「はたらく」のこれから。 第2回 コグニティ株式会社 代表取締役 河野理愛さん 視座を上げよ、フェアに生きよう

#コミュニケーション#働き方#多様性

05.Dec.2018

働く環境や働き方が大きく変化しつつある現代。組織や人材に関連した新しいジャンルのサービスも次々と登場しています。
このコーナーではそうしたサービスを手掛ける新進気鋭の経営者に、ソフィアの代表・廣田が直接お話をうかがい、これからの「はたらく」とは何かを考えます。
第2回は、「技術の力で、思考バイアスなき社会を。」を理念として、AI(人工知能)を活用した文脈解析サービスを提供するコグニティ株式会社の代表取締役・河野理愛さんに、サービス提供に至るまでの経験と事業の軸となる熱い想いを伺いました。

取材実施日:2018年10月8日

中学生にして始めたビジネスが、思考バイアスのない素晴らしさを教えてくれた

廣田
御社の解析サービス「UpSighter」は、以前当社でもお客様の解析に使わせていただきました。とても面白いサービスですよね。経歴を拝見すると、そもそも14歳でスポーツ科学の研究者とプレイヤーをマッチングする事業を始めていらっしゃるということを知って驚きました。
河野さん
はい、14歳のときに始めたそのWEBサービスがきっかけで、仲間が集まり、19歳のときに法人化しました。
廣田
当時はスポーツ科学というもの自体がメジャーではなかったのではありませんか?
河野さん
そうですね。今でこそ色々なデータ分析が行われていますが、当時は日本では誰もやっていなかったので重宝してもらいました。プロの選手も頼ってくださって、報酬としてものすごい量のスポーツドリンクをいただいて「これどうするの!」と困る場面もありましたね(笑)
廣田
そんなに早くから事業をされていて、子供の頃の将来の夢は何だったんですか?
河野さん
学者です。事業を始める前、10歳くらいの頃からずっとスポーツ科学の学者になりたくて、「博士まで取るぞ」と思っていました。
廣田
すごい、私なんて将来の夢は「駄菓子屋のおばあちゃんになりたい」でしたよ!(笑) スポーツ科学の第一人者としてやっていきたい気持ちは、今はないんですか?
河野さん
スポーツ科学に取り組んだのは、もともとスポーツがすごく苦手で、科学の力でこんなに上手くなったり、ケガを防げたりするんだと希望を感じたからなんです。でも次第に研究者では何も変えられないのかもしれない、お金が動いていないと物事って変わらないのかもしれない、と限界を感じるようになりました。何かいいことをやろうと思っても、お金が回っていないとよくならないなと気づいて、ビジネスを構築して世の中を良くしていくというアプローチをきちんと学ばなければいけないなと思いました。

廣田
19歳で法人化してしばらくした後、ソニーに入社されましたよね。
河野さん
事業をやっていた当時はすごく面白かったし、世界中のスポーツ科学者とつながることができて、「もうこの道でやっていこう」と思っていたんですが、徐々にこの事業だけでは根本的な解決ができないと感じ始めました。特に大企業の方と取引をする中で、そこにいる方々の考えの深さ・広さを目の当たりにして、自分が限られた範囲からしか意思決定ができていないことを痛感したんです。これは一度大きなところで学ばなければならないと思いました。結果として会社を別のメンバーに譲り、自分はソニーに入社しました。
廣田
そこから今の事業にたどり着くまでの経緯を教えていただけますか。
河野さん
私、自分の人生を振り返ると、ずっと思考バイアスがない人たちに助けられてきたと思っているんです。例えば、いくらインターネット上とはいえ、普通、プロのスポーツ選手が中学生に「自分の動きを分析してほしい」なんて頼まないと思いませんか? そうした体験が、私の人生にはたくさんあったんです。でも、それは私がたまたま恵まれていただけで、世の中では勝手な思い込みのせいでチャンスを逃している人がいっぱいいるんじゃないだろうか、技術で何とかできないかな、と思ったことが今の事業の根源になりました。
廣田
周囲からの思考バイアスはもちろんのこと、人間には「私はまだ中学生だし…」というような自分自身のバイアスもありますよね。それは感じなかったですか?
河野さん
はい。田舎出身で身近にインターネットをやっている人もいなかったので、「私なんて」と思う機会もありませんでした。スポーツ科学という素晴らしい道具を手に入れて嬉しくて、やみくもにやっていたら、結果としていろんなものと出会うことができました。

