アニメから読み解く、若者が求めるリーダー像とは?

#コミュニケーション#チームビルディング#多様性

30.Apr.2020

<目次>

 

自宅勤務中は、家族とのコミュニケーションのチャンス

新型コロナウイルス感染症の流行を受けて東京都をはじめとする7都府県に非常事態宣言が出されてから、もう2週間以上がたった。医療関係者をはじめ、私たちの生活インフラを支える方々が感染の危険と隣り合わせで日々仕事に出かけなければならない一方で、それ以外の多くの方は勤務先が休業、もしくは在宅勤務となっている。しかも、この先がまだどうなるか読めない状況だ。

私たちソフィアもすでに在宅勤務体制となってから2ヵ月が経とうとしている。ほとんどの学校では休校が続いており、多くの家庭で家族全員が平日の日中を自宅で過ごしている。一部報道などでは、家の中での場所の取り合い、いさかいや喧嘩、虐待やDVが増加しているという話も聞く。一方で、ソフィアメンバーと話をしていると、「家族との会話が増えた」「家での時間の過ごし方を見直すきっかけになった」「自分自身の仕事の価値について考えるきっかけになった」というポジティブな話も聞く。会社にとっても、働く人にとっても、難しい環境であることには変わりないが、在宅勤務を機にこれまでの日常を見つめ直し、新しいものを生み出していくエネルギーにしていけたらと思う。

高校2年生の長男との対話から学んだこと

自分の家の話だが、高校2年生の長男、中学1年生の次男も2月末から学校がお休みになり、毎日自宅で過ごしている。自分たちなりに毎日勉強をしているようだが、さすがにずっと集中力は続かない。2人とも以前からアニメを見るのは好きだったが、休校で家にいる時間が長くなったこともあり、アマゾンプライムで気になる作品を片っ端からみているようだ。それもあって、最近では週末に家族4人で、テレビアニメ作品の品評会的なことをやっている。各自が見たいアニメ作品を選び、それぞれ1話目を皆で見た後にプレゼンテ―ションごっこをして、その後人気投票をする。そして、得票数トップの作品を、次の週から家族で見るアニメと決めるのだ。
先日、長男が選んできた「盾の勇者の成り上がり」というアニメを見た後、作品について2人で語り合った。その作品の大まかなあらすじは、以下の通り。

状況

主人公は異世界に転生するが、ほぼ仲間がいない一人ぼっちからのスタートで、周囲からは信頼さえされない。そんな状況の中、転生した先の世界の危機が迫っている

ストーリー(途中まで)

主人公は武器として「盾」しか使えない役回り。それゆえ、守ることの価値を自分で認識しながら、仲間を集めていく。仲間を集めて戦う際の姿勢は「自分を守る」ではなく、「仲間を守る」。さらに、仲間を敵から守りつつ、彼らが攻撃するチャンスを作るのが自分の役割という認識を持つ。その世界のマジョリティーは人間だが、主人公とともに戦う仲間は異端(亜人)である。主人公は彼らとともに戦い、彼らの活躍の場を作っている。世界の危機が迫った際には、主人公は敵を倒し、仲間を守るだけでなく、人間をも守る姿勢を見せ、それによって社会からの信頼も徐々に得ていく。そして、自分のことを迫害していた主たる原因である人間が処刑される際にも、彼らの命を守ろうとする。

作品について長男と話し合っているうちに、「この主人公の姿勢は『サーバントリーダーシップ』や『シェアドリーダーシップ』に共通するのでは?」とか「多様性(ダイバーシティ)についてのメッセージが込められているな」などの気付きがあり、現代の組織に必要な要素がストーリーに織り交ぜられていることを感じた。そのことを息子に伝えたところ「最近は防御系のアニメが好きで見ている。言われてみれば、色々と傾向が変わってきているかも?」との反応が返ってきた。もしかして、アニメのストーリーは世相とマッチしていて、大人たちの社会、組織とも符合する部分が多くあるのではないだろうか。

