SDGsへの取り組みを加速するための研修方法とは 実施のメリットをご紹介
最終更新日:2026.02.17
目次
「持続可能な開発目標」を意味するSDGsは、国内の企業でも取り組みが始まっています。ビジネスを通して社会を成長させる戦略を考えることは、今や経営課題の1つといえるでしょう。しかし、現場からは「なぜ今SDGsなのか」「業務との関連が見えない」といった声も聞かれないでしょうか。
SDGsのように壮大な取り組みは一朝一夕で行えるものではなく、社員一人ひとりへの浸透のために働きかけが必要です。特に近年、人的資本経営やSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の文脈において、企業の求心力が問われています。弊社ソフィアの調査(2024年)によれば、企業の戦略に対して共感している社員はわずか1割にとどまるという衝撃的なデータが出ており、経営と現場の「意識の乖離」が深刻化しています。
この記事ではSDGsの導入を考えるマネジメント層に対して、研修の重要性や具体的な研修方法についてご紹介します。単なる知識付与ではなく、組織のコミュニケーション不全を解消し、全社一丸となって推進するための戦略的な研修アプローチを紐解いていきます。
SDGsに取り組む前に研修を
国内大手企業に限らず、多くの企業がSDGsと経営の統合をはじめています。そんな中、「自社にも早くSDGsを導入したい」と考える企業のマネジメント層も多いことでしょう。
しかし、SDGsの本質や企業が導入することのメリットを、自社なりに咀嚼しなければ、なかなか社内への浸透や社員に理解納得を得ることは難しいといえます。社内への理解を促進するために、研修は欠かせません。
多くの企業が陥りがちなのが、トップダウンで「SDGs推進」を掲げたものの、現場がその意図を理解できず、形式的な活動に終始してしまうケースです。特に、SDGsは範囲が広く抽象度が高いため、個人の業務レベルまで落とし込むには、共通言語を持つための「学習の場」が必須となります。研修は、この共通言語を形成し、組織のベクトルを合わせるための最初のステップといえるでしょう。
現代企業におけるSDGs研修の緊急性
2024年から2025年にかけて、企業を取り巻く環境は「SDGsへの賛同」から「実質的な変革(SX)」へとフェーズが移行しています。経済産業省が提唱する「SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」は、企業の稼ぐ力とESGの両立を求めています。
この変革期において、従業員がSDGsを理解していないことは、単なる知識不足にとどまらず、経営リスクそのものです。投資家や取引先からの評価基準として非財務情報が重視される中、社員一人ひとりが自社のサステナビリティ方針を語れる状態を作ることが急務となっています。
SDGs研修に取り組むべき理由
企業としてSDGsに対し取り組むためには、社員がSDGsに取り組むことで得られるメリットについて、しっかりと理解する必要があります。
そのために効果的なのが、SDGsを「自分ごと」として捉えるためのSDGs研修です。
企業がSDGsに取り組むことは、社会貢献やブランディングのためだけではありません。SDGsに取り組むこと自体がビジネスチャンスとなり得る時代であり、逆に考えると、SDGsを意識しない企業は淘汰されていきます。
社会が機能しなければ、そもそも企業の成功はあり得ません。SDGsを達成するために企業が取り組みを行うことは、事業を成功させる「基盤」を整えることにつながるのです。
ビジネスチャンスの拡大と市場競争力
たとえばSDGsの取り組みの一環では、「世界中の貧困層を救済する」というものがあります。国内市場を狙う企業にとっては、海外の貧困層を救済しても自社に対するメリットは感じないかもしれません。
しかし、企業として世界中の貧困層を救済する取り組みをしていることを国内外へアピールすることができれば、企業の認知が広がりますし、結果的に市場の拡大へとつながり、新たなビジネスチャンスとなります。これからの消費者は、特にZ世代やミレニアル世代を中心に、企業の社会的姿勢を購買基準にする傾向が強まっています。SDGsへの取り組みは、これらの新しい市場層へのアプローチとしても有効です。
人材育成と未来への投資
SDGs研修を行うことで「人材育成」に繋がるだけでなく、SDGsという壮大な取り組みと自身を取り巻く環境のつながりについて意識するきっかけとなり、将来的に自社を成長させる人材が生まれる可能性もあります。このように、未来への「つながり」を育てていくことがSDGsの取り組みのベースとなっているのです。
