オンライン研修の効果とは?設計から測定・成功事例まで徹底解説
最終更新日:2026.06.17
目次
2020年から続く新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、リモートワークへの対応が急ピッチで進められてきました。その結果、多くの企業で出社する回数が激減しており、なかには入社式だけでなく社員研修までをもオンライン化する企業が多く見受けられるようになりました。働き方改革の推進やテレワークの定着により、現在ではオンライン研修は一時的な代替手段ではなく、効果的かつ効率的な人材育成の主流として確固たる地位を築いています。
このような予測不可能な外部的要因によって組織の活動形態を大きく変化せざるを得ない今、あなたの会社では適切にインターナルコミュニケーションや組織づくりを実施できていると言えるでしょうか。単にツールを導入しただけでは、受講者の集中力低下やコミュニケーション不足といった課題が生じ、期待する効果を得ることは困難だと思われます。
私たちソフィアは、組織の風土や行動を変えていく取り組みを「企画設計〜実行継続」まで支援している組織改革の専門会社です。単にノウハウやフレームを提案・伝授するのではなく、「クライアント企業内で実施するワークショップなどの対話を通して、組織自身に新たな気づきを促し、効果を生み出す取り組みにつなげる」というスタイルを得意としています。
この記事では、需要が急上昇している「オンライン研修」を実施するための重要なポイントと、成功に向けた5つのステップについて、さまざまな企業のオンライン研修をお手伝いしてきた私たちの実践を踏まえてご紹介します。さらに、競合上位記事でも注目されている最新の効果測定手法や、弊社の独自調査データに基づくエビデンスを交え、研修効果を最大化するためのノウハウを網羅的にお伝えします。ぜひ効果のあるオンライン研修の実施にお役立てください。
オンライン研修の基礎知識
日本の企業研修は、戦後の復興期から高度成長の時代に至る1950〜1970年頃から盛んに行われてきました。その中心になったのは、従業員の職能・職階に合わせた技能や知識を身に着けさせる体系的な研修プログラムです。これらは日常の業務のなかで必要な知識を継承するOJT(On the Job Training:職場内教育)と区別する意味で、Off-JT(Off the Job Training)と呼ばれました。
やがて時代の変化と共に企業が求める人材の質も変容し、それに合わせて教育研修のカリキュラムも多様化していきます。研修の形式も、講師による座学中心の受動的なものだけでなく、参加者自身の主体性に重きをおいたアクティブラーニングが取り入れられる機会が増えてきています。と同時に、近年需要が高まっているのが新しい通信技術を活用したオンライン研修です。
オンライン研修には、実施形態によって主に2つの種類が存在し、近年ではそれらを組み合わせた新たな手法も主流になりつつあります。それぞれの特性を理解し、目的に応じて使い分けることが研修効果を高める第一歩となるでしょう。
リアルタイム開催
「ストリーミング配信されるライブ講義」を複数の受講者がリアルタイムで同時に受講するオンライン研修は、実際に集まって行う集合研修に似ていることから「オンライン集合研修」とも呼ばれています。講師や参加者同士の双方向コミュニケーションができるため、工夫次第で音声やチャット機能などを使った質疑応答や議論が可能です。
具体的には、ロールプレイングやグループディスカッションなど、受講者同士の相互作用を通じて気づきを得るようなアクティブラーニング型の研修に非常に適しています。講師がリアルタイムで参加者の表情やチャットの反応を確認できるため、その場の雰囲気に合わせて進行スピードや内容を柔軟に調整できるのも大きな利点と言えるでしょう。
録画開催
「録画された講義を視聴する」オンライン研修は、アーカイブのなかから目的に合わせて選んだり、いつでも何度でも再生できたりする点が大きな特徴です。リアルタイムの研修も録画で残しておけば後日再び参照することができるので、学習内容のより確実な理解につながるでしょう。
