リーダー必見!腹落ちを生むセンスメイキング理論で組織強化の極意
最終更新日:2026.02.12
目次
センスメイキング理論とは?重要性と実施すべき3つの環境
センスメイキング理論は、例えばPDCAのような「循環するプロセス」です。PDCAが通常のプロジェクトにおいて計画から実行、検証、対策といった一連の流れをコントロールするものであるのに対し、センスメイキング理論は不測の事態・事象に対してそこに「意味づけ」を行いながら行動を起こし、組織に一致したベクトルと大きな力を与えることを目的とした概念です。
センスメイキング理論という言葉は、日本ではあまりなじみがないかもしれません。英語では「意味をなす、納得し理解する」というときにmake senseという表現を用います。ビジネスの重要な局面でそのような「納得し理解する感情を意図的に巻き起こし全体の方向性を揃え、組織の総合力を上げることに資すること」がセンスメイキングの要諦です。センスメイキング理論が特に力を発揮する不測の事態・事象とは、新しい・想定外・混乱的・不確実(先行きが見通しにくい)というような予期しえぬ環境を指します。
センスメイキング理論とは、ミシガン大学の組織心理学者カール・ワイクによって提唱された、「起きている現象に対して能動的に意味を与える思考プロセス」のことです。平たく言うと、組織内外で起こる予期せぬ出来事に対し、みんなが「腹落ち」できる意味づけ(ストーリー)を行い、組織全体の方向性を揃えるためのフレームワークです。英語で「make sense(意味を成す)」という表現があるように、組織の文脈では「全員が納得し理解できる状態=腹落ち感」を意図的に生み出すことがゴールとなります。
現在このセンスメイキング理論は、ビジネスの重要局面で強く求められています。特に先行き不透明なVUCA時代(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)においては、正確な分析よりも全員が納得する答えを導き行動に移すことが重要だとされます。まさにそれを可能にするのがセンスメイキング理論であり、組織やチームのメンバーを納得させる強力な意味づけを行えるかどうかが、リーダーの成否を分けるのです。
日本では経営学者の入山章栄氏(早稲田大学大学院教授)がこの理論に注目し、その本質を「腹落ち=納得」と表現しています。入山氏によれば、センスメイキング理論は従来の実証主義的なマネジメントとは異なり、絶対的な正解を突き詰めるのではなく認識のパワー(思い込み)を活かすことで正解のない状況でも納得感を生み出す考え方だとされています。換言すれば、データやロジックだけでなく、共感や物語の力で組織を動かすアプローチなのです。
では、なぜ今この理論が注目されるのでしょうか?背景には、コロナ禍やDX(デジタルトランスフォーメーション)、SDGs推進などによる環境変化が挙げられます。ビジネスが次々と未知の局面に直面する中、過去の成功パターンだけでは対応できません。データ分析の結果を納得感ある形で説明し、人々を動かすことが求められる今、納得感を補完する手法として「センスメイキング」が重要視されています。例えば、「不確実性の高い世の中ではストーリーテリングが上手な経営者ほど資金調達に成功している」という研究結果も報告されており、論理的な正確さ以上に”腹落ちする物語”がビジネスの成果を左右することが示唆されています。
入山氏も「現在の日本の大手・中堅企業に最も欠けており、最も必要なのがセンスメイキングの発想だ」と強調しています。組織メンバーの納得感・共感を醸成し、自律的な行動変革を促すこの理論は、今まさにリーダーに必須のスキルと言えるでしょう。では、具体的にどんな状況でセンスメイキング理論が力を発揮するのか、次に見ていきましょう。
センスメイキング理論が活きる3つの場面とは?
