COVID-19新型コロナウイルス感染拡大 ~コミュニケーション担当者の危機管理広報~

海外では毎日、social distancing(人との距離を離して接触する機会を減らすこと)という言葉を耳にするようになりました。日に日に深刻度が増している新型コロナウイルスの感染拡大の中で、企業や組織のコミュニケーション担当者は、どのような対応が求められるのでしょうか。ここでは海外の専門家の見解を紹介します。

ビジネス・コミュニケーション担当者の国際団体IABCは、Web会員誌『Catalyst』の中で、危機管理広報の専門家であるキャシー・ヒーリー氏(CS&Aインターナショナル社アソシエート)の記事を掲載しています。

ヒーリー氏は、まずこの新型コロナウイルスによる感染拡大が組織に潜在的な影響を与える危機であることを認識し、コミュニケーション担当者は全ての問題を検討したか、と問いかけます。

その際に重要なことは、危機管理におけるガイドラインとなる原則に基づいてアプローチすることです。右に示したCS&Aインターナショナル社の‘危機管理10戒’に則って、次に起こりうることに対して組織として備えてください。

‘危機管理10戒’ CS&Aインターナショナル社

1. 問題を早期に認め、早期に伝える

2. 悪いことを良く見せることはできないことを認識する

3. 最悪の事態に備える。 危機は、事態が悪化してから後に、良くなっていくものだ。

4. 人々の安全を常に優先することを忘れない。

5. 点数稼ぎのためにするのではなく、信頼性を保護することに集中する

6. 道筋を設定し、ミッションステートメント(使命宣言)を作成し、それを守り続ける。

7. 問題となること、およびステークホルダーをマッピングし、状況の進展に応じて修正する。

8. 利用可能なすべてのチャネルを使用して、ステークホルダーとコミュニケーションする。

9. 危機が長引いても、後退して包囲され身動きできなくならないようにする。 その場に踏ん張り続けること!

10. 危機の後遺症も管理する。 本当に終わるまで、終わっていないことを忘れないこと。

状況は刻々と変化しますが、危機管理チームは最悪の事態を想定して継続的に計画していく必要があります。また危機管理チームとコミュニケーション担当者は、この危機対応が今後数か月間は必要になる可能性があることから、その間ずっと経営陣の注意をつなぎ止めることが課題になります。

ステークホルダーを知る

今回の危機に対する全てのステークホルダーをマッピングし、ターゲットのニーズに合わせて、メッセージを調整します。

今回の危機は、通常にはない考慮すべき点があります。ステークホルダーは皆、個人的にもリスクを抱えています。世界中の多くの場所で、近くの誰かが少しでも気分が悪くなり始めると、必然的に「私は感染したのではないか」と考えてしまうでしょう。すべての人が恐怖による身震いを経験しているので、このレベルの不安には、すべてのコミュニケーションは、受け取った人が安心し、心強く感じるトーンでなければなりません。個人的な恐怖が根底にあるために、噂や誤った情報がステークホルダーに対して悪影響を増幅する可能性があります。

ステークホルダーの認識は現実です

信頼できるデータが入り始めているので、これは本当の危機ではなく、単なる大規模なパニックにすぎないと結論付けたく思うかもしれません。しかし実際、それでも対応に違いはありません。その脅威が現実のものであれ、憶測によるものであれ、単に不合理に膨らんだ妄想であれ、あなたの組織の対応は同じでなければなりません。

つまり、ステークホルダーに対するコミュニケーションにおいては、脅威を現実のものとして受け入れ、それに応じてメッセージを作成する必要があるということです。目的とすることは、あなたがステークホルダーの懸念を理解し、彼らの安全を第一に考えていることを示すことにあるのです。

ステークホルダーが本当に危険にさらされていると認識していることの妥当性を否定してはいけません。危機の潜在的影響を軽視すると、あなたのメッセージと信頼性そのものが損なわれます。

とにかくコミュニケーション

このような危機では、あなたの組織は、ステークホルダーにとって信頼できる相手としての地位を確立する必要があります。あなたの組織がすぐに影響を受けるリスクがほとんどない場合でも、あなたは問題の矢面に立つ必要があります。

