承認される社内コミュニケーション施策の上申資料をつくるには

 
あなたの会社では最近、優秀な管理職候補が退職したり、なんとなく従業員に元気がなかったりしませんか? 社内コミュニケーション上の課題や組織風土の問題があると感じているけれど、どうしたら解決できるのかわからない。または、解決に向けたプランを上司や経営陣に提言してみたもののなかなか受け入れられない、と悩んでいるコーポレート部門のご担当者も多いのではないでしょうか。

ソフィアはそんな悩める担当者と一緒に、上長に納得・共感してもらえる課題解決のストーリーを作っていきます。この記事では、上申資料作成の具体的なプロセスと、施策提案・実施の事例をご紹介します。

なぜ社内コミュニケーション施策の提案が通らないのか

私たちは、「組織のコミュニケーション上の問題を解決したい」といった漠然とした相談をお客様から受けることがよくあります。例えば、「組織力強化や人材育成の課題として中期経営計画にはダイバーシティ推進や、イノベーション創出など色々挙げられているけれど、離職率にも歯止めが効かなくなっていて、どう優先順位を付けて何から手を付けたらいいかわからない」といった具合です。担当者は何となく問題を肌感覚では理解しているけれど、上長を納得させるだけの根拠が用意できなかったり、個々の問題の関係性が整理できないために、具体的な施策に落とし込めずにいるのです。

「社内コミュニケーションに問題がある。早急に現状を調査して、課題解決に向けたプランを作れ」とトップから指示があれば話は早いのですが、なかなかそうはいかないのが現実です。業績不振や社員の離職といった問題の根っこが実は社内コミュニケーションにある、と最初に気付くのは往々にして現場に近い担当者ですが、そもそも担当者が経営の上層部に対して忖度なく組織の問題を指摘すること自体が難しい場合もあります。

社員調査データからコミュニケーション課題解決のプランを立てる

何から手を付けたらいいかわからない、施策を思いついても課題の根拠や費用対効果が示せないので、上申資料が作れない。そんな状況に陥ってしまう背景には、「コーポレート部門が現場の実態をきちんと把握していない」ことがあります。形式的に従業員満足度調査、やりがい調査、コンプライアンス意識調査など数々のアンケート調査をやってはいるものの、それを十分に活用できていない会社をこれまで多く見てきました。以下では、ソフィアがご担当者と一緒に課題解決に向けての提案資料を作成する際のステップ例をご紹介します。

ステップ1:社員意識に関するデータを分析し、課題の優先順位をつける

最初にやるべきことは、各種社内調査の再分析です。

参考記事:
バラバラにやっている社員調査を「ただの数字」から変革のエンジンに変えるために

企業によっては社員調査を行っていなかったり、調査していても分析結果の概要資料しかないために再分析ができないというケースもあるでしょう。その場合に私たちは、簡易アンケートの設問設計ノウハウや、簡単な社員インタビューのやり方などについてご担当者に情報提供し、社員のデータを集めるところから一緒に行うこともあります。

必要なデータが集まったら、「社員は会社のどんな点に不安や不満や怒りを抱えているのか」、「社員は会社が発信する情報の何に理解・共感を示していて、何を理解していないのか」等の観点から調査データを分析し、現状の課題を洗い出していきます。

課題が洗い出せたら、課題の優先順位付けを行います。「短期に解決すべき課題・長期的に解決すべき課題」「担当者の主管部署でできること・他部署を巻き込まなければできないこと」など、いくつか複合的な視点から課題を分類し、どの課題を優先して解決すべきか決めていきます。

ステップ2:課題解決に向けた施策案を出し、KPIを設定する

調査再分析結果や、簡易調査データをもとに課題を抽出し、課題整理ができたら、コミュニケーション施策の案出しを行います。組織風土やコミュニケーション関する施策には絶対的な正解があるわけではなく、コミュニケーションの状況は会社によって異なるため他社の成功事例をそのまま取り入れてもうまくいくとは限りません。組織開発や行動科学、経営学の理論やフレームワークを活用しながらも、各社ごとの事情に留意しながら施策を立案していきます。

施策案を出したら、実施の優先順位付けと施策ごとのKPI設定を行います。KPIは、「事務局が課題の解決に向けてどれだけ行動できたか」を測る行動KPIと、「施策に対してどれだけ社員の反応があったか」を測る反応KPIに分けて設定していきます。

ステップ3:施策を経営課題と紐付け、部門連携で時間をかけて進める

施策の裏付けとなるデータと、施策案と実施計画、施策のKPIが用意できれば、ひとまず上申資料を作ることができます。しかしながら、それがすんなり承認されるかというと、残念ながらそうではありません。

予算や人的リソースの配分を決定するのは経営層なので、いくら担当者が現場の問題意識を訴えても、「経営上優先的に手を付けるべき問題である」と認識されないことには、その上申は通りません。中期経営計画や株主説明会資料、統合報告書などに記載されている経営の重点課題や、経営層が社内外に向けて発信したメッセージ、過去に行った施策や既存施策の状況や結果と関連付けて提示することが重要です。

コミュニケーションや組織風土上の問題解決には時間がかかるものが多く、経営企画部、広報部、人事部、情報システム部などが連携して進めなければ、結果が出ないことも少なくありません。本質的な解決を行うには3年、5年とかかる場合もあります。そういった事実を踏まえ、中・長期のロードマップやマイルストーンを提示しながら根気よく取り組んでいきます。

社内コミュニケーション施策上申の事例

実際にどのようなコミュニケーション課題に対して、どのような情報を集めて上申し、施策につなげていったのか、ソフィアが関わった事例の一部をご紹介します。

経営方針の浸透と部門間コミュニケーション改善(精密機器メーカー 経営企画部)