センスメイキング理論は、とりわけ「正解がない状況」を切り拓くときに威力を発揮します。入山氏は、日本企業が直面する環境要因として以下の3つの場面を挙げ、こうした局面でこそセンスメイキング理論が不可欠だと述べています。
危機的な状況(Crisis)
これはまさに世界規模で現在進行形の状況です。ウイルスによる感染症が蔓延し、あらゆる場面・場所で人々の行動が制限されていることで、私たちの活動はかつてない影響を受けています。ここまで大きなアクシデントでなくとも、予測しなかった危機に対して皆が一致して事に当たるには、センスメイキング理論が有効です。TOKYO2020の開催をめぐって国民の協力意識が今一つ形成されなかったのは、日本政府による納得できるストーリーの提示がなかったから、と言っても過言ではないかもしれません。1964年東京オリンピックの感動の記憶とともに語られたオリンピックの魅力は、時代情勢が異なる現在のセンスメイキングとしては力不足だったという捉え方もできるのではないでしょうか。
アイデンティティへの脅威(Threat to Identity)
個人と同じようにその集団である組織もまた、アイデンティティをもつ存在です。何を目的とし、誰に対し、どのような価値を提供し、どんな存在(であるべき)なのかというそもそもの理念が揺らいでしまうと方向性が見失われ意図せぬ脅威にさらされます。「濡れ煎餅」の販売で知られる銚子電鉄は、「『この町に銚電があってよかった。銚電ありがとう!』と言ってもらえる、そんな会社になるために、鉄道事業と名物「奇跡のぬれ煎餅」販売で、どんな逆境にも絶対にあきらめることなく奮闘を続ける鉄道会社」として「電車をとめるな」という自主映画の制作や新生姜の岩下とのコラボなど、多くの話題を提供しつつも、本業の鉄道部門は慢性の赤字を抱えています。これに対し2021年の株主総会では、ついに筆頭株主から「既に公共性の使命は終えた。煎餅販売を本業にすべき」との進言がなされました。事業多角化で存続を図ってきた現経営陣のセンスメイキングは、社員や地域、鉄道ファンらの一部に強く訴える力を持っていましたが、エクイティの面で重要な利害関係にある株主に対しては、もっと別のストーリーが必要だとも言えるでしょう。
意図的な変化(Intended Change)
上記2つの環境要因は不測の事態ですが、大きな変化を企業自身が意図的に起こす場合もあります。タイミングとしてはM&Aや周年の節目、代替わりなどが考えられますが、例えば上記の銚子電鉄が「思い切って電鉄事業からは撤退しよう」という意思決定を行ったとしたら、重大な意図的変化になります。不確実性の時代にはしばしば起こりがちで、バブル期やリストラ流行りの頃にも、まったく分野の異なる事業に進出したり、多角化を図ったりする企業が数多くありました。このような場合も、トップは「なぜそうするのか、どのような根拠で、どんなビジョンを掲げるのか」を社内外に広く深く表明する必要があります。センスメイキングによって、あらゆるステークホルダーを納得させなくては成功がおぼつかないからです。
以上の3つはいずれも「予測困難で不確実な状況」ですが、こうした場面でこそセンスメイキング理論は組織に統一したベクトルと力を与えると考えられています。実際、入山氏は日本企業がまさにこれらの環境変化に直面しており、イノベーションを生み乗り越えていくためにセンスメイキング理論が不可欠だと説いています。言い換えれば、センスメイキング理論は組織を見失いかけた混沌から救い出し、希望ある未来への道筋を示す羅針盤の役割を果たすのです。
入山章栄氏:「腹落ち=納得」のセンスメイキング理論
センスメイキング理論は90年代の終わり頃から2000年代初頭にかけて、カール・ワイクやサリー・マイトリス、ヘンリー・ミンツバーグなど欧米の学者らによって提唱されてきました。哲学や心理学とも深いかかわりを持つため経営学の理論としては抽象的な面も多く、いまだ議論が続いています。
わが国では早稲田大学大学院教授の入山 章栄氏が、センスメイキング理論の本質を「腹落ち=納得」と表現しています。実証主義的に情報を正確に分析し、ロジックに従って行動計画を立てる組織論とは異なり、事象の捉え方は主体・客体の相互依存関係の上で成立するとする、相対主義的な認識論をベースにしています。
認識論では、主体と客体の関係性は絶対的でないため、例えば「ある環境要因をどう捉え、どう対処していくか」という解釈に多義性が生じます。組織全体での多義的な解釈の足並みを揃え、対象とする事象の意味について組織のメンバー、周囲のステークホルダーが「腹落ちする=納得する」ストーリーを導き出し、集約していくプロセスを入山氏はセンスメイキング理論と定義しています。そして現在の日本大手・中堅企業に最も欠けており、最も必要なのがセンスメイキング理論だと主張しています。
センスメイキング理論のプロセスと全体像