また、受講者側の都合で独習できるため、リアルタイム開催の研修と区別して「eラーニング」と呼ぶこともあります。
この形式は、基礎知識のインプットや、社内ルールの周知徹底、コンプライアンス研修など、全社員に対して均一な品質で情報を伝達したい場合に極めて有効です。受講者は自分のペースで学習を進めることができ、理解が不十分な箇所を繰り返し視聴できるため、知識の定着率向上に寄与します。
反転学習(ブレンディッドラーニング)
さらに近年、研修効果を最大化する手法として注目されているのが「反転学習」と呼ばれるアプローチです。これは、事前に録画開催(eラーニング)を用いて基礎知識を各自でインプットしておき、その後のリアルタイム開催(オンライン集合研修)では、質疑応答やディスカッション、実践的なアウトプットのみに集中するというハイブリッドな形式です。一言でいえば、インプットとアウトプットの場を最適化することで、限られた研修時間を最も有効に活用できる手法と言えるでしょう。
オンライン研修が普及した背景
繰り返しにはなりますが、オンライン研修の需要は2020年から続くコロナ禍の影響を受けて急速に拡大しています。 eラーニング戦略研究所(株式会社デジタル・ナレッジ運営)が2020年9月に、オンライン研修を実施している企業の人事・教育担当者を対象に実施した調査によると、人材育成に影響があったと回答した層の 72.3%が「従来の集合研修が実施できなくなった」と回答しており、業種や規模にかかわらず6割以上の企業でオンライン研修が緊急導入されたことが分かりました。
また、矢野経済研究所が2021年4月に発表した調査結果によれば、日本の2020年度eラーニング市場は前年度比で22.4%増加、2021年度はさらに増加傾向と予測され、 3,126億円の市場規模が見込まれています(前年度比8.5%増)。
これまでオンライン研修にあまり積極的でなかった中小企業が、コロナ禍を機に小規模のサービスを導入するようになったことや、技術の普及や需要拡大で導入価格が下がりオンライン研修の実施が以前に比べて容易になったことも、市場にとって追い風になったと考えられます。
加えて、厚生労働省が実施する「能力開発基本調査」のデータにおいても、企業が提供する教育訓練や労働者の自己啓発において、デジタル技術や通信環境を利用した学習機会は年齢層を問わず広がりを見せており、教育インフラとしての定着が裏付けられています。働き方改革の推進による長時間労働の是正も、効率的な研修スタイルを後押しする大きな要因と言えるでしょう。
そして「オンライン研修の展望」という観点でお話しすると、既にオンライン集合研修で成果が出ていると回答した企業の 90%が「今後もオンライン研修への切り替えを継続したい」と考えていることがわかっており(パーソル総合研究所調査 より)、この傾向は当面止まることはないでしょう。
今後は、
- LMS(Learning Management System:学習管理システム)
- コーチング
- AI技術
などの技術や考え方を活用することで、より受講者の学習レベルや進捗段階に寄り添ったものの一つとしてオンライン研修が充実していくとの見方も強まっています。
特にLMSとAI技術の融合は、受講者一人ひとりの理解度や学習履歴を分析し、最適な追加コンテンツを自動でレコメンドするなど、パーソナライズされた学習体験を提供する上で不可欠な要素となりつつあります。これにより、単なる「一斉配信」から「個別最適化された人材育成」へとオンライン研修の質が劇的に進化しているのです。
オンライン研修の目的と課題
オンライン研修を成功させるためにはまず、「何を目的とし、どのような課題を解決するために行うのか」を明確にする必要があります。この点は通常の集合研修と変わりません。
研修の目的と課題が明らかになっていないと、せっかく研修プログラムを組んで参加者を募ったのに「なるほど、勉強になりました」と、その場限りの知的満足で完結してしまい、本来の業務に反映されない結果に終わってしまいます。特にオンライン環境では、受講者の集中力が途切れやすく、目的意識が薄れがちになるため、事前の意義付けがより一層重要になると言えるでしょう。
そこでオンライン研修を企画する部署は、マーケティング部門が消費者像を分析するのと同じように、
