エンプロイージャーニーマップとは?作り方と効果・事例を徹底解説
最終更新日:2026.01.26
目次
従業員のエンゲージメントが上がらない」「若手社員の離職が止まらない」——あなたの会社でも、こうした課題を感じていませんか?こうした組織課題に対し、人事施策の抜け漏れを防ぎ、抜本的な解決へ導く手法として「エンプロイージャーニーマップ」が注目されています。平たく言うと、これは従業員が入社から退職までに経験する「旅(ジャーニー)」を可視化し、企業と個人の認識のズレを解消するフレームワークです。本記事では、エンプロイージャーニーマップの基礎知識から、弊社ソフィアが実施した「インターナルコミュニケーション実態調査2024」に基づく最新の実態、そして具体的な作成手順までを網羅的に解説いたします。大企業の経営企画・広報担当者の皆さまが知っておくべき「組織を動かす」ための実践ガイドとしてお役立ていただければ幸いです。
エンプロイージャーニーマップとは?作成すべき理由とその効果を解説
エンプロイージャーニーマップという言葉を聞いたことはあるでしょうか。最近HR業界で注目されている「エンプロイーエクスペリエンス(従業員体験:EX)」を図解化したものです。一言で言えば、従業員が企業の中で心地よい体験をすることで、エンゲージメントが高まり、結果として企業に好影響をもたらすという考え方に基づいています。
今回の記事では、まだあまり知られていないエンプロイージャーニーマップについて、人事担当者や経営層の皆さまが作成すべき理由と、それによってもたらされる効果を解説してまいります。
エンプロイージャーニーマップとは
エンプロイージャーニーマップは、エンプロイーエクスペリエンスを向上させるためのアクションプランを策定する際に役立つ手段です。
エンプロイージャーニーマップを詳しくご紹介する前に、まず知っておくべきエンプロイーエクスペリエンスについて解説いたします。
エンプロイーエクスペリエンスとエンプロイージャーニーマップとの関連性
エンプロイーエクスペリエンスは「EX(Employee Experience)」とも呼ばれ、企業の従業員が社内で遭遇するあらゆる体験・経験を指します。エンプロイーエクスペリエンスの向上、すなわち従業員が会社の中で良い体験をできるようにすることが、組織の発展につながると考えられています。
エンプロイージャーニーマップは、これらの経験一つひとつを図に落として「見える化」したものです。マーケティングでしばしば使われる「カスタマージャーニーマップ」のターゲットを従業員に置き換えたもの、と言えばイメージしやすいのではないでしょうか。
エンプロイーエクスペリエンスを向上させる施策を行うには、従業員の経験を可視化するエンプロイージャーニーマップの作成が不可欠です。
エンプロイージャーニーとエンプロイーエクスペリエンスの違い
「エンプロイージャーニー」と「エンプロイーエクスペリエンス(EX)」は密接に関連していますが、その焦点には明確な違いがあります。これらを混同せずに理解することが、効果的なマップ作成の第一歩となるでしょう。
| 概念 | 定義 | 焦点 |
| エンプロイージャーニー | 従業員が入社してから退職するまでの「時間の流れ」や「プロセス」のこと | 「点と線」:時系列に沿った出来事の連なり。採用、配属、昇進、退職といったフェーズごとの推移を指します |
| エンプロイーエクスペリエンス(EX) | 従業員が組織内で経験するすべての出来事から得られる「価値」や「感情」のこと | 「質と深さ」:業務内容、人間関係、スキル習得、職場環境などから感じるやりがいや幸福感といった心理的・感覚的な側面です |
つまり、エンプロイージャーニーマップとは、時系列の「ジャーニー」の上に、感情という「エクスペリエンス」をプロットしていく作業と言えます。単にキャリアパス(昇進ルート)を描くのではなく、その時々に従業員が何を思い、何に悩み、何に喜びを感じるのかという「心の動き」を可視化することに本質があるのです。
なぜ今、「カスタマー」ではなく「エンプロイー」なのか
マーケティングの世界では、長らく「カスタマージャーニーマップ」が活用されてきました。顧客が商品を認知し、購入し、リピーターになるまでのプロセスを分析する手法です。では、なぜ今この手法が人事領域に輸入されているのでしょうか。その背景には、「従業員=内部の顧客(インターナル・カスタマー)」として捉えるパラダイムシフトがあります。
労働人口の減少や人材の流動化が進む現代において、企業は「選ぶ側」から「選ばれる側」へと立場が変化しています。顧客満足度(CS)を高めるために顧客心理を分析するのと同様に、従業員満足度(ES)やエンゲージメントを高めるために従業員心理を徹底的に分析しなければ、優秀な人材をつなぎ止めることはできないのではないでしょうか。