参考:SDGs Compass
特に若手社員の定着(リテンション)において、企業のパーパス(存在意義)と個人の価値観の合致は重要な要素です。「この会社で働くことが社会貢献につながる」という実感は、エンゲージメントを高め、離職防止にも寄与します。
ステークホルダーとの信頼構築
また、企業がSDGsを意識した優先課題や目標を持つことで、より多くのステークホルダーと信頼関係を強化させられます。
世界中の投資家は「ESG投資」を重視しています。環境(environment)・社会(social)・企業統治(governance)の取り組みに配慮する企業に優先的に投資を行うESG投資を行う今の時代では、SDGsの取り組みそのものが評価される時代となっています。
企業活動との混同を防ぐ
さらに、SDGs研修を行うことで、SDGsの活動と混同されやすい下記のような企業活動との違いを周知する効果があります。
企業のCSR活動とSDGs
SDGsと似ている取り組みとして企業のCSR活動がありますが、この2つは似て非なるものです。「社会的責任」を意味するCSR活動は慈善活動の範疇を超えず、企業が消費者や株主から信頼を得るための、いわばブランディング活動ともいえます。
対してSDGsは社会を成長させる取り組みであり、ビジネスそのものを通して社会を良くしていくものです。
この違いを明確に理解していないと、現場は「またボランティア活動をやらされるのか」という誤解を持ち、本業とのシナジーを生む機会を逃してしまいます。
ISOとSDGs
国際標準化機構(ISO)にはさまざまな規格がありますが、SDGsが意識される前から共通する取り組みが行われています。
ISO14001は「環境マネジメントシステム-要求事項及び利用の手引き」を指しており、地球環境問題を鑑みた環境保全を目的とした規格が定められています。また、組織の社会的責任に関する国際規格であるISO26000は、2010年から取り組みが始まっています。ISO担当者向けにSDGs研修が行われることがありますが、SDGsとISOは全く視点が異なります。しかし、SDGs担当者とISO担当者が連携し、SDGsへの取り組みを加速させることについては、効果的であると言えます。
SDGs研修を実施することのメリット
社員がSDGsの研修に参加すると、以下のようなメリットを得られます。
- 自社のビジョンとSDGsの関係性
- 将来のビジネスチャンスを見極めることができる
- 「SDGsウォッシュ」を回避できる
壮大な計画であるSDGsですから、社員一人ひとりが理解を深めることも簡単ではありません。研修を通してSDGsの理解が深まれば、企業の取り組みに納得して将来目指しているビジネスチャンスを理解してくれるでしょう。
「SDGsウォッシュ」を回避できる
しかしSDGsへの理解が浅い状態では、「SDGsウォッシュ」が起こりかねません。うわべだけのビジョンになってしまうと、企業内だけでなく、社外からの評価が下がるリスクがあります。
SDGsウォッシュとは、実態が伴っていないのにSDGsに取り組んでいるように見せかけることです。例えば、「環境に配慮」と謳いながらサプライチェーンで環境破壊を行っている場合などが該当します。これは意図的でなくとも、知識不足によって引き起こされる場合があります。研修によって正しい知識を持つことは、この重大なレピュテーションリスクを防ぐ防波堤となります。
「やらされ感」からの脱却
「会社に言われたから」という理由だけでは、社員もSDGsについて理解を深めることはできません。研修でしっかりと取り組みの本質を共有し、社員に腹落ちさせることで、社員も自ら考えて動けるようになります。
ここで重要になるのが、組織内のコミュニケーション課題です。弊社ソフィアの調査(2024年)では、社内コミュニケーションの最大のボトルネックとして「部門間の壁」が挙げられています。SDGsは、特定の部署(例えばCSR部や経営企画部)だけで完結するものではなく、調達、製造、営業、人事など全社横断的な連携が必要です。研修を通じて「部門を超えた共通言語」を作ることは、この「部門間の壁」を取り払い、組織の一体感を醸成する絶好の機会となります。
SDGs研修の階層別カリキュラム例(経営層・管理職・一般社員)
SDGs研修の効果を最大化するためには、全社員一律の内容ではなく、階層ごとに目的と内容を最適化したカリキュラム設計が必要です。
1. 経営層・役員向け研修
経営層に求められるのは、SDGsを「経営戦略」として捉え、意思決定に組み込むことです。
経営層向けの研修では、外部講師やコンサルタントを招き、客観的な視点から自社の立ち位置を把握するセッションも有効です。
2. 管理職・リーダー向け研修