メッセージの中身は​​、あなたが主体的にコントロールしていることを伝える必要があります。たとえそのコントロールが弱々しく限定的である場合でもです。正しいメッセージとして伝わるように、何らかの主体的な行動を示しましょう。

また、発信の頻度は、あなたが自分で十分だと思うよりも頻繁に、コミュニケーションを取るべきでしょう。誤った情報が広まり始めたら、すぐに反応し、報告すべき新しいニュースがないときでも既存のメッセージを繰り返し発信してください。

受け手に安心を与える一方で、十分に深刻さが伝わるトーンをどのように打ち出すかがここでの課題です。例えば、オフィスで誰かが咳をして早退した場合、他のスタッフには何と伝えますか?

最悪の場合を計画する

ではあなたのチームが集まって、COVID-19の危機と、それがあなたの組織とステークホルダーに与える潜在的な影響について検討していると仮定しましょう。 現状ではステークホルダーのエンゲージメントが機能しており、あなたは、適切なタイミングで適切なトーンでコミュニケーションを取り、適切な影響を与えているとします。

今後、何か予期せぬことが起こる可能性がありますか?そして「もし何か」が起きたとき、あなたは準備ができていますか?

検討すべき「もし何か」とは: 例えば明日、別の危機が組織に影響を与えるとしたらどうでしょうか。

COVID-19危機により、実際にこの可能性が高くなります。なぜなら人々は怖がっているとき、より悪い決定を下して過剰に反応する傾向があるからです。危機管理チームの注意を必要とする他の何かが発生した場合、あなたはどのように必要なリソースを集め、適切に優先順位を付けますか?

さまざまなステークホルダー・グループに配慮する

すべての対面会議を禁止することをサプライヤーに通知した組織があります。 そのようなメッセージでは、正しいトーンを打ち出すことは困難です。なぜサプライヤーだけ特定して特別な扱いをすべきなのか? サプライヤーは重要性が低いということですか? 彼らはより大きなリスクであるというのですか? 特別な扱いをするためにステークホルダー・グループを選び出す場合には、その理由を明確にし、それが全体のメッセージングおよび長期戦略の目的と合致することを確認してください。

もう1つ、慎重に検討する必要がある「もし何か」とは、重要な施設の従業員の一人が隔離入院された場合に、どう管理するかです。このウイルスのテスト結果が判明するまで、他の従業員に知らせるのを待つだけの余裕はありますか?人々の安全を最優先にすることを確実にするには、どうすればいいですか?

人を第一に

今回の危機は世界的に大きな経済的影響があるでしょう。それでも、それが人と環境の安全性に対して私たちが優先すべきことの妨げになってはいけません。

これは、予期せぬ展開で問題になる場合があります。たとえば、スタッフが無給休暇を取ることを義務付けるキャセイパシフィック航空の決定は、どう影響するでしょうか。それは恐らく必要な決定でしたが、賢明だと言えるでしょうか?

潜在的な長期的影響

私たちはすでに、日常生活で人々の相互のやり取りが急激に減少していることを目の当たりにしています。スタッフは自宅で働いているか、外に出るときにはマスクを身に付けて物理的なバリアを張っています。人々は、ビジネスや社交目的のために対面で会うことを止めています。こうしたことがステークホルダーのコミュニティに与える潜在的な影響と、このような孤立の影響に対抗するために取るべき措置があるかどうかを検討してください。

英国を拠点にビジネス継続性研修を提供する会社であるBC Trainingは、感染「大流行時における運営体制」の概念を開発しました。この種の危機がより頻繁に発生する可能性が高まるということは、あなたの組織にそのような運営体制を作ることを検討する必要があるということかもしれません。

今回の危機を乗り切るために、これらの基本原則を定期的に反映したコミュニケーションを土台にし、組織の回復力を保つのに役立てましょう。

参考:The COVID-19 Outbreak Is a Crisis: Have you considered all the issues?

お問い合わせ

 

株式会社ソフィア

ビデオ・プロデューサー、コミュニケーション・コンサルタント

池田 勝彦

主にビデオ制作で撮影から編集までを担当しています。記事原稿も書いていますが、英語による取材・編集もやりますし、翻訳もできます。

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池田 勝彦

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