視点を変えれば、カスタマージャーニーマップが「購買の壁」を取り除くツールであるなら、エンプロイージャーニーマップは「離職の壁」や「モチベーション低下の壁」を取り除くためのツールなのです。
なぜ今、エンプロイージャーニーマップを作成する必要があるのか
視点の転換:管理から共感へ
ゴールは先ほど解説したように「エンプロイーエクスペリエンスの向上」なのですが、エンプロイージャーニーマップを作成するのは、「視点の転換」を行う必要があるためです。
従来の人事は、「社員の入社から退職までをどうやって管理するか」というトップダウンの視点から従業員へのアプローチを行っていました。一方で、エンプロイーエクスペリエンスの観点では、それらを社員の目線から考えることになります。
具体的には、「入社したときに自分はどんなことを期待するか」「入社して自分はどんな問題に直面するか」「それらの場合に自分はどんな心理状態になるか」といった問いかけです。従業員の立場になって彼らが遭遇する体験を心地よいものへと改善していくために、エンプロイージャーニーマップは有用となります。
また、エンプロイージャーニーマップで従業員の経験を細かく想定していくことで、これまでの人事施策に抜け漏れを発見できることもあるでしょう。
組織内の「認識のズレ」と「情報の断絶」の解消
現代の大企業において、経営層と現場、あるいは部門と部門の間には、目に見えない巨大な「認識のズレ」が存在しています。このズレこそが、従業員のエンゲージメントを低下させる主因となっていると考えられます。
弊社ソフィアが実施した「インターナルコミュニケーション実態調査2024」では、この実態を裏付ける衝撃的なデータが明らかになりました。
【弊社ソフィアの調査では】
社内コミュニケーションにおいて課題を感じている層にその対象を尋ねたところ、「部門間の壁」が58%で最多となり、次いで「部門内の上司と部下(51%)」、「経営陣と社員(42%)」と続きました。
これは、組織が縦割り(サイロ化)になり、隣の部署が何をしているか分からない、あるいは経営層の意図が現場に伝わっていないという「コミュニケーション不全」が常態化していることを示しています。
さらに深刻なのは、会社の戦略に対して「共感している」と回答した従業員はわずか1割(約10%)に過ぎないという事実です。
企業のビジョンや戦略が、現場の従業員にとっては「自分ごと」になっておらず、日々の業務との繋がりを感じられていないのではないでしょうか。
エンプロイージャーニーマップは、こうした「組織内の断絶」を可視化するのに最適です。
「戦略が伝わらないのはなぜか?」「部門間の連携がうまくいかないのはどのフェーズか?」といった問いに対し、従業員のリアルな体験を追うことで、「入社3年目のリーダー研修で経営方針を伝える機会が欠落している」あるいは「他部署との交流機会が新卒研修以降一度もない」といった具体的なボトルネック(施策の抜け漏れ)を特定することができます。
多様化する価値観への対応(Z世代・ミレニアル世代)
また、世代による価値観の変化もマップ作成を急務としています。
デジタルネイティブであるミレニアル世代やZ世代は、従来の「終身雇用」や「年功序列」といった価値観よりも、「自己成長」や「働きがい」、「デジタル化された快適な業務環境」を重視する傾向にあります。
彼らにとって、アナログで非効率な業務プロセスや、キャリアパスの不透明さは、即座に離職の動機となりかねません。
一律の管理ではなく、多様なペルソナ(従業員像)に合わせたきめ細やかな体験設計を行うためにも、ジャーニーマップによる現状分析が不可欠なのです。
組織変革時の羅針盤として
最近では、企業内研修の際には「Learner Journey(学習者の旅)」、入社(新卒・中途)の際には「The onboarding experience of new employees journey(入社時の旅)」というように、入社から退社の期間だけでなく、細分化したジャーニーマップを作成する企業が増えています。
なお、エンプロイージャーニーマップは大きな組織を変革する際にもしばしば使われます。当該組織が新たな事業を始めるというような岐路に立ったとき、従業員に従来とは異なる業務(経験)を求める必要があるでしょう。
そういったときに、従業員がどんな状態になればその業務を遂行できるのか、そのためにどんな経験が必要となるのかを想定し、従業員の理解を得ながら進める必要があります。その際に、エンプロイージャーニーマップの作成がとても役に立つのです。
ここまで、エンプロイージャーニーマップを作成する理由について見てきました。では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
