企業におけるDX推進の目的とメリットとは?情シスの新たな役割を解説
最終更新日:2026.03.25
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DX推進は大企業にとって競争力維持・向上の鍵です。業務効率化や生産性向上、新規事業創出など多くのメリットが期待されます。しかし弊社ソフィアの調査では、組織の多層化やテレワーク導入によって社内コミュニケーション課題が『深刻化・多様化』していることが明らかになっています。本記事では、DX推進の目的と具体的メリットをわかりやすく整理しながら、情報システム部門がDX成功に貢献する方法を解説します。
情シス(情報システム部)の仕事に変化が訪れている
近年Microsoft AzureやAmazon Web Serviceといったクラウドサービスの台頭により、オンプレミスからクラウドへの流れが起きています。社内に物理サーバーを置いて保守・運用するといった必要がなくなり、ソフトウェアもPaaS・SaaSといったクラウド上で提供されるサービスに代替されるようになってきています。それに伴い、膨大な設備投資費や社内SE(システムエンジニア)の人件費を削減できるようになりました。今後すべてのITリソースの保守が必要なくなるという可能性もあります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が多くの企業で重要課題となっている現代において、企業がIT活用で目指すべきことは、単純にITインフラ・ツールを変革させるということではありません。業務変革・組織変革を伴うような、より大きな次元での変革です。経済産業省も、ITを変えるだけがDXではないと説明しています。
<経産省によるDXの定義>
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
このデジタルトランスフォーメーションの実現を企業が目指すにあたって、情シスの仕事も大きく転換しようとしているのです。次章では、まず従来の情シスの役割について整理・紹介していきます。
企業におけるDX推進の目的とメリット、情シスの新たな役割
DX推進は、大企業にとって競争力の維持・向上に欠かせない取り組みです。業務効率化や生産性向上、新規事業の創出など、多くのメリットが期待されています。一方で、組織の多層化やテレワークの導入によって、社内コミュニケーション課題が「深刻化・多様化」していることも、弊社ソフィアの調査で明らかになっています。
そこで必要となるのが、自社の業界・事業・業務においてITツールをどうやって活用するかを考え、そのための情報を関係各所へ提供する存在です。これからの情シスには、システムの機能や技術面だけでなく現場の業務プロセスにまで入り込み、具体的なユースケースを提案・サポートすることで、全社的なIT活用を推進する役割が求められています。
また、会社としてDXを推進するうえでは、単にITツールを組織的に活用することだけでなく、同時にチェンジマネジメント(組織変革)を進めていくことが必要です。新しいワークスタイルを実現するためには、職場の文化・風土も変革していかなければなりません。次章ではDXを促進する立場としての情シスの役割について紹介します。
DX推進の目的
近年、デジタル技術の導入は単なる業務効率化に留まらず、企業全体の変革を目指すものへと進化しています。経済産業省の定義によれば、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織・プロセス・企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とされています。
平たく言うと、DX推進の目的は、単なるITシステムの刷新ではなく、企業全体をより高度に最適化し、競争力を高めることにあります。具体的には、新たな技術やデータ分析を活用して新商品・サービスを創出したり、ビジネスモデルそのものを変革したりすることで、顧客価値や収益性を向上させることが目指されています。
DXは企業経営における「攻めの投資」ともいえるでしょう。実際、ガートナーの調査によると、IT戦略上で「ITコスト削減」の優先度は下がり、グローバル動向の影響を受け「ビジネス・ソリューションの提供」が重視されるようになっています。これは、従来の守りのIT(コストカット)から、DXを通じて事業の成長に貢献する攻めのITへと転換している動きを示していると言えるでしょう。こうした目的のもと、大企業では組織横断でのデジタル化や、社内外への新たな価値提供を推進していくことが期待されています。
DX推進により得られるメリット