この会社では、「社長が発信する方針が社内に浸透していない。また、各部門でどのような意思決定が行われたかについての情報が十分に全社で共有されていないため現場のストレスにつながっている」ということが担当者の課題認識でした。

そこでまず、現場社員がどのようなことにストレスを感じているのか要因を抽出するために、過去の社員アンケートの再分析と、数名の社員へのインタビュー調査を行いました。その結果、「二重業務の発生」「取引先への不信感の増大による損失が拡大」等の要因が顕著に見られたため、アンケートの数値や社員のコメントをエビデンスとし、優先課題と位置付けて、経営層に向けた報告書を作成しました。

課題の解決に必要な施策として、会議の改善やイントラポータルの改修、トップおよびミドルマネジメントの説明スキル向上に向けた研修、WEB社内報・社内SNSの導入を提案し、経営会議でのプレゼンテーションを行った結果、必要性が理解され承認に至りました。

一体感向上に向けた拠点間情報共有の強化(素材メーカー 広報部)

担当者が認識していた課題は「全国に拠点があり、製品も事業の性質も部門やグループ会社ごとに大きく異なる中、グループとしての一体感が欠如している」ということでした。紙の社内報・Web社内報で経営情報は発信されているものの、拠点の異なる社員同士がつながりを感じる機会はほぼないという状況でした。

そこで、同じような事業形態の他社がどのような社内コミュニケーションを行っているのか、国内・海外のトレンドを収集し、施策のヒントを探りました。また、既存の冊子社内報のアンケート結果と、Web社内報のアクセスログを再分析し、課題の抽出と優先順位付けを行うとともに、とくに注力すべきターゲット層(職種、地域)を決定しました。

その上で、各拠点に配置されている社内報の通信員に対し、社内広報業務の重要性理解と情報発信スキルの向上を目的とした講習会を行いました。普段は顔を合わせることのない通信員が一堂に会して意見交換を行ったことで、広報部側が現場の抱える課題をより具体的に知ることができ、通信員との信頼関係構築にもつながり、各拠点からの情報発信が活性化しました。

一連の実践の結果とその中で得られたデータをもとに、各社内コミュニケーションツールの役割と発信情報の整理を行い、より社内の一体化に資する社内報・Web社内報へのリニューアルを提案し、上長の決済に至りました。

課題解決に必要なのは「諦めないこと」と「プロの知恵」

全社に関わるコミュニケーション課題を解決するためには、部門間の協力が必要になります。たとえば人事部が、社員の離職を防ぐためにデジタルツールを使ったコミュニケーションの強化や、学習システムの強化を行いたい、と考えるなら、情報システム部との連携が不可欠です。しかし、これを読んでいるあなたが人事部の方なら、「情報システム部とは業務でほとんど関わりがない」「管掌役員も違うから連携など不可能」と思うかもしれません。こういった規模の大きい施策に取り組むためにはどうしたらいいのでしょうか。

必要なアプローチは状況によって異なりますが、弊社で手掛けた例でいうと「最終的には情報システム部と広報部と経営企画部と連携して、社内コミュニケーションと学習システムの全体を見直す」という大きな絵を描きつつ、まずは第1歩として人事部のみで着手できる1年間の施策を上申する、という方法を取ることが多いです。1年目の施策が承認されたら、その結果を根拠として次の施策の必要性を訴え、2年目、3年目と施策の規模や連携する関係部の範囲を広げながら、本来の目標に向かっていくのが現実的です。

ただし、ここまで考えて上申資料を作っても、決裁者の視点や経営の状況によっては通らないこともあります。重要なことは諦めないことです。一の矢を放ってダメなら、その原因を分析し、タイミングを見計らって二の矢、三の矢を継げばいいのです。

ソフィアはそれをお手伝いするだけの経験とアイディアがあります。あなたが自分の会社を変えたい、良くしたいという想いをお持ちでしたら、まずは一緒にディスカッションから始めていきませんか?

よくある質問
  • 社内コミュニケーション施策に関する上申資料を作るうえでのポイントは何ですか?
  • 1.社員意識に関するデータを分析し、課題の優先順位をつける
    2.課題解決に向けた施策案を出し、KPIを設定する
    3.施策を経営課題と紐付け、部門連携で時間をかけて進める

  • 社内コミュニケーション施策の提案が通らない原因は何ですか?
  • 業績不振や社員の離職といった問題の原因が社内コミュニケーションにある、と最初に気付くのは現場に近い担当者ですが、そのことを経営陣に対して指摘すること自体が難しいためです。

株式会社ソフィア

事業開発部 リーダー

三上 晃潤

人事部、広報部、経営企画部、情報システム部などにうかがい、企業によって異なる組織のお悩みや課題、お困りごとを聞き、解決するための提案をしています。

株式会社ソフィア

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三上 晃潤

人事部、広報部、経営企画部、情報システム部などにうかがい、企業によって異なる組織のお悩みや課題、お困りごとを聞き、解決するための提案をしています。

株式会社ソフィア

事業開発部 リーダー

近藤 圭亮

全ての部門・部署から課題をヒアリングして要件定義を行い、ご担当者と一緒に社内への施策立案および上申を行います。また最初にお話させていただいた部署にとどまらず、ご担当者とさまざまな部門とのハブとなって課題解決を後押しします。

株式会社ソフィア

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近藤 圭亮

全ての部門・部署から課題をヒアリングして要件定義を行い、ご担当者と一緒に社内への施策立案および上申を行います。また最初にお話させていただいた部署にとどまらず、ご担当者とさまざまな部門とのハブとなって課題解決を後押しします。

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