代においてその認識は根本から覆されています。
気候変動によるサプライチェーンの寸断リスク、人権問題に端を発する不買運動、そしてESG投資の拡大による資金調達への影響など、サステナビリティ(持続可能性)を無視した経営は、企業の存続そのものを危うくする時代へと突入しています。投資家、消費者、そして就職活動を行う学生までもが、企業のSDGsへの姿勢を厳しい目で選別するようになりました。
では、企業は具体的にどのようにSDGsに取り組めばいいのでしょうか。単にSDGsのロゴをウェブサイトに貼ることではありません。企業活動におけるSDGsの位置づけを、歴史的な文脈から正しく理解し、経営戦略そのものに統合していくことが求められています。
企業活動におけるSDGsの位置づけを見ていきましょう。
CSRからCSV、そしてSDGsへ
企業活動におけるSDGsの位置づけを正しく理解するためには、まずCSRやCSVという考え方を知っておかなければいけません。CSRとは「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)」という意味で、企業は地域社会や自然環境などに対して責任がある、という概念です。
2010年、CSRの規格であるISO26000「社会的責任に関する手引き」が制定されました。これは、国連や国際機関などが連携して決めた国際標準の指標です。単に法令を遵守するだけでなく、環境や人権などの社会的問題についても企業は率先して取り組んでいくべきだ、との考え方が背後にあります。
ISO26000の具体的な内容を見てみると、「説明責任」や「倫理的行動」などの7つの責任原則の遵守と、「組織統治」を中核に「人権」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティへの参画」という7つの中核主題への取り組みが重視されています。法的拘束力はありませんが、国際社会共通の判断基準として、多国籍企業を始めとした多くの企業が注目するようになったのです。
しかしCSRは、企業の「責任」として受け身的な文脈で語られることの多いものでした。それを変えたのが、マイケル・ポーター氏により新たに提唱されたCSV(共有価値の創造、Creating Shared Value)です。寄付や社会貢献活動を通して本業とは別枠で行われるCSRとは異なり、事業を通して社会問題を解決していくべきだ、というのがCSVの基本的な考え方です。
たとえば、メーカーが省エネ製品を開発して二酸化炭素の削減に取り組んだり、リサイクルしやすい家電等を製造して実際にリサイクルの流れを生み出すプログラムを策定したりすることが、CSVへの取り組みに当てはまります。ビジネスの一環として社会課題に取り組むという意味で、「守りのCSR」に対して「攻めのCSV」と表現されることもあるのです。
このようなCSRやCSVの考え方を盛り込みつつ、2015年に採択されたのがSDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)です。国連で全加盟国の賛同を得た国際社会共通の目標で、より良い社会を実現するために2030年までに人々が取り組むべき事柄が示されています。SDGsは「貧困」や「経済成長と雇用」、「気候変動」など17の分野にわたり、国際機関や各国政府、そして企業など、様々なアクターが現在これらの目標に取り組んでいるのです。
CSR(企業の社会的責任)の時代
CSRとは「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)」という意味で、企業は地域社会や自然環境などに対して責任がある、という概念です。
2010年、CSRの規格であるISO26000「社会的責任に関する手引き」が制定されました。これは、国連や国際機関などが連携して決めた国際標準の指標です。単に法令を遵守するだけでなく、環境や人権などの社会的問題についても企業は率先して取り組んでいくべきだ、との考え方が背後にあります。