DX推進は、企業に多くのメリットをもたらします。まず挙げられるのが業務効率の向上です。クラウドサービスやAIなどの先進技術を導入すれば、データの一元管理や社内情報共有がスムーズになり、これまで時間や手間がかかっていた作業の自動化が可能になります。結果として、業務プロセスの効率化や生産性向上が実現し、従業員一人ひとりの負荷を軽減できます。さらに、DXの推進によって蓄積されたデータを分析すれば、経営判断の精度が高まり、サービスの改善にもつながります。
また、DXは新規ビジネスの創出や競争力の強化にも有効です。顧客や社会のニーズに応じて製品・サービスをデータドリブンで見直すことで、従来型ビジネスを進化させることができます。たとえば、顧客データを活用したパーソナライズ商品の開発や、サブスクリプション型ビジネスモデルへの転換などが考えられます。これにより、顧客満足度が向上し、新たな収益源が生まれる効果が期待できるのではないでしょうか。
さらに、情報システム部門(情シス)の視点からは、ITインフラの運用コスト削減もメリットのひとつです。従来のオンプレミスサーバーをクラウドに移行することで、ハードウェア管理の負担が減り、初期投資や保守コストを抑えられます。クラウドサービスはスケーラブルにリソースを調達できるため、需要に応じた柔軟なIT環境が実現できる点も大きな利点といえます。
まとめると、DX推進のメリットには業務効率化・コスト削減、新たな価値創造・競争力強化、IT資源の最適化などが挙げられます。これらの効果により、企業は変化に強く、持続的な成長が可能になるでしょう。
情シス(情報システム部)の従来の役割
従来、多くの企業で情シス(情報システム部)は主にITインフラの運用とユーザーサポートを担ってきました。具体的には、基幹システムや社内ネットワークの構築・保守を行い、社内ユーザーからの問い合わせ対応やトラブルシューティングを実施してきました。社内の各部署が業務に集中できるよう、IT戦略の策定やシステム導入・開発、社内インフラ整備、ヘルプデスク対応などが伝統的な業務でした。
たとえば、SOX法対応などが求められる会計システムや、人事システムといった重要な業務システムの運用・保守が情シスのミッションであり、サーバーやネットワーク機器のメンテナンス、セキュリティ対策も担当範囲でした。これらは「守りの情報システム部門」と呼ばれる役割で、企業活動の基盤を安定稼働させてきたわけです。
一方で、この従来型の役割はクラウドサービスの普及によって変化しています。現在ではSaaS(Software as a Service)型の業務アプリケーションが増え、社内で独自にシステム開発する機会は減少しており、従来の運用保守業務の重要性は相対的に低下してきています。また、社内ユーザー自らが必要なツールを調達できる時代にもなってきています。
今後の情シスに求められる役割
DX時代において情シス部門には、従来の守りの役割に加えて攻めのIT推進役が求められます。具体的には、先進的なITツールやデジタル技術を用いて業務革新をリードし、全社的なDXを促進する役割です。たとえば、組織内の業務プロセスに対して「どのITツールを導入すれば効率化できるか」を企画し、その情報を現場部門に提供・共有する存在が重要になるでしょう。具体的には、業務改善のユースケースを提案したり、アプリの新機能を紹介したりして、デジタル活用を現場に定着させていきます。
さらに、情シスにはデータ分析やAI活用の促進も求められるようになっています。業務データを分析して問題点を可視化し、課題解決につながるITツールを提案するなど、デジタル技術を使って効率化や品質向上を実現する役目が増えています。こうした取り組みは「利益創出」「効率化」という情シス本来の目的に直結するものです。
また、情報共有の仕組み作りも重要です。これまで専門知識を情シスだけが抱え込んでいた部分を、組織全体で共有できる環境づくりが求められています。たとえば、新技術やツールの活用方法を社内勉強会やイントラネットで共有したり、ナレッジマネジメントシステムを導入したりすることで、ITリテラシーを底上げできます。これにより、現場の各部署でも自走的にツール活用を進められるようになり、組織全体のDX効果が高まると考えられます。
加えて、組織変革の推進役としての役割も重要です。DXでは単にITツールを導入するだけでなく、働き方や組織文化の変革(チェンジマネジメント)が必要とされます。情シスは経営層やHR・広報部門と連携し、デジタルツール活用の価値を社内に浸透させる働きかけが期待されています。IT知識を持つ情シスが変革の旗振り役となり、社員のマインドセットを変えていくことで、DXの成功確率が高まるのではないでしょうか。
このように、今後の情シスにはITツール導入の企画提案、データ活用の推進、そして組織横断の変革支援が求められます。従来の「守り」から脱却し、「攻め」のIT部門へと進化することで、企業のDX推進を支える存在となっていくでしょう。