エンプロイージャーニーマップを作成するメリット
エンプロイージャーニーマップを作成し、運用することは、単なる「人事施策の整理」にとどまらず、経営レベルでのインパクトをもたらします。
従業員エンゲージメントの向上と離職防止
最大のメリットは、従業員一人ひとりが「大切にされている」と実感できる環境を作れることです。
従業員が「この会社でなら成長できる」「自分のキャリアパスが明確だ」と感じることで、組織への帰属意識(エンゲージメント)が高まります。これは、優秀な人材の流出(離職)を防ぐ最も強力な防波堤となるでしょう。
特に、「入社直後の不安」や「昇進時のプレッシャー」など、離職のリスクが高まるタイミング(「真実の瞬間」と呼ばれます)をマップ上で特定し、先回りしてサポートすることで、離職率を劇的に改善できる可能性があります。
人事施策の最適化と優先順位付け
多くの企業では、研修、福利厚生、面談制度など、数多くの人事施策が走っていますが、それらが「本当に必要なタイミング」で「必要な人」に届いているかは検証されていないことが多いのではないでしょうか。
ジャーニーマップを作成することで、施策の重複や欠落が一目瞭然になります。「新入社員への研修は手厚いが、中堅社員へのケアが空白になっている」「制度はあるが、申請プロセスが煩雑で使われていない」といった課題が浮き彫りになるでしょう。
これにより、限られたリソース(予算・人員)を、最も効果の高い施策に集中投下(優先順位付け)することが可能になります。
情報共有の「三重苦」の解消
弊社ソフィアの調査では、社内の情報共有において、以下の「三重苦」が発生していることが分かっています。
1. 「ない」(必要な情報が存在しない、発信されていない)
2. 「遅い」(情報が届くタイミングが遅れ、手遅れになる)
3. 「見つからない」(情報はあっても、格納場所が分からずアクセスできない)
エンプロイージャーニーマップ上で、「業務に必要なマニュアルにいつアクセスできるようになるか」「経営方針の変更がいつ現場に伝達されるか」という情報の流れ(インフォメーション・フロー)を確認することで、この「三重苦」がどのフェーズで起きているかを特定できます。
例えば、「配属初日にPCの設定マニュアルが見つからず(見つからない)、半日無駄にする」という体験は、EXを大きく損ないます。マップがあれば、こうした微細だが重大なストレス要因を発見し、解消することができるのです。
部門間連携の促進(共通言語化)
前述の通り、「部門間の壁」は多くの大企業にとって深刻な課題です。
エンプロイージャーニーマップを作成するプロセスには、人事だけでなく、現場マネージャー、広報、情報システム部門など、複数のステークホルダーが関わることが理想的です。
「一人の従業員を育てる」という共通の目的のために、各部門がどう関わっているかを可視化することで、「ここは広報の仕事」「これは現場の責任」といった押し付け合いを減らし、全社視点での協力体制を構築するきっかけになります。換言すれば、マップが部門を超えた対話のための「共通言語」となるのです。
ここまで、エンプロイージャーニーマップを作成するメリットをご紹介してきました。では、具体的にどのような手順で作成すればよいのでしょうか。
エンプロイージャーニーマップの具体的な作成手順
エンプロイージャーニーマップの作成にあたっては、以下のポイントを押さえておくことが重要です。ここでは、より詳細にステップを分解し、成功への道筋をお示しいたします。
目的と対象範囲の明確化
いきなり書き始めるのではなく、まずは「なぜ作るのか」を定義します。
目的例:
• 新卒入社者の3年以内離職率を10%下げる
• 女性管理職比率を向上させるためにキャリアの壁を取り除く
• 中途採用者のオンボーディング期間を短縮し、早期戦力化を図る
対象範囲:
• 全社的なマップを作るのか、特定の職種(営業職・エンジニア職)や属性(ワーキングマザー・若手リーダー)に絞るのかを決めます。最初は範囲を絞った「スモールスタート」が推奨されます。
従業員へのヒアリング(現状把握)
まず、対象となる従業員が、いまどのような状況に置かれていてどのような感情を持っているのか、現状を知るためのヒアリングを行います。
例えば企業研修に関するジャーニーマップを作成するなら、従業員が現状の研修についてどう感じているのか、学習に関してどのようなニーズがあるのかを知ることができるような質問を用意します。そして、ターゲットとなる従業員の中から職種や年代、性別などの属性がバランス良くなるようヒアリング対象者を選定し、ヒアリングしていきます。
【効果的なヒアリングのためのポイント】