センスメイキング理論は、大きく三段階のプロセスから成ります。
1. 環境感知の段階
2. 解釈・意味づけの段階
3. 行動・行為(イナクトメント)の段階
組織が置かれた環境に何らかの変化があった場合、まず組織はそれを感知します。生命体が感覚器官を用いて周囲の情報を収集し、対処しながら自己を保全するのと同じです。
感知された環境情報はそのままでは単なる認知でしかありませんから「それはどういうことなのか」という解釈を、組織として行います。解釈・意味づけを個々勝手に行ってしまうと組織としての統制がとれず、ベクトル合わせができません。ここではリーダーがそれをガバナンスして解釈を揃え、ストーリーを示します。
次の段階では提示されたストーリーに従って、実際の行動に移ります。段階としては最後に位置しますが、実はこの行動が新たなる情報を感知してストーリーの精度を上げていくため、プロセスは1~3を循環することになります。各段階について、具体的に解説していきましょう。
環境感知:物事を俯瞰的に見つめて情報をいち早くキャッチする
環境感知は、企業を取り巻く状況に何らかの大きな変化があったとき、それに関する情報をいち早くキャッチするプロセスです。前述した不測の事態・事象がこれに当たります。再度整理してみましょう。
危機的な状況:crisis
アイデンティティへの脅威:threat to identity
意図的な変化:intended change
入山氏はこれら三つの環境変化に日本企業が直面しており、イノベーションを創出して乗り越えていくためにもセンスメイキング理論が不可欠であると述べています。できる限り俯瞰的に、スピーディに情報を集めることが求められますので、この点に関しては「競争戦略において経営者はファイブフォース(新規参入・代替品・買い手・売り手・競争業者)を意識し、できる限り環境を正しく理解する」というマイケル・ポーター的な実証主義アプローチも必要です。
解釈・意味付け:情報にストーリー性を持たせる
環境の変化に対し意味づけを行い「いま何が起きているのか」「何をなすべきなのか」「何が期待されるのか」という疑問に答えるストーリーを組み上げ、ステークホルダーらの解釈の足並みを揃えるプロセスです。環境から何を読み取るのか、どんなイメージを想定しうるのか、その先に何を思い描くのか。選択肢は無数にありますが、このストーリーの発見こそが、組織に道を示す非常に重要なポイントとなります。
行動・行為:ターゲットの自発的な行動へつなげる
行動・行為(イナクトメント)は、センスメイキング理論においては循環プロセスの出発点となります。まず「何となくの方向性」で行動を起こしてみて、その結果の情報をさらに収集して環境解釈の足並みを揃えていくのです。認識論的に言えば、行動しなければ環境は変わりません。センスメイキング理論でよく例に出されるハンガリー軍の場合では、地図というストーリーの提示を得て偵察部隊がテントを出発し、山を降り始めました。このように、ストーリーはターゲットの自発的なアクションを促すのです(後述の成功事例参照)。
あらかじめ計画を詳細に詰め、それに沿って上部から下部、前から後ろへとリニアに計画を進めていくタイプのプロジェクトが実証主義的な態度であるとすると、センスメイキング理論におけるイナクトメントは、試行錯誤の連続の中で最適解を求めていく、相対主義的な進め方と言えます。
センスメイキング理論の7大要素
センスメイキング理論には「7大要素」と呼ばれる以下に示す要件があります。アイデンティティ:identity
回想・振り返り:retrospect
行動・行為:enactment
社会性:social
継続性:ongoing
環境情報の部分的認知:extracted cues
説得性・納得性:plausibility
これら7つの要素は、センスメイキング理論では多義的な世界で道を示し、明確にストーリーを掲げて組織を引っ張っていくことのできるリーダーに必要な資質とされています。もちろんリーダーだけでなく、組織に属すビジネスパーソンのポテンシャルを最大限に引き出す要素でもあるので、意識的に活用してみてはいかがでしょうか。
次の章では成功事例に合わせて具体的な解説をしていますので、そちらも参照してください。
アイデンティティ(Identity)
自分自身や所属組織が「何者で、何を目指す存在なのか」を明確に認識し、言語化できること。常に自分たちの存在意義・使命を再確認し、周囲に発信できる状態です。企業においてはビジョン・ミッション・バリューの明文化や、CI(コーポレート・アイデンティティ)戦略による理念の浸透活動がこれに当たります。外部環境の変化で組織のアイデンティティが揺らぎやすい時こそ、「我々は何者か」を物語れるかが問われます。
回想・振り返り(Retrospect)