つくっているのは、公正な社会を生み出す武器

廣田
事業を通してさまざまな企業や組織と向き合う機会があると思いますが、新たな発見はありますか。
河野さん
一番驚いたのは、50~60代の方が上層部で残っている企業のほうが、意外にも変化に対して柔軟だということですね。私たちのビジネスでは上場企業の部長や役員クラスの方と直接やりとりをさせていただく機会が多いのですが、使用範囲が広くて難しい技術だけに、使用する側の応用力が問われる商品でもあるんです。そうしたときに、若い人を巻き込み、社内を上手くつなげてくれる中年層の管理職の方がいらっしゃる企業では、上手く新しい技術を取り込んでいくことができるんです。これは事業を始める前にはまったく想像していませんでした。てっきり若い人が中心のほうが新しいものには柔軟だと思っていたので。
廣田
そこも私たちの思い込み、思考バイアスのひとつですよね。こうしたバイアスを取り払っていくことで、どんな課題を解決できそうですか?
河野さん
私たちの商品「UpSighter」は視座(Sight)を上げることを目的としています。思い込みで「そんなはずはない」と思っていたものが、数字で見ると予想もしていなかった結果になって、「そうだったのか!」と目から鱗が落ちる。この「目から鱗が落ちる」状態を作っていくことで、組織内での人々の評価をもっとフェアにして、会社も個人もハッピーにしていくことができると思っています。最近では人事の面談・昇進のスクリーニングにも用いられる機会が増えています。
廣田
なるほど、具体的にはどのように行うんですか?
河野さん
例えば採用面談の場合、インタビューでもエントリーシートでもいいんですが、事前にその企業にフィットしている方(長く勤めている方)のトークやエントリーシートを解析します。そして、面談対象者がその人に似たトークなのか、どこが抜け漏れているのかをすべてチェックするんです。そうすると企業へのフィット度も得点化できますし、最終面談までに聞くべきことがはっきりします。限られた担当者だけが面談を行っていると、徐々に疲れて判断が鈍っていきます。もちろん最終的な判断は人間がやるべきだと思いますが、私たちはこうした人間の欠点を補う武器を提供しているつもりです。
廣田
今後、新たに挑戦してみたい分野はありますか?
河野さん
婚活なんて面白そうですよね。自分の魅力を上手く出せなかったり、言葉にできずに失敗している方っていっぱいいると思うんです。そうした面で、何かお手伝いできるところはないかなと思っています。

頑張った分だけ、誰もがきちんと評価される社会へ

廣田
子どもの頃の夢の形を変えながら、ここまで進んできた河野さんですが、いま将来の夢を聞かれたらなんと答えますか?
河野さん
「できるだけ大きな会社を作りたい」ですね。ソニーに7年ほど勤めていましたが、その素晴らしさがいまだに印象に残っています。創業期の方がなぜ・どう企業を作ったのかという思いが根強く残っていて、「社会のために」と思って働いている人がいっぱいいるんです。きちんとお金を生み出し、世界に愛されるプロダクトを作っていて、かつ企業の中で働く人たちもいいマインドを持っている。これは大きな企業だからこそできることだと思います。そういうものを作りたい、と強く感じます。
廣田
会社をもっと大きくしていくということは、同時に社会への影響度も高まっていくと思います。どんな社会を目指しますか?
河野さん
私たちは商品を通して、バイアスのない、皆がフェアで誰もが頑張れる社会をつくることを目指しています。でも会社を大きくすることは、会社の中にも社会ができるということ。ですから社内も社外も、何が正しいかをはっきりさせ、頑張ったらきちんと評価される、評価できる状態にしたいと思っています。
廣田
以前お客様の一人に、教職をあきらめて企業に就職した人がいました。最近嬉しかったことを聞くと、若手社員から「課長にご指導いただいたおかげで受注できました。ありがとうございます」と言われたことだというんですね。だから「じゃあ、この会社で『先生』をやっているんですね」と言ったら、相手ははっとしたんです。先生という名詞ではなく、教えるという動詞で捉えれば、その人は「先生になれなかった」のではなく、形が少し変わっただけ。こうした思考バイアスを取り除いていくことができたら、きっと働く人の想いも変わっていくんだろうなと思います。

(文:岡田耶万葉 撮影:山本雅世)

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