ISO26000の具体的な内容を見てみると、「説明責任」や「倫理的行動」などの7つの責任原則の遵守と、「組織統治」を中核に「人権」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティへの参画」という7つの中核主題への取り組みが重視されています。法的拘束力はありませんが、国際社会共通の判断基準として、多国籍企業を始めとした多くの企業が注目するようになったのです。
しかしCSRは、企業の「責任」として受け身的な文脈で語られることの多いものでした。「利益の一部を社会に還元する」という発想に基づき、寄付活動や地域の清掃ボランティア、文化芸術支援(メセナ)などが中心となりがちでした。これらは素晴らしい活動ではありますが、本業のビジネスプロセスとは切り離された活動になりやすく、景気が悪化すると真っ先に予算が削減される対象でもありました。「守りのCSR」とも呼ばれる所以です。
CSV(共有価値の創造)への進化
それを変えたのが、ハーバード大学のマイケル・ポーター氏らにより新たに提唱されたCSV(共有価値の創造、Creating Shared Value)です。
寄付や社会貢献活動を通して本業とは別枠で行われるCSRとは異なり、事業を通して社会問題を解決していくべきだ、というのがCSVの基本的な考え方です。CSVの革新的な点は、「社会課題の解決」と「企業の利益創出」をトレードオフ(二律背反)の関係ではなく、両立可能なものとして定義したことにあります。
たとえば、メーカーが省エネ製品を開発して二酸化炭素の削減に取り組んだり、リサイクルしやすい家電等を製造して実際にリサイクルの流れを生み出すプログラムを策定したりすることが、CSVへの取り組みに当てはまります。
具体的には、食品メーカーが途上国の農家に対し、品質向上のための技術指導を行うことで、農家の収入安定(社会価値)と、高品質な原材料の安定調達(経済価値)を同時に実現するケースなどが典型例です。ビジネスの一環として社会課題に取り組むという意味で、「守りのCSR」に対して「攻めのCSV」と表現されることもあります。
SDGsによる統合とグローバル化
このようなCSRやCSVの考え方を盛り込みつつ、2015年に採択されたのがSDGs(持続可能な開発目標、Sustainable Development Goals)です。
国連で全加盟国の賛同を得た国際社会共通の目標で、より良い社会を実現するために2030年までに人々が取り組むべき事柄が示されています。SDGsは「貧困」や「経済成長と雇用」、「気候変動」など17の分野にわたり、国際機関や各国政府、そして企業など、様々なアクターが現在これらの目標に取り組んでいるのです。
SDGsは、CSVのように「本業を通じた解決」を強く求めつつ、CSRのように「誰も取り残さない(Leave No One Behind)」という強い倫理観も併せ持つ、現代経営の羅針盤です。企業にとっては、世界共通の言語であるSDGsを枠組みとして使うことで、自社の活動がグローバルな課題解決にどう貢献しているかを説明しやすくなり、ステークホルダーとの対話を促進する強力なツールとなります。
SDGsを経営に導入するとはどういうことか
世界的に注目されているSDGsは、企業活動においても重要な指標となります。では、SDGsを経営に導入するとは、具体的にはどのようなことなのでしょうか。単にスローガンを掲げることではありません。経営の意思決定プロセスそのものに、サステナビリティの視点を組み込むことを意味します。
SDGsの経営への導入の過程を、2つに大別して考えてみましょう。
1. 経営のイニシアティブとしてのSDGs(マテリアリティの特定)
SDGsの17の分野の中には、企業が掲げているビジョンとの整合性が高いものがあるはずです。そうした分野に焦点をあて、経営の方針としてSDGsを指標にすることで、SDGsを経営に導入することができます。平たく言うと、企業理念を実現するための指標としてSDGsへのコミットメントを表明する、ということです。