アニメで描かれているチームやリーダー像は時代によってちがう

そこで、アニメやサブカルに詳しいソフィアメンバーの伊佐地くんに相談したところ、意気投合し、一緒に考察をしてみようということになった。彼の協力を得てアニメや漫画の年代ごとの傾向とその時代背景、その中で描かれている集団やリーダー像についてまとめてみたのが表1である。当たり前のことだが、それぞれの時代背景によって、ストーリーの主眼となるテーマやその中の集団や人間関係なども変わってきていることが分かる。特に、1960年代にはチームの目的が明確で師を仰ぐ姿が中心であったが、それが時代を追うにつれ、師との決別が始まり、目的自体が消滅し、集まったチームで共通の目的を作っていくという流れが見て取れる。

「盾の勇者の成り上がり」という作品は、2010年代にWEB小説からスタートしたらしい。伊佐地くんによると、悪を英雄が倒すだけではない正義のあり方を、物語を通して形にしていったとのこと。新しい集団やリーダーのあり方を提示しているという直感は正しかったようだ。

表1)アニメに描かれたチームやリーダー像の傾向と、時代背景(簡易版)
詳細版はこちら

年代 時代背景 コンテンツの傾向 集団やリーダーの傾向
1950年代 戦後、貧しく、人々は困窮 正義をなすために戦う(鉄腕アトム) 仁義礼智信と儒教的な精神
1960年代 高度経済成長の最盛期 スポ根マンガの流行(巨人の星、アタックNo.1) 熱烈に指導してくれるコーチへの信頼と根性
1970年代 科学技術、モータリゼーションの定着 科学の力で侵略者と闘う(宇宙戦艦ヤマト、科学忍者隊ガッチャマン) 優れた指導者とともに戦う姿
1980年代 バブル消費と恋愛 ラブコメ、世紀末を題材とした作品(タッチ、AKIRA、風の谷のナウシカ、機動戦士ガンダム) 軍隊式上下関係と現代的若者のいらだち
1990年代 冷戦が終わり、バブル崩壊 社会・組織・父という支配層、正義に対する不信(エヴァンゲリオン、ワンピース) 組織との軋轢・対立、押し付けられる成長像への反発
2000年代 同時多発テロ事件、ネットカルチャー台頭 知性・知識が重要性を増す。日常系も全面に、成長神話が失われ、今を楽しむ(デスノート、ベイビーステップ、涼宮ハルヒの憂鬱) 知力によってまず結果を出して引っ張る。押し付けでないアプローチと精神的な変化(自発性)
2010年代 コト消費、スマートフォン普及、SNSの影響力 英雄一人の正義の限界。人々が力を合わせて英雄的行動をとる姿(ガッチャマンクラウズ、ワンパンマン) 何かをなすために集団となることの必要性。独りよがりにならず、支配するのではなく仲間を作り、力を借りる姿
伊佐地雄介 作

リーダーシップ、組織論の流れとアニメの共通点

アニメの世界においても、実際の社会、会社においても、型どおりのリーダー像は時代とともに崩れていく。リーダーシップ論の変遷の一つとして語られる「変革的リーダーシップ理論」は、アニメの世界では1990年ごろから姿を見せ始めているようだ。このころから主人公やリーダーには、ビジョンとそれを実行する能力が求められるようになっていく。さらに2000年代になると、リーダーがやるべきことは仲間や相手に奉仕をすること、そしてそれから相手を導いていくという考え方を基にしたサーバントリーダーシップ。倫理観や道徳観が高く求められるオーセンティック・リーダーシップの理論と同様に、アニメの主人公からもヒエラルキーの要素がなくなり、人の上に立つということが薄れていくのが見てとれる。2010年代になると、アニメで語られるリーダー像はシェアドリーダーシップという考え方が主流になっているよう思える。特定の人物が常にリーダーである必要はなく、必要な場面においてそれぞれの仲間が得意分野や能力を発揮することで、集団や組織としてのパフォーマンスを高めていくという流れになっている。主人公以外も、それぞれがリーダーとしての当事者意識を持ち、相互に相手の能力や存在に敬意を払い合っている姿が見られるようになる。