現場と経営をつなぐ結節点である管理職には、戦略を具体的なアクションプランに落とし込む力が求められます。
3. 一般社員・新入社員向け研修
全社員に対しては、SDGsの基礎知識とともに「自分ごと化」を促すことが最優先です。
効果のあるSDGs研修とは
以下の2つをポイントとすることで、SDGsの研修で高い効果を上げられます。
理解を訴求する研修
マネジメント層の多くが意識し始めている「SDGs」ですが、社員レベルではまだ浸透していません。そのため、まずはSDGsの概念や重要性、自社が取り組む意味についてしっかり理解を深めるための研修が必要です。
SDGs研修に限ったことではないですが、一般的に多く行われている「ダイバーシティ」や「働き方改革」といった経営バズワードに関する研修は一時的な理解は生むものの、それまでとなってしまう場合が多いのが現実です。
継続的にSDGsに取り組むためには、SDGsと自分の業務の関係性を理解し、しっかりと「自分ごと」として捉えられるような、共感を生み出す研修を行うことが重要です。共感を生み出す研修について、次に解説します。
共感を生み出す研修
SDGsのように大規模な取り組みであるほど、研修でSDGsを理解してもすぐに「自分ごと」にはなりません。企業がSDGsの取り組みを始めることで、社員一人ひとりにどう関係があるのかまで理解できる研修が必要です。
自分ごととして捉えてもらうためには「共感」が欠かせません。すでに始まっている取り組みなど、リアルな自社のケーススタディを通して共感を得てもらいましょう。
ここで、弊社ソフィアの調査(2024年)のデータが重要な示唆を与えてくれます。調査では「経営戦略への共感を持つ社員はわずか1割」であり、「情報共有の三重苦(ない・遅い・見つからない)」や「心理的な距離の拡大」が組織の課題となっていることが分かっています。一方的な講義形式で知識を詰め込むだけでは、この「共感の壁」を越えることはできません。研修には、「対話(ダイアローグ)」の要素を組み込むことが不可欠です。
- ナラティブ(物語)の活用: 数値目標だけでなく、なぜその目標を目指すのかという「ストーリー」を語り合う。
- 部門間対話: 普段関わらない部署のメンバー同士で、SDGsをテーマに自部署の課題を共有し合う。
また、社内研修を通して共感を生み出すこともできます。その具体的な方法は次で詳しくご紹介していきます。
社内研修にも役立つSDGs浸透のための取り組み
座学で知識を得た後は、体験を通じて理解を深めることが効果的です。SDGsの社内研修では座学に限らず、以下のようなワークショップを取り入れることで社員の理解が深まります。
カードゲーム
ゲーム形式の研修は、座学では伝わりにくい「世界の複雑なつながり」や「トレードオフ(あちらを立てればこちらが立たず)」の関係性を体感するのに最適です。

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2030SDGs
一般社団法人イマココラボが提供している、SDGsを学ぶためのカードゲームです。5人~50人で行えるカードゲームで、2030年のゴール実現までの道のりを体験していきます。SDGsの個々のゴールを意識しながら、経済・環境・社会の全体像を知ることで、自分の行動と世界の状況のつながりをわかりやすく捉えられるゲームとして利用されています。
このゲームの特徴は、個人の目標達成を目指しながらも、世界の状況メーター(経済・環境・社会)バランスを取らなければならない点です。「自分だけが勝っても、世界が崩壊しては意味がない」という気付きを強烈に与えます。
SDGsアウトサイドインカードゲーム
会社固有の財産(アセット)、ノウハウ(ソシューション)、プロモーションの3つのカードを組み合わせて、SDGsをどう実現するか取り組むカードゲームです。「自社の事業を通して、いかにSDGsを実現するか」という事を実践で学べるカードゲームとなっています。最後は振り返りを行い、ゲーム内で得た気づきを共有することで、企業風土の醸成やコミュニケーションの活性化にもつながります。
これは特に、新規事業開発や企画部門の研修に適しており、社会課題をビジネスで解決する視点を養います。
自社を題材にしたバックキャスティング
バックキャスティングとは、目標を実現するためにどうすべきかを逆算して考える方法です。
まず未来にあるべき姿を描き、それに対し自社の素材を使ってどのような取り組みをする必要があるのかケーススタディで考えていきます。バックキャスティングでは、以下のようなステップを元に社員同士でディスカッションを行いSDGsについて具体的に考えます。
①次世代に残したい世の中は?
