事業のトランスフォームに必要なものは何か?~SDGC2016に見る、顧客志向の組織に変わるためのヒント2~

「Restructuring」から「Transforming」へ

前回のコラムでは、変化の激しい時代において企業に求められる事業改革には、組織の改革が不可分という話題に触れた。引き続き、第9回サービスデザイン・グローバル・カンファレンス2016(SDGC2016)のレポートをお届けしながら、これからの時代における組織のありかた、変革のヒントを探ってみたい。

カンファレンス2日目のテーマは「New Business Model」。変化が激しく先が見えない、不確実性の高い世の中にあって、企業に限らず行政などの組織も自らが変化し、新たな事業のやり方を探ることからは逃れられない。

良いモノを作れば売れた時代から、付加価値を売る時代へ、そして現代では「モノ」よりも「コト」、体験を売る時代に移り変わってきている。 形のあるモノではなく、手で触れることのできない体験へ。すなわち、プロダクトはサービスやプロセスになっていく。例えば、自動車は交通サービスに、靴も完成されたプロダクトではなく、足の延長として再定義されるといった具合だ。

SDGC2_1

こうした変化のスピードは驚くほど速く、ビジネスにかかわる人たち全員が常に初心者である状態にさらされる。これまでのビジネスのモデルもすぐに陳腐化し、変化の波にさらわれ、企業はこれまでに蓄積した資産を生かせなくなってしまう危険があるのだ。

まさにこれこそが、今回のSDGC2016のメインテーマである「Business as unusual」ではないだろうか。これまでのビジネスが当たり前ではなく、企業は事業を新しい形に転換していく必要に迫られている。今回のカンファレンスの発表者からも、「Transforming」というキーワードが多く聞かれた。事業会社において「Transforming」という名称の部署が存在していることもあるようだ。大切なのは、事業の再構築(Restructuring)ではなく、事業の転換(Transforming)が、今まさに求められているということだ。

前時代のままの組織では生き抜いていけない

カンファレンスでの発表は、サービスデザインをベースに事業創造を行った起業家の話から始まった。また、ドイツのサービスデザイン会社からは、ドイツ政府が進めるindustry4.0において工場がネットワーク化されていく中で、サービスデザインの手法を用いてIoTと人の役割を設計した事例が発表された。これは、工場で働く人たち向けのユーザーエクスペリエンスデザインを提供した例だ。

その他にも、大企業内でどのようにサービスデザインの考え方やプロセスを導入したか、さまざまな事例が発表された。たとえば、スウェーデン銀行での取り組みでは、より良いカスタマーエクスペリエンスを提供できるよう、組織を再設計することがゴールとされていた。

これらの事例に触れて感じたことは、サービスデザインの手法を使って人間中心に物事を考え、カスタマーエクスペリエンスを向上し、継続的に変わり続けることこそが、不確実性の高い社会に対応し、生き抜いていく手段になるということだ。

私たちソフィアの仕事は企業や組織で働く人と組織そのものを変えていくことであるが、何のために変えていくのか、どこに向かって変えていくべきなのか、この先私たちがなすべきことがはっきりと見えたように思う。組織の変革の担い手は人事部だったり、経営企画部だったり、広報部だったり、企業によってさまざまだが、変革に関わるすべての部門が「生き残るためのTransforming」という同じゴールを見ることができるようサポートしていきたい。

そして、サービスデザインの考え方を取り入れて、人間中心設計の思想で事業を転換していくためには、戦略や制度、組織構造、企業文化といったものも、従業員とその先にいる顧客を中心にデザインし、転換していかなくてはならないと強く感じている。「良いモノさえ作れば売れた時代」の常識を引きずったままの組織で、経済がサービス化され、デジタル化されていく今後を生き抜いていくことはいっそう難しくなっていくだろう。

 

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株式会社ソフィア

代表取締役社長、チーフコミュニケーションオフィサー

廣田 拓也

異なる世界にある共通項を見つけて分断をつなぐことが得意です。最近ではソフィアがこれまで培ってきたノウハウやテクノロジーを活用し、地域の教育分野に力を注いでいます。思考回路と判断基準は、それが面白いかどうか。そして指示命令は、するのも、されるのも嫌いです。だけど、応援を要請されたら馬車馬のように動きます。

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