定性情報を重視する:アンケートの数値だけでなく、1on1インタビューやグループインタビューを通じて、「その時、正直どう感じたか?」「本当はどうして欲しかったか?」という本音(インサイト)を深掘りします。
ネガティブな体験も聞く:成功体験だけでなく、「辞めたいと思った瞬間」や「会社に失望した出来事」などのネガティブな体験こそが、改善のヒントになります。
【弊社ソフィアの調査より】:デジタルツールの導入が進む一方で、ツール活用には格差があります。ヒアリングでは「チャットツールの通知が多すぎてストレス」「重要な連絡が埋もれてしまう」といった、デジタル特有の疲弊感についても聴取することをお勧めいたします。
ペルソナの設定
「ペルソナ」は元々マーケティング領域で生まれた概念です。商品を購入したりサービスを利用する顧客を、あたかも「その人」が存在しているかのように、架空の人物像を組み立てることで、販売戦略を立案するためのターゲットとして明確にすることができます。
エンプロイージャーニーマップの作成においてもペルソナ設計が有効です。従業員へのヒアリング結果を分析してターゲットとなる従業員の感情や行動、ニーズなどをいくつかのパターンに分け、そこに年齢や性別、職業や収入、家族構成やライフスタイルなどの情報を肉付けし、数人のペルソナを組み立てます。
それによって、自社でそのペルソナが何を経験し、どのような心象を持つのかを想像しやすくなるでしょう。
【ペルソナ設定の注意点】
「理想の社員」にしない:会社にとって都合の良い「文句を言わず働く優秀な社員」をペルソナにしてはいけません。実在する社員の悩み、弱み、プライベートの事情(育児・介護など)を含めた「リアルな人間」を描くことが重要です。
フェーズの分類とマッピング
フェーズとは、入社・研修・配属・実務・育成・退職といった企業内での大きなイベントやプロセスを指します。このフェーズごとに従業員が希望するであろうことや問題になり得ることなどを洗い出し、改善施策を打ち出していきます。
なお、入社から退職というようなロングタームではなく、1日の流れや1年間、プロジェクトごとの短期間など、フェーズを細かく区切ってイベントを想定することもあります。
【マップに記載すべき項目の例(縦軸)】
マップの縦軸には、以下のような項目を設定し、情報を整理します。
| 項目 | 内容 |
| タッチポイント(接点) | 上司との面談、社内報、チャット、研修、PC端末、オフィス環境など |
| 思考・感情 | 「期待で胸がいっぱい」「誰に聞けばいいか不安」「評価に納得できない」といった心の声 |
| 課題(ペインポイント) | 情報が見つからない、相談相手がいない、システムが使いにくい |
| 機会(オポチュニティ) | ここで上司が声をかけると効果的、このタイミングでキャリア面談を入れる |
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エンプロイーエクスペリエンス向上のためのアクションプラン策定
ここまでが終われば、「従業員が良い経験をするために会社が何をすべきか」というアクションプランの策定段階へ移ることができます。
例えば、配属されて日常の業務に慣れ、人事考課の時期に入った従業員は、「これから自社でこんなキャリアアップをしたい」と会社に望むでしょうし、逆に「社内でどんなキャリアパスを描けるかが不透明だ」と不安を感じることもあるはずです。その場合のアクションプランは、「当該部署や全社におけるキャリアパスの可視化」でしょう。何をどの程度までできればどう評価され、昇進や待遇のアップにつながるのかという基準を見える化することで、従業員は自分の将来を描きやすくなり、エンプロイーエクスペリエンスの向上が期待できます。
なお、アクションプランの策定においては、優秀な人材や自社にとって必要な社員が普段どういった行動や経験をして、そこから何を感じているか、普段どのような情報や人材に接触しているのかなどの分析も重要です。それがほかの従業員に良い経験をもたらす模範的なアクションプラン策定のヒントになることでしょう。
エンプロイーエクスペリエンス(EX)を高めるためのポイント
エンプロイージャーニーマップの作成は目的ではなく、エンプロイーエクスペリエンスを高めるための手段です。最後に、エンプロイーエクスペリエンスを高めるためのポイントについて解説いたします。
組織が目指す姿を明確にする
事業を継続的に発展させて生き残るために、どのような組織を目指すのかを明確にしましょう。そうすると、自ずとそのために必要な人材がどのようなものかが見えてきます。従業員は、自社の目指すべき姿と自身の業務のつながりを見出すことで、業務へのやりがいや会社へのエンゲージメントを高めるきっかけとなるでしょう。
