オンライン研修とは?従来の集合研修との違いや導入のポイントを解説

新型コロナウイルスや働き方改革によってテレワークが浸透し、企業が「オンライン研修」を開催する機会も増えました。ただし、オンライン研修と言っても、従来の集合型の研修をそのままZoomなどによりオンライン化して配信するだけでは効果がありません。オンライン研修を成功させるためには、いくつかの重要なポイントをおさえておく必要があります。
そこでこの記事では、オンライン研修を成功へ導くためのポイントを詳しく解説していきます。

オンライン研修とは?

オンライン研修とは、オンライン上で開催される研修のことです。従来の集合型研修のように講師や受講者が同じ場所に集まる必要はなく、それぞれが都合の良い場所を選んで参加することができます。空間的な制限がなく実施できるという意味では、オンライン研修は、ウェビナー(Webセミナー)と同じです。しかし、オンライン研修は「学習をオンライン化」するという視点でみると、ウェビナーよりももっと広い意味として捉えられます。集合研修をWebセミナー(ウェビナー)にするだけではなく、オンライン化することにより、今後どのような可能性が広がるかも含めてご紹介していきます。

オンライン研修が増える時代的背景

オンライン研修を実施している企業が大きく増えたのは、働き方改革や新型コロナウイルスの影響が大きいといえるでしょう。
総務省のホームページに掲載されているパーソル総合研究所の調査では、7都府県に対し、緊急事態宣言後のテレワークの実態を聞いたものがあります。この調査によると、7都府県での緊急事態宣言後のテレワーク実施率は全国平均で27.9%と、1か月前と比較して2倍以上に増加しました。(4月10日から12日までに全国の2.5万人に対して実施)。感染拡大防止のためにテレワークが大きく拡大したことは、自宅などから受講できるオンライン研修のニーズが高まったことにも直結していると考えられます。


集合研修をオンライン化するだけでは効果がない?オンライン研修の課題

働き方改革や新型コロナウイルスの影響が起こる前は、企業の研修といえば、指定された会場に受講者が集まって対面形式で行う「集合研修」が主流でした。そのため「オンライン研修」と聞くと、従来型の集合研修をZoomやTeamsなどWeb会議システムで実施に切り替えるだけだと考える人もいるでしょう。
実態としてオンライン研修は、従来から会社が社員に求めてきた能力開発のための教育(階層教育など)を、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、提供方法を対面の研修からWeb上での研修に変えただけという場合も多々あります。
しかし、集合研修と同じ内容を単にWebに移しただけでは、集合研修と同じような成果を得られないなど、さまざまな課題もあります。オンライン研修にすることで、研修はどのように変化し、どのような課題に直面するのでしょうか。以下にご紹介します。

オンラインにおける受講者の状況把握の課題

集合研修と同じ内容であっても、受講者はパソコンの前にいてさまざまな困難に直面したり、負荷を感じたりしています。そのため、効果的な研修を実施するためには、講師や事務局が受講者個人の状況や心理状態を、何らかの方法で遠隔から把握する必要があります。研修をオンライン化することで空間的・時間的制限がなくなり、コストが削減されているように見えますが、それと引き換えに、対面では容易に把握することができた受講者の状況やリアクションという情報が得にくくなってしまいます。そのため、受講者の習熟度に応じたアプローチや、研修のや最終的な効果という観点では問題もまだまだ多く残っているのです。

オンラインにおける講義はライブ?それとも収録?

リアルタイムで実施する講義と、事前に収録された動画コンテンツにはどのような違いがあるのでしょうか?
知識を獲得するという面においては、動画コンテンツで十分と言えます。いつでもどこでも何度でも学習内容に触れる環境があれば、リアルタイムの講義と違い、得た知識やスキルを実際に活用するOJTの前に動画を確認するなどによって、常に反転学習を実践できます。動画コンテンツには、環境を整えることで学習と実行の距離を縮め、実務に研修内容を転移しやすくなるというメリットがあります

オンラインにおける実習や模擬ワーク

ロールプレイングやディスカッションなど、集合研修特有の疑似体験やワークセッションは、オンライン化でどのように変わるのでしょうか。
ロールプレイングやディスカッション、ワークセッションなどは対面集合研修の方がやりやすい、というイメージをお持ちの方が多いと思います。しかし、現在ZoomやTeamsには、参加者を小グループ(ブレイクアウトルーム)に分けて会議を実施できる機能がついており、それぞれのグループに講師やファシリテーターを入れることで、より個人にフォーカスした指導や介入を行うオンライン研修も増えてきています
最近ではこれらの研修スタイルが発展し、コーチングに近い形で、外部の専門家がチャットやZoomを活用して遠隔で業務遂行を伴走支援するというケース事もあります。これは、研修におけるロールプレイとは異なり、リアルの業務遂行に教育を組み込むOJTに近いスタイルです。

オンラインにおける受講者のモチベーション

集合研修もウェビナーも受講者のモチベーション次第で研修の成否が左右されます。
集合研修やウェビナーでは、モチベーション維持のために模擬学習やロールプレイングという非日常設定による学習を取り入れることが一般的です。
しかし、時間的・空間的制限のないオンライン研修においては、学習と実践を切り離す必要はありません。模擬学習よりもむしろ、実際の職場課題を学習と置き換える方が学習効率は高くなります。実務を題材にした学習によって、受講者自身が学びを実践に活かすことに前向きになれるとともに、モチベーションを高く保てることが期待できるのです。
このような研修方法は、学習転移(学習内容を実務に適用すること)の観点からもモチベーションの観点からも効果的です。
前述のとおり、受講者のモチベーション状況把握は集合研修よりもウェビナーの方が困難です。そして、オンライン研修で受講者のモチベーションの問題を解決する秘訣は、運営側が受講者目線に立ち、よりモチベーションを保ちやすい設計を考えることです。