- 対象者
- 達成したい目標
- 実施のタイミング
- 教材の設計
などの要素をあらかじめ想定し、プログラムに反映させる必要があります。
同時に、以前に行われていた集合研修の効果を事後の追跡調査によって測定、検証することも重要です。研修終了後の参加者アンケートで良好な反応が得られたにもかかわらず、そこでの学習内容が実際の業務になかなか活かされない、という状況もよく耳にします。
研修を企画し、無事終えることで満足せず、
【事前準備】→【実施管理】→【事後フォロー】→【次回への課題化】
というサイクルで考えなくてはなりません。ポイントは、後述する「ラーニングエクスペリエンス」の視点です。
研修目的を阻害する現代特有の課題についても触れておきましょう。弊社ソフィアの調査では(2025年10月実施・従業員数1,000人以上の企業に勤めている現場及びコーポレート部門の方623名を対象とした「フル_IC実態調査2025」によるインターネットリサーチ)、リモートワークの浸透により、「ナレッジの分散や属人化」および「部門間のサイロ化」といった社内コミュニケーションの構造的な課題が多くの企業で浮き彫りになっています。
視点を変えれば、オンライン研修はこうした課題を解決する絶好の機会でもあります。研修を単なる「知識詰め込みの場」とするのではなく、部門を超えた情報交換や、分散したナレッジを集約し共有する「インターナルコミュニケーションの場」として機能させるという目的意識を持つことが、企業全体の競争力向上に直結すると言えるでしょう。
ラーニングエクスペリエンスデザイン(LXD)の設計
上記でご説明したように、研修の成功には受講者にとっての効果的な学習体験を想像し、設計する「ラーニングエクスペリエンス」デザイン(またはラーナーエクスペリエンスデザイン、以下LXD)が成功のカギを握ります。要素を噛み砕いて、詳しくみていきましょう。
顧客が商品・サービスの購入を通じて経験するさまざまな段階での感情や評価の体験を、マーケティング用語で「カスタマー・エクスペリエンス(以下CX)」と呼びます。たとえば、カフェにおける顧客のCXは、購入したドリンクの味や香りといった商品単独の基本的価値だけで決まるものではありません。
具体的には、
- 店内の装飾や調度
- 店員の応対
- 混雑状況
- 居心地の良さ
- 電話で問い合わせた際の対応
など、そこで体験するあらゆる事象が顧客にとってのカフェの価値を決定づける要因となります。
同じように研修や教育学習の場面においても、受講者の視点で学習体験を想像し、想定するLXDが極めて重要になるのです。LXDは各場面の体験における細かなインターフェイスの連続で構成されるため、集合研修には集合型の、オンラインならオンラインに即したそれぞれのLXDがあります。
オンライン研修におけるLXDとは、具体的には「研修の案内メールが分かりやすいか」「使用するWeb会議ツールに迷わず接続できるか」「画面越しでも講師の熱量が伝わるか」「休憩時間は適切に確保されているか」「研修終了後に質問しやすい導線があるか」といった、受講に関わるすべての接点での体験を指します。
「目的と課題」を達成するための具体的なプログラムの設計はもちろんのこと、最も望ましい形で学習してもらうための入念な準備、人事・総務・教育を担当する部署と受講者の所属部署のスムーズな連携というように、LXDでは研修そのもののデザインだけではなく、研修前や研修終了後に参加者が体験することが範疇に入ります。
つまり、受講者とその属する組織が研修の成果を十分享受できる環境を整えるまでのすべての流れがLXDを形成する要素になるというわけです。オンライン特有の疎外感や疲労感を感じさせない細やかな配慮が、最終的な学習定着率を大きく左右すると言えるでしょう。
オンライン研修のメリット・デメリット比較
需要が伸びているオンライン研修ですが、従来の集合研修と比較した場合にメリットとデメリットがあります。先述のLXDをうまく活用して最大の効果を得るためには、以下の内容をよく認識したうえで実施するようにしましょう。
オンライン研修のメリットと特徴
オンライン研修には、その特性に由来する、
- ツールの特性を生かしたメリット
- コスト上のメリット