過去の出来事を後から意味づけて理解すること。人は後になって「あの時の行動にはこんな意味があったのだ」と納得することがあります。結果を検証し「なぜそうなったのか」を振り返って腹落ちすることが、経験に厚みを与えます。後知恵だと批判されることもありますが、このレトロスペクティブ・センスメイキング(遡及的意味づけ)によって初めて学びが組織に蓄積されるのです。失敗も成功も、振り返りで物語化して初めて次につながる教訓になります。
行動・行為(Enactment)
行動を通じて環境に働きかけること。人や組織は動いてみて初めて周囲に影響を与え、そこからフィードバックを得て軌道修正しながらゴールへ近づきます。何もしなければ環境に変化は起きません。いわば自ら物語の一部を演じてみせる要素です。たとえば宇宙ビジネスの例で言えば、ヴァージン社のリチャード・ブランソン氏は幾度もの失敗を乗り越え自ら宇宙飛行に挑みました。そのカリスマ的行動力が周囲を巻き込み、壮大な挑戦を現実に近づけたのです。
社会性(Social)
自分以外の他者との関係性の中で意味を見出すこと。組織内外のステークホルダーなど社会的なつながり抜きに、物事の意味づけはできないという前提です。観測者である主体(企業・人)が行動を起こすことで、初めて客体である環境社会との関係性が立ち現れます。他者との結びつきそのものに意味を見出し、相互作用の中で物語を形作る視点です。ビジネスでも自社視点だけでなく、相手(顧客・社員・社会)の視点から解釈することが重要です。
継続性(Ongoing)
センスメイキングは一度きりで終わらない進行中のプロセスであること。行動により周囲との関係性が変化し、さらに新たな意味づけと行動へと循環していきます。決して「これで完成」というゴールはなく、常に更新・展開され続ける点を理解する必要があります。過去に一度上手くいったからと言って、同じストーリーが次も通用するとは限りません。一連の成功体験は暗黙知となって組織に共有されますが、その上にさらに新たな体験が積み重なり続けていくのです。このプロセスの反復こそが、組織内の物語に厚みと信頼感をもたらします。
環境情報の部分的認知(Extracted Cues)
人は常に全体の一部しか認識できないという前提を持つこと。どんなに努力しても、ある事象を100%完璧に捉えるのは不可能です。同じ事象でも人により解釈や見方が異なるからこそ世界は多様で成り立っています。ゆえにセンスメイキングでは、関係性のある一側面に着目してストーリーを付与するアプローチをとります。つまり、断片的な「手がかり(cue)」を抜き出し、それに意味を与えて行動指針を導くのです。腹落ちするストーリー体験は常に独自のものであり、他にはない強い印象を人々に与えます。逆に言えば、全ての事実を完璧に揃えることよりも、一部の重要な情報にフォーカスして心に刺さる物語を作ることがカギとなります。
説得性・納得性(Plausibility)
人は完全な正確性よりも心に響く説得性を好むという点です。未来の出来事に確証は得られない以上、「絶対に正しい計画」よりも希望と熱意のあるストーリーのほうが共感を呼び、物事を前に進めます。例えば近年盛んなクラウドファンディングのサイトを見れば、綿密な事業計画よりも人々の想像力や感情を動かす物語が多くの支援を集めていることがわかります。スタートアップ企業は実績データだけでは融資を得づらい分、熱意あふれるプレゼンと物語で資金調達に成功しています。このように「エモーショナルでイメージを喚起するストーリーこそが共感を呼ぶ」のであり、リーダーは数字の正確さ以上に訴求力の高いストーリーを追求すべきなのです。
以上の7要素はいずれも、リーダーが組織メンバーのポテンシャルを最大限に引き出すヒントとなる視点です。実際にセンスメイキング思考を行ってみる際、「この7つの視点のうち欠けている分析角度はないか?」と振り返ることで、より多面的で説得力のある物語を構築できるでしょう。ぜひ意識的に活用してみてください。
センスメイキング理論の成功事例は?雪山の遭難から生還したハンガリー軍
センスメイキング理論を象徴する有名な事例エピソードとして、よく引用される「ハンガリー軍偵察隊の雪山遭難ストーリー」があります。これは実話に基づく寓話で、センスメイキングの力を端的に示す逸話です。
〈ハンガリー軍の遭難エピソード〉
あるハンガリー軍はアルプス山脈で遭難し、ピレネー山脈の地図を使用して生還し ました。隊員たちは極度の寒さと恐怖の中でテントに閉じこもり、救助の見込みもなく絶望しかけます。ところが一人の若い隊員が偶然ポケットから一枚の地図を見つけました。隊員たちは「これで下山できる!」と大いに喜び、その地図を頼りに吹雪の中を進む決心をします。おおまかな方角だけを信じてテントを飛び出し、試行錯誤しながら少しずつ前進した結果、なんとか無事に全員下山することができました。ところが後に確認すると、その地図はピレネー山脈のものではなく全く別のアルプス山脈の地図だったのです…。