これは一般的に「マテリアリティ(重要課題)の特定」と呼ばれるプロセスです。自社の事業領域、強み、そしてステークホルダーからの期待を分析し、「当社はSDGsのどのゴール達成に貢献することで、社会に価値を提供するのか」を定義します。
例えば、食品会社であれば「飢餓をゼロに(目標2)」や「つくる責任 つかう責任(目標12)」が中核となるでしょうし、IT企業であれば「産業と技術革新の基盤をつくろう(目標9)」が中心になるかもしれません。重要なのは、17の目標すべてに総花的に取り組むのではなく、自社の強みが最も活きる領域にリソースを集中させることです。
2. 現場への落とし込みとイノベーション
組織の方針としてSDGsへのコミットメントを表明したら、次により実務的な視点でSDGsへの取り組みを検討する必要があります。全社一丸となってSDGsに取り組むためには、従業員の間での理解を深めなければいけません。本当の意味でSDGsを経営に取り入れるためには、現場における具体的業務に落とし込むことが大切だからです。
CSVやSDGsの考え方を事業活動や業務に反映させることで、新たな価値の創造を進める必要があるのです。
具体的には、以下のようなアクションが求められます。
- 調達:原材料の調達先が環境破壊や人権侵害をしていないかチェックする(サプライチェーン管理)。
- 開発:環境負荷の低い素材への切り替えや、社会課題を解決する新製品の開発。
- 販売:エシカル消費を促すマーケティングや、製品寿命を延ばすアフターサービスの強化。
- 人事:多様な人材が活躍できる制度設計(ジェンダー平等、障がい者雇用)。
しかし、SDGsを経営に導入するためには高いハードルがあります。社会や環境へ配慮するSDGsの価値観を具体的な取り組みに落とし込む過程では、金銭的・時間的なコストが発生することもあり、現場からの抵抗や組織内での反発が生まれやすいからです。
あなたの職場でも「売上目標の達成で手一杯なのに、そんな余裕はない」「コストアップになる提案は顧客に受け入れられない」といった声を耳にしたことはありませんか?こうした現場の声は、多くの企業で聞かれる切実な課題です。こうしたハードルを乗り越えてSDGsを導入し、事業の変革を達成することで、社会課題の解決につながったりイノベーションが生まれたりするのです。
世界と日本のSDGs達成状況
ここまでSDGsの基本的な考え方と経営への導入について解説してきました。では、実際にSDGs促進戦略を立案する上で、現在地を正確に把握することは不可欠です。世界各国がどのような取り組みを行い、日本がどの分野で遅れをとっているのかを、客観的なデータに基づいて分析していきましょう。
SDGs各国のこれまでの取り組み
世界各国が注目しているSDGsですが、どのような取り組みがあり、どのような分野で特に実現が進んでいるのかを確認してみましょう。
世界の動向
まずは、世界の動向を見てみましょう。SDGsの達成状況については毎年、国や分野ごとに報告書が作成されています。報告書によると、国によって取り組みの進展状況に大きな違いがあるほか、17の分野ごとにも達成状況が異なっていることがわかります。
進展が見られる分野としては、たとえば、目標2「貧困をなくそう(※元記事の表記ママですが、正確には目標1が貧困、目標2は飢餓です)」や目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」などの分野は、急速に取り組みが進んでいることが報告されています。極度の貧困状態で暮らす人々の割合は大きく減少し、インターネット環境や交通インフラの整備も世界的に進むなど、人々の暮らしは少しずつですが改善してきているのです。
一方で、あまり進展が見られない分野もあります。たとえば、目標2「飢餓をゼロに」について、報告書によると食料不安を抱える人口の割合は近年むしろ増加しているようです。昨今の気候変動や感染症拡大などの影響で、食料の供給には新たな脅威が生じていることも指摘されています。目標15「陸の豊かさも守ろう」についても、現在多くの生物が絶滅を危惧されているばかりでなく、森林面積が毎年急速に縮小するなど、状況が改善しているとは言えません。
