成功のための基準を再定義する

平井@ワシントンDCです。
現在私は、「ASTD2014インターナショナルコンファレンス&エキスポ」の視察に訪れています。
このイベントはASTD (American Society for Training and Development)が毎年開催している国際会議で、世界各国から研修・人材開発のプロフェッショナルが集まり、人材開発の最新トレンドやベストプラクティスを学び合うものです。
(ちなみに本日(5/6)ASTDはATD(Association for Talent Development)へのブランドチェンジを発表しています)

私は昨年に引き続き2度目の参加。詳しいレポートはまた後日お届けするとして、今日は、5月5日(月)のGeneral Sessionにおけるアリアナ・ハフィントン氏の基調講演についてご紹介します。

アリアナ・ハフィントン氏はハフィントンポストの創業者であり、プレジデント、編集長。2013年にはフォーブス誌の「世界で最もパワフルな女性100人(The World’s 100 Most Powerful Women)」のひとりに選ばれています。基調講演では、彼女の自伝的な書籍”Thrive: The Third Metric to redefining Success and Crating a Life of Well-Being, Wisdom and Wonder”に書かれている話を中心に、自らの崩壊の経験を通じて感じた成功のための基準(Metric)について話をしていました。

 

その中で出てきた4つのキーワードは、
1. Well-Being(健康で安心なこと)
2. Wisdom(見識、分別)
3. Wonder(驚き楽しむこと)
4. Giving(与えること)  

 

もっぱらビジネスに生きる人から遠いと思われるこの4点を、成功のためのキーワードとして紹介しています。

 

Well-Being(健康で安心なこと)

ここで語られていたのが、睡眠と瞑想の必要性、マルチタスクからの解放です。まず、睡眠不足ではまっとうな判断が出来ないし、常に自分の声(判断や問いかけなど)に追われている状態でもいけない。スマホ見ながら歩くのをやめてからは、それまで見えなかった、人や物事の美しい面を発見できるようになったというエピソードにも触れていました。

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Wisdom(見識、分別)

いくらIQが高くても判断を誤る人が多いのは、「見識/分別が足りない」から。一日は、「自分が何をしたいか」を考えることでスタートすべきであり、スマホに奪われた時間を取り戻すことが必要(スマホは「世界が何をあなたにさせたいか」を伝えるもの)、と主張していました。
またレジリエンス(外圧に対する抵抗力・回復力)の重要性についても触れていました。物事の悪い側面を見て落胆するのではなく、それらに何とか対処するためにどうすべきか考えること。物事の良い面にも目を向けること、などです。ここを含めて何回も「深呼吸をする」ことの重要性について説いていました。

 

Wonder(驚き楽しむこと)

とにかく人生をエンジョイすること。従業員をストレスから解放し、エンジョイさせることが生産性の向上につながったという、フォルクスワーゲンやアメリカの保険会社の事例が紹介されていました。

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Giving(与えること)

神経科学では、「人に与えること」と「自分の収入が増えること」が同じような幸福感をもたらすということが証明されているそうです。そして、周囲をヒエラルキーのない(差別のない)世界として見るように教えてくれた自身の母親の教えに触れ、まずは周りにいる身近な人たち(行きつけのお店の店員など)に対して「与える」ことから始めてみよう、と呼びかけていました。

 

ビジネスの世界においては、とかく「トップに立つためにはバランスのある生活は望むべくもない」「ストレスや睡眠不足、バーンアウトなどは成功のためのトレードオフ、不可避なものだ」といった論調が幅をきかせています。しかし、それは是正されるべきであると、ハフィントン氏は主張します。それは、彼女自身がそうしたことを信じて生きてきた結果、7年前に行き詰ってしまった経験を持っているから。そのとき、成功のための基準について考え直した結果、出てきたのが先に紹介した4つのキーワードだったのです。

 

アスリートにとって十分な睡眠が必要というのは常識なのに、なぜビジネスパーソンは睡眠不足が不可欠ととらえられているのか。ハフィントン氏は睡眠時間を1日7~8時間確保するために、オフィスに昼寝部屋を作ったとのこと。歴史上で重要な判断や変革を行った人物、チャーチルもJFKも昼寝を取っていたそうです(私も昼寝部屋がほしい!!)

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またテクノロジーを支配しているようで、実はテクノロジーに支配されていることに気付くべき、とも述べていました。デジタル機器を手放して山小屋に避難する、瞑想の時間を作る。それができなくとも、1日に5分間でいいから自分を解放する時間を作ること。頭の中の自分の声(判断、問いなど)から距離を置くこと、などです。

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ルネッサンス期には人間中心の価値観が重視されていました。それが、先に紹介した神経科学の例のように、現代の科学によってその良さが再確認されています。そのことを私たちはしっかりと受け止めなければならない、とまとめていました。

 

企業にとって、右肩上がりの成長を望むことが難しい現代において、長期的に価値を生み出し、成果を上げていくには従来のやり方では難しい。盲目的に信じられてきたことが科学によって否定されている事実を真摯に受け止めるべきです。実はここで語られている4つのキーワードに寄り添ってビジネスの世界を生きていくことの方が難しいのではないか。旧来の価値観を持つ人たちは正直にそんな思いを認めるべきだと思います。彼女のスピーチの前に行われたASTDのCEO、Tony Binghamのスピーチのキーワードは“Change”。まさに「変化」を求める今を象徴する、非常に印象深いスピーチでした。

後編 社員が主役の人材開発 ~「指導」から「学習」へ、ATDにみる人材開発のトレンド~

株式会社ソフィア

CHO/Executive Learning Facilitator CHO/Chief LX Designer

平井 豊康

企業内研修をコアにした学習デザインと実践を通じて、最適な学習経験の実現を目指しています。社内報コンサルティングの経験から、メディアコミュニケーションを通じた動機付けや行動変容の手法も活用しています。

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