- 業務削減のメリット
などが生じます。1つひとつ具体的にみていきましょう。
ツールの特性を生かしたメリット:現地で行う集合開催に比べて気軽に受講できる
テレワーク・チャット機能・リアクション機能など、オンラインツールのさまざまな特性や機能を生かすことで、運営する側も受講者も、多くのメリットが得られます。
- テレワーク
実際の会場に集合して行う研修では、決まった時間で進行しなければならないという制約があります。一方、オンラインの場合は、通信環境さえ整っていればテレワークにより場所を選ばず受講でき、移動に要する時間もほぼありません。録画配信型であれば、開始時間を受講者都合で決められたり、自分で学習速度を操作して細切れでも視聴できたりするので、空き時間を利用して気軽に参加が可能です。 - チャット機能
動画配信に付随するチャット機能を活用することで、双方向のコミュニケーションが実現できます。ライブ配信の場合でも、進行を妨げることなく講師が質問を受け取れたり、受講者同士で情報をやり取りができたりします。
対面の集合研修では大勢の前で手を挙げて質問することに抵抗を感じる受講者も多いですが、チャットであれば心理的ハードルが下がり、活発な意見交換が生まれやすくなるのも大きな利点だと思われます。 - リアクション機能
Zoom会議のように、全参加者をパソコンなどデバイス1画面で確認することができるため、教室で行った場合に比べ表情や反応が把握しやすい面もあります。理解度の確認や詳細な説明が必要かどうかなど、1人ひとりのリアクションを見てニーズをキャッチできるので、きめ細やかな対応が可能です。
ただし、こうした機能を十分活かすためには受講者に通信環境やデバイスを用意してもらい、事前にある程度の使い方を理解してもらう必要があります。不慣れな参加者の場合は多少負担に感じることもあるので、あらかじめサポートできる態勢を整えておきましょう。
コスト上のメリット:時間的・金銭的コストを削減できる
物理的な集合研修では、プロジェクターやホワイトボードなど必要なアイテムを揃え、参加者全員が十分に活動できる会場を確保しなくてはなりません。自社で場所が用意できない場合は会場をレンタルする費用がかかり、数日にわたる宿泊研修などの場合はさらに時間的・金銭的なコストがかさむでしょう。
一方、オンライン開催であれば、こうした場所や日程の調整などにかかるコストを最小限に縮小することができます。特に全国展開している大企業においては、遠隔地からの交通費や宿泊費の削減効果は極めて大きく、研修予算の最適化に大きく貢献します。
業務削減のメリット:開催側の業務工数を削減できる
業務削減によるメリットのポイントは、録画機能・画面共有機能・アンケート機能・グループワーク機能にあります。
- 録画機能
複数のグループを対象に同じ内容の講義を行う場合、講師は2度、3度と繰り返さなくてはなりません。オンライン開催であれば録画機能を使用することで、1度実施した講義を繰り返し配信することができます。また、録画は時間の流れを視聴者側で調整できることも特徴です。 - 画面共有機能
画面共有機能を使用すると、その都度資料を人数分印刷して配布する手間が省けます。画面上で講義資料を示したり、PDFやエクセルなどのファイルを画面で共有したりできるため、1度用意してしまえば同じデータを使い回すことが可能です。 - アンケート機能
アンケート機能を用いれば、参加者に対してリアルタイムでアンケートを実施することができます。デジタルだからこそ素早く集計でき、配って・回収して・仕分けするといった手間をかけずにその場で参加者の意向が把握できるというのが特徴です。 - グループワーク機能(ブレイクアウトルーム/セッション)
リアルな集合研修でグループ(小集団のセッション)分けを行う場合、人数の調整や名簿確認、ちゃんと揃っているかどうかの点呼といった作業が必要です。一方、オンライン開催の場合は、グループ数を決めるとランダムでメンバーを振り分ける機能も備えているため、上記のような手間を省力化できます。
オンライン研修のデメリット
その反面、オンライン研修のデメリットとしては、
- 参加者管理上のデメリット
- 内容上のデメリット
- インターフェイス上のデメリット