SDGsは17の目標と169のターゲットで幅広い分野を網羅しているため、その達成状況は分野ごとに異なっているのです。
北欧諸国の先進的な取り組み
次に、世界のSDGs達成上位国がどのような取り組みを進めているのかも簡単に確認してみましょう。SDGsへの取り組みが特に高く評価されているのは北欧の国々で、達成状況の上位には毎年、北欧やヨーロッパの国が並んでいます。
デンマークは、2019年に達成度ランキングで1位に選ばれました。デンマークのユニークな取り組みとして、SDGsの17の目標をすべて達成することのできるビレッジを建設するプロジェクトが進められています。これは、人々が快適に暮らすことのできる環境と持続可能性を両立しようとするほかに例のない意欲的な取り組みとして、世界中から注目を集めています。
同じく北欧のフィンランドも例年トップ3に位置していますが、フィンランドでは情報発信に力を入れています。首都ヘルシンキの観光情報サイトではサステイナビリティに関する情報がまとめられていて、市民や観光客が情報を得やすい環境が整備されているのです。行政が主体となってSDGsを啓蒙することで、人々の意識向上に寄与していると言えます。
これらの国々に共通するのは、SDGsを単なる「環境規制」として捉えるのではなく、「新しい生活様式」や「ビジネスチャンス」として前向きに社会実装している点です。
日本の動向
では、日本ではどのような動向が見られるのでしょうか。2020年のランキングで17位の日本は、アジア圏では最高順位の評価を受けています。(※補足:最新の『Sustainable Development Report 2024』においても、日本は世界18位となっており、アジアの中では引き続き高い位置を維持していますが、欧州諸国との差は依然として開いています。)
日本の強み(評価されている分野)として、日本が特に評価されているのは、目標4「質の高い教育をみんなに」と目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」です。初等教育が100%かつ進学率も高いことや、全般的な科学技術の水準のおかげで、例年良い評価を受けている分野です。高品質なインフラ、特許出願数、研究開発費の対GDP比率などは世界トップレベルであり、これらは日本企業がSDGs促進に取り組む際の強力な基盤となります。
一方で、深刻な課題として指摘され続けている分野があります。
1つ目は、ジェンダー平等(目標5)です。社会的な男女平等についてはあまり評価されていません。たとえば、経営層や国会における女性の比率の低さや男女の賃金格差など、日本国内でもたびたび問題提起されている事柄がSDGsの文脈でも指摘を受け、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」についてはさらなる努力が求められています。これは企業の意思決定の多様性を阻害し、イノベーション創出の妨げにもなっています。
2つ目は、環境・気候変動対策(目標12, 13, 14, 15)です。目標12「つくる責任 つかう責任」や目標13「気候変動に具体的な対策を」といった自然環境に関わる分野でも、比較的低い評価にとどまっている項目が複数あります。省エネなどの技術力自体は高水準を誇っているものの、環境配慮が社会に浸透しきっていない実態があったり、火力発電が多く二酸化炭素の排出量も削減できていなかったりと、今後ますますの取り組みが必要とされているのです。特に、プラスチック廃棄物の輸出や、サプライチェーンを通じた環境負荷(輸入品に含まれるCO2など)も課題視されています。
3つ目は、パートナーシップ(目標17)です。目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」についても、目標の達成にはまだ時間がかかりそうです。企業の透明性や税の効率性などを表す金融秘密度指標が低いことや、途上国に対する政府開発援助などの支援が充分ではないことなどが指摘されているほか、行政と民間に隔たりがあることも影響しているようです。