特に、弊社ソフィアの調査結果にもある「戦略への共感が1割」という現状を打破するためには、企業のパーパス(存在意義)やビジョンを、従業員の日々の業務レベルまで翻訳して伝える努力が必要です。ジャーニーマップの中に、「ビジョンを語り合う場」や「自分の仕事が社会にどう貢献しているかを知る機会」を意図的に組み込むことが効果的ではないでしょうか。
従業員を主体とした制度を整える
従業員が遭遇するそれぞれの経験において、「それらを通じて自分はどうなりたいか」、「それぞれのフェーズで会社にどうしてもらいたいか」という希望(期待)を明らかできるように、制度やプロセスを設計しましょう。
自社が生き残っていくために、組織や人材のあり方を明確にしつつ、従業員自身が自分の成長をイメージできるような制度を整えることが重要です。
会社側が一方的に与える研修や制度ではなく、従業員が自律的に選択できるカフェテリアプラン形式の研修や、手挙げ式のプロジェクト参加制度などが、従業員の主体性を引き出すと考えられます。
自社が従業員にとって価値のある場所であることを伝える
従業員を主体とした制度を整えたとしても、それが従業員にとってどんなメリットのあることなのかを伝えられなければ意味がありません。各種教育制度や、キャリア形成が自身の成長にどうつながるかをメッセージとして発信する必要があります。社内報を活用することも1つの手段ですし、従業員が参加しやすい気軽な相談会などを従業員同士の交流の場を兼ねて開くのも有効でしょう。
【弊社ソフィアの調査では】
社内コミュニケーション活性化の鍵として、「対話・教育・ツールの活用」の三本柱が重要であることが示唆されています。
対話:上司部下だけでなく、部門を超えたナナメの対話の場を作る。
教育:コミュニケーションスキルや、ツールの効果的な使い方を教育する。
ツール:チャットや社内ポータルを、単なる連絡網ではなく、称賛や感謝を伝え合う場として活用する。
これらをマップ上の施策に落とし込むことで、形骸化しない生きたコミュニケーション施策が可能になるでしょう。
エンプロイーエクスペリエンス(EX)を高速化するデータ活用
エンプロイーエクスペリエンス(EX)の管理・測定には、目的別に複数の指標を組み合わせてダッシュボード化し、定期モニタリングすることが多いです。
eNPS(Employee Net Promoter Score):「親しい友人に自社を推奨できるか」を数値化したもの。エンゲージメントの代表的な指標です。
離職率:全体の離職率だけでなく、「入社1年以内離職率」や「ハイパフォーマー離職率」など細分化して分析します。
パルスサーベイ:数問程度の簡易なアンケートを週次や月次で実施し、従業員のコンディション変化をリアルタイムで把握します。
IBM Smarter Workforce InstituteとWorkhuman(旧Globoforce)の共同研究では、所属感・目的意識・達成感・幸福感・エネルギーの5要素でEXを捉える『Employee Experience Index』が開発されました。
企業規模を問わず推奨される組み合わせは、eNPS・離職率・マネージャー評価を必須とし、四半期パルスサーベイで成長実感や心理的安全性を測定することです。さらにAIを活用した自由回答のテキスト分析も有効でしょう。これらを継続的に測定し、課題要因に施策を打つ「EXサイクル」を回すことがEXマネジメントの本質です。
一方で、上記の内容は認知アンケートで取得するデータが多く、回数を重ねるほど社員も慣れてしまい、本音が取れなくなるという課題があります。
現在は、上記に加えて、デジタルワークプレイス上の行動データやトラフィックデータなどのオペレーションデータを併せて分析する動きも出てきています。
例えば、「会議時間が長すぎる部署はエンゲージメントが低い」「特定のツールへのアクセスが減った社員は離職リスクが高い」といった相関関係をデータから導き出し、ジャーニーマップの精度を高めていく取り組みが進んでいます。
まとめ
エンプロイージャーニーマップは、従業員のエンゲージメントを高める手法として昨今非常に注目を集めています。エンゲージメントが高くなると優秀な人材の定着率も向上し、結果として企業のパフォーマンスにもつながるでしょう。
特に、弊社ソフィアの調査で明らかになった「部門間の壁」や「情報の三重苦(ない・遅い・見つからない)」といった現代企業特有の課題に対し、エンプロイージャーニーマップは組織のレントゲン写真のように機能し、どこで血流(コミュニケーション)が滞っているかを教えてくれます。
まとめると、エンプロイージャーニーマップは作成して終わりにするのではなく、PDCAを回し続け、従業員と共に「旅の地図」を更新し続けることが、選ばれる企業になるための条件と言えるでしょう。
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