が挙げられます。具体的に述べていきましょう。
参加者管理上のデメリット:参加者の集中力の維持が難しい
参加者が一堂に会する集合研修では、実際に講師を前にすることで受講者側にある種の「緊張感」が生じます。この緊張感は、参加意欲を低減させないことに寄与していると言えるでしょう。しかし、周りに同じ受講者がいないテレワーク環境のもとでは、この緊張感が発生しにくくなり、参加意欲の維持・持続が集合研修に比べて困難になりがちです。
特に「動画を視聴してください」という録画型は注意が散漫になりやすく、画面への集中力が途切れやすくなります。対照的に、集合研修では周囲を見渡せば他の参加者の存在が一目でわかるので、学習意欲の面で同調したり、競争意識が生まれたりしやすいのです。そのため、研修において参加人数をある程度確保し、「みんなで学ぶ」という環境を意識することは、研修企画段階において重要な要素と言えるでしょう。
集中力低下を防ぐためには、講義時間を細かく区切り(たとえば15分ごとに区切るなど)、途中に簡単なクイズやチャットへの書き込みを促すなど、意図的にアクションを求める工夫が不可欠です。
内容上のデメリット:実践形式のコンテンツは向いていない
たとえば、営業や接客のノウハウを体験しながら学ぶロールプレイングや、具体的な技術をエキスパートから直接伝授してもらうような実践型学習は、オンライン研修になじみにくいというデメリットがあります。
講師が注意深く受講者の一挙手一投足を見守り、細かいニュアンスや空気感まで指導することで経験値をあげるタイプの研修となると、リアルで行う集合研修に軍配が上がるでしょう。オンラインでこれらを補うためには、ブレイクアウトルームでの少人数演習や、研修後の個別面談を手厚く行うなどの補完措置が必要だと思われます。
インターフェイス上のデメリット:参加者同士のコミュニケーションを生むには工夫が必要
同じ場所に集まって直接顔を合わせる集合研修では、異なる地域に配属された同期と久しぶりに会ったり、普段言葉を交わさない他部署の参加者と話す機会が生まれたりするなど、「コミュニケーションのきっかけ」が自然に発生します。しかし、オンライン研修ではパソコンやタブレットなどの画面越しでしかコミュニケーションできません。
参加者同士のコミュニケーションを促進し、リアルの集合研修と同様の効果をもたらすためには、前述したブレイクアウトルームなどのグループセッションを多用し、チャットやホワイトボードへの書き込みを促すなど、ツールに付随する機能を参加者が最大限に活用できるような工夫が必要です。
弊社ソフィアの「フル_IC実態調査2025」によれば、リモート環境において、部門を越えた偶発的なコミュニケーションや雑談といった非公式なコミュニケーションの機会が大幅に減少し、組織内での関係構築が難しくなっている実態が明らかになっています。逆に言えば、オンライン研修は、意図的にこの「雑談の場」や「相互理解の場」を設計することで、失われたコミュニケーション機会を取り戻す役割も担うべきだと言えるでしょう。
上記のデメリットを踏まえ研修運営側が意識して取り組むべきことは、事前・事後のプロセスも含めて参加者の有意義な学習体験をサポートする相談窓口を用意し、スムーズな受講を可能にする「LXDの向上」です。

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オンライン研修の効果測定とカークパトリックの4段階評価法
オンライン研修を導入したものの、「研修の効果が目に見えない」「やりっぱなしになってしまい、投資対効果(ROI)が証明できない」という悩みは、大企業の人事部門で極めて多く聞かれます。研修効果を定量的・定性的に測定し、次回の改善やLXDの向上につなげるための世界的な標準フレームワークが「カークパトリックの4段階評価法」です。
オンライン研修は、受講履歴やアクセスログ、テスト結果などをデータとして蓄積しやすいため、この評価法と非常に相性が良いという利点があります。
レベル1:反応(Reaction)
- 評価基準の概要:研修に対する受講者の満足度や印象
- 評価の目的と主な指標:研修内容の改善点発見、受講者のモチベーション確認