今後SDGsに取り組む際は、このような面を特に重視しながら活動することが大切でしょう。視点を変えれば、日本が苦手とするこれらの分野こそ、解決策を提示できれば大きな社会的インパクトとビジネスチャンスを生む「ブルーオーシャン」になり得るからです。
企業がSDGs促進に取り組むメリット
ここまで世界と日本のSDGs達成状況を見てきました。では、企業がSDGs促進に取り組むことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。SDGsへの取り組みを「コスト」と捉えるか、「投資」と捉えるかで、企業の未来は大きく変わります。多くの先行企業が実感しているメリットは、大きく以下の4点に集約されます。
1. 企業イメージとブランド価値の向上
SDGsへの取り組みは、ステークホルダーからの信頼獲得に直結します。消費者、特にZ世代やミレニアル世代は、商品の機能や価格だけでなく、「その企業が倫理的か」「環境に配慮しているか」を購入基準にする「エシカル消費」の傾向が強まっています。SDGsへの貢献を明確に打ち出すことで、競合他社との差別化を図り、選ばれるブランドになることができます。また、不祥事などのリスクに対するレジリエンス(回復力)も高まります。
2. 優秀な人材の確保と定着(エンゲージメント向上)
労働人口が減少する日本において、人材確保は経営の最優先課題です。求職者は「社会に貢献できる仕事か」「将来性のある企業か」を重視しています。SDGsに積極的な企業は、働く意義(パーパス)が明確であり、優秀な人材を引きつけやすくなります。また、既存社員にとっても、自社の活動が社会貢献につながっているという実感は、働きがい(エンゲージメント)を高め、離職率の低下に寄与します。
3. 新たなビジネス機会の創出
社会課題の解決は、巨大な潜在市場の開拓を意味します。国連開発計画(UNDP)は、SDGs達成に向けた取り組みが年間12兆ドル(約1,300兆円)以上の市場機会を生み出すと試算しています。例えば、高齢化社会に向けたヘルスケア事業や、脱炭素社会に向けた新エネルギー事業など、SDGsの各目標はそのままビジネスの種(シーズ)となります。大手企業との取引においても、サプライチェーン全体でのサステナビリティ対応が要件化されており、これに対応することで新たなパートナーシップが生まれる可能性があります。
4. 資金調達の円滑化(ESG投資)
金融市場では、財務情報だけでなく、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の要素を考慮して投資先を選定する「ESG投資」が拡大しています。SDGsへの取り組みはESG評価に直結し、株価の向上や有利な条件での資金調達(グリーンボンドの発行など)につながります。逆に言えば、SDGsに取り組まない企業は、投資対象から外される(ダイベストメント)リスクに直面することになります。

SDGsの必要性とは?経営に不可欠な理由と社内浸透の具体策 【2025年版】
企業がSDGsに取り組む必要性を、最新の市場動向や法規制(SSBJ/CSDDD)から徹底解説。経営戦略への統合と、課題とな…
SDGs促進における課題「SDGsウォッシュ」とは
多くのメリットがある一方で、取り組みを進める企業が陥りやすい罠があります。それが「SDGsウォッシュ」です。
SDGs経営ウォッシュが起こっている
SDGsを意識した経営を進めることの重要性について、疑問を差し挟む余地はありません。SDGsは国際機関や政府だけでなく、企業にとっても無視のできない存在です。ただし、企業がSDGsへの取り組みを進める際に気をつけなければいけないことがあります。SDGsウォッシュです。
SDGsウォッシュとは、SDGsに賛同しているように見せかけておきながら、実際には具体的な取り組みを行えていないような状況を指します。英語の「Whitewash(ごまかす、うわべを取り繕う)」と「SDGs」を掛け合わせた造語です。なぜそのような状況が生じてしまうのか、理由を考えてみましょう。