日本の昭和後半からの組織マネジメントなどの変遷と比較しても、チームの作り方、組織のあり方、リーダーとして必要な能力においても、アニメに描かれたリーダー像と現実世界で求められるリーダー像は、ほぼ同期していることがわかる。
 

表2)日本企業における組織マネジメントの変遷

年代 組織マネジメント 雇用の形 必要とされる能力
1970年代 ヒエラルキー組織 終身雇用、年功序列 戦略と明確な指示
1990年代 マトリックス組織 成果主義、実力主義 部門間の調整と推進
2010年代 オープン、フラット組織 副業兼業、プロジェクト型 ビジョン、チームビルティング
廣田拓也 作

2020年代、ティール型組織、ホラクラシ―組織などと新しい考え方が出てきている中で、どのようなアニメが制作され、子どもたちから支持されていくのか非常に興味がある。そして、少子高齢化が進む日本において、若者たちから選ばれる会社・組織とはどのような組織運営やリーダーシップ像をもつことになるのだろうか? 答えは今後のアニメ作品の中にあるのかもしれない。

 

GWに共通のコンテンツを通して家族から学んでみては?

私自身、「盾の勇者の成り上がり」に出てくる主人公を見て、盾という目立たない武器を持つ役割でありながらも周囲を守ることで生き残り、使命を果たしていくという姿に、新しいリーダーシップのあり方を感じた。また、さまざまな立場と役割の人を集めて戦っていくところに「多様性を強みに変えていく姿勢」があること、仲間を守るだけでなく敵を許すというメッセージによって「寛容さ」が表現されていること、自分勝手にならずに周りのことも考えるということの大切さも受け取ることができた。そして、それを子どもたちと話し合えた体験もとても新鮮だった。あえて言うと、これは現在のような状況にならなければ得られなかった体験と気付きだったように思う。そして、こうした作品を見る機会をくれた制作者の方々にも感謝したい。エンターテインメントとして人々を楽しませてくれる一方で、新しい視点や人間の普遍的な要素、世の中の変化の兆しなどを感じさせてくれる重要な役割を担っていることを理解し、もっとアンテナを立てて作品を楽しんでいきたいと思う。まだまだ在宅勤務が続くことも想定される中、共通のコンテンツを通して家族が何を感じ取っているのか話し合い、学び取ってみてはいかがだろうか。普段仕事で接している相手とはちがう視点で、未来について考えるチャンスかもしれない。
(廣田拓也)
 

 

時代の空気を反映する、その先の変化を予言する作品のチカラ

新型コロナの影響以前から、物語ることの難しさが物語にはあったと思う。それは現代では、単純に白黒つけられないものが多くなり、何が問題なのか、どうすべきなのかを簡単に行動によって示しづらいということに起因する。世界を変える物語であっても、相手を倒すだけでなく、経済を知る必要性が増している。作家は、この複雑さに対して物語という形で、ある種の倫理観や方法論を提示し挑戦をしているのだ。

また、読者は物語に影響を与えている。これは作品の印象に納得や共感、不快感という形で影響する。この中心には個人の価値観・倫理観が存在している。単純に白黒つけられない現代、絶対的に正しくなくても決断をしなければいけない場面は少なくない。そんな中で、物語を通して、多くの他者の価値観を知り、自分が何に共感したのかを自覚することは無意識的に決めつけていることを浮き彫りにする。このことの重要性は日々増しているのではないだろうか。

物語を通して自分の物語を育て、行動に移していく。そのためにもこれを期に、楽しんだ当時の人々や世間を想像しながら、様々な時代・ジャンルの作品に触れてみてはいかがだろうか。
(伊佐地雄介)
 
 

 

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