- オンライン研修での具体的な測定方法:研修終了直後のオンラインアンケート(5段階評価)、チャットでの発言量やリアクション数
レベル2:学習(Learning)
- 評価基準の概要:知識やスキルがどの程度定着したか
- 評価の目的と主な指標:理解度の確認、補講の必要性判断
- オンライン研修での具体的な測定方法:LMS(学習管理システム)を活用したオンライン確認テスト、レポート提出、eラーニング修了率
レベル3:行動(Behavior)
- 評価基準の概要:学んだ知識が実際の業務で実践されているか
- 評価の目的と主な指標:業務におけるスキル活用度、ポジティブな行動変容の有無
- オンライン研修での具体的な測定方法:数ヶ月後の上司による評価アンケート、1on1ミーティングでのヒアリング、360度評価
レベル4:業績(Results)
- 評価基準の概要:研修が組織のビジネス目標にどう寄与したか
- 評価の目的と主な指標:費用対効果の証明、組織全体のパフォーマンス向上
- オンライン研修での具体的な測定方法:営業成績の変化、生産性の向上、エラー発生率の低下、離職率の改善など定量的KPI
レベル1(反応)とレベル2(学習)までは、LMSやアンケートツールを利用することで比較的容易に自動測定が可能です。しかし、研修の真の価値はレベル3(行動)以降で決まると言えるでしょう。
ここで重要になるのが、現場のマネージャーの関与です。弊社ソフィアの「フル_IC実態調査2025」では、1on1などのマネジメントコミュニケーションの運用において、マネージャーのスキルや組織ごとのばらつきが課題として浮き彫りになっています。研修の効果を「行動」に結びつけるためには、研修企画部門が現場のマネージャーと連携し、1on1の場で「研修で学んだことを今週どう活かすか」を部下と対話させる仕組みづくりが不可欠です。
さらに、評価基準(何を以てこの研修が成功したとみなすか)を、研修開始前にあらかじめ受講者に公表しておくことも効果的です。これにより受講者の当事者意識が高まり、学習効率と行動変容の確率が飛躍的に向上すると思われます。

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オンライン研修を成功に導く5つのステップ
オンライン研修のメリットを最大化し、受講者のLXを高めて成功へ導くには、【事前準備】→【実施管理】→【事後フォロー】→【次回への課題化】というサイクルに沿った次の5つのステップが重要です。
- ステップ1:研修の目的と現状の課題を整理する
- ステップ2:時系列で学習体験をデザインする
- ステップ3:運営体制を構築し、タスクとスケジュールを描く
- ステップ4:研修を実施する(研修前後のフォロー含む)
- ステップ5:効果測定と改善を繰り返し実施する
ステップ1:研修の目的と現状の課題を整理する
LXDを説明した章で既述したように、最初のステップとしてまず「この研修は何を目的とし、どういう成果を求めるのか」という目的と課題の明確化を行いましょう。前述のカークパトリックの評価法を念頭に置き、「受講の前後で参加者の考え方や行動がどのように変わって欲しいのか」「その結果どのような成果を期待するのか」といった要素を比較測定が可能になるようにしておかなくてはなりません。そのためには、事前にアンケートやヒアリングを行って現在の状況を把握することも必要だと思われます。
ステップ2:時系列で学習体験をデザインする
LXDの大まかなフレームがつかめたら、より詳細な学習体験のデザイン段階に進みます。意識が変わっていく段階をマイルストーンとして時系列で想定し、研修の中身をプログラムしていきましょう。
ステップ1で把握した現在位置から期待するゴールに向けて、単なる知識吸収にとどまらないよう、注意関心をひく魅力的なコンテンツ、興味をかきたてる題材、自発的なディスカッション支援などを時系列で組み立て、具体的に設計していくことがポイントです。この段階で、eラーニングでインプットを行うか、ライブ配信でアウトプットを行うかといった手法の選択肢も組み込みます。
ステップ3:運営体制を構築し、タスクとスケジュールを描く