① 広報戦略先行による「見せかけ」
企業は、幅広い層から関心の高いSDGsを対外的なアピールとして利用することがあります。SDGsに取り組んでいるという情報を発信することで、自社のイメージアップにもつながるからです。中には、広報戦略の一環としてSDGsへの賛同を打ち出しはするものの実際には達成することにそれほど関心を抱いていない、という経営層もいます。このようなケースでは、SDGsの取り組みが形式的な目標に留まってしまいます。対外的に打ち出す目標と内部の実態との間に乖離が生じ、いわばダブルスタンダードができてしまうのです。これでは、組織としてコミットメントができているとは言えません。
② 現場への落とし込み不足による「空回り」
また、積極的にSDGsに取り組もうとしていても、従業員レベルにまでその理念が落とし込めていないような企業もあります。これは、経営層にコミットをする意志はあるものの、組織として具体的な変化を起こせてはいないようなケースです。SDGsの考え方に沿って社内や事業の改革を進めようとしても、現場レベルにまで浸透する形で方針としての共有ができていないのです。中にはSDGsがCSRのように慈善活動に近いものだと誤解している従業員もいる可能性がありますが、事業とは関係のないことだと誤解されてしまうと現場からの協力を得ることができなくなってしまいます。それを防ぐため、経営層は組織としての具体的なビジョンを示すことで従業員の理解を得、全社としての共感を広げなければいけません。現場への落とし込みというのは非常に難しい点ではありますが、戦略の策定や共有に失敗して結果的にSDGsへの取り組みが口先だけになると、具体的な活動を伴わないSDGsウォッシュになってしまうのです。
社内浸透が進まない最大の原因
SDGsウォッシュを避け、真の推進を図るためには「社内浸透」が不可欠です。しかし、多くの企業で経営層の想いが現場に届いていないのが実情です。その原因はどこにあるのでしょうか。
データで見る「社内コミュニケーション」の深刻な実態
弊社ソフィアが2024年に実施した「インターナルコミュニケーション実態調査」では、日本企業における組織内コミュニケーションの深刻な現状が浮き彫りになりました。この調査結果から、社内浸透を阻む構造的な要因が見えてきます。
1. 会社の戦略に共感しているのはわずか「1割」
調査結果によると、会社の戦略やビジョンに対して「共感している」と回答した従業員は、わずか1割程度にとどまりました。経営層がどれほど高尚なSDGs目標や中期経営計画を掲げても、9割の社員にとっては「他人事」であり、日々の業務と結びついていないのが現実です。「また上が何か新しいことを始めた」という冷めた空気が、現場を支配している可能性があります。
2. 「縦割り」と「多層化」による情報の断絶
また、組織の多層化や部門間の「縦割り」構造が、情報の流通を阻害しています。調査では、経営層からのメッセージが中間管理職で止まってしまい、現場まで正確な熱量で届いていない「情報の目詰まり」が多くの企業で課題として挙げられました。さらに、テレワークの普及により、対面でのインフォーマルなコミュニケーションが減少し、心理的な距離(エンゲージメントの低下)も拡大しています。
3. 施策の実施自体が目的化している
多くの企業が社内報やイントラネット、タウンホールミーティングなどの施策を行っていますが、それが「実施すること」自体が目的化しており、従業員の行動変容や理解促進といった「効果」につながっていないというギャップも明らかになっています。
例えば、「1on1ミーティング」は多くの企業で導入されていますが、調査では「最も実施されている施策」であると同時に、「効果がない施策」の上位にも挙げられています。形式だけの対話では、SDGsの理念など伝わるはずもありません。
まとめると、この調査結果が示唆するのは、「SDGs促進の成否は、戦略の良し悪し以前に、それを伝えるインターナルコミュニケーションの質にかかっている」という事実です。
SDGsを社内に浸透させるための具体的な方法は何ですか?