考え方のポイント
- 30年後の未来、お子様やお孫さんはいくつか?
- 子供達にどのような世の中を残したいか?
②バッグキャスティングで考えてみる
考え方のポイント
- ①の実現のために、自社が貢献できることは何か?
- 具体的な事業はどのようなものか?
③企業のブランドイメージ
考え方のポイント
- ②が実現した時、世の中からどのような会社だと思われたいか?
④今から何を変えるのか
考え方のポイント
- ①~③を具体的に実現する為、今、何を変えるのか?何を変えないのか?抵抗とは何か?
- アクションプランは何か?
上記のようなワークショップを通して、会社全体でSDGsへの理解を深めていきます。
このプロセスは、まさに弊社ソフィアの調査で指摘された「戦略への共感不足」を解消するプロセスそのものです。社員自身が未来を語り、会社の役割を定義することで、与えられた戦略ではなく「自分たちの戦略」へと意識が変化します。
SDGsは短期的な施策ではなく、長期的に取り組み続ける必要のある課題です。目的の達成のためには、現在の業務のやり方を廃止しなくてはいけないかもしれませんし、事業そのものの存続が難しいという判断になるかもしれません。SDGsへの取り組みを進める上で、企業の製品やサービスに沿ったリアルなケーススタディを行うことは欠かせません。
SDGs研修の費用相場は?
SDGs研修を導入する際、予算の確保は避けて通れない課題です。一般的な費用相場を把握し、費用対効果の高いプランを選定するための目安を以下に整理しました。
※「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)」などを活用することで、訓練経費の最大75%が助成される場合もあります(2025年度時点の制度に基づく)。
SDGs研修はオンラインと対面どちらが良い?
働き方の多様化に伴い、オンライン研修も定着していますが、SDGs研修においては目的による使い分けが推奨されます。
弊社ソフィアの調査でも、テレワークによる対面機会の喪失が心理的距離の拡大につながっていると指摘されています。SDGs研修において「共感」や「熱量」を重視する場合は、可能な限り対面でのワークショップ、あるいはオンラインでも双方向性を強く意識したプログラム設計(ブレイクアウトセッションの活用など)が必要です。
SDGs研修の効果測定とKPI設定
研修は実施して終わりではありません。効果を測定し、次なるアクションにつなげることが重要です。
効果測定の指標(KPI)設定
SDGs研修の効果は定量的・定性的な両面から測定します。
Reaction(反応):アンケート調査
満足度、理解度、講師の評価。
「SDGsと自社業務のつながりを感じたか」といった共感度を測る項目が重要です。
Learning(学習):理解度テスト
SDGsの17目標や自社のマテリアリティに関する知識テスト。
Behavior(行動):行動変容
- 「研修後、業務でSDGsを意識した提案を行ったか」
- 「部門間での連携が増えたか」
これらは3ヶ月後、半年後の追跡調査で確認します。
Results(成果):組織への影響
ESG評価機関からのスコア向上、採用エントリー数の増加、CO2削減量など。
アンケート項目の具体例
効果的なアンケートは、単なる満足度だけでなく「自分ごと化」の深度を測る設計にします。
- 「本日の研修で、SDGs達成に向けた自分の役割が明確になりましたか?(5段階)」
- 「明日から業務の中で変えようと思った行動を具体的に記述してください(自由記述)」
- 「自社のSDGs目標(マテリアリティ)を他者に説明できる自信がありますか?(Yes/No)」
まとめ
SDGsの研修を行う重要性や具体的なケーススタディについてご紹介しました。これからの企業戦略に欠かせないSDGsは、社員の理解なしに進めることはできません。SDGsの取り組みを始める前には、ぜひ今回ご紹介したような研修を導入してみてはいかがでしょうか。
SDGs研修は、単に「環境に良いことを学ぶ場」ではありません。それは、組織内の「部門間の壁」を壊し、経営と現場の「認識のズレ」を解消し、社員一人ひとりが未来のビジネスを創造するための「対話のプラットフォーム」です。
弊社ソフィアの調査が浮き彫りにした「戦略への共感不足」という課題に対し、SDGsという共通言語を用いた研修は、強力な解決策となり得ます。知識のインプットから共感の醸成、そして行動変容へ。体系的な研修設計こそが、持続可能な企業への変革(SX)を加速させる鍵となります。
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