DXを促進する情シス(情報システム部)の役割と専門家との協働
デジタルトランスフォーメーションにおいて最も上手くいかないことの1つとして、先進的なITツールに対して個人個人の理解度・受容度が追い付いていけず、会社として変化を受け容れられないことが挙げられます。ツールの機能、業務プロセスへの適用法が分からないことで現場が混乱し、これまでの業務のやり方やワークスタイルから脱却できないといったことがそれにあたります。
これを解決するために必要となる活動が会社のカルチャーチェンジ、社員一人一人のマインドチェンジです。単にITツールの活用法をナビゲートするのみならず、業務プロセスや職場の文化・風土というところまで踏み込んで、ユーザー部門に対して新しいワークスタイルの実現に向けた啓蒙活動を展開していったり、全社的な意識改革に向けたコミュニケーションを展開していったりといった役割がDX推進には不可欠なのです。
しかしこの役割は、専任のDX部門が担おうとしても失敗するケースがあるほど難しいものであり、そもそも経営層が事業戦略におけるITの重要性を十分に認識していなければ到底実現できるものではありません。では、情シスがDXを推進する役割を担っていくためにはどのようなアプローチをしたら良いのでしょうか。
それは情シスが持つIT知識や社内システムへの知見を最大限利用し、経営層を巻き込んで企業を変革する旗振りをしていくことです。ただし限られたリソースの中で上層部や会社全体に働きかけるというのは非常に負担が大きく、失敗に終わる可能性も大いにありえます。そこで1つの解決策となるのが、そういった業務改革・組織改革の支援を行うITベンダーと協働することです。高い技術力と豊富な支援実績を持ったITベンダーが上層部への答申からITツールの全社展開まで幅広く支援してくれます。そして、組織風土変革や社内へのコミュケーションは、自社の人事部門や広報部門が実務として実施していきます。現場部門との協働はもちろんですが、変革を企画する部門と協働することで、より全社的なムーブメントにつながります。
DX推進と社内コミュニケーション改善の関係
DX推進は、社内コミュニケーションの質の改善とも密接に関わっています。弊社ソフィアの調査によれば、大企業では組織の多層化やテレワークの拡大により、社内コミュニケーション課題が深刻化していることが明らかになっています。情報共有が滞ると、部署間の連携が悪化し、DX推進に必要な情報が組織全体に浸透しません。そのため、情報基盤や社内ポータルの整備が急務といえます。
たとえば、弊社調査で特定のカテゴリ内で社内ポータルを推進していると答えた企業が34.5%と最も多く、(ただし全体の導入率ではチャットツールが76%でトップ)導入率が最も高かったデジタルツールは「社内ポータル(イントラネット)」でした。ポータルに全社情報を集約することで、社内ニュースやナレッジが共有しやすくなり、社員間の相互理解が進みます。クラウド型共有ツールやチャットも、業務の自動化・効率化と合わせて情報の一元管理を実現し、業務効率化につながるとされています。
このように、DX推進においてはITツール導入だけでなく、社内コミュニケーション基盤の整備がセットで重要です。組織文化や風土が変わらなければ、ツールは絵に描いた餅になってしまいます。情シスはHR部門や広報部門とも連携しながら、共通認識を醸成する活動を行う必要があるでしょう。これにより、DX推進の目的である業務革新やビジネスモデル変革が社内に受け入れられやすくなり、成果を上げやすくなると考えられます。
まとめ
以上のように、近年情シス(情報システム部)に求められる役割は大きく転換してきています。従来担ってきたITインフラやシステムの構築・保守・運用業務は不要となり、今後はデジタルトランスフォーメーション(DX)実現へ向けた社内ユーザーへの情報提供・啓蒙活動を行っていくことがその使命となっていきます。
DX推進の目的:デジタル技術で製品・サービス・業務・組織文化を変革し、競争優位を築くこと
得られるメリット:業務効率化・生産性向上、コスト削減、新規ビジネス創出など。特にクラウド導入で業務の自動化やデータ共有が進み、効率性が高まります
従来の情シス役割:IT戦略策定・基幹システム運用・社内インフラ整備・ユーザーサポートなど、企業のIT基盤を守る業務
今後の情シス役割:先進ITツールやデータを活用した業務改革の提案・推進、全社的DXの旗振り、チェンジマネジメント支援など、攻めのIT部門へ転換
社内コミュニケーション:多様化する働き方に伴うコミュニケーション課題をデジタルツールで解決し、情報共有基盤を整備することがDX成果に直結します
もしあなたが情シスのメンバーであり、従来の役割を脱却できずにいるのであれば、業務改革・組織改革支援を行うITベンダーの活用を検討してみてはいかがでしょうか。