このストーリーが示唆するのは、たとえそれが厳密に正しい地図(事実)でなくとも、皆が信じられる「よすが」となるストーリーが絶望の中の集団を鼓舞し、生還という結果をもたらしたということです。センスメイキング理論的に言えば、「不確実な状況で納得感を得られる物語を共有し、行動を促し、試行錯誤を継続した結果成功に至ったプロセス」を表しています。
このエピソードを先に挙げた7大要素の観点から捉え直してみると、次のように解釈できます。
1. アイデンティティ(Identity)
吹雪に遭難し絶望する「迷える集団」ではなく、「必ず下山して生還するプロの軍隊」であると再定義したこと。隊員たちはプロ意識を取り戻し、自分たちの存在意義(生還すること)を再確認しました。
2. 振り返り(Retrospect)
部隊として過去の任務遂行経験を思い出し、「これまでも困難を乗り越えてきた」という記憶を振り返って士気を高めました。絶望の中で過去の成功体験を思い起こし、そこに意味を見出したのです。
3. 制定・行為(Enactment)
地図を拠り所にまずテントを出て行動を開始したこと。猛吹雪の中、一歩踏み出して雪原を進み始めた行為そのものが、次の展開を切り開きました。行動なくして状況は変えられないことを示しています。
4. 社会的接触(Social)
「地図がある」「下山できる」という心理的拠り所を共有したことで、隊員同士の間に新たな相互作用と連帯感が生まれました。環境(雪山)という他者、地図という媒介を通じ、メンバーの関係性が希望に向け結びついたのです。
5. 継続的な出来事(Ongoing)
地図を見ながら少し進んでは現在地を確かめ、進路を修正し、また進むという試行錯誤の繰り返しで前進しました。このように行動と検証を継続するプロセスが、成功への道筋を作り上げています。
6. 手がかり (Cues)
猛吹雪で視界も悪い中、隊員たちは「今いる場所から見える地形」など限られた手がかりを頼りに最適な道を探りました。ピレネー山脈全体の正確な状況は掴めなくとも、目の前の部分的な環境情報を使いながら少しずつ軌道修正したのです。
7. 妥当性(Plausibility)
たとえ間違った地図であっても、それを共有して「助かるはずだ」という希望あるストーリーを皆で信じたことで、部隊の力と方向性が一致し生還という結果に繋がりました。数字の正確さより物語の力が勝った好例です。
このようにハンガリー軍の事例は、センスメイキング理論のエッセンスを非常にわかりやすく物語っています。「事実の正確さ」より「腹落ちできる物語」を共有することが、どれほど組織の行動力を引き出すかが理解できます。一言で言えば、不確実な状況で人々を前進させる原動力は、”正しい地図”ではなく”みんなが信じられるストーリー”なのです。
まとめ
ここまでセンスメイキング理論の概要、活きる場面、3段階プロセス、7大要素、そして成功事例についてご紹介してきました。では、これらを踏まえて、リーダーとして何を意識すべきでしょうか。
私たちソフィアが実際に様々な企業支援を行う中で改めて感じるのは、「社員の納得感・腹落ち感がないまま施策を進めても、なかなか上手くいかない」ということです。特に昨今のような先が見通せない状況では、変革を促し自律的な行動につなげるために魅力的で希望あるストーリーが不可欠です。社員が納得=腹落ちし、理解・共感から主体的な行動へ踏み出せるような物語を、リーダーは意識的に探し作り出さなくてはなりません。
実際、弊社ソフィアの2024年「インターナルコミュニケーション実態調査」でも、社内施策が現場に浸透しない背景には「現場の実情や実務と乖離している」(33.0%)や「背景や意図が十分に理解できない」(25.3%)といった指摘が上位に挙がりました。さらに、自社の経営戦略に「十分共感している」と答えた社員はわずか9.9%に留まるという結果も出ています。このように、多くの社員が会社の方針に腹落ちできていない現状が浮き彫りになっており、逆に言えばセンスメイキングによる物語づくり余地が大いにあるということでもあります。
だからこそリーダーは、社員の視点に立った物語の再構築に力を注ぐ必要があります。経営目標や戦略に魂を入れ、現場とのギャップを埋めるストーリーへと練り上げるのです。「何のためにそれをやるのか」「それによってどんな明るい未来が描けるのか」を丁寧に語り、対話を通じて共感を引き出すことができれば、組織は一丸となって変革への一歩を踏み出せるでしょう。まとめると、社員に腹落ちさせるストーリーこそが、組織変革を成功に導くカギなのです。
ソフィアでは、顧客企業がそのようなセンスメイキングを実践できるよう各種施策を用意し、内部コミュニケーションやストーリー作りをサポートしています。ぜひ詳しいプログラム内容をお知りになりたい方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。