ステップ2でデザインしたLXDの全体像を具体化するためには、研修の講師や伴走スタッフと共に、題材の選定、教習の方法、用いるツール・アプリケーションの準備・開発、マイルストーン達成に必要なスキルなどを詰めていきます。
オンライン研修においては、「オンラインファシリテーションスキル」を持った人材の配置が極めて重要です。画面越しでも参加者の反応を引き出し、円滑な進行をサポートするファシリテーターの存在が、研修の質を大きく左右すると言えるでしょう。
ステップ4:研修を実施する(研修前後のフォロー含む)
プログラムの詳細が決まったら、いよいよ研修の実施です。受講にあたって必要となるツールやアプリケーションは、事前にアクセスの仕方や使用方法を説明しておかなくてはなりません。また、講師と受講者側の双方が、ビデオカメラをONにするかOFFにするかのルールも明確にしておきましょう。通信負荷を抑えつつ参加意識を高めるための最適なバランスを見極めることが必要です。
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ステップ5:効果測定と改善を繰り返し実施する
最後のステップは、次開催につながる最初のステップでもあります。実施したオンライン研修が実際の業務にどのように反映されたか、追跡調査を行って効果を測定しましょう。研修終了直後には評判が良かった場合でも、時間が経つと忘れてしまい仕事に活かされないというケースはよくあることです。
LXDの構築には「完成形」がありません。効果測定と改善を繰り返し、次回の研修がより参加者にとって、そして自社にとっても有益なものとなるよう、必ずPDCAのサイクルを稼働させて効果の高い研修プログラムを追求していきましょう。
オンライン研修の課題と解決策
ここまでの章では、オンライン研修実施に向けての極意をお伝えしてきました。では、実際にオンライン研修を実施したときにはどのような問題が生じるのでしょうか。この章では、求める効果が実感できない原因となる失敗談とその解決策をご提示します。
オンライン研修でよくある6つの失敗
私たちがこれまで得た知見の中から、オンライン研修を実施するにあたって陥りやすい失敗のパターンを6つ選出しました。
- そもそも研修に参加しやすい環境が整っていない
所属部署によっては、通常の業務を優先するあまり、研修に抵抗感を示す場合もあります。過去に行われた研修の成果が可視化されていない組織ほど、その傾向が強まります。 - 参加しても研修に必要な操作ができない
デジタルツールに対する知識不足などによって進行が阻害されると、スケジュールが後ろ倒しになってしまう事態も予測できます。 - 講師側の音声やビデオ、画面共有が正常に機能しない
通信インフラや端末側のOSバージョンといった要因から、正常に機能しない場合があります。 - 双方向のコミュニケーションが構築できない
端末側でマイクやビデオがONになっていなかったケースや、受講者間での温度差が原因でコミュニケーションの質と量に格差が生じることがあります。 - ブレイクアウトセッションが成り立たない
グループ分けがうまくできない、または討議が進まず望ましい成果を出せない問題です。 - チャットで発言や質問を受け付けても誰も書き込まない
質問を促しても誰も書き込まず、共有されないという状況です。
失敗の回避・解決策
端的に言えば、事前の徹底した準備と、当日のサポート体制の構築がこれらの課題を解決します。
- 受講環境の事前ヒアリングとマニュアル化
受講者がどこからどの通信インフラを用いてアクセスするのか、デバイスのシステムは基準を満たしているかをヒアリングします。そのうえで、必要な操作ができるよう運営者用・受講者用に分けてマニュアルを作成し、事前に共有しましょう。 - オリエンテーションと徹底したリハーサル
事前に接続テストを兼ねたオリエンテーションを実施し、不安要素を払拭します。また、運営側は数日前までに必ずリハーサルを行い、進行スケジュールに無理がないか検証してください。 - 事務局によるテクニカルサポートとファシリテーション
当日トラブルが発生した場合に備え、技術的な問題に即座に対応できる専用の相談窓口(テクニカルサポート)を配置します。さらに、チャットの書き込みを促したり、ブレイクアウトルームを巡回して議論を活性化させたりするファシリテーターの存在が、研修を成功に導きます。
