心理的安全性を高め、いきいきとしたチームをつくるには? インプロ(即興演劇)の視点から考えてみた【課題編】

#コミュニケーション#チームビルディング#働き方#多様性#研修・ワークショップ#組織開発

27.Jan.2020

IMPRO KIDS TOKYOの下村理愛さんと我妻麻衣さんと株式会社ソフィアの古川貴啓

「会議が重苦しい空気になって意見が出ない」「上司は話す役、部下は聞く役と、役割が固定されてしまい議論ができない」「一人のメンバーに負担がかかりすぎている」――。そんな悩みを抱えている組織やチームのリーダーは多いのではないでしょうか。そうした状況には、メンバーたちが感じている、発言することへの恐れや懸念が隠れている可能性があります。
そこで今回は、人材育成や組織開発の研修を企画・設計しているソフィアの古川貴啓が、インプロと呼ばれる“即興演劇”の手法を取り入れたワークショップや企業研修をおこなっているIMPRO KIDS TOKYOのおふたりに、コミュニケーションの課題や心理的安全性の保たれた場のつくり方などについて伺いました。
本編では、多くのリーダーが抱えている課題と、その背景にある要因についてご紹介します。

【目次】
・GoogleやPixarなども注目する「インプロ」とは?
・発言の自由を妨げている「3つの検閲」

GoogleやPixarなども注目する「インプロ」とは?

古川貴啓(以下、古川):おふたりは、インプロの手法を取り入れたワークショップや研修を学校や企業でおこなっていますが、そもそも「インプロ」って何ですか?

下村理愛さん(以下、下村): インプロとは、英語の「インプロヴィゼーション」(improvisation;即興)の略語で、「im(しない)pro(先を)vision(みる)」→先を見ない→「今この瞬間の相手と関わりながら“劇”をつくっていく」という意味があります。目の前にいる相手をリスペクトしながら、脚本も、設定も、役も決まってない中で、その場で自然に浮かんできた言葉や動きを受け入れ合いながら、チームでストーリーをつくり上げていく“即興演劇”です。

こうしたインプロのマインドは、組織力を高めるチームビルディングにも通じますし、相手への思いやりや自己表現力を培うことにもつながります。すでにアメリカでは、GoogleやPixarなどの企業が、イノベーションやダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の文脈で、インプロの手法を企業研修に取り入れています。

古川:どのような経緯で、IMPRO KIDS TOKYOとして活動することになったのでしょうか。

下村: 私は子どもの頃からずっと教育に興味があり、大学院で教育について研究していました。そんな中でたまたまインプロのことを知り、正解がない中で、チームのみんなで力を合わせてストーリーをつくり上げていく、インプロの世界に魅了されました。そこで、子どもも大人も、インプロを通してコミュニケーションに必要なマインドを身につけることができる場をつくろうと考え、IMPRO KIDS TOKYOを立ち上げました。

我妻麻衣さん(以下、我妻): 私は俳優として演劇の世界で活動する中で、たまたま観たインプロの公演に衝撃を受けました。その後、インプロのワークショップで下村さんに出会い、IMPRO KIDS TOKYOの考えに共感してジョインしました。

古川:我妻さんは大手IT企業で働いていた経験もあるそうですね。

我妻: そうなんです。IT企業に就職して事務をしていました。当時、その職場のコミュニケーションに疑問をもっていたことも、現在の活動につながっています。

IMPRO KIDS TOKYOの下村理愛さんと我妻麻衣さん

発言の自由を妨げている「3つの検閲」

古川:組織やチームのリーダーが抱えている悩みとして、企業の方からどんなことを聞きますか?

我妻: 他部署との連携がうまくいかなくて業務効率が下がる、会議のとき自由に意見を出してほしいのに、メンバーがなかなか発言してくれない、チームメンバー同士のコミュニケーションがうまくいっていないので、ミスやトラブルがあってもすぐに報告があがってこない、といったことをよく聞きますね。

下村: それから、人によってコミュニケーションの温度差があって、リーダー自身は積極的に社内外の研修に参加するなどしていても、コミュニケーションの質に関心のない人にどうアプローチしたらいいかわからない、自分から働きかけても面倒だと思われるかもしれない、という話もよく聞きます。

たとえば、小さなお子さんを子育て中の社員の中には、「会社で仕事をして、定時に帰って、子どもを保育園に迎えに行く」という日常を送ることでいっぱいいっぱいで、「職場でのコミュニケーションは最低限でいい」と思わざるをえない方たちも少なくないようです。

我妻: それぞれに事情がありますよね。

古川:チームでそうしたコミュニケーションの問題が起きてしまう背景には、どんな原因があると考えられますか?

我妻: 原因の一つとして、心理的安全性が保たれていないということがあると思います。

下村: たとえば先日、動物園で働く方たちに、「仕事でいちばん大変なことは?」と聞いてみたら、みなさんから「人間関係です」という答えが返ってきて、意外だなと思いました。「早起きが大変」「動物のにおいがきつい」といった答えが返ってくると想像していたんですが、そういうことは問題ではないようで。リーダーや先輩に対して意見を言いにくい、でも何も発言しないと、それはそれでよく思われないから気まずいと言うんです。

我妻: 思っていることを発言できないのは、「リーダーや先輩に従わなくてはいけない」とか、「リーダーや先輩と違う意見を言ってはいけない」という心理があるからですよね。

下村: 人間は年齢を重ねるにつれていろんなことを学習していきますが、それとともに「これは言わないほうがいいんじゃないか?」と、自分の頭の中に浮かんだことをチェックするようになります。私たちはそれを、「3つの検閲」と呼んでいます。「変だと思われること」「卑猥だと思われること」「普通だと思われること」をチェックしてから発言する。

我妻: 変だと思われたくない、でも面白いことや特別なアイデアを出さないと褒めてもらえない、という心理があるから、思いついたことをパッと口に出せなくなるんですよね。

古川:お互いに「これを言ったら否定されるかもしれない」といった不安を抱えていたり、そういう空気が職場全体にまん延すると、新しいものも生まれにくくなりますよね。

株式会社ソフィアの古川貴啓

次回「心理的安全性を高め、いきいきとしたチームをつくるには? インプロ(即興演劇)の視点から考えてみた【解決編】」へ続く

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