では、この課題を克服し、SDGsを真に社内に浸透させるにはどうすればよいのでしょうか。トップダウンとボトムアップを融合させた、実効性の高い具体的なステップを解説します。
STEP 1: 経営層による「本気」のコミットメントと翻訳
まずは経営トップが、「なぜ当社がSDGsに取り組むのか」を自らの言葉で語ることが出発点です。しかし、国連の定義をそのままなぞるだけでは不十分です。
「翻訳」の重要性:「貧困をなくそう」という目標を、自社のビジネス(例:安価で栄養価の高い食品の提供、途上国での雇用創出など)に置き換え、従業員が「自分たちの仕事が世界につながっている」と腹落ちできるストーリーにする必要があります。
STEP 2: インターナルコミュニケーションの再設計
弊社ソフィアの調査でも指摘された「情報の目詰まり」を解消するためには、情報伝達ルートの整備が必要です。
双方向性の確保:一方的な社内報や通達だけでなく、従業員が意見を言える場(タウンホールミーティングや社内SNS)を設けます。
ミドルマネジメントの巻き込み:現場への影響力が最も大きいのは直属の上司です。部課長層向けの研修を集中的に行い、彼らが自分の言葉で部下にSDGsを語れるように支援します。
STEP 3: 「自分ごと化」を促す体験型プログラムの導入
座学の研修だけでは意識は変わりません。ゲームやワークショップを通じて、体感的に理解するアプローチが有効です。競合他社も提供しているような「SDGsビジネスゲーム」やカードゲームは、楽しみながら「経済・環境・社会」のつながりを学べるため、導入研修として非常に効果的です。
また、「自社の業務のどこがSDGsにつながっているか」をチームで話し合う「SDGsマッピング」のようなワークショップを開催し、日常業務とSDGsの接点を見つけさせることも重要です。
STEP 4: 評価制度への組み込み(仕組み化)
精神論だけでなく、仕組みで行動を促します。後述するオムロンの事例のように、役員の業績評価や従業員の人事評価に「サステナビリティ貢献度」を組み込むことで、組織全体の本気度が可視化され、実行力が担保されます。
5つの要素で整理する「浸透」のチェックリスト
- 「知る(認知)」:社内報、ポスター、イントラネットでの継続発信
- 「理解する」:eラーニング、階層別研修、講演会の実施
- 「共感する」:社長との対話集会、成功事例のストーリー共有
- 「行動する」:業務目標への組み込み、SDGsアワード(社内表彰)
- 「定着する」:人事評価制度への反映、採用基準への統合
SDGs促進に成功している企業事例
ここまで社内浸透の方法について解説してきました。では、実際に企業がSDGsに取り組むのは難しい面もありますが、取り組みを進めて成果を上げている企業も日本には数多くあります。その事例を見ていきましょう。
リコー
リコーグループは、SDGsにコミットすることを打ち出して実際に様々な分野で取り組みを行っています。中でも高く評価されているのが、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」への取り組みです。仕事と生活が両立できるよう支援し、社内の環境や制度を整えることで、多様な人材が活躍できる風土を築いているのです。
実際に様々な制度が設けられていて、育児休業や時短勤務、在宅勤務などが従業員のニーズに合わせて使えるようになっています。またそれだけではなく、制度利用者の経験談を共有したり、職場での理解を促進する研修を行ったりすることで、仕組みを形骸化させない工夫をしているのです。こうした取り組みの結果、男女ともに育休などの利用率は非常に高くなっていて、平均勤続年数については女性が男性を上回っているほどです。
さらに、現状維持で満足するのではなく、女性管理職の割合を引き上げるべく研修やネットワーク構築の支援などのプログラムを用意するなど、女性のさらなる活躍を推進する取り組みを進めています。このような活動が評価され、リコーは女性の活躍推進する企業に与えられる「えるぼし」企業の最も高いランクの認定を受けています。
セブン&アイ・ホールディングス
大手コンビニのセブン・イレブンなどを傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスも、SDGsに積極的に取り組んでいる企業の1つです。中でも環境配慮型の取り組みを進めることで、事業の特徴を活かしながら成果を出しています。