オンラインの研修の効果性

「集合研修をオンライン化」するという視点で考えると、どうしても対面の集合研修の方が優れた面もあり、そこをオンライン化しようと試行錯誤しても限界があります。実習や模擬ワークにおいては、リアルな対面形式の集合研修では講師がより多くの受講者の状況把握でき、オンラインでは限界があります。一番の課題は、受講者の状況やモチベーションを把握する上での情報取得においては、リアルな集合研修にオンライン研修は勝てないという点です。
一方、受講者が効率的に知識をインプットするという面では、いつでも利用できる講義動画やEラーニングコンテンツの方が優れています。そのため、オンライン研修の効果を高めるには、「集合研修のオンライン化」という発想ではなく、受講者の習熟度に合わせたコンテンツで、より業務や成果に転移する学習機会を提供する「学習のオンライン化」という発想に変えることが重要です。受講者が、学習したいときに、課題を解決したいときに、成果を上げなければならないときに、必要な講義や知識にアクセスでき、常に受講者の状況が把握されていて、受講者の状況にあった介入方法(実習やサジェスチョン)を講師や事務局が実装する状況が、本質的なオンライン化といえます。

成果につなげる学習・研修のオンライン化のポイント

それでは、学習・研修のオンライン化を成果や結果に繋げるためにはどのようなポイントが必要なのでしょうか。以下に詳しく説明します。

受講者の状態を把握し同期するプラットフォーム

学習・研修をオンライン化するには、Microsoft Teamsなどのプラットフォームを活用し、研修のときだけでなく日頃から受講者とアクセスできる環境を用意することが必要です。
前段で述べたように、リアルでもオンラインでも、研修や学習の成否を分けるのは、受講者の状態やモチベーションです。集合研修では講師や事務局担当者と受講者が同じ空間にいるため、研修中の受講者の状態を把握することはオンライン研修よりも容易です。
一方、オンラインでは研修中の受講者の状況把握は対面より困難ですが、時間・空間的な制限がなく、受講者と常時接続することが可能なため、研修以外の時間においてもコミュニケーションを取ることができます。このメリットを最大限に活かし、デメリットを補っていくことができれば、より学習効果を高めることが可能です。

ラーニングエクスペリエンスを設計する

「ラーニングエクスペリエンス」を設計することも重要です。ラーニングエクスペリエンスとは、学習設計のことです。受講者がどのような段階を踏んで学びを深めていくのか、その心理に寄り添いながら学習体験を細かくデザインしていくことを指します。
受講者が学習をスムーズに進められるように、必要なコンテンツを考え、用意していきましょう。
また、受講者の意欲と、学習提供者が学習内容を提供するタイミングは効果に大きく影響します。分からない部分をすぐに解決できる設計にすれば、受講者のモチベーションを維持できるでしょう。オンライン研修ではその場で検索サイトや動画サイトへアクセスして学ぶことが可能です。業務や課題と学習コンテンツの距離を縮めることで、学習効果が向上し、成果につながります。

学習コンテンツを提供する専門スタッフを配置する

受講者に必要なタイミングで必要なコンテンツを提供するためには、そのための専門スタッフ(キュレーター)を配置するのが効果的でしょう。キュレーターは、Teamsなどのプラットフォームを活用し、アクセスログなどのデータを追いながら受講者の変化を察知・管理し、状況に応じて受講者にコンタクトし、学習コンテンツを提供します。さらに、タレントマネジメントシステムなどのツールを導入することで、各人に必要なコンテンツを、必要なタイミングで用意することがより容易になるでしょう。

動画コンテンツは視聴しやすい長さにする

学習効果を高めるためには、コンテンツの長さも重要です。受講者が視聴に前向きになれるように、短い時間に切り分けるのがおすすめです。仮に6時間の研修であれば、全3回に分けるといいでしょう。そして、ひとつの回を受講後、細かく反復練習できるようにすると、効果はさらに向上します。
受講者が求める適切なコンテンツを配信することができれば、研修の効果はかなり向上するでしょう。そうなれば研修の効果は、集合型研修にも劣らないレベルに達するかもしれません。

まとめ

オンライン研修は、受講者が主体となって体験し、実践を通してスキルを身につけていくものです。オンラインの環境では受講者のモチベーションを管理することは難しいものですが、ポイントをおさえて設計することで、集合型研修に劣らない効果を発揮できるかもしれません。
オンライン研修は今後も形態を変化させながら、一層需要が高まっていくでしょう。最終的には日常の中に学習が溶け込むと予想されます。オンライン研修のポイントをおさえて、意義ある研修を目指したい方は、ぜひソフィアまでご相談ください。

よくある質問
  • オンライン研修と従来の研修の違いは何ですか?
  • 運営の仕方が違う
    受講者の状態を把握し同期するプラットフォーム
    ラーニングエクスペリエンスを設計する
    学習コンテンツを提供する専門スタッフを配置する
    動画コンテンツは視聴しやすい長さにする

株式会社ソフィア

先生

ソフィアさん

人と組織にかかわる「問題」「要因」「課題」「解決策」「バズワード」「経営テーマ」など多岐にわたる「事象」をインターナルコミュニケーションの視点から解釈し伝えてます。

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