オンライン研修の効果を高めるコミュニケーション設計
オンライン研修の効果を真に高めるためには、単なる知識伝達の枠を超え、組織全体のコミュニケーション課題にどうアプローチするかという視点が欠かせません。
弊社ソフィアの「フル_IC実態調査2025」が示す通り、多くの大企業において、リモートワーク普及に伴う「インフォーマルな対話の減少」や「自部門外とのつながりの希薄化」が深刻な課題となっています。視点を変えれば、オンライン研修は、全国の支社や異なる部署の社員が一堂に会する貴重な機会でもあります。
したがって、研修のタイムテーブルの中に、意図的に「雑談(アイスブレイク)」の時間を設けたり、あえて異なる部門のメンバー同士でブレイクアウトセッションを組んだりする工夫が必要です。研修という場を借りて社内のインターナルコミュニケーションを活性化させることが、ひいては従業員エンゲージメントの向上や、心理的安全性の構築につながり、結果として研修内容の定着率を押し上げるという好循環を生み出すと思われます。
オンライン研修の成功事例
この章では、これまで説明してきたLXDやコミュニケーションの視点を踏まえたうえで、ソフィアがお客様企業に提供したオンライン研修の成功事例を解説します。
【事例1】学びの体験を重視した研修プログラムの再設計
株式会社中外臨床研究センター様の事例です。オンライン会議が大幅に増加するなかで、画面の向こう側にいる相手の反応が捉えにくく、発言や討議を進めるハードルが無意識のうちに高くなっているのではないかという仮説を立てました。
そこで、「インプロ(即興演劇)」の手法を取り入れた体験参加型の研修を進めました。「これを言ったら変に思われないか」という心理的な障壁を徐々に取り払っていきながら、結果として積極的なコミュニケーションが発生し、全社員の約1/3が参加する大規模なオンライン研修を楽しく学ぶ場へと変えることができました。
【事例2】新入社員研修のオンライン化でエンゲージメントを向上
社員数5,000名以上を抱えるある大企業の事例です。新卒社員向けの集合研修ができなくなったことをきっかけに、「配属後にばらつきがみられるスキルや意欲をどのように改善していくか」をテーマとして再設計しました。
「Learn365(旧LMS365)」というeラーニングシステムの統合プラットフォームを活用し、教材の作成や受講者とのコミュニケーション、進捗管理を一元化。学んだことが実際の現場で活かされるようなLXDを実現し、新入社員のエンゲージメント向上に大きく貢献しました。
オンライン研修のまとめ
オンライン研修に対する需要と期待は、働き方の多様化とともに今後もさらに高まっていくと予想されます。オンライン研修の実施にあたっては、受講者と主催企業の双方にとって有益で効果のあるものにするために、まず目的と課題を明確にすることが大切です。そして、それらを「学習体験」という観点で設計するLXDの手法で実際のプログラムに落とし込みます。
同時に、本記事でご紹介した「カークパトリックの4段階評価法」を用い、研修効果を定量的・定性的に測定する仕組みを整えることが、やりっぱなしを防ぎ、組織への投資対効果を証明する上で不可欠だと思われます。
つまり、LXDの考えを基にプログラムを組むと同時に、それを確実に運営するために注意深く準備することが重要だと言えるでしょう。運営の事務局は事前に受講者や関係部署とコミュニケーションを密にとり、講師や受講をサポートする伴走スタッフとも入念に打ち合わせを行いましょう。
私たちソフィアは、「企画設計〜実行継続」まで支援している組織改革の専門会社です。単にノウハウやフレームを提案・伝授するのではなく、「クライアント企業内で実施するワークショップなどの対話を通して、組織自身に新たな気づきを促し、効果を生み出す取り組みにつなげる」というスタイルを得意としています。
前述したメリット・デメリットや成功のための5つのステップを理解し、失敗を回避するための万全の準備とアフターケアを心がけてください。あなたの会社、部署で行うオンライン研修の成功に向けて、この記事が参考になれば幸いです。





