緊急事態宣言下の企業の対応 ―意思決定の背景を従業員に届ける―

#インナーブランディング#コミュニケーション#ビジョン浸透

27.Apr.2020

意思決定のプロセスが正しく社員に伝えられているか

2020年4月7日、東京を含む7都府県に緊急事態宣言が発令された。
1月の初旬に中国で新型コロナウイルスの感染が広がっていると報道されたころには、正直、このようなことになるとは思ってもみなかった。1月下旬、武漢で都市封鎖が始まったときにも、まだ対岸の火事のように思っていたが、そこからはあっという間だった。国内感染者も増加し、学校は休校、会社にもいかず、テレワークで自宅にこもる。これまでの「当たり前」のくらしは、一変してしまった。
当社のような小さい会社は、一人が感染すれば、全員に感染して事業活動の継続が困難になってしまうことも容易に想像できる。徐々にテレワーク中心に移行し、2月下旬には原則出社停止、3月中旬には完全出社禁止となった。

こうした中、企業は対策を迫られるのだが、その内容はバラバラだ。
パーソル研究所が2020年4月10~12日に行った調査によると、テレワークや時差通勤に対する案内が出ていない会社は、それぞれ53.0%、52.3%と半数を超える。
 
図表:テレワークの企業方針、時差出勤の企業方針

出典:パーソル研究所
 
動きが早い会社は、1月の下旬から支援に乗り出すとともに社内は原則在宅勤務としていた。すでに対応を発信している会社の多くは、2月25~28日に原則在宅勤務、あるいは時差出勤に切り替えている。
一方で、前出のパーソル研究所の調査にあるように、半数以上は社内に対して特段案内がない。もちろん、在宅勤務ができない業務、テレワークの設備がない、インフラ関連企業で業務を止められない、など各社によって事情が異なるのだろうが、その対応と説明は、ステークホルダーから見られていることを忘れてはいけない。

しかし、これだけの報道が流れる中で、公共交通機関を使い、平常時と同様に出社している社員は不安で仕方がないのではないだろうか。
日々感染者が増え、死者数も発表される。自分や家族が罹ってしまったらどうなるのか。とはいえ、この中でも会社に行かないと仕事ができない、売上が上がらなければ給与が下がるのではないか、休めば会社に居づらくなるのではないか、解雇されるのではないか、様々な不安を抱えながら電車に乗る社員の気持ちを想像してもらいたい。

社会インフラを守ってくれる人たち、あるいは、事情があってどうしても出勤しなければいけない人たちがいる。そして、ニュースでは、相変わらず品川駅の朝のラッシュの映像が流れている。会社によって様々な事情があり、優先順位も異なる。生きるか死ぬかの瀬戸際で、苦しみながら意思決定が行われているはずだ。重要なのは、その意思決定のプロセスや背景、置かれている状況などが正しく社員に伝えられているかどうかということだと思う。
雇用される側の社員は、自ら働き方を選択することは難しい。会社が決めた枠組みの中で、成果を出して対価をもらう以上、勝手に在宅勤務にします、勝手に時差通勤しますとは言い難い。
だからこそ、今取っている手段が、どういった背景で、どういった思いで意思決定したことなのかを丁寧に社員に伝え、社員との信頼関係を強固にしていくことが必要ではないか。方針がなければ社員は不安なまま出社するしかない。

  • ある企業では、生活のインフラに携わる部分を残して一斉に運営を縮小した。社員は一斉に在宅勤務とし、家から出ないように通達をするとともに、グループ会社で働くスタッフに対しても「人こそ資産である」ことを社長が動画を通じて語りかけた。
  • ある企業は、緊急事態宣言が出された翌日も、方針が不明瞭だった。何も情報がない社員は、会社に行かざるを得ないと判断をした。家族に「なぜ行くのか」と聞かれても、「何も通達がないから行かなきゃいけない」と言い残した。
  • ある企業では、即座に感染拡大に歯止めをかけ、世界の命を守るための支援に乗り出した。社員、そしてその家族に対して、コーポレートサイトを使い、トップ自ら動画で思いや使命感を伝えた。
  • ある企業では、本社で感染者が出ているにも関わらず、まだ社員が出社していた。「本当は出ないほうがいいんだと思いますけど、なんとなくそういう空気もなくて」と言い残す。

この差はなんだろうか。
企業は社会の公器である。社会の一員として、社会運営を担うことも一つの役割だ。できうる最大限のことを即座に意思決定し、社員に迅速に伝える。意思決定に至った背景や想いも伝え、社員の納得感をつくる。
受け取った社員は、この状況下でも、自分たちが社会に役立てること、会社のためにできることを真剣に考え、前向きに取り組む。「何もできないから、何もしない」のではなく、その中でも知恵を絞って、周囲と力を合わせて何かをしようと奔走する。そう仕向けていくことも、経営の重要な役割であると思う。

企業の姿勢とリーダーシップが問われている

Edelman社が2020年3月6日から3月10日に行ったの調査によると、日本人の約7割が雇用主に新型コロナウィルスに関する情報を少なくとも1日に1回、もしくは1日に数回、アップデートしてほしいと答えている。伝えてもらいたい内容は「職場に新型ウイルスを持ち込まないために従業員が取るべき対策」が67%、「新型コロナウィルスを予防するための組織の取り組み」が60%、「新型コロナウィルスの感染が広がらないように個人ができる対策」が59%、「新型コロナウィルスに感染した従業員数」が56%だった。
(出典:Eldeman社「2020 エデルマン・トラストバロメーター スペシャルレポート:信頼とコロナウィルス」

先が見えない不安定な状況下にあることは、どの人もどの会社も等しく同じである。
不安定な中を前進するには、強いリーダーシップが必要だ。そして、この荒波の中を漕ぎ進むには、社員同士、部門同士の協力・連携は不可欠だ。

「これは、うちの部門の仕事ではない」
「早くやったらいいのにね、〇〇部も」

という部門の壁は、今すぐに叩き割って、必要だと思うことは、手を挙げて推進すべきではないだろうか。「おかしいな」「不安だ」とだれもが思う状況を、見過ごさずに、対策をとるために進言し、必要であれば自ら動く。それが、今求められていることではないだろうか。

ある部長が言っていた。「この出来事は、私たちにとって大きな試練だ。しかし、こういってはなんだが、今まで変えられなかったことを、一気に変えてしまえるチャンスかもしれない」

思考停止となって、立ち止まるのではなく、社員同士が、前向きに知恵を出し合い、前進していかなければならない。この姿勢こそが、アフターコロナと言われる近い未来の事業運営を大きく左右することになるかもしれないことを、発信できる立場にいる人たちには強く考えてもらいたい。

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