全国におよそ2万店舗が展開されているセブン・イレブンは、従来から商品の製造や流通過程で多くのエネルギーを消費したり廃棄物を出したりしていました。そこで、事業活動の中で消費するエネルギーを削減すべく、環境配慮型の車両を取り入れたり、店舗への太陽光発電パネルの設置を行ったりしているのです。また、ペットボトル回収機の設置や環境配慮型の包装容器への変更など、人々の倫理的な消費行動(エシカル消費)をサポートするような活動を行っています。
これらは目標12「つくる責任 つかう責任」や目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」など、自然環境に関する複数の分野に横断した活動と言えるでしょう。事業規模が大きいため、社会的にも大きなインパクトを残しうるのです。
未来電力
電力会社の未来電力は、クリーンエネルギーの利用によるCO2の削減により目標13「気候変動に具体的な対策を」など複数の分野にコミットしています。
特徴的なのは、未来電力の取り組みが単なる環境配慮型のプロジェクトには留まらないことでしょう。クリーンエネルギーとしてバイオガス発電を進める大分県宇佐市で、地方の雇用創出に貢献したり地元企業との連携を深めたりして、SDGsに分野横断的にコミットしているのです。また、再生エネルギーに関する環境教育プログラムを提供して学びの場を創出し、人々の啓蒙にも力を入れています。
1つのプロジェクトを中心に様々な目標にコミットするケースとして、参考になるのではないでしょうか。
SOMPOホールディングス
SOMPOホールディングスは、グループのビジョンに基づいて「防災・減災」「健康・福祉」「地球環境」「地域社会」「ダイバーシティ」の5つを重点課題としてSDGsに取り組んでいます。中でも注目すべき点は、様々な活動にパートナーシップが重要であることを認識して、すべての取り組みで目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に焦点をあてていることです。
たとえばインドネシアでは、交通事故による死者数を減らすことを目指して、現地の行政やNGOと協働しながら交通インフラの整備や交通安全教育の推進などを行っています。また防災活動の一環として、介護法人などに社員を派遣して知見を共有したり交流を深めたりしているほか、自治体と連携して首都直下型地震を想定した保険の開発を行うなど、様々な活動でパートナーシップを重視しています。
こうした活動や人材活用、環境への取り組みなどが高く評価され、SOMPOホールディングスはESGを重視する企業の1位にも選ばれているのです。
オムロン
オムロンは、10年間の長期ビジョンである「Value Generation 2020(VG2020)」の中で、「質量兼備の地球価値創造企業」を目指すことを公表しました。全社の方針として「技術の進化を起点に、イノベーションを創造し、自走的成長を実現」を掲げ、技術革新で自社のコア技術を進化させ、社会的課題を解決することに取り組んでいます。
2017年からは、ビジョンの達成に向けた最終の中期経営計画の推進がはじまりました。社会的な課題解決と事業成長を結びつけ、「ファクトリーオートメーション」「ヘルスケア」「ソーシャルソリューション」に注力していきました。
オムロンがSDGsの推進において評価されている特に理由として、役員報酬制度における中長期業績連動報酬の評価項目にサステナビリティ評価を組み込んでいることが挙げられます。サステナビリティ評価とは、企業を経済・環境・社会の3つの側面で統合的に評価・選定するESGインデックスのことで、投資家と企業の間で、SDGsへの貢献度などの非財務情報の開示が強く求められるようになっている背景が伺えます。
まとめ
世界的にSDGsが注目される中、日本もSDGsの達成に向けて取り組みを進めています。これは企業にとっても他人事ではなく、経営にSDGsの視点を取り入れることは現在の社会では必須とも言えるでしょう。
しかし、本記事で繰り返し触れたように、立派な目標を掲げるだけでは不十分です。見せかけだけで実態が伴っていない「SDGsウォッシュ」にならないよう注意しなければいけません。すでにSDGsへの取り組みで評価を受けている企業の例も参考にしながら、どのような分野で活動を進めるべきかを考えてみるとよいでしょう。特に、日本での取り組みが遅れているとされている分野に注目してみるのも1つの鍵になります。
SDGsへの対応戦略は企業によって様々なので、自社に合う方法の検討を始めてみてはいかがでしょうか。
特に、弊社ソフィアの調査で明らかになったように、戦略の社内浸透には「対話」と「共感」が不可欠です。一方的な発信ではなく、従業員一人ひとりが自分の業務の意味を再発見できるようなコミュニケーション設計こそが、持続可能な企業成長